2014_10
27
(Mon)11:55

賭けの勝敗-11(記憶喪失の為の習作2)

前回の拍手数が飛びぬけて多くてびっくりしました。
え?みなさん。これってもしかして、「フォルダ開いたね」拍手?
期待したものでなかったらどうしよう…

リアルがバタバタでして、今回はもう本当に時間がなく…
またこっそり訂正入るかもしれません…


2014/10/27




「蓮!落ち着けよ。」
「俺は落ち着いてますよ。社さん」
「それが落ち着いているっていう顔かよ?」

東京
自宅マンションの共用廊下を優雅にかつ猛烈なスピードで歩く担当俳優に社は必死に追いすがる

「待てってば。せめて理由を言えよ。いったい何があったんだよ?」
「キョーコに最初に話したいんです」
「待てって!おいっ。…わかった。俺も同席させてもらうからな!」



■賭けの勝敗-11(記憶喪失の為の習作2)



いつもならキョーコから“おかえりなさい”を言ってもらうためインターフォンを鳴らす玄関を自分で開ける。

ルームウエアでノーメイクのキョーコはダイニングでコーヒーを飲んでいるところだった。
突然乱入した蓮と社に驚いてマグカップを持ったまま固まった

「お、おかえりなさい。吃驚した~。今日の昼過ぎに羽田じゃありませんでした?」
「ごめんね。キョーコちゃん。朝早くから。向こうを1時過ぎの飛行機に急遽変更したんだ」
「いえ、吃驚はしましたけど…。あ、朝ご飯食べました?とりあえずコーヒーいれますね」

立ち上がりキッチンに向かおうとしたキョーコを、蓮の声が止めた

「待って。キョーコ。これ、どういうこと」

振り返ったキョーコは、蓮が差し出したスマホの画面を確認して目を見開いた
それを見て、蓮の後ろに立っていた社もスマホの前に回り込む

「どうして・・」

思わず社から零れた一言を蓮は聞き逃さなかった。

「やっぱり社さんもセツカの存在を知ってたんですね?」

言いながらキョーコに目をやると、もう動揺の色は無い
こちらの出方を窺っているのだろう。
どうやら自分からは話す気が無いらしい

蓮はいつも鞄に入れていた古い携帯を、今日はジャケットのポケットから出した。
フォルダを呼び出す操作をしながら告げる

「開いたよ。フォルダ」

キョーコの肩が小さく揺れ、社が息をのむ気配がする。

*
*


一昨日の夜、開いたフォルダ

その中には複数の写真データが収められていた
迷った末に古い順にみていくことにする

1件目…保存日はDM撮影頃
写っているのは、キョーコと百瀬逸美
メイクや衣装からDMの撮影時だろう。ただアングルはどうみてもキョーコを中心に撮ったもの

2件目…その少しあと
セツカ仕様のキョーコが控室とおぼしき場所のテーブルに突っ伏して寝ている。


蓮は苦笑した
どうやらこの頃から自分はキョーコを想っていたらしい。撮影方法から言って片思い

(俺ってもしかして…キョーコのストーカーとか…じゃないよな?)

ストーカー並みに追いかけまわして、皆がその過去を封印している。そんな想像をしてしまう。
それはあまりに寒い。
自分のキョーコへの執着は自覚があるのでありえなくはないが、キョーコは蓮のことを前から好きだったといってくれた。
それはないだろう。

(だとしたら・・・両片思いってやつ?)

リックのことで自分に縛りをかけていたあの頃ならありうるかもしれない。
蓮は肩の力を少し抜いて、ブランデーを口に含んだ。


3件目…保存日は2月10日、時刻は蓮の誕生日が終わるころ
涙でグチャグチャになりながらも笑っているキョーコの顔

キョーコがカメラに目線に合せているところを見ると合意の上の撮影らしい。
どういう状況か疑問に思いながらも次のファイルを開く


4件目


蓮は何度も画像とその保存日時を確認した。


写っている2人は寄り添い、蓮はキョーコの肩を抱き、空いた手で自撮りしている。
少し照れの入った幸せそうな笑顔。
場所は蓮のマンションのリビングということはソファーで分かる。

保存時刻は2月14日午前5時28分
蓮が事故にあった日。

その日は朝から撮影だったはずで、そのドラマにキョーコは出演していない。
そんな日のこんな時間に会うはずのない先輩後輩が、自室で親しげに写真を撮る
しかも、幸せそうに。

そうなると、2人の間柄も、その関係の深さも明白で



初めてではなかったけれど、慣れてはいなかった行為

純潔を誓った相手

ちゃんと愛情を伝えなかった相手


「俺…?」

小さな呟きと共に携帯が手から滑り落ちた


*
*



「この写真…事故の日の早朝に撮ってる…俺達付き合ってたんだよね?」

暫しの逡巡のあと、キョーコは頷いた

「…いつから?」
「…敦賀さんの誕生日の夜からです」

あの泣きながらの笑顔の写真はその時のものか。
11日にもう日付が変わろうとする時間から、14日の早朝まで、ほんの3日ほどの交際
でも、きっと2人にとっては何より大切だった時間

「…どうして?どうして教えてくれなかった!?」
「…」
「再会するまでの4年…ならまだしも、どうして付き合ってからも秘密にする必要があったんだ!?」
「お、おい、蓮。」

強くなる蓮の口調に社が宥めにかかるが、その声に従う余裕はなかった

「どうして!?どうしてだ!?君を忘れた俺への罰なのか!?」

違う、そんなことが言いたいわけじゃない
キョーコを責めるのはお門違いだとわかっている

事故に遭う前に2人が交際していたとほぼ確信したあの夜
キョーコの過去に存在していた男が自分であることへの喜びと同時に湧き上がったもの。

記憶を無くしてからの4年付き合った両手に余るほどの女性たち
彼女たちに共通した“明るめの茶のショートボブに、力のある目”
4年前のキョーコの姿を見れば分かる。
自分が彼女たちに何を求めていたのかを。何に飢えていたのかを

キョーコは4年間どう思って過ごしていたのだろうか?
ネットで、テレビで、時にはタブロイド紙を飾った自分のゴシップ
キョーコはそれを幾度も目にしただろう。

きっと、幼いころのように1人で泣いていた。

そして、後悔していたのかもしれない。
ちゃんと愛情を伝えていれば、蓮は自分を忘れなかったのではと

過去に誰よりも守りたかったであろう人
今、誰より守りたい人
そのキョーコを誰よりも泣かせていただろう自分

きっと大事に大事にキョーコを抱いた初めての夜
再会してから初めての、乱暴にキョーコを抱いた夜
キョーコは比較しなかっただろうか
したに決まっている

後悔、不安、痛み…怒涛のように自分を襲う波

忘れたことは仕方ないかもしれない
教えてくれないことに理由があるのかもしれない

でもせめて
一度でも会えていたら、きっと何度でもキョーコに恋に落ちたのに

キョーコをこんなに長く悲しませることはなかったのに


どうキョーコにこの気持ちを伝えればいいのか分からなかった

そのもどかしさに暴走していく自分の言葉を止められない


「罰ならなんであんなフォルダを残したんだ!?着信やメールの履歴は消したんだろう!?俺が必死に開けようとすることが分かってて!?それも罰!?」

違う。違う。違う。
こんな間違った言葉じゃ、せっかく再構築したキョーコとの絆さえも壊れてしまう

「そんな訳ないじゃないですかっ!!!」

キョーコの大絶叫が部屋に響いた

「残しちゃいけないって分かってたんです!神様とした神聖な賭けなんだから、フェアにしなきゃいけないんだって!何にも残しちゃいけないだって!!!」
「賭け?」

思いもしなかった言葉に蓮が小さく問い返したが、キョーコには聞こえなかったようだ

「でも消せなかった。こんな頃から敦賀さんは私を大事に想ってくれてたんだって、そう思ったら消せなかったんです」


蓮が記憶を失ったと分かった後、社に頼みこんで蓮の携帯のデータを消去した
着信やメールのデータはキョーコの携帯にも残っているから躊躇はしなかった。
画像データを開くと「m」のフォルダ
パスワードが自分の誕生日であることに、状況を忘れてくすぐったくなったことを覚えている

1番古い画像には覚えがあった
現場で携帯カメラの話になったときに『俺、撮ったことないな。試しに撮ってみていい?』とカメラを向けられた
1枚目はぶれたからと、再度撮影して見せてくれた画面は普通にキョーコと逸美が並んで写っていた
でもフォルダに残されていたのはキョーコを中心に撮影したもの
“ぶれた”1枚目だ

蓮が嘉月の演技をモノにしてすぐの出来事
そんな頃から蓮は自分を想ってくれていた
若手№1俳優がヘタな芝居をうってまで写真を残すまでに


「敦賀さんが私を想って保存してくれたデータだから、ほかに移したんじゃ意味がないって…そう思ったらどうしても消せなかったんです!!!」

その言葉と共に頬を涙が伝って、キョーコは部屋を飛び出していった
すぐに聞こえるドアが閉まる音
きっと寝室に閉じ籠ったのだろう。

「また…泣かせたな」

蓮はそうつぶやくとダイニングチェアに腰を落とした

「蓮…」
「すいません。社さん。分かってるんです。俺に責める権利なんてないってことは。」
「いや…」

社は軽く頭を横に振った

「蓮がこのことを知らされてないことを腹立たしく思っても仕方ないことだと思う。」

すまなかった。
そう告げて社は蓮に頭を下げた


(12終話に続きます)


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コメント

Re: ちょっと、蓮様、そこ土下座するとこです…

> genki様
いつも有難うございます。
あははっ、お怒りごもっともですが、敦賀氏も動揺しまくってますので…許してあげてください(笑)
ちょっとまだ書ききれていないのですが、来週が最終話ということになると思います。
夢中になったなんて言ってくださってありがとうございました。またそんなお話が書けるように頑張ります。

2014/10/30 (Thu) 23:56 | ちょび | 編集 | 返信

ちょっと、蓮様、そこ土下座するとこです…

こんばんは。蓮様、そこ逆ギレするとこじゃないです。土下座して下さい。
…と私は心の中で突っ込んでいます。だって、一番辛かったのは置いて行かれたキョーコちゃんではないですか。それとも蓮様の視点からすると、迷子の混乱した子供を広い部屋の中に置き去りにして足元の非常灯を次々に消しまくったような仕打ちだったということでしょうか。

キョーコちゃんの「賭け」の具体的な内容も気になります。次が最終話なんですね?これまでの苦労をねぎらう、幾重もの幸せの花がキョーコちゃんの上に降りますように!!また、好き勝手なことを書いてごめんなさい。それ程お話に夢中になりました。ちょび様、どうもありがとうございました。

2014/10/29 (Wed) 23:10 | genki | 編集 | 返信

Re: 切ないです

> つき様
怒る敦賀さんが非難殺到だったらどうしよう、と思っていたので切なく感じていただけて嬉しいです。
幸せだなんて…舞い上がってしまいますよー。
こうやっていただけるコメントが本当に活力源です。有難うございます!!!

2014/10/28 (Tue) 00:32 | ちょび | 編集 | 返信

Re: 10と11話を何度も読み返してしまいます。

> まじーん様
読み返してくださっていますか!嬉しいです!でもアラが見つかりそうで怖いです(笑)
敦賀さんから指摘されて、キョーコちゃんにも初めて分かることってあるのかもしれませんね。
次回最終回ですが、え…敦賀さんが活躍?するかな…

2014/10/28 (Tue) 00:29 | ちょび | 編集 | 返信

Re: 切なすぎる...

>ponkichibay様

いつも有難うございます。
秘密が無くなって、確かにスッキリした部分もあるかもしれませんね。
きちんと2人が向かい合った先にあるハピエンが書けたらいいな。と思います。
どうか最終回までお付き合いください。

2014/10/28 (Tue) 00:22 | ちょび | 編集 | 返信

切ないです

蓮さんのゴシップに1人で泣いていただろうキョコさんに切なくなり、
罰かと問う蓮さんに切なくなり、
フォルダを消すことが出来なかったと言うキョコさんに切なくなり、
本当に切ない回でございました(>_<)

最終回楽しみに待ってます。

ちょびさまに出会えて私は本当に幸せ者だなぁとつくづく思いました(^^)

2014/10/27 (Mon) 20:03 | つき | 編集 | 返信

10と11話を何度も読み返してしまいます。

やっとわかった過去の関係。でも、双方共に「見れてヨカッタ!」だけじゃ済まないものまで含まれていましたね。過去を知ることは出来ても思い出せていない蓮さんからの指摘は、キョーコにとって彼女だけは今も自覚している“再構築したように見える絆の土台の儚さ”を目の前に突きつけられたようなものなのかもしれませんね。

寝室に閉じこもったキョコさんが心配ですが。
次が最終話ということは蓮さん頑張ってくれるのでしょうかね。
まだ少しヘタレてもらってても良い(←酷い)気がしますが、キョコさんをあまり長く泣かせるのは可哀想ですものね。←

幸せな結末。楽しみにしてます。

2014/10/27 (Mon) 15:26 | まじーん | 編集 | 返信

切なすぎる...

更新ありがとうございます

開いたmのフォルダ 切なすぎる 消せなかったキョコさんの想い、中を見た蓮様の想い
蓮様のキョコさんに対する深い思いが悲しくて切なくて泣きそうでした。
蓮様の思う通りキョコさんは一人で何度もないたんでしょうね...
それでも秘密がなくなりキョコさんはスッキリしたのでは?賭けはキョコさんの勝ちですよね
神様ありがとうって気持ちでいっぱいです(この場合はちょび様ですね)
終わりに向くのは淋しいですが素敵なハピエンの予感です。

次回も楽しみにお待ちしています

2014/10/27 (Mon) 15:12 | ponkichibay | 編集 | 返信

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