2014_08
13
(Wed)12:00

賭けの勝敗-1(記憶喪失のための習作 2)

意外にも好評だったプロローグ
ご期待に添えますかどうか…

※『』は英語での会話と思ってくださいませ
※蓮の過去に触れる話が出て参ります!苦手は方はお戻りください。

2014/8/20初稿、2014/9/7一部修正





■賭けの勝敗-1(記憶喪失のための習作2)


『今回の役どころはアクションシーン満載でしたね。本当にハラハラしましたが、撮影では御怪我はなかったんですか?』
『擦り傷程度なら日常茶飯事でしたよ。でも大きな怪我は俺を含めて全く。素晴らしいスタッフに囲まれていましたからね』
『試写会でも絶賛の嵐でしたね。手ごたえを感じていますか?』
『ええ。もちろん。ぜひ皆さんにシアターまで足を運んでいただきたい』


まもなく公開を迎える映画の話が一段落し、話は蓮自身のことに移った。

『先日26歳のお誕生日を迎えられましたね。おめでとうございます』
『ありがとうございます』
『1年前のお誕生日でしたね。ご両親の事と、4年前の事故で記憶を失われたことを公表されたのは。本当に衝撃的でした』
『そうでした。あの折はお騒がせして申し訳ありませんでした。』

蓮は苦笑いを浮かべる。

『ご両親の事を明らかにされた理由は?』
『自分のバックグランドについては、映画祭で栄誉ある賞をいただいたことが大きいですね。最初にデビューした時は私自身が両親を意識する余り空回りし、多くの人を傷つけてしまいました。
その罪は決して消えることはありませんから、正面から受け止めなくてはと思っていました。賞をいただいたことで背中を押してもらった形になりましたね。これをひとつのきっかけにしようと』
『まさにそれからこの1年は怒涛の活躍でしたね。御父上がクオン・ヒズリの父親と紹介される日も近いんじゃないですか?』
『あの人はそんな甘い男じゃないですよ。』

蓮は小さく声をあげて笑う

『記憶のことは?』
『主に日本のファン及び関係者の方々ですが…いつまでも騙す形になっているのが心苦しかったんです。
アメリカで身動きを取れなかった俺を受け入れ育ててくれたのは日本の芸能界とファンの方々です。出自を公表するなら、記憶の事もどうしても明らかにしたかった』
『日本の方々は受け入れてくださったようですね。本来の姿以外の役では“敦賀蓮”の芸名を使われるのも感謝の意味があるのでしょうか』

蓮は身体の前で組んだ手に力を込めた

『本当に感謝しています。…敦賀蓮の名前を主に使うのは、今の私の演技があるのは日本での日々があってのことだからです。』
『それは記憶を失っている期間も含めてですか?』
『勿論です』
『確か2年ほどの記憶が失われているんでしたね?』
『そうです。事故にあったのが22歳の誕生日の4日後でした。ですから20歳からの記憶がないことになります』
『その期間をどのようにとらえていらっしゃいますか?』
『役者としての転機となった期間だろうと思っています。たとえば愛情表現の演技もそれ以前と後では全然違いますし』
『“ダークムーン”ですね。DVDがこちらでもヒットしましたから、私も楽しませていただきましたよ。アメリカに帰ってこられる契機となった“トラジックマーカー”もその時期でしたね』

蓮はうなずき、窓から見えるカルフォルニアの空に一瞬目をやった

『…今の自分の土台となった時間を覚えていないのは歯がゆいものですよ』

もう少し掘り下げて聞いてみたい。
インタビューアーはそういう衝動に駆られた。
だが、許された内容はここまでだし、きっとこの美しい男もそれ以上は話してはくれないだろう。

いや、話そうにも本人にも分からないのかもしれない。

『今度日本に行かれるそうですが、いい刺激になるかもしれませんね。映画の撮影と伺っていますが?』
『ええ、新開監督の映画です』
『Mrシンカイ!ヨーロッパでは高く評価されていると聞いています。では暫く日本に滞在されるのですか?』
『3か月ほどですかね。』
『その期間あなたの姿を見れないのは寂しいですが、日本のファンは嬉しいニュースですね。アメリカに戻ってからは日本には何度か行かれてますよね?』
『ええ、ただCM撮影や映画の宣伝でしたので、2,3日滞在するのが精々でしたね。』
『映画の完成と帰国を、私は勿論ファンは待っていますよ』
『有難うございます』

*
*

著名映画雑誌の特集のインタビューを終えた蓮は、小さく伸びをした。

「蓮、お疲れ。何か飲むか?」
「ありがとうございます。社さん。水をお願いします。」

ミニバーにある冷えたミネラルウォーターを受け取りひと口飲むと、蓮はテーブルに残ったコーヒーを見て苦笑した。

「コーヒーを飲むと日本が恋しくなりますよ。」
「食い物関係は断然日本だなあ。俺も日本のコンビニが恋しいよ」
「ああ、コンビニのお握り美味しかったですよね。そうか、日本に帰ったらあれが食べれますね」

社は、柔らかに笑う蓮を見ながら、“オニギリだけじゃ食事と言えません!”と目を三角にして怒った少女を思い出し目を伏せた

「…そういえば、どうするんだ?」
「何がですか?」
「ニコルさんだよ。付き合い始めたばかりだろう?」
「ああ…別れました」

はあ?と社は目をむいた。
主演女優と付き合いだしたと聞いたのはつい3日前のことだ。

「いつだよ?」
「え…っと、昨日です」
「…またか?」

ジト目で睨まれて、蓮は白状する

「はあ…すいません」

4年前こちらに戻ってきてから、両手に余るほどの女性と付き合った。
ただ、どうしても一線が超えられない。10代の頃は、その手のことで不満など言われたことなどなかったのに。
日本での長い禁欲生活のせいだろうか?

食事をして、そういう雰囲気になると部屋になだれ込んで…流れは一緒なのに食事の段階からなんだかもう義務的な気分になって、帰りたくなっている自分に気付く。
苦手な食事のせいなのだと思い込もうとするのだが、2人きりになると違和感がますます強くなるのだ。
何度かベットまで我慢したこともあるのだが、やっぱり無理だった

お蔭でパパラッチに何度も撮られているのに、女性はダメなのだとか、不能なのだとか様々な噂が水面下で広まっているのも知っている。

それでもお誘いは無くならないし、誘われると行ってしまう。
心の奥に潜む飢餓感が埋まる気がして


「なあ」

社が小さな声で話しかけた。

「お前が誘いにのる女性っていつもタイプ決まってるな」
「そうでしたか?」
「…うん。小柄で…ショートボブのブラウンヘアで…目力のある子」
「そう…ですか?ニコルは最初違いましたよ。」
「うん。だから撮影終わったら髪切って染めてたじゃないか」

その途端、それまで無関心だったニコルからのアプローチに蓮は乗った

蓮の耳まで入っていないのだろう。
才能溢れる美貌のサラブレッドを得るために、女優やモデルたちがこぞってヘアスタイルを替え、自分こそベットでその気にさせてみせると狙っていることを。

携帯が鳴り、社が部屋を出ると、蓮は私物の鞄に手を伸ばした

大事な人は作れない。と誰も寄せ付けなかった日本での生活。
こっちに戻って、一言でも詫びたいとティナに連絡を取ってみると、どうやら記憶を失った2年の間何らかの交渉が持たれたようだ。

『前に進みなさいよ。あんたがリックを忘れる訳はないことはわかっているから。リックを忘れないのなら、大事なのはあんたのこれからよ、私は見てるから』

電話越しにつっけんどんに言われた言葉。
だが、少し温かみのある言葉。
あれほどまで自分を憎んでいたはずのティナにそう言わせた何か
それが、あの2年間にあったのだ。

あんなに恐れていた自分の中の闇
だが、気がつけばその存在を認め、共存している自分がいる

演技に、自分自身に、あの2年間に何かが必ずあったはず
だが思い出せない。


蓮はカバンから取り出した携帯電話を弄んだ。

今となってはすっかり時代の遺物となり果てた古い携帯
4年前まで自分が使っていたものだ。

事故後、記憶を無くしたのは2年間だったこともあるし、ハリウッドへの準備の為仕事を押さえていたので、それを隠して生活することには困らなかった。
だが、不安だった。
自分でも驚くほどの内面の変化、その原因が知りたくて、1人になると必死に記憶の断片を探した。

部屋には仕事以外の痕跡はなかった。
2年前と同じ生活感のない空間
ただ、その間にこなした台本と資料が増えているだけだ。
車も2年前のまま
自分が同じような生活を送っていたのだと推測するには十分な。

だが、どこにだって何かが足りない。

そして、携帯電話で見つけた。
社交辞令と、事故後の安否を心配する電話とメールで埋め尽くされた中に見つけた異物
それは画像を保存するデータフォルダにあった。

「m」

そう名付けられたフォルダ
携帯で写真を撮り、なおかつ保存したいようなことは敦賀蓮の生活にはなかったはずなのに

ご丁寧にもパスワードがかけられたフォルダ
思い当たる4ケタの数字は片っ端から入れてみたが開かない。


この中に自分の失った2年間のヒントはあるのだろうか?
日本で何か得ることが出来るだろうか?

ノックの音と社の声が聞こえて、蓮は携帯をカバンにそっと滑り込ませた


(2)へ続く





ガラケーのパスワードってフォルダ毎に変えれたりした?とか
携帯会社に聞けばパスワード分かるんじゃないの?とか
そんな突っ込みはどうかご勘弁を!
雰囲気♪雰囲気♪
関連記事
スポンサーサイト

コメント

18. Re:静かな幕間という感じですね…

>genkiさん
深い精神的なお話!
そんな素晴らしい話になるのか…全く自信がありませんが、結末は決まっていますので頑張りますね。

2014/08/20 (Wed) 15:17 | ちょび | 編集 | 返信

17. 静かな幕間という感じですね…

こんばんは。「賭けの勝敗」面白いですね。蓮さまがキョーコちゃんのことだけ思い出せない理由が何かしらありそうです。深い精神的なお話になりそうで楽しみです。
今回は静かな混乱の中に沈んでいる蓮さまの、幕間という感じの回で、これからお話が展開して行くのが待ち遠しいです。ヘタレの蓮さまも可愛いですが、硬質の蓮さまは独特のキレがあって魅力的です。次回を楽しみにしています。どうもありがとうございました。

2014/08/17 (Sun) 01:43 | genki | 編集 | 返信

16. Re:今後がたのしみです!

>kawachi1gouさん
そうです。パスワードはあれです(笑)
設定した敦賀さんは以外に単純?
次回再会の予定です。

2014/08/15 (Fri) 07:59 | ちょび | 編集 | 返信

15. Re:続きが・・・

>ゆうぼうずさん
有難うございます。
キョーコちゃんの心情がカギとなるお話ですが、うまく書けるかどうか…
頑張ります。

2014/08/15 (Fri) 07:58 | ちょび | 編集 | 返信

14. 今後がたのしみです!

ちょっとドキドキしながら読ませて頂きました。
携帯電話の中に鍵があるところがミソですね。
思わず、パスワードはあれだよと言ってしまいそうになりました。
二人の再会が楽しみです!

2014/08/14 (Thu) 09:43 | kawachi1gou | 編集 | 返信

13. 続きが・・・

一話目で、もうすっかりはまってしまいました。続きが気になりすぎる(>_<;)
プロローグのキョーコの諦めと1話の蓮の虚無感の両方が切なくて切なくて(;_;)
次話楽しみに待っています(^-^)

2014/08/14 (Thu) 07:35 | ゆうぼうず | 編集 | 返信

12. Re:蓮さん…

>saoさん
そりゃもう自信満々です。「私とベットにいってもその気にならないなんておかしいわ!」とか言われていると思います( ̄▽+ ̄*)

もうパパラッチに撮られるたびにヤッシーはメタメタですね。禿げてたらどうしましょう…

2014/08/14 (Thu) 01:09 | ちょび | 編集 | 返信

11. Re:誰か社さんに胃薬を

>miyaさん
社さんにとっては気の休まる時の無い4年間だったでしょうねえ。胃、残っているかな?

続き気になっていただけて嬉しいです。

2014/08/14 (Thu) 01:07 | ちょび | 編集 | 返信

10. Re:たった3日の彼女

>みかんさん
コメント有難うございます。
たった3日間、されど3日間。
次回再会予定でございます!
うちの敦賀さんはなかなかニブチンなのですが…

2014/08/14 (Thu) 01:06 | ちょび | 編集 | 返信

9. Re:読みごたえ

>mokaさん
いやーん。期待しないで!
パスワードはあれでしょう。結構単純なあれ。
でもパスワード入手までの道は長そうです。

2014/08/14 (Thu) 01:02 | ちょび | 編集 | 返信

8. Re:前のようにとっかえひっかえになっても。

>seiさん
とっかえひっかえなだけに可哀そうな姿になっちゃいました。
ヤッシー涙ぐんでみてるかもしれません。
次回再会の予定でございますですよ。

2014/08/14 (Thu) 01:00 | ちょび | 編集 | 返信

7. Re:遂に

>ナーさん
読んでいただきありがとうございます。
今回のキョーコちゃんもある意味強気かもしれないですね。
どんな風に強気は…待て次回!(笑)
どんな風かは

2014/08/14 (Thu) 00:58 | ちょび | 編集 | 返信

6. 蓮さん…

お邪魔致します。
本編ですねー(*≧∀≦*)
誠に気の毒(?)はハリウッド女性人?←それなりに自信満々でしょうから。
総てを知っている社氏…(;・ω・)
そっと、社氏に胃薬を差し入れてあげたいです。

2014/08/13 (Wed) 20:22 | sao | 編集 | 返信

5. 誰か社さんに胃薬を

とても読みごたえのある第一話でした。
困りました・・・続きが気になって仕方ないです(笑)

2014/08/13 (Wed) 18:25 | miya | 編集 | 返信

4. たった3日の彼女

蓮様にとっても幸せはたった3日だけだったんですね…‥二人で迎えた最後のお誕生日、想像するだけで切ないです。
ところで、蓮様の偏色に万歳vv本物にあった途端、心よりも身体が動いてしまうのでしょうか。
兎にも角にも再会が待たれます。
最後に、更新有り難うございました。

2014/08/13 (Wed) 17:12 | みかん | 編集 | 返信

3. 読みごたえ

とても丁寧にたどる、過去。
それなのに、ぞんざいな現在。

パスワードはあれだよ!とつい言いたくなりますが、外れていたらどうしよう。

パスワードがはまれば、するすると紐解けるのでしょうか?

2014/08/13 (Wed) 15:27 | moka | 編集 | 返信

2. 前のようにとっかえひっかえになっても。

記憶にないのにキョーコさん以外は受け付けなくなってるところがとても素敵ですね!!

その他の女性のことは「キョコさんと被る」ところがない限り、見てるけど見てない。

だから、同じ髪型の女性が順番待ちで並んでいてその相手をしていても、簡単な特徴さえ気付けないのですねー。

ヤッシーに指摘されても気づけないし。(笑)

本物とのショーゲキの再会。

楽しみです!!!

2014/08/13 (Wed) 13:35 | sei | 編集 | 返信

1. 遂に

本編ですね。
ナー的には拝読に覚悟がいります。
ナーは読み続けられるのか?全編投了後じゃないと読めないんじゃないか?
でも読まずに待てる自信なし!読んじゃえ!(今ココ)

どうか強気なキョーコさんが笑ってる世界になりますように!
続き、楽しみにしております。

2014/08/13 (Wed) 13:02 | ナー | 編集 | 返信

コメントの投稿

非公開コメント

トラックバック