2015_09
24
(Thu)11:55

ほんのわずか(16)

こんにちはー。ちょびです。皆様シルバーウィークいかがお過ごしでしたか?
ちょびは本当にPC前に座れなくて、ほんのわずかの修正も最終日の深夜に慌ててやりました(汗)
そんな訳で拍手やコメントへのお返事や、PW関係滞ったまんまです。今週中にはなんとかしますので!

限定外すの忘れてました!
失礼しました

2014/9/12、2015/9/24修正のうえ通常公開





キョーコは蓮の住む高層マンションを見上げた。

愚かな自分や蓮への怒りでボルテージは上がっている。言うべきことを言うなら今だ。
気合を入れてエントランスに向かった。



■ほんのわずか(16)



♪・♪~♪

(あれ?まだ帰っていない?)

エントランスのオートロックの前で部屋番号を押したキョーコは戸惑った。
もう8時は過ぎているというのに。

♪・♪~♪

やはり留守のようだ。

(どうしよう…)

キョーコはキョロキョロと視線を彷徨わせた。
部屋番号は合っているはずだ。だがこのマンションにはいつも蓮と一緒に入ってそのままエレベーターに向かっていたので、ここでインターフォンを押すこと自体が初めてなのだ。

キョーコの後ろを通り過ぎてエントランスを抜けていく男女が、こちらにチラリと視線をよこした。
不審人物と思われたのだろうか?昇り切っていたボルテージが急速に下がるのを感じる。

もしかしたら蓮の怒りは一時のことで、もう俺には関係ないし、と思っているかもしれない。
もしかしたら…あの女性と会っているかもしれないのだ。

キョーコは俯いて唇を噛んだ。

(…今日はもう帰ろうかな)

「キョーコ?もう着いてたんだ」

振り返ると、歩いてくる蓮の姿

「ごめん。結構待った?電話くれればよかったのに」

そういってキョーコを中に促す蓮からは夕方のような怒りのオーラは感じられない。
訳が分からないままエレベーターに乗り込んだ。

小さな機械音と共に滑らかに上を目指す箱の中、視線をどこにむければいいか分からなくて俯いていると、蓮がビジネス鞄と一緒に紙袋を下げているのが見えた。
買い物にでも寄っていたのだろうか。紙袋の書かれたロゴは確か蓮がいつも煎れてくれていたコーヒーの…

「ああ…コーヒー切らしてね。挽いてもらったんだ。キョーコ、これが一番気に入っている感じだったから」

でも、これの所為で待たせちゃったね。そう言いながら紙袋から出されたパックに書かれている銘柄はモカ
一度『この香りが一番好き』と言ったことがあった。

そんなことを覚えてくれていたなんて…なんて残酷なんだろう


リビングに正座して、蓮がコーヒーを入れてくるのを待った。
ガラスの天板から透ける自分の手が緊張でスカートを強く握りしめているのが見える

言うべきことを言いに来たはずだ。
なのに、蓮の口からあの女性のことが出るのが、別れを告げられるのが、何より恐ろしい。
なんて情けない話なんだろう。


「お待たせ」

小さな音を立てて、キョーコの前にコーヒーが置かれた。
立ち昇るキョーコが好きなモカの香り

「…今日は悪かったよ。ごめん」

思ってもみない言葉が聞こえてきて顔をあげる
蓮はバツが悪そうに前髪を掻き揚げて、キョーコの斜め前に座った。

「イライラしてあんな電話かけたりしてごめん。キョーコを信じていないわけじゃないんだ。だけど後から、それもキョーコ以外の人から聞いたものだから動揺した」

何を言っているのだ。この人は。

「…出来るなら行ってほしくはないけど、付き合いで行かなきゃいけないことだってあると思う。でもそれなら事前に教えて欲しいんだ。俺だって「なんですか、それ!?」」
「どうして、いちいち敦賀さんに言わなきゃいけないんですか!?」

キョーコは怒りにまかせて立ち上がった
その拍子にテーブルに身体があたり、コーヒーカップがガチャガチャと音を立てながら揺れた
こげ茶の液体がソーサーを汚す。

「私、つなぎでしょ?そんなこと分かってますよ!でもそれなら私だって敦賀さんに縛られる理由なんてありませんよね!?」
「ちょ、キョーコ、何言って…」
「もう気を持たせるようなことしないで下さいよ!」
「だから…」
「私が代わりの誰かを見つけようとして、それのどこがいけないんです!?」
「キョーコ!!!」

立ち上がった蓮がキョーコの手首を掴む。

苛立ちのこもった声と手首を掴む力の強さにキョーコは怯え、抗った

「離して!」
「ちゃんと話を聞いてくれ!」
「嫌っ!」
「キョーコ!」
「痛い!!!」

悲鳴のようにあげられた声に驚いて蓮が手を放すのと、キョーコが力任せに身を払うのは同時だった。
拘束する力が無くなったため、キョーコは自分の力に引っ張られる形で斜め後ろに弾き飛ぶ

鈍い音と痛み

サイドボードに蟀谷近くを打ち付けて崩れ落ちた

「キョーコ!大丈夫!?ごめん、俺が急に手を放したから…」

慌てた蓮の声に顔をあげるとリビングの照明が目に入る

「打ったとこ見せて。」

キョーコに触れようとする蓮の手

3か月前にも似たようなことがあった。
あれが始まりだった。


この愚かな恋の始まり


「触らないで!!!」

軽く手を払ったつもりが、大きく音を立てて蓮の手は弾かれた。
そのことに自分でも驚いて、蓮の顔を見て…息をのむ。

一瞬呆然とした蓮の表情が、傷ついたように歪んだから。

キョーコは弾けたように立ち上がり、荷物を掴むと走り出した
反応が遅れた蓮が叫ぶ声がキョーコを追う

「君はこの3か月、俺の、何を見てたんだっ!」


がむしゃらに走って、タクシーを捕まえた

家までタクシーなんて贅沢、そんな風に思う余裕はなかった
ただただただ、逃げ出したかった。


蓮の傷つき、歪んだあの表情から

それは自分がそうさせたのだ、という事実から


 - ほんのわずか 垣間見えたもの
    その意味を知るのが怖くて 背を向けた -


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Re: この作品も大好きです

>○○コ様
コメント有難うございます。
「ほんのわずか」初めて書いたパラレルですし、結構数を書いたので愛着もあるので、気に入っていただけて本当に嬉しいです。
12月の鬼もお待ちいただけているなんて…続き全部かけてないんですけど…頑張ります(笑)

2015/09/28 (Mon) 00:30 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

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2015/09/26 (Sat) 22:20 | # | | 編集 | 返信

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