2014_03
10
(Mon)00:06

愚か者の幸せ(前篇)

悩みの音の後日談的なお話です

2014/2初稿、2014/10/15一部修正

■愚か者の幸せ(前篇)




「敦賀さん、社さん おはようございます」

綺麗なお辞儀とともに紡がれた挨拶に、蓮は微笑んだ。

「おはよう。最上さん」
「おはよう、キョーコちゃん」

3人が出会ったのは移動中のテレビ局の廊下、これからバラエティの収録だというキョーコと挨拶と他愛のない事を2,3話して

「そろそろ時間だ。蓮」
「じゃあ、最上さん。収録頑張って」
「有難うございます。失礼します」

その姿はどこからどうみても、世間の評判通り仲の良い先輩後輩。


助手席のドアを閉めると、社はまじまじと蓮の顔を見つめた。

「なんですか?社さん」
「いやいや、役者だな。と思ってさ」

完璧なる『仲の良い先輩後輩』
付き合ってまもなく5ヶ月のラブラブカップルとは誰も思うまい。

「お前さ、2人の時も最上さんって呼んでるわけ?」

お昼休みの女子高生のようなウキウキ顔の社に蓮は苦笑する

「2人の時は名前で呼んでますよ」
「キョーコ?キョーコちゃん?キョーコさん?」
「…キョーコです」

ふーん

「なんか、お前は付き合いだしたら人前でも名前呼びかと思ったのに意外でさ」

確かに芸名は京子。
最上という名字読みをする方がレアケース。
敦賀蓮のイメージ的にも、関係を公にしてないことからも、呼び捨てはアウトだが『京子ちゃん』ならおかしくないだろう。

「ああ~」

理由を話すのは躊躇われるような、でも話したいような、恋する男の迷いの声。
ここはからかうと教えてもらえないパターンだと社は静観した。

「名前で呼んでいいか聞いたときにですね」

呼び捨てを拒否されて10余年、執念深いといわれようと蓮にとっては譲れない名前呼び捨ての許可はあっさり下りた。
だが、その時キョーコは言ったのだ。
『でも、ちょっと残念です』と

「敦賀さんから最上さんって呼んでもらえるのすごく好きだったんです。と言われまして・・・」

しかも頬を染めながら上目使いというオプション付きで

「じゃあ、人前では最上さんのままでいこうかって」

キョーコはプライベートでも『敦賀さん』のままなので特に問題ない。
蓮的には少し寂しいが、たまにおねだりするとモジモジと名前呼びしてくれる姿は悶絶しそうな位に可愛いし、このまま最上キョーコの人生ごと確保する気満々なので時間はたっぷりある。
蓮、久遠、そのうちパパなんて呼び名だってあるかもしれないのだ。

なんて、春真っ盛りの頭の中で考えていることは流石に社には恥ずかしくて言えないが。


(お前が提案したんだ。

と、社は心の中で突っ込んだ。

最上キョーコ、天然にして最強の敦賀蓮使い。
無自覚に蓮を誘導する技は絶品だ。

1カ月までのイタリアでの仕事の時だって…と考えたところで社は思い出した。

「そういやキョーコちゃん、ペディキュアにお前がお土産に贈ったネイル使ってたよな」

まだ外は寒いが、バラエティが放送される時期を考慮してか、キョーコの足物はオープントゥのパンプスに素足。
その親指に塗られていたのが蓮が『キョーコに一番あう色』と選んだネイルだったのだ。

「社さんも気づいたんですね」

そりゃあなあと顔を向けてみた担当俳優の頬はほんのり染まっていた。


(つづきます)

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コメント

1. 社さんも見てるね(笑)

お兄ちゃんとしては、蓮とキョコの成り行きやらなんやらが気になるんですね~(笑)

で、ペディキュアしているキョコが、他の女の子に「これ似合う~♪」とか言われて、その場面を蓮が見ちゃったりすると、すっごく満面の笑みで(そうでしょう?)とか心の中でひっそり自慢してそう( ´艸`)

2014/02/12 (Wed) 18:51 | 一葉梨紗 | 編集 | 返信

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