2015_01
13
(Tue)11:55

1歩いっぽ(38)

3連休出ずっぱりでしたので…今日は短いでーす。
拍手総数は5555がキリ番です。カウンターはもうすぐ1万。ゾロ目なりごろ合わせなり、これだ!という数字になりましたらお申し出くださいませ。

2015/1/13


バランスのいい美味しいご飯よりも、きちんとアイロンがされた綺麗なブラウスよりも
もっともっと欲しかったもの。

私を見て笑って
私の手を握って
私をギュって抱きしめて

ただそれを乞うて、切望して
あの頃のキョーコは努力していた。



■1歩いっぽ(38)~切望した世界~




絶品なはずのお昼の御膳は何を食べてるかも分からなかった。

「敦賀様、社様、ちょっとよろしいやろか?」

重苦しい雰囲気の昼食が終わり、キョーコが手洗いに立ったタイミングで女将から声がかかる。

「はい、なんでしょう?」
「お2人は運転は出来ますやろか?」
「東京では俺がいつも運転してますが」
「ほな、うちの車使こうてください。ナビもついてますよって。」

タクシーでは運転手の眼が気になるだろうという女将の配慮に礼を言って車の鍵を受け取った。

「ほんまはついていけたらいいんやけど、これからお客様がお着きになる時間やよって…。どうかキョーコちゃんをよろしくお願いいたします」

頭を下げる女将に承知した旨を伝え部屋を出ると丁度キョーコが戻ったところに出くわした。

「あ、女将さん。行ってまいります。着付けの時間までには戻りますから」

努めて明るく言うキョーコに、女将も気を付けて行くようにと微笑んでいる。その様を少し離れて見ていた社は小声で蓮に行った。

「ごめんな。蓮。俺が運転出来てたらキョーコちゃんの隣にいてあげられるのにな」
「仕方ありませんよ。」
「…大丈夫かな。キョーコちゃん」
「初めて知らされることが多すぎて、まだ理解できてないんでしょう。正直キツイと思いますが…」

*
*

保育園の前の道路は道幅も広く、歩道もゆったりとしていた。
門が見えるギリギリのところで車を止めて様子を窺うと、門からは手をつないだ親子が次々と出てくる。子供がもった小さな紙袋にサンタの絵が描いてあるところを見るとクリスマス会でもあったのかもしれない。

右手にお兄ちゃん、左手に弟を連れて歩くお母さん。
手をつないだまま先に走りだした2人組に待ちなさいと叫んでいるお母さんたち
お父さんに抱っこされた女の子。
男の子を抱っこしながら器用に赤ん坊のベビーカーを押すお母さん
次々と車の横を通り過ぎて行って…

駆けてくる小さな女の子
綺麗な黒髪と一緒にクマの髪飾りが躍る。

「優菜ぁ、そんなに先に行かないで―」

小さい頃からずっと聞いていた声。
でもこんな優しげにあまやかな響きを聞くのは初めてだった。
少し足早に追いかけてくる。
その背中をずっと追いかけてばかりだったのに。

母親が追ってくることに安心しているのか、“優菜”はそのまま駆けてくると街路樹の根元で立ち止まった。
そこはまだ秋の気配を残して、色とりどりの葉を散らしている。
そこにしゃがみこんで何やら弄りたした“優菜”に冴菜が近づき何やら話しかけると、すくんっとこちらに背を向けて立ち上がり「はい、どうぞ」と言ったのだろうか?小さな手を差し出した。
手に載っているのは…小さなドングリ

キョーコ達の乗る車には背を向けているので分からないが、きっと満面の笑みで差し出された母への贈り物。
冴菜はそれを見て…優しく優しく微笑んで…その口が「ありがとう」と動いて…幼子を抱きしめた。
大切な大切な宝物だと言わんばかりに。


ずっとずっとキョーコが切望していた世界

それがそこにあった。






1歩いっぽを頭の中でイメージしていた時絵で浮かんでいたのか、手をつないで歩く蓮キョの後ろ姿(26話ですね)と今回の親子を見つめるキョーコの姿だったんです。
妄想にも程がある?おっしゃる通り!
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