2014_11
26
(Wed)11:45

1歩いっぽ(31)

お約束通り続けての更新です。

2014/11/26




■1歩いっぽ(31) ~それは合わせ鏡のように~




4日後
キョーコは少々落ち込みながら局の廊下を歩いていた。

あれからと会えていない
電話はあるのだが、なんだか互いにぎこちなく会話が続かない。
一度、社を通じて差し入れをいう名目で会おうとしたのだが、

『暫くキョーコちゃんと合わせる顔が無いとか言っちゃってさ~』

もう暗い男でごめんねえ。あはははっと社は電話口で乾いた声で笑ったのだ。
そして言い渋る社からなんとか聞きした結果、やっぱりはあの告白シーンを目撃したようだ

『こういうことは俺から言うのはどうかと思うから、後は2人で』

と詳しいことは教えてくれなかったが

(様子がおかしかったのはあの告白を知っていたから?)

ならどうして聞いてこなかったのか。そもそもキョーコの返事など分かり切っているのに
鬱々と考えながら歩いていると、前方から歩いている人が目に入った

「貴島さん!おはようございます!」
「あ、京子ちゃん。おはよう」
「ご挨拶が遅れましたけど、明日の撮影よろしくお願いいたします!」
「俺こそよろしくね。最近なかなか会えなかったから撮影楽しみだったんだ」

立ち話を始めた2人に貴島のマネージャーが先に行っていると伝えてキョーコが来た方に歩いて行った。
貴島は周りに人がいないことを確認し、声を落とす。

「それで、最近どう?」
「どう…とはなんでしょう?」
「敦賀君とだよ。告白されたよね?付き合ってるの?」

ぼふん!と真っ赤になったキョーコは慌てて手を振った

「まままままだ、つ、付き合っていません!」
「しーっ。声が大きいよ。京子ちゃん。そうか…まだなんだ。あの色男を1年も待たせるなんて。京子ちゃんやるね」
「待たせるなんて」
「え?じゃあ振ったの?」
「違います!その…なんというか…」
「やっぱり待たせてるんだ」

へえ~とかふーんとかニヤニヤした後、貴島は右手で顎を撫ぜた

「じゃあ、今回のCM悪いことしたかな」
「へ?何がですか?」
「だって京子ちゃんからの頬チューもらっちゃうじゃん。」
「ふへ?何言ってるんですか?仕事ですよ。敦賀さんは仕事に真摯な方ですから」

じっ、とキョーコを見つめた後、貴島は笑った。

「そりゃあ、敦賀君が気の毒だよ」
「気の毒?」
「そ。確かに仕事は仕事だよ。それは割り切らなきゃダメなのは分かってても、どこかモヤモヤしたり面白くなかったりするのが感情ってもんでしょう?」
「でも…」
「仕事の先輩としての気概やプライドがあるからそれをどうこうは言わなくても、まだ自分が触れてない片思いの相手のキスシーンなんて面白くないよ。たとえ頬チューだってさ」
「…」
「なんだかんだいっても敦賀君まだワカゾーだしね。からかったら面白いかなあ~。…いや、面白いでは済まないな。やめとこう」
「?」

そうこうしているうちに時間が来たらしい。貴島は、また明日と肩を叩いてキョーコに別れを告げた。
また一人になり局の廊下を歩く

(…敦賀さんも面白くないのかなあ。私の頬チュー)

正直言うと、返事を待たせている身でありながら、キョーコはのラブシーンは少々面白くない。
勿論勉強になることばかりなのだ。だけどやっぱり心の奥底がモヤモヤとする。
それを表に出すほど愚か者ではないつもりだけれど、告白以降はそういう撮影やシーンが話題に上る時マメに連絡をくれて…

(安心させてくれるのよね…)

あまり意識してなかったのその行動。
だが、そんな小さな優しさの積み重ねで今の心地よい関係が成立している。
返事を待たせている間ににいい人が出来たって不思議でもなんでもない。でも、そんな中でもキョーコがゆっくりと考えて行けるよう蓮が気遣ってくれている。
”君をちゃんと想い続けている”そう何かにつけて態度で表して
それは恋愛に疎いキョーコにだってよく考えれば分かる。

ではその逆は?

告白される前から蓮への気持ちを自覚していたから考えもしてこなかったけれど、散々待たせておいて“やっぱり貴方じゃなかった”そういう結論をキョーコが出したっておかしくはないのだ。
蓮はコーンというキョーコにとって何より大事な人だし、最近は距離も近くなったと思う
でも蓮は返事を待っているのだ。
そんな中、キョーコが告白される場面を見て、その結果を教えてももらえず、ささやかとはいえ他の男に触れる仕事をなんでもないことのように報告されたら…

いつもは混雑しているエレベーターもどういうことかキョーコ1人
エレベーターの鏡に映る自分の姿に手を合わせた

蓮は天上人ではないことはあの告白以降一緒にいた時間でわかっていた。
その蓮の内には不安に揺れる心やモヤモヤがあるのかもしれない
キョーコと同じように
この鏡に映るように同じに。

*
*
*

(ああ…もう蓮の頭の中が換気出来たらいいのに)

控室で後悔の深ーい海に沈んだ男を見ながら、社は切に思う。
仕事はちゃんとこなしているので、社と2人きりになった今位は仕方ないのだろうし、気を許してくれている証拠でもあるだろう。
だが、暗いのだ。

(このくそ真面目の根暗男め)

心の中で悪態をついてみる。

大体やたらめったら我慢するからいけないのだ。
普段はあざとい方法でキョーコの傍に擦り寄っているくせに、肝心なところでヘタレなのだから。
おまけに爆発の仕方がこれまた中途半端なためガスはたまる一方だ。
大体、告白の結果位聞いたっておかしくはないし、貴島への頬チューが気に入らないなら自分を練習台にとか言えばよかったではないか。

「…密室で頬にキスなんてされたら…自分をセーブできなさそうだったんです」
「!。俺の心を読むなよ。ってかその方法考えたんだな」

どんよりと蓮が頷く
その様子は春の陽だまりなんてとんでもない。梅雨まっただ中黒カビ発生中といったところ。

「セーブできなきゃハグしてみるとか色々あるだろうが。“気が付いてたら中毒作戦”はいいとして我慢しすぎなんだよ。」
「変な作戦名つけないで下さい」
「もし付き合えたとして人生いろいろあるんだからさ。不平や不満はちゃんと伝えたりしないと上手く行かなくなるぞ。なんでもかんでも完璧にってストレスたまるに決まってるだろ?悟りを開いた坊さんじゃないんだからさ。上手くガス抜きしないと早死するぞ?」
「…」
「とりあえず。例のCM撮影今日の昼からだろ?今晩にでも電話かけてだなあ…」

ノックの音に社は口をつぐんだ

営業用の笑顔を張り付けてドアを開けると、そこには緊張した面持ちでキョーコが立っている。

「キョーコちゃん!どうしたの?今日CM撮影じゃなかった?」
「おはようございます。社さん。そうなんですけど敦賀さんにちょっと」

蓮が慌てて立ち上がるのが分かった。
キョーコを部屋に招き入れながら振り向くと、何を言われるのかと緊張した様子だ。

「おはようございます。敦賀さん」
「おはよう。」

どうやら言いにくいことらしい。キョーコは蓮の傍まで行くと何やらもじもじと下を向いた。

「最上さん?」

俯いてるせいで表情が見えないキョーコに不安を覚えたのだろう。蓮は腰を落として視線を合わせようとした。
それを待っていたかのようにキョーコの手が伸びる

「…失礼します」
「え?」

キョーコにぐいっと胸ぐらをつかまれて一気に引き寄せられ、頬に柔らかな感触。
状況がわからないまま、小さなリップ音と共にキョーコの唇が離れた
蓮も社も呆然としてキョーコを見ていると、真っ赤な顔をしたキョーコが顔を上げた

「あっあのですねっ…敦賀さんをお待たせしているのに、他の方のお話受けたりとか絶対にしませんからっ!」

捲し立てながら1歩2歩と後ろに下がり、3歩目で回れ右をすると一気にスピードを上げて「失礼しますっ!!!」と部屋から走り出て行った。

局の廊下は走る訳にはいかない。
最大限のスピードで歩きながら、キョーコは恥かしさでのた打ち回りたい気持ちを押さえていた。
こちらから、しかも社が見ている前で人生初頬チュー
蓮を待たせている間は他の人には絶対に行かないとか、もう気持ちを告白したも同然ではないか。
それなのにまだ待たせるなんてなんて高慢ちきなと社は思ったかもしれない

だけど。だけど。

あの夜の後悔に歪んだ蓮の顔が浮かぶ

あんな顔蓮にさせたくはない
蓮の不安を払しょくできるのなら
社に…他の人になんて思われようと、それでいいのだ。

*
*
*

「マッハのスピードだな…」

そうつぶやくと笑いがこみあげてきて、社は肩を震わせた。
もうガス抜きどころか大穴開けられてスッカスカのペラペラ状態だろう。
こうやってこれからもキョーコは蓮の不安や葛藤を吹き飛ばしていってくれるに違いない。

「れーん。キョーコちゃん最高だな。絶対に逃がすなよ~」

ニヤニヤ笑いながら振り向くと、立っていたはずの担当俳優は床に尻もちをついていた。

「…何してんだよ?」

蓮は呆然としたまま、後ろについていた左手でキョーコの唇が触れた頬を覆った

「腰が…ぬけました」
「お前な…」

いくらキョーコちゃんからとはいえほっぺにチューだろうと、社は少々呆れながらドアまで行くと、担当俳優のイメージを守るため鍵を閉め、振り返ると告げた

「早く回復しろ。それ、“敦賀蓮”じゃなくてもカッコ悪いぞ」


(32話に続く)
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Re: いいわぁ。

>nanatakeママ様
有難うございます!
歩く純情さんからのアプローチなんて夢にも思ってない分衝撃はいかほどかと。
暫く反芻していると思います。(そして社さんに注意される)

2014/12/03 (Wed) 13:16 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

いいわぁ。

キョーコちゃん素敵!
こんな可愛いことされたら惚れ直すよね。流石です。
これからも楽しみにしています。

2014/12/01 (Mon) 06:56 | nanatakeママ #NL852uQM | URL | 編集 | 返信

Re: 「一歩いっぽ」ですね

> genki様
更新待っていただいているみたいで嬉しいです。有難うございます。
告白からすでに1年たっているのですが…本当に1歩いっぽです。
恋愛不慣れな2人にはこれくらいのスピードでもいいんじゃないかと思ったりします。

2014/12/01 (Mon) 00:32 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

Re: ホント良い!! (≧▽≦)

> しゃけ様
有難うございます!
190センチの大男が腰をぬかしてその後いったいどうしたのか…社さんはさぞかしやきもきしたことでしょう(笑)

2014/12/01 (Mon) 00:30 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

Re: きゃ~~

> サラ様
いつも自分から押していたので、キョーコちゃんからの行動にすっかり打ちのめされたようです(笑)
カッコ悪すぎて怒られるかと心配でしたが、可愛いって言っていただけてよかったです。

2014/12/01 (Mon) 00:20 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

「一歩いっぽ」ですね

こんばんわ。「一歩いっぽ」の更新が続いて嬉しいです。それに、本当に「一歩いっぽ」なのでじわじわラブリーが続いていって微笑ましいカップルです。季節とは真逆ですが、春が近づいてくる早春の時期のように、次第に暖かさが増していくような二人の様子が幸福感を感じさせます。こんな風にゆっくり関係を築いていくことができるのは贅沢な恋愛なのかも知れませんね。次回を楽しみにしています。どうもありがとうございました。

2014/11/26 (Wed) 22:56 | genki #- | URL | 編集 | 返信

ホント良い!! (≧▽≦)

キョーコちゃん、グッジョブ👍です
で、蓮様の反応も可愛すぎです~❤
社さんもナイスなホローだし

蓮様の幸せが一日も早く訪れますように!!
で、二人のイチャイチャみたいです~

約束通りの連日更新ありがとうございます!!

続きも楽しみにしていますね(≧▽≦)

2014/11/26 (Wed) 21:08 | しゃけ #- | URL | 編集 | 返信

きゃ~~

蓮様すっごく可愛いです。
それだけびっくりしちゃったんですね。

でも、キョーコちゃんの対処方法、最高です!!

2014/11/26 (Wed) 13:09 | サラ #- | URL | 編集 | 返信

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