2014_11
10
(Mon)11:55

1歩いっぽ(27)

本日で丁度9カ月。
拍手総数3333までもうしばらくあるのですが、踏まれた方リクエストありましたら受付ますよ~
↑リクエスト頂戴しました。有難うございます!


2014/11/10


■1歩いっぽ(27)~気付いた時にはもう手遅れで~



「来週の金曜は上がり時間早かったですよね。社さん、その後予定ありますか?」
「予定?俺の?…無いけど?」
「じゃあ、貸してください。社さんの時間と身体」
「…気持ち悪い言い方するなよ」
言い方もだが、担当俳優がプライベートの予定など聞いてくること自体が何やら気持ち悪い

そもそもこの男に最上キョーコ以外のプライベートが存在するのか甚だ疑問である

「なんだ行きたい店でもあるのか?…まさか指輪か?」
「そういう時に男二人はないでしょう…」
「だよな~」

「ちょっとお話しときたいことがあるんです。俺の部屋で少し飲みながらでどうですか?」
「うん、まあ…いいけど」

蓮の部屋で飲みながら。
これまた新しい

「じゃあ、なんかつまむもんとワインでも買っとくよ」
「あ、料理は頼んであるんです」
「…ふーん」

そこへちょうどスタッフからの呼び出しがきて、話は終わった



********


「おかえりなさいませっ!お仕事お疲れ様でした」
「うん、ただいま」
出迎えたキョーコに柔らかく微笑むと、蓮はちらりと隣をみた

「…驚かないんですね」
「予想通りだ」

食欲が壊死してる担当俳優がケータリングなんて技をマスターしているとは思えない
社に頼まなければ、後は社長…は大変なことになりそうだからそれは無い
そうなると、蓮がこのプライベート空間に入れる唯一の女性、最上キョーコしか残らないのだ

「キョーコちゃん、今日はお世話になります。これ、抹茶のゼリー、デザートに食べてね。一緒に入っているお菓子は日持ちするからね」
「わあ!お心遣いありがとうございます!」
「…用意周到ですね」
「俺を誰だと思ってる?」
「はいはい、すぐご飯にしますから、お二人とも着替えて下さい。」
「ありがとう、最上さん」
「ありがとう、キョーコちゃん」

料理の仕上げをするためか、キョーコはバタバタとキッチンに向かった。その背中を見送って、自分も着替えに向かおうとする担当俳優の腕を社は捕まえた
「本当に泊まっていいのか?」
「?、今から食事してたら遅くなりますし、飲むと送れないから泊まって下さいっていいましたよね?」
「いや、だってさ…」
社の声は小さくなった

「キョーコちゃんも泊まるんだろ?」

お邪魔じゃあないのか?いや、確実にお邪魔だろ。

「社さんが帰るって言ったら私もって言い出しそうですよ」
「まあ…それはそうだな」
「俺の理性の為にもお願いします」
「それは確かに」
「…否定して下さいよ」



着替えてリビングに向かうとダイニングテーブルにはもう料理が並べられている

控え目な量の海鮮ちらしにおすまし、小鉢がいくつか

「ちらしは敦賀さんからのリクエストなんですよ」
「それは珍しいね」

そう答えながら、昨日控え室でつけたテレビで東北の海鮮ちらしを取り上げていたことを思い出す
確かあの時蓮は携帯を弄っていたはずだ

「まあ、ついてたテレビか、開いてた雑誌で取り上げられてたんでしょうけど」
ニヤリとキョーコが告げると、箸を並べていた蓮は高速でキッチンに引っ込んでいった

「図星ですね」
「すいません…いつもお世話かけまして」

社が謝ると、

「いえいえ、たまには何かリクエスト言わなきゃと思ってくださったのはわかってますから。ちょっとイジワル言ってみただけです」

それを聞いた蓮がキッチンから顔を覗かせて言う。

「そうそう、気持ち、気持ちだよ。最上さん」
「何いってるんですか!ちゃんと食事に関心持って下さい」


(ハワイから帰って更に距離が縮まったよな)

二人で喧嘩漫才を繰り広げながらテキパキと用意を進めていく様子をみながら社は思った
周りに社しかいない時、キョーコは丁寧な口調は変わらないものの、随分と蓮に対して身構えなくなったように思う
前から盆栽やら社には思いもつかぬ事で盛り上がることがあったが、最近は二人の距離感はこれが当たり前、という感じなのだ


食事が終わり、3人で後片付けをすませると、リビングのテーブルにはキョーコは手早く用意したおつまみが3品並んでいた

「もう少しビール飲みますか?」
「いや、ワインもらおうかな?…いいのか?キョーコちゃん、ゲストルームに引っ込んじゃったけど。デザート位一緒に食べて行ったらよかったのに」
「数学の宿題がまだ出来てないみたいですよ。赤と白どっちにします?」
「あ、じゃあ…赤で」

暫くはつまみをつまみながら他愛のない話を交わす

だが社は気付いていた。向かいに座る担当俳優が異常に緊張していることを
キョーコが絡む時以外で蓮が感情をさらけ出す事は皆無に近い
表情や声は勿論、汗腺だってコントロール出来ているのではないだろうか
それが今日は視線が時々さ迷うし、物言いたげに口が開いては閉じ、敦賀蓮としてあるまじきことに唇だって乾いていっている
今、社のグラスにワインを注いでいる手も小さく震えていないか?

社はグラスの中身を少し含んだ
ワインの事はよく分からないがきっと上質なものに違いないそれが喉を滑っていく

(今日は酔いが回るのが早いな)

どうやら社も気付かぬうちに緊張しているらしい。


社は苦笑すると自分から話を振った

「言いたい事があるんじゃなかったのか?」

一瞬身体を強ばらせた蓮だったが、元々覚悟していたからだろう小さく頷き、パンツのポケットからコンタクトケースを取り出した

「社さん、コンタクト外していいですか?」
「ああ…いいけど…」

どうしてここで、と続く言葉は出なかった

漆黒のベールが剥がされた後から見える美しい緑
時折LEDの光を受けて茶に変わる色彩は神秘的でさえある


「…話を聞かせてくれ」



(28に続く)
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