2014_09
17
(Wed)11:55

悪意の誘引・善意の契約(B.P.D加盟作)

幹事として?のラストスパート

ここでいう悪意・善意とは 道徳的な意味ではなく、事情を知っているか、いないかという意味で使用しています。
本来の意味は法律上の効力に影響を及ぼす事情かどうかなんですけど…

理想の夜・現実の朝(1ヶ月記念)前編  ・ 中編  ・ 後編
  ↓
地上の恵み・地下の災い

の続編となります。

パラレル展開ですので、鋭利なる男・なまくらなる女とは全く違うお話です。


観察官貴島秀人シリーズ

2014/9/17


■悪意の誘引・善意の契約(B.P.D加盟作)



貴島が仕事帰りにアルマンディの店舗に足を向けたのは、頼んでいたジャケットが届いたと連絡をもらったからだ

マネージャーの車から降りると目に入るウインドウを飾るコート姿の専属モデル
首もとのマフラーを弄りながらこちらに視線を送るその姿は男の目からみても色気満載だ

(モノクロパネルでこれなんだから、フルカラーの実物みたらそりゃ女の子はメロメロだよね)」

全くもって男の敵だよ。心の中でそうぼやきながら貴島は自動扉に向かった

週の始めのしかも閉店間近の時間帯、店は比較的空いていて、一応芸能人の端くれである貴島にとってはありがたい。
折角だからと小物も何点か選んでいたら

「やっぱり貴島君だ」

聞き覚えのありすぎる声に名を呼ばれた。

顔を上げると、スーツやフォーマルを置いている2階に通じる階段から優雅に降りてくる、ウインドウを飾る男

貴島の斜め前方で彼氏に送るプレゼントを選んでいたOLが惚けた顔をして手にしていたネクタイを手から滑りおとした

(あーあ、割と好みの美人さんだったのに。)

俺の事はチラ見で終わったのになんだよもう、と少々面白くなく思いながらも、にこやかに返事した

「や、どうしたの敦賀君、仕事?」
「うん、打ち合わせ。外見てたら貴島君が見えたんだ」

そうか、ここはアルマンディジャパンの本社も入ってたのか

「いいの?打ち合わせ中に抜け出しちゃって」
「打ち合わせは終わって、今は人待ちなんだ。貴島君時間あるなら上でコーヒーでもどう?」
「予定はないけど…モデル仲間とか待ってるんじゃないの?」

その後飲みに行くとか言う流れで、メンズモデルを待っているならお断りだ
どんなに美目麗しかろうと野郎は野郎。
女性モデルなら大歓迎だか、この男がそういう約束をするのはちょっと考えられない

「違うよ。貴島君も知ってる人」
「マネージャーさん?」

違う違うと笑いながら蓮はオフィッスに貴島を案内する

あの眼鏡のマネージャーではないとしたら一体誰だろう?
一緒に仕事をしたのも2度や3度ではないので、共通の知人は結構いる。いるが、あまり共演者と深い付き合いをしない蓮がアルマンディのオフィッスまで同行させたとなると…

浮かんだ顔を貴島は即座に打ち消した

(こういうとこ喜ぶタイプじゃないし、まだデートする関係には…)


「あ、貴島さん!ご無沙汰してます」

大きな窓に面した会議室で笑顔で迎えてくれたのは今まさに打ち消した人物だった

「…久しぶりだね。京子ちゃん。…何してんの?」

「買い物なんですけど、サンプル見せていただいているうちにスタッフさんと盛り上がっちゃいまして」

デザインも色もたくさんあるんですねーと楽しそうに笑うキョーコ

「そうかあ、楽しそうだね…」

そうなんですよ。迷っちゃいまして、とテラテラ笑っているが…

(いやいや…)

机に色とりどりに広げられているのはボクサーパンツだから

振り返ると、蓮はキョーコ達がお花畑を作っている楕円形のテーブルの反対側に座り、出されたコーヒーを澄ました顔で飲んでいる
貴島はその隣に腰掛けて囁いた

「敦賀君、あれ、どういうこと?」
「うん?」

カップから口を離した蓮は小さく首をかしげて見せた
その優雅な仕草さえなんだか胡散臭い

テーブルの反対側からはキョーコとスタッフの賑やかな声

「敦賀さんならこんな色とかいいんじゃないですか?」
「えー?ちょっと派手じゃないですか?」

貴島は蓮に詰め寄った

「あれ、敦賀君の選んでるんだよね?」
「ああ、あれね」

カップをソーサーに戻した蓮は、にっこり微笑んだ

「男物の下着を若い女性が買いにいくなんて破廉恥だけどどうしようって悩んでるから、じゃあアルマンディなら人の目気にせず選べるよってアドバイスしただけだよ」
「…」

視線を向けるとキャイキャイ言いながらビタミンイエローのボクサーパンツを広げるキョーコの姿

破廉恥だけど買いに行きたい事情ってことはキョーコの過失で汚したとか…借りたとか…まさか二人がもうそんな関係になってるなんて驚きだが、それよりも…

「一人で選ぶよりも男連れでパンツ選ぶ方が、二人の関係暴露してるも同然でよっぽど破廉恥だって教えてあげた?」
「…さあ?どうだったかなあ」

「…教えてないんだ。デメリットを伝えないのは悪徳商法の典型的やり口だよ」
「弁護士でも演るの?貴島君」
「…やるよ。庶民派弁護士」

貴島君の弁護士かあ。楽しみだね。そんな風に言いながら蓮の視線はキョーコから動かない

柔らかく甘やかな微笑を浮かべるその表情をみれば、蓮の想いは明白で
その視線の先にあるキョーコが頬を染めながら蓮のパンツを選んでるとなれば二人の関係もまた明白
そうなると…

謀ったな。この策士


手に入れたキョーコを逃がさぬ為に、この男は既成事実を積み重ねるつもりらしい
いくら高級ブランドのスタッフが口が固いとはいえこんなにあからさまに関係を匂わされたら、敦賀蓮に溺愛する女性がいることは、じわじわと業界内で広まるだろう
おまけにそこに貴島が同席したとなれば『DMファミリー公認』なんて但し書きまでついて…


「この後、食事行くんだけど貴島君もどう?」
「超高級鮨か、超高級焼肉。敦賀君の奢り」

少々不貞腐れた顔をして言ってやる。

「喜んで」

策士は楽しそうに笑った


*********



「あ、京子ちゃん」

貴島の控室、ドラマ共演の挨拶を交わしていた逸美がテレビを指差した
振り返ると、キョーコが“振り込め詐欺&悪徳商法撲滅”キャンペーンガールに抜擢されたというワイドショーのニュース
キリリとしたスーツを着こみ、赤いフレームの伊達眼鏡を光らせてフラッシュを浴びている

「京子ちゃんって、真面目だし、礼儀正しいし、こういうの向いてますよね」

あの眼鏡かわいい~、と逸美がはしゃいだ声をあげた

確かに真面目で礼儀正しいけど…

思いっきり悪い男に騙されてますけど?


画面ではキャンペーンのCMが流れ始めた

『みなさーん』

画面から呼びかける先程と同じスタイルのキョーコ

『騙された自分が悪いって思っていませんか―?』
『あちらは騙しのプロなんです!』

確かにあっちは百戦錬磨の色男。

『みなさんが騙されたことは決して恥ずかしいことではありません!』

あの純情そうなキョーコが丸め込まれるのも無理はない。

『勇気を出して被害を届け出てください!みなさんの勇気が他の方を魔の手から救うんです!』

そうだ。
キョーコがあの妖怪級色気男を受け止めてくれる限り、世の女性は救われるのだ。
グッジョブだ。京子ちゃん!!!このまま一生騙されてやって。

「…確かに、キョーコちゃんには向いてるかも」

「ですよね。向いてますよね!」

「…それに気付いたところでもう契約済みっぽいしな」

しかも契約期間は一生。

「は?何がですか貴島さん」

いやいや、なんでもないと貴島は手を振り、逸美の今晩の予定を聞いた。


(FIN)

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