2014_12
22
(Mon)11:55

1歩いっぽ(34)

1歩いっぽ時間では現在初夏位の設定。
キョーコちゃんは18歳なのです。(書いとかないと私が忘れます)

さて、切りどころの関係で短いです。そしてお松さん今週も登場です。苦手な方はご注意ください。

今週はキョーコちゃん生誕記念祭ですから週3行きたいな~。

2014/12/22




出国審査を終えるとそのまま局に直行し、音楽番組の収録スタジオへと向かう

「帰国してすぐにごめんなさいね。ショー」
「飛行機で寝たから全然大丈夫だよ。祥子さん」

気分を変える為にあえて明るく言うと、祥子は安心したようだ。
その時だ

「あ、サニーのCM」
「このバージョンの蓮可愛いよねえ」

聞きたくもない名前が耳に入って思わず画面に目が行く
南国の海で犬っころのようにはしゃぎまわる敦賀蓮と…

「このビデオ持っている京子の表情もいいよね」
「うん。すっごく恋人の事好きなんだなあって伝わってくる。京子って演技うまいよね」

愛しい人の一挙一動から目が離せない。そういった表情の幼馴染の顔を見てショーの胸に爆発しそうなほどの怒りが湧き上がった。

(あの鬼畜野郎には本命がいるって教えてやったのに、まだまわりウロウロしてアホ面晒してんのかよ)

これは演技だ。そう言うには幼馴染の表情はショーにとってはリアルすぎた。
かつて自分を見ていた表情、いやそれ以上に深い深い思慕を感じる表情

沸々と湧き上がる何かをぶつける矛先を探して、ショーの眼は今は見えぬ何かを探した。





■1歩いっぽ(34)~たとえ前が見えなくても~




手にしたエコバックの中身が、キョーコの弾むような足取りに合わせて楽しげに音を立てる。
久しぶりに蓮の部屋で夕飯を一緒に食べる約束にキョーコは浮かれていた。

(浮かれてる場合じゃないんだけど…)

新開の映画の件はまた返事をしていない。もう1週間たつのだし、早くしなければならないというのは分かっているのだが…
着信音が鞄の中から聞こえ、慌てて確認するとやはり蓮からのメールだ。

“終わったけど、今どこ?”

今日最後の仕事は偶然にも同じ局なのだ。

”私も終わって控室出たところです。地下駐車場でお待ちしますね”
”駐車場なんて人気なくてあまり感心しないけど…なるべく早く向うからエレベーター降りて直ぐの所で待ってて”

キョーコを心配してくれる文面に顔が緩む。
ふよふよとした気持ちでエレベーターに乗り込み地下駐車場に向かう。小さな電子音と共に開いたドアから降り、蓮が指定した場所に立とうとするとその2つ先の柱には先客が居た。

「ショ…」
「よお…予想ドンピシャだ」

柱によりかかったままこちらを見る眼はギラつき、顔を歪ませるように笑うその異様さにキョーコは足がすくんだ。

「予想?」
「たまたまお前の楽屋の前通ったんだよ。あの大先輩様もここみたいだからよ。また先輩のお車でお帰りかと思って待ってたんだよ」

ショータローの眼がキョーコの頭から足までをまるで検分するように動き、エコバックに気付くと眼光に鋭さが増した。

「お前、俺の忠告忘れたのかよ?」
「忠告?」
「言ったろうが、大先輩様には乳繰り合う本命様がいらっしゃるって」
「あれは…」

あのキスマークの事だと気付いてキョーコの頬に朱が差した。
その様がショータローの怒りの炎に油を注ぐ。

「なんだ?あの鬼畜野郎の舌先三寸に丸め込まれたのか?お前ほんっと単純だよな」

本命がいる鬼畜野郎のキョーコへの関心なんて、所詮玩具への執着だ
それにいくら縋ろうといいことなんて何もないと何故分からない?
あんな感情ダダ漏れのCMなんて流しやがって

「ちが…」
「で?また家政婦もどきになってせっせと飯作ってんのか?それとも今回は身体のサービスもつけてるのか?」
「なっ」

常にはないショータローの下世話な言い方にキョーコが目を吊り上げた

「そんなんじゃないわよ!」
「じゃあ、なんなんだよっ!!!」

身が竦む様な怒鳴り声。
思わず口をつぐんだキョーコの姿に、ショーはショックを受ける

(どうして怯える?あの野郎のことはあんなに愛しげに見つめるのに。どうして?)

「いい加減学習しろよ!!!お前がどんなに努力しようと無駄なんだよ!忘れたのかよ?あんなに毎日毎日頑張っても、てめえの母親さえ振り向いてくれなかったじゃねえか!!!」

あの日と同じようにキョーコの顔が凍りついた。
血の気を失った顏で俯き、エコバックを握る手は震えている。あの日と違って涙は見えないが。

ショータローもまた自分の失言に凍り付いていた。
撤回しよう。謝ろうとなんとか口を開きかけた時…

「お待たせ最上さん。」

なんとも呑気な声で告げる蓮は、もうキョーコのすぐ後ろに立っている。
いつのまにエレベーターがついたのかわからないが、話は聞こえていたに違いない。
青い顔のまま蓮の方に首だけ向けたキョーコはぎこちなく笑って見せた

「あの…すいません。今日は晩御飯作るのはちょっと無理そうなので…キャンセ「ねえ、最上さん?」」

キョーコの斜め前に歩み出た蓮が腰を曲げて顔を覗き込む。

「確かに最上さんの料理は美味しいけど、俺は最上さんの料理が食べたいから夕飯に誘ってるんじゃないよ。最上さんと一緒に食べたいから…一緒にいたいから誘ってるんだ」

一緒にいたい。
その言葉を聞いたキョーコの眼が涙で潤む。
蓮はそんなキョーコを優しく見つめ安心させるように微笑んだ

「行こうか」

そっと背中に手を当てて促し、固まったままのショータローの脇をその存在さえ気づかぬようにすり抜けた。
後に続いた社はすれ違いざま立ち止まり、ショータローの耳元に囁いた

「君は何がしたいんだ?…まあ、キョーコちゃんを傷つけたいだけっていうなら正解だけどね」

ショータローは言い返すこともせず、目を閉じ黙って拳を握りしめた。


また間違えた。
あんなことが言いたかったわけじゃない

ずっと傍にいるのが当たり前で
その一方で煩わしさも感じていた。
自分ではどうしようもないキョーコの痛みも、思慕も、まるで自分をあの旅館に縛り付けられるようでだんだんと重く感じるようになった。

でも、覚えている。

2人でやったバトミントンの楽しさも
交換して食べたオヤツの美味しさも
キョーコがいてくれるお蔭で、両親のいない部屋で聞こえるのがテレビの音だけでなかったことも

幼いころはそのぬくもりと笑顔に安心していた。
今では異性としての愛情も感じているのに
それなのにどうしてキョーコを笑顔にできる言葉を口に出来ないのか?

あんな…
あんな顔をさせたい訳じゃないのに。


(35に続く)





キョコ誕は「1歩いっぽ」←間違えました「ほんのわずか」の番外なので限定記事です。
35話は金曜日に更新予定です。
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