2014_09
10
(Wed)11:55

触れることさえ叶わなくとも(記憶喪失の為の習作3)【B.P.D加盟作】

「記憶喪失の為の習作」は、私ちょびが永遠のテーマ記憶喪失にとことん?挑んでみようとするお遊び企画です。
医学的根拠等全くございません!

そこにB.P.Dまで混ぜ込んじゃいました。

習作(1)、(2)とはまったく別のお話です。[(1)とは対といえば対かもしれませんが]

全くの駄文なので、それでもいいよーという方のみ“続きを読む”からどうぞ

※B.P.D本部はこちらから





■触れることさえ叶わなくとも(記憶喪失のための習作3)【B.P.D加盟作】


小さな返事が返ってきたのを確認して、奏江は病室のドアを開けた。

初秋の柔らかい日差しが降り注ぐベットに座り、こちらを見ているキョーコの顔色は思ったよりいい。
医師の言った通り怪我は大したことないのだろう。

「キョーコ。調子どう?」
「あ、足がちょっと痛む程度です。あとは全然」
「そう。よかった。アイス買ってきたの。一緒に食べてくれるわよね?」
「有難うございます。琴南さん」

“琴南さん”
常とは違う呼び名と丁寧な口調に奏江の胸は小さく痛んだ。
だが、それをキョーコに悟られるわけにはいかない

「溶けちゃうから早く食べましょ。どっちの味がいい?」

間を持たすためにテレビをつけて、2人でアイスを食べはじめた。

キュララのオーディションの帰りに2人で食べたアイス。
あの少々恥ずかしい、でも大事な思い出のアイスにもキョーコは何の反応も示さない。

やはり胸が小さく痛む
このまま思い出してもらえないのでは、そう思うと不安でどうしようもなくなる

だが、きっとあの先輩俳優の胸はもっと痛んだことだろう。


キョーコが事故にあったのは3日前のことだ。
傷自体は大したものではないが、頭を打っているようなので念のためと言われて入院して、一晩経つと記憶を失っていた。

あの夜病院に駆け付けた奏江に『全然大丈夫よ。モー子さん心配してくれたのね~』と感激していたくせに
あの先輩俳優からの電話にも嬉しそうに『大丈夫です』と答えていたくせに。


「あ、また敦賀さんのCM。本当に人気があるのね」

アイスを食べ終わったキョーコが声を上げる。
その声には世間一般以上の関心は感じられない


(最近はいつも頬染めて敦賀さんの話してたくせに)


ミラノコレクションに出ていたため、事故当日には病院に来れなかった蓮が病室を訪れたのは昨日。つまりキョーコは記憶を失っていた。

蓮がいつにもなく取り乱して病室に入ってきた時、先客だった奏江は期待したのだ。

蓮だったらキョーコは覚えているのでは
それをきっかけにすべてを思い出すのでは、と

だが、その期待は空振りに終わった。

奏江の眼から見てもバレバレにキョーコのことを想っていた先輩俳優は、自分の存在が想い人の中から消え去っていることに相当の衝撃を受けたはずだ。
けれど流石人気俳優といったところか
穏やかに微笑んで、安心させようとキョーコの頭に手を伸ばした。

奏江も何度も見たことがある“蓮がキョーコの頭を撫でる”その行為は


叶わなかった


初対面の、しかもやたらに長身で美貌の男
その手が自分の頭に伸ばされたことに、キョーコがわずかにおびえた表情を見せたから

蓮の手は哀しく宙を彷徨って、自身の太腿の上に落とされた。だが、何事もなかったかのように穏やかにキョーコの身体の調子を尋ねる

けれど、隣に座っていた奏江は見てしまった
太腿の上におかれたその手が、きつくきつく握られるのを


「私、こんな凄い人がいる事務所に所属していて、しかも自分も芸能人だなんて…信じられません」

不安げに少し俯いてそう告げるキョーコに奏江は精一杯優しく言った

「大丈夫よ。ゆっくり思い出せばいいわ。…口の中が甘くなっちゃったわね。お茶いれるわ」

不破の両親からの見舞いだという上質そうな緑茶を入れると、キョーコは少し身体の力を抜いたようだ。

「いい匂い。」
「ほんとね。」

テレビ画面はお昼のワイドショー。
先ほどまで残忍な事件の犯人について険しい顔をして報じていたMCが、打って変わってにこやかに告げる。
『さあ、次はお楽しみのザ・エンタメガイド!今日はお宝映像を入手しましたよ』
『お宝~?ほんまかいな?』
『つべこべ言わずに見る!ではVTRどうぞ』

画面が切り替わり、それにMCやゲストの声が被る

『あ、これファッションショーですか?』
『そうです。先日行われたミラノコレクションの映像です』
『アルマンディですよね。ああ!敦賀さんカッコいい!』

(へえ、ファッションショーでも色々違うのね)

奏江は思わず画面に魅入った。
アルマンディのショーは一度テレビで見たことがあるのだが、その時はもっとクールな雰囲気だった。
今回のショーは曲も照明も随分違うし、観客からは小さな手拍子まで出ている

次々と登場するモデルたち。洗練されたモードの最先端。中でも蓮が登場すると聞こえてくる小さなざわめきとため息。
確かにカッコいい…のだが

(やっぱりヤローばかりだと服の形とか地味よね)

演技以外はいい男であろうとも全く興味のない琴南奏江。
ワイドショーのゲストであるグラビアアイドルの黄色い歓声を煩く思いだした時

『さあ、いよいよですよ!』

MCの興奮した声が入る。

画面が暗くなり、カジュアルなルームウエアをまとったモデルたちが次々とライトに照らしだされ始めた。
そして一瞬手拍子の音が小さくなり・・・


会場が低く唸った。


波のように広がるざわめき
それはどうやらランウェイの出入り口近くから起こっているようだ。

なんだろう。そう思って画面を注視していると

それにライトが当たった。

光の中にいる蓮の姿はボクサーパンツ姿だ。

熱気のうねりが激しくなるのが画面越しでもわかる。

少しローライズ気味のそれは、蓮の腸骨を綺麗に見せて、裾から覗く腿の筋肉がウオーキングに合わせてゆるやかに踊る。

上半身は半袖のパーカーを身に着けているが羽織っているだけなので、はだけた胸から艶やかな肌がライトの光を受けて輝き、鍛えられた腹筋が陰影をつけてその存在を主張する。

会場の異様な熱気の中、何食わぬ顔で蓮は美しいウォーキングで進み、ターンする寸前一瞬だけニヤリと笑って見せた。

黄色い悲鳴が聞こえる


『ぎゃー!ぎゃー!ぎゃーっ!!!』
『すっごいいい身体!鼻血でそう!』
『ちょっと!うるさい』
『いいんですか?いいんですか?あれ?』
『アルマンディ―が新しくアンダーウエアに進出するそうで、そのお披露目だったそうですよ』
『うそお!東京のショーでもやってくれないかなあ』


(この映像…こんな時間に流してよかったのかしら…)

画面はスタジオに切り替わり、ゲストたちが勝手気ままにコメントしている左下に小さくショーの様子がもう一度映し出される。

別に厭らしい映像ではない。
なのになんなのだ。あの男の恐ろしいほどの色気は

妙に喉が渇いて、お茶のお代わりをしようと奏江が急須に手を伸ばしたとき


「…モー子さん。大変」

(え?)

当たり前だったけれど、今はありえない呼び名に思考が停止する。

「敦賀さん人形、だるまやに置きっぱなしだわ!今なら完璧に再現できるのに!」
「え?」
「ああああああっ、ショーの映像終わっちゃった!録画!録画しとけばよかった~!!!」

敦賀さんのお宝映像~と泣きながらテレビ画面に手を伸ばす親友。

「え…いや、ネット見れば動画でも静止画でも一杯見れると思「ほんと!?」」

ああ、でも私スマホもパソコンもない~、とこの世の終わりのように嘆く親友

「モー!泣かないでよ。ほら、私のスマホ貸してあげるからっ」
「ほんと?いいの?ありがとう。モー子さーん」

エグエグと泣くキョーコに検索をかけた画面の状態でスマホを渡すと、さっそく見つけた動画を食い入るように見つめている。
暫く唖然としていた奏江は気分を落ち着かせるために、今度こそ急須からお茶を注いでひと口飲んだ。

(思い出した…のよね?)

スマホ片手に何やらブツブツ言っている芸能人にあるまじき姿…まさしく本来のキョーコそのもの。

その姿に安堵したのだが…
いや、もちろん嬉しいのだが…
早くナースコールを押して先生を呼ばねばいけないのだが…

(これって私が状況説明しなきゃいけないわけ?)

看護士どころか、社長や勿論蓮にも説明を求められるだろう


“親友最上キョーコは、先輩俳優のパンツ姿を見て興奮し、記憶を取り戻しました。”


…嫌すぎる。
想像するだけで奏江の眉間のしわが一気に3本増加した。

(いや、でも、テレビ見てたらとか曖昧に誤魔化したら…)

私にも原因わかりません。とかいえばいいんじゃないの?という考えにたどり着いた。
その為にはまずキョーコの興奮状態をなんとかしなくては
そう思ってキョーコとその手にあるスマホを見て…

「ちょっと――――!!!あんた、人の携帯でどこ拡大してんのよぉ―――!!!」

コールを押さずとも、奏江の怒鳴り声はナースステーションにしっかり届いた


(FIN)





はい。馬鹿話でした。

グルっぽで話題に昇ったDで始まるブランド様のメンズのショーを参考にさせてもらっておりますです。
Dの会場では別にBPに反応してませんけどね(笑)ちゃんとファッションの一部です。

病室で始まり、病室で終わる。ね?(1)と対っぽいでしょ?
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Re: ahahahaha(*´∇`*)ハハハ

> まじーん様
有難うございます!キョコさんらしいって言ってもらえるのが物凄く嬉しいです。
このお話、泣きながらテレビに向かって手を伸ばすキョーコちゃんの姿が浮かんだのを憶えています。そんな異様な姿さえ可愛く思えるところがきっとキョーコちゃんマジックなんです(笑)
敦賀さん、思い出した理由を知ったら「最上さんの為ならいつでも脱ぐよ。」とか真面目な顔して言いそうですよね。「なんなら今でも」とか言って破廉恥呼ばわりされて逃げられそうです。

2016/05/19 (Thu) 05:27 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

ahahahaha(*´∇`*)ハハハ

こっそり読んで大笑いしながら帰っていましたが、再読して、また爆笑。←すみません、今頃コメ入れで。

実にキョコさんらしいですね。

蓮さんも思い出してもらえたことに喜びながらも、いたたまれない・・・いや、あの男ならこのことすら、キョコさんとの親密な会話のネタとして利用し尽くしそう。

で、次に記憶喪失になったら・・・・脱いで見せそう・・・・うん、見せるな!と再読のためか少し落ち着いて読んだ今回確信しました。(`・ω・´) '`ィ!

2016/05/05 (Thu) 16:40 | まじーん #- | URL | 編集 | 返信

Re: こ、これはっ!!

>小夜子さん、またもや仕事中に…
でも肩が震える位に楽しんでいただけてなにより♪

今回初めてキョーコちゃんが記憶喪失だったんですけど、どうやら最初はかならず病室でお馬鹿に記憶回復しなければならないようです(笑)

2014/09/11 (Thu) 00:08 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

こ、これはっ!!

仕事中に読んではいけなかったww

緩む口元を思わず手で隠し、震える肩をなんとか抑えるのに必死なくらいの破壊力でしたw

「あぁ、今回はキョコさんなのね~」と
どんな展開かと思いきやww

こういうの大好きですw

2014/09/10 (Wed) 13:46 | ☆小夜子★ #- | URL | 編集 | 返信

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