2014_10
20
(Mon)11:55

賭けの勝敗-10(記憶喪失の為の習作2)

さて、いよいよ佳境となって参りました。
本日を入れて2話か3話と言った感じです。

さて、誰だったのか?当たった方はいらっしゃいますかね?

2014/10/20




「次のオフですか?蓼科には絶対っ行きませんから!」

電話を切った蓮を社は気の毒そうに眺めた

「れーん。可哀そうだろう?そろそろ許してやれよ?」
「い・や・です!」
「いくらプロポーズ邪魔されたからって…ご両親に悪気はないんだからさ」

蓮は苦虫を潰したような顔をしてあの夜のことを思い出した。



■賭けの勝敗-10(記憶喪失の為の習作2)




蓼科では手をつないで散歩をしたり、美味しいハーブティーのお店を訪れたり、2人はのんびり過ごした
そして2日目の夜…ソファーでくつろぐ2人の前のテーブルにはキョーコ好みのドイツワイン
蓮はキョーコの左手を己の胸の前で両の手で包んだ。

「キョ「久遠-っ!キョーコォ!ひっさしぶりだなあっ!!!」」

厳かに、そして甘くなるはずだった夜は両親の乱入でハチャメチャなものになった
2人だけならまだしも、サンバ隊を引き連れた社長まで一緒だったのだから、もうどうしようもない。
両親は1泊だけで帰ったのだが、社長とサンバ隊は蓮たちのオフが終わるまで踊り続けてくれたのだ。
それは地元の新聞に「蓼科でサンバ祭り?」と記事が載るほどに。

おまけに東京に帰るというタイミングでローリィはわざとらしく言ったのだ

「なんだぁ?蓮、もしかしてまだプロポーズしてないのか?トロいな」


あの時の怒りを思い出して、蓮の蟀谷(こめかみ)に青筋が立つ

「蓮!そんなに携帯握りしめたら壊れるからっ」
「…それは困りますね。キョーコと連絡が取れなくなります」
「だろ?今日は連絡しないのか?」
「残念ながらキョーコは撮影でてっぺん越えです」

蓮最大の機嫌回復薬は期待できないようだ。
社は自力で何とかするしかない。このままでは結婚式にも呼んでもらえないとクーからも泣きつかれているのだ。

「でも、ほら、蓼科でプロポーズなら、今後何かあるたびに“プロポーズの場所で”が使えるじゃないか。キョーコちゃんそういうの好きそうだろ?」
「それは…まあ…」
「蓼科なら東京から車でいけるから気軽だしさ。クーにしたってあんな広大な別荘地を去年ポンっと買ったのは、いずれ家族が増えたら別棟建ててもいいとか考えたんじゃないか?キョーコちゃんのことお気に入りだもんな」
「…」

そうなのだ。遠く離れて、しかも他人として暮らした時期が長かったせいか、未だに子離れできないと思っていた両親
だが、キョーコを紹介するとすんなり受け入れた。それどころか早く家族になりたいとプロポーズを急かず程だ。
なんでもDMの撮影時期にクーの来日時にキョーコが世話係を務めたらしく、そのころからのお気に入りらしい。

「…今後来日する時は事前連絡。今回のオフは邪魔しないってことで…妥協します」
「そうだよ!親子は仲良くが一番だ。結婚式はやっぱり呼んでやらないとな!」

いそいそとクーに電話しようとする社を見て、蓮は1つため息をついて立ち上がった。

「そろそろ行ってきます。」
「ああ、もうそんな時間か」

部屋を出ると最上階にあるバーに向かう
入り口で予約がある旨を告げようとしたら、後ろから声がかかった

「流石、無遅刻キング。少し早めに来て正解でした」
「やあ。久しぶりだね。トラジックマーカー2以来かな?村雨君」

2人は握手を交わすとカウンター席につく

「俺はまだハリウッドには手が届かないのでなかなかお会いできませんね」
「でもアジア圏での知名度はすごいじゃないか。この前の潜入捜査の刑事もよかったよ」
「有難うございます。なかなか言葉の壁が超えれなかったんですけど、最近そうやって壁を作ってるのは俺だってようやく気付きました。これからは挑戦して行こうと思ってます」

互いの新作映画についての話題。クーについての情報
そしてトラジックマーカーの話題に行きついた。
アジア圏から人気が火がついたトラジックマーカーは、アメリカでは当初単館上映の予定だったがじわじわと人気に火がつき、BJの熱狂的マニアが出て問題視される騒ぎになった。
そして蓮が渡米後に、トラジックマーカー2がアメリカ資本が入っての大々的な作品として3年前に公開されたのだった。
蓮のBJと監督はそのままだったのだが、村雨や愛華は最初の方に出演するだけで主要キャストはハリウッド俳優が演じたのだ。

「あの時は悔しかったですよ。俺にもっと英語でアピールするだけの力があればって」
「その力を3年でつけれたってすごいよね。」
「それと…2ではカイン・ヒールに会えなかったのがつまんなかったですよ」

アルコールの所為か村雨の口調が少し砕けたものとなる。
謎の人物カインヒールが現場を恐怖に陥れたことは、記憶はないものの蓮は報告は受けていた。
そのカインヒールが蓮であることが明らかにされたのがTM2の制作発表の場だった。

「その折は色々ご迷惑かけたみたいで本当に悪かったね」
「思い出してから謝ってくださいよー。俺、敦賀さんとTMの記憶共用したいんですから」

どこかで聞いたセリフだな。と蓮は苦笑する。

「ほんと、時間にルーズすぎるし、協調性ないし、怖いし、そのくせ演技力は認めざるを得ないし…」
「本当にごめん」
「あ~あ。敦賀さんが記憶戻ったらあの子の正体もわかるのに」
「あの子?」

蓮は首をかしげる。

「カインヒールの付き人演じてた子ですよ」
「…そんな子いた?」
「聞いてないんですか?セツカって言ってカインヒールと怪しい位に仲がいいっていう設定の妹でしたよ」
「妹…?」

そんな話は聞いていない

「そうですよ。もう兄妹なのにお互いベッタベタで俺たちドン引きです。そうすることで余計俺たちが直接カインヒールにコンタクト取れないようにするのが目的だったみたいで…まあ目的は達成されてましたね。兄妹なのにありえないくらいイチャイチャしてたんですよ。もう俺も何度気持ち悪いと思ったか」

すっかり騙されました、と村雨は笑った。

「…そうなんだ」
「その子がすっごくイカれた格好してるんですけどね。可愛いんです。考えてみればLMEの女優の卵とかだったのかなあ。俺がその子チラ見するたびにカインヒールがもう睨む。睨む。怖かったんですから。早く思い出してくださいよー。」

そんな設定の子がいたことの報告がどうしてないのだろうか?

「カインの正体が公表された時に、監督にセツカちゃんのこと聞いてみたんですよ。そしたら敦賀さんの記憶が戻って許可が下りないとだめだって言われちゃいまして。…まあ役とはいえかなり危ない兄妹演じてたからその配慮ですかね?」
「メイキングとか見たけど映ってなかったよね?」
「正式なスタッフじゃないですからね。あ、俺、写真…あるんじゃないかな?昔のスマホで撮ったやつですけど、SDに保存したから多分…」

村雨がスマホを持ち出し弄り始めた

「あ、あった。これだ。ほんの悪戯心で撮ったんですけど、天地神明に誓って他に流していませんから!」
「うん。分かったから」

笑いながら画面を覗き込んで…

その時の衝撃をどう表現すればいいのか分からない。

撮影所の壁に寄りかかり座るカインヒールに寄りそい耳元で何か話しかけている少女
その姿はピンクメッシュの入った髪とイカれた格好

派手なメイクも含めて雰囲気は全然違う。
でも見間違うことはない。

キョーコがそこにいた

*
*

村雨と別れ、部屋に戻った蓮はジャケットを乱暴にベットに放り投げるとソファーに座りこんだ。

(どういうことだ?)

社長からも社からも、キョーコからもそんな話は聞いたことが無かった。
TMの撮影があったのは確か6年前。キョーコはまだ17だった筈だ。
いくらカインの正体を隠すためとはいえ、未成年にあんな際どい恰好をさせて、まるで“デキてる”ような危ない兄妹を演じさせるなんて…
あの社長なのでやること自体はありえるとしても、記憶を失った蓮に説明がないのはおかしいだろう。

蓮はスマホを操作し、村雨から送ってもらった写真を開く

(やっぱりキョーコだ)

つくづく役者でよかったと思う
よくもまあ、シレッと『機会があったらLMEで探してみるから』なんて言ったものだ。


時刻は間もなく0時、社はもう寝ただろうし、キョーコはまだ撮影中。
それにあまりに衝撃的な事実だけに直接会って話を聞きたい。
でも、明日はプレミアビューのほかに取材やらパーティやらがギューギューに詰められていて、日本に帰れるのは明後日になりそうだ。

イライラと足を踏み鳴らし、乱暴に髪を掻き揚げると蓮は立ち上がった。
このままでは寝れそうにない。
もう少しアルコールを入れようとブランデーを注いで、気休めにテレビでもつけようかと思って気が付いた。

(DVDデッキがある…。)

無駄にテレビを見るより…そう思っていつも持ち歩いている鞄を開けると、緒方から渡された状態のままDMのメイキング映像が入ったDVDがあった。

(眠気がくるまでの時間つぶしになるだろう)

DVDをセットして、ソファーに腰を落ち着け襟元を緩めるとリモコンの再生ボタンを押した。


未編集だけあって、メイキング映像はダラダラ続く
ボンヤリとブランデーをなめながら見ているうちに少し気分も落ち着いてきた
もしかしたら近衛監督との間になにか話があって、LMEサイドでは勝手に判断できなかったのかもしれない。

(とりあえず日本に帰ったらキョーコに聞いてみよう。それからだ)

そう結論付けると少し疲れを感じてきた
画面は緒方の誕生日を祝うものに変わっている

(あ、これ、編集後のメイキングにはなかったな…)

サプライズに驚く緒方の前には大きなケーキ、それを囲んでいる出演者やスタッフ
キャンドルの灯りを緒方が消し、大きな拍手とバースディコールに包まれた

『じゃ、俺が入刀を』
『えーっ?貴島さんですかぁ?』
『うまいもんだよ?俺』

器用にケーキを切っていく貴島、切られたケーキは次々と配られる

『おいしーっ!』
『美味しいですね』


ガタン!!!

蓮は乱暴にグラスを置くと、急いでリモコンを手に取った
ほんの少し巻き戻す。

ケーキの感想を告げる逸美や緒方の少し後ろに映る蓮とキョーコ

キョーコが小振りなワンカットのケーキを蓮に手渡している
音声は入ってないが“敦賀さん。はい、ぞうそ”と言ってることはわかる
そして蓮は受け取り…

再生を最大限ゆっくりにする

蓮は“ありがとう”と言っている
問題はその前だ。

(き…じゃない)

き、では始まらないが語尾は“さん”と言っている

(お、の音だ)

子音がお、で始まる言葉。

何度も何度も巻き戻す
最初の子音はお、次はあ、その次はい
キョーコでも、京子でもない名前…

(も、がみさん…?)

最上キョーコ、キョーコの本名だ。


暫く立ちつくしていた蓮は自分のカバンに視線を送り、躊躇した後に手を伸ばした
震える手で携帯を取りだし、目的のフォルダを呼び出す

フォルダ名「m」


もし、mが本当に最上キョーコだったのなら…自分なら…

パスワードは…

1、2、2、5

それが当たり前、そんな風にフォルダは開いた



(11に続く)
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Re: うっぎゃっ!

> へなへなっち様
いつもありがとうございます。本当に変なところでぶった切ってすいません

2014/10/22 (Wed) 00:08 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

うっぎゃっ!

ここでっ!来週までおあずけっ! なんてこったっ! にしても村雨くん、でかした。mのフォルダーには、いろいろなキョコちゃんが入ってるんでしょうね。

2014/10/21 (Tue) 11:40 | へなへなっちです #- | URL | 編集 | 返信

Re: あらら…

>genki様
いつも有難うございます。
最終回へのフラグ立ちまくっております(笑)
村雨さんがキーマンなのは初回から決まっていたのですが、なかなか出てきませんでしたね。
寂しいって言っていただけると本当に嬉しいです。これが終わったら停滞中の「1歩いっぽ」に取り掛かろうかと思っております。

2014/10/21 (Tue) 01:05 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

Re: 衝撃(爆)

>ponkichibay様
いつもコメント有難うございます。
衝撃の時が伏兵村雨によってもたらされました(笑)
まさかの隠し撮り。カイン兄さんに見つかったらタコ殴りに違いない。
フォルダは来週明かされますよ~どうかお待ちくださいませ!

2014/10/21 (Tue) 00:59 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

Re: うわぁ!!!!

> 風月様
いえいえある意味禁断かも(笑)
伏線を半端に巻いてしまい回収できるか自信が無いのですが、後2話頑張ります!

2014/10/21 (Tue) 00:56 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

Re: うわ~ん

> へきじゅ様
ぎゅ!有難うございます。
ここまでやっとたどり着きました!入り口なのか、パンドラの箱なのか?
どうか最後までお付き合いください。

2014/10/21 (Tue) 00:53 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

あらら…

こんばんは。蓮さま、フォルダ開けちゃいましたね。キョーコちゃんにまた惹かれた時点で思い出せないところが天然かなぁと思っていましたが、まるでピースがカッチリはまったように急展開しましたね。前回は自分で自分のことを「図々しい」と言っていましたが、次回は心の底からキョーコちゃんに土下座してね、って感じです。しかし、他の方も書いていらしたように「記憶喪失…」が終わったらさみしいです。「ほんのわずか…」もおわりましたしね。次も楽しみにしています。どうもありがとうございました。

2014/10/20 (Mon) 22:21 | genki #- | URL | 編集 | 返信

衝撃(爆)

更新ありがとうございます

来ましたね。
蓮様の衝撃の時が!(私もずっと待ってました)
まさかの村雨さんでしたが私的にはよくやったって感じです(笑)
mのフォルダにはいったい何が入っているのでしょうか?
楽しみですね。

次回が待ちきれません(でも待つしかないので大人しく待ってます)

2014/10/20 (Mon) 16:33 | ponkichibay #- | URL | 編集 | 返信

うわぁ!!!!

とうとう禁断の…あ、いやいや!
秘密の扉が開きましたね!!
どんな写真が収まってるんでしょう。
そしてここから二人はどうなるのか…はたまた蓮様は記憶が戻るのか…!そもそもどうして記憶をなくしてしまったのか…!
色々気になることだらけでとっても続きが楽しみです〜♪

2014/10/20 (Mon) 15:59 | 風月 #- | URL | 編集 | 返信

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2014/10/20 (Mon) 12:27 | # | | 編集 | 返信

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