2014_11
25
(Tue)11:55

1歩いっぽ(30)

ついに30話を超えました~。なんだか連載物って感じですね。
ちょっと自己都合により今回は短いので、明日続けて更新できたらと思ってます。

2014/11/25




■1歩いっぽ(30) ~それは合わせ鏡のように~



「コーヒーいれるから座ってて」
「有難うございます」

食後の片づけを2人で終えて、いつものように蓮がコーヒーを入れてくれる。
リビングに戻るとさっきまでニュースを放送していたテレビは、例のアイドルグループの冠番組のバラエティに変わっている。

あれから収録で彼とは一緒になったが、前と変わらず接してくれた。
やっぱり優しい人だし、公私混同をしないきちんとした仕事人なのだ。
今も画面には明るく番組を進行していく様子が映っている。
キョーコはそれに微笑むと、台本でも目を通そうかと自分のバッグを引き寄せた。

バッグの中には台本が1冊と企画書が1冊
企画書は例の貴島とのCMのものだ。撮影は5日後。
なんとなく企画書の背表紙をなぞる。

(初めてだけど…きっと大丈夫)

貴島を蓮に置き換えたらきっと大丈夫。
だって世慣れた男なんてまさにピッタリ。いつも振り回さればかりのキョーコから頬チューなんてしたら…

(流石の敦賀さんでも驚いてくれるかな?)

恥かしいが脳内で敦賀バージョンを展開すると、呆然とキョーコの背を目で追いながら頬に手をやる蓮が浮かんで…キョーコの頬は赤く染まり自然と口元が緩んだ。


ガチャン!

キョーコは我に返った。
突然響いた音は乱暴に置かれたコーヒーカップとトレイによるもの
波打ったコーヒーがトレイに海を作っている
無残なコーヒーから視線を移し、テーブルの横に立つ蓮を見上げた
照明を背に受け逆光になっている為やや見えにくいが、表情のない顔で瞳だけを昏く光らせ、キョーコを見下ろしている

「敦賀…さん…?」

様子のおかしい蓮を訝り、キョーコは腰を浮かせた。
その肩をぐいっと押され、ソファーを背に尻もちをつく。

呆然としていると、蓮がキョーコの前に片膝をついた
とんっ
蓮の両手がキョーコを頭部を囲うようにソファーを掴む
じっとキョーコを見据える瞳
コンタクトを取れば美しく緑色に光るその瞳は今は深い闇を宿しており、それに吸い込まれてしまいそうだ。

つい
左手がキョーコの頬に触れ、唇を何度も意味ありげになぞる
瞳はまだ昏いままだが、これは何度か見たことのある夜の気配

(キ?キスされるの?)

どうしてこんな風に?どうして何も言ってくれないのか?
そうは思うが嫌なわけではない。
至近距離での蓮からの視線に耐えられないのもあってキョーコは固く目をつぶった

だが待っていた感触はこなかった

どんっ!
蓮の指が唇から離れて行ったかと思うと、耳元に鈍い衝撃音。
眼を開けると音の発生源はソファーを叩いた蓮の左拳で、キョーコの右肩に頭をのせる形で俯いている為表情が見えない。

何がなんなのか分からない
右肩と首筋に感じる蓮の髪がくすぐったい

「あ、あの…」

ようやく声が出せたと思いながら左を見ると、蓮の拳が震えていることに気付き、また声を失う。
蓮は拳を開き、ソファーを強く握りしめるとキョーコから身を放し、立ち上がると背を向けた

「ごめん…」
「え?」
「許可なく無理矢理君に触れようとした。ごめん」
「え…いや…あの…」

確かに驚いたし、少し怖かったが決して嫌なわけではない。
だが、そう伝えるのはとても破廉恥な気がして、言葉に出すのを躊躇ってしまう。

「今日はもう帰った方がいいね。タクシー呼ぶよ」
「な、なんでですか?まだ…」

キョーコは立ち上がって抗議する。その声に振り返った蓮の顔は後悔に歪んでいた

「帰った方がいいよ。…お願いだ」

哀願ともいえるその言葉に思わず頷きそうになるが、このまま蓮と別れるのは嫌だった。
何か何か…蓮がこうなった理由でも、蓮を浮上させるきっかけでもなんでもいい掴みたい。

「送ってください。そうじゃないと帰りません」
「…」
「送ってください」

小さなため息

「分かった。行こう」

車のキーを取り玄関に向かう
キョーコは慌てて荷物をまとめてその背を追った。

*
*
*

車内でキョーコは必死に言葉を探した。
蓮は押し黙ったままハンドルを握っている。

キョーコの肩を押したあの時は怒りの波動を感じたが、今はひたすら自分を責めているようだ。
蓮にそんな顔をさせたくないのに、上手い言葉が浮かばない

「最上さん、ついたよ」

何の解決策も浮かばないまま、車はだるまや近くの路上に停まった。

「今日はごめん。もう2度とあんなことしないから」

最後にそう告げて、車は走り去った。

キョーコは結局それを見送ることしかできなかった


(31話に続く)
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タグ:スキップ・ビート スキビ 二次小説 キョーコ

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