2015_02
12
(Thu)11:55

強く欲するモノ(1)

こちらは2014年3月からアメプロでメンバー様限定企画として連載しました作品です。
このたび、1周年を記念して加筆修正のうえ通常公開として参りたいと思います。
ちょびちょびと修正してまいりますので、週1公開出来たらいいなあ…。

少々痛いシーンが出て参ります。苦手な方はご注意を



なお、パスワードをご存知で、旧バージョーンと比べてみたい。という方は限定記事にてご覧になれます。
カテゴリ「強く欲するモノ」を覗いてみてください。

2014/3/10初稿、2014/9/8一部修正、2015/2/10加筆修正





大丈夫と、彼は言った。

「羽だって生えてる。 空だってちゃんと飛んでる」

“妖精”を心配する想い人を胸に抱いて…そう言ったのだ。



■強く欲するモノ(1)



 - ねえ…君は傍に居るのが当たり前で 
 - ねえ…僕はそれが奇跡のような幸運であることに気付かずにいた 


聞こえてきた曲に社は気付かれないように眉を寄せた。
不破尚のニューシングル
曲を採用したCMが印象的だったせいもあって、CDの売り上げもダウンロード数もうなぎ上りらしい。
現在地がロケの為に訪れているカラオケ店なのだから、今ヒットしている曲が流れていても何の不思議もないのだが、問題はその内容だ。
傍に居るのが当たり前の存在だった故に気付けなかった愛を歌ったバラードは切々と訴える。

失って初めてその存在の大きさに気付いたと
本当に子供だったと。
悔やんでも悔やみきれないと
まだ…愛していると

社は撮影前の打ち合わせをしている担当俳優に視線を送った。
いつもと変わらぬ穏やかな表情に見えるが、社には分かる。その機嫌が急降下していることが。

(まあ、敦賀蓮の仮面は被れているようだから大丈夫か)

ドラマのスポンサーのものではないCM曲が撮影中に流れるなんてことはありえないし、蓮の役柄は犯人を執念深く追っている刑事だ。多少眉間に皺が寄る位は許容範囲だ。


*
*

「れ~ん、あの歌よっぽど嫌いなんだな」

次の仕事の為の移動で車に乗ると、社は早速からかってやる。
もう仮面をかぶる必要のない空間に入った男は思い出したのか不機嫌そのものといった顔になった。

「大嫌いですよ」
(あ~あ、敦賀蓮の口から大嫌いが出ちゃたよ)

自分がふったこととはいえ、その不機嫌ぶりに社は苦笑した。

「あんなの自分に酔ってるだけの自己満足じゃないですか」
「確かになあ。聞く人聞いたら、キョーコちゃんのことだってすぐわかるしな」
「あんな自己陶酔曲を公共の電波で流すなんて、嫌がらせ以外の何物でもないですよ」

その後も続く、不破尚へのこきおろし
最近感情の表し方が随分オープンになってきたとはいえ、ここまでの蓮は珍しい。

(着メロ流れただけで機嫌急降下だもんな。ある意味、この曲のイントロクイズでは誰にも負けないかもしれないよ…)

社は密かに思った。
そんな企画があったとしても蓮が怖くて受けれないけど。

「まあさ。あっちもちょっと焦っちゃったんじゃないか。お前とキョーコちゃんが付き合ってるってのは知ってても、そのうち別れるだろうと思ってたのに、婚約とか聞いちゃってさ」
「キョーコと俺がそのうち別れるって何の根拠でもってそんなこと思っていたんですかね?それもそれで腹が立ちますけど」
「お前の一時の遊びって思ってたみたいだな。」
「なんですか、それ」
「知らないよ。キョーコちゃんにそういったって聞いたけど」
「俺は聞いてませんけど?」
「お前が不破の事になると大人げない態度取るからだよ。俺にあたるな」

蓮はこみ上げる苛立ちを打ち消そうとハンドルを持つ手に力を込める。


この歌を何度聞いてもこみあげてくる猛烈な不快感。
やっとキョーコを手に入れて、法的にも認められる存在になろうとする今、不破がなんと吠えようが放っておけばいいだけなのに。


後から考えたら、それは警報だったかもしれない。



(続きます)





ハピエン!
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

トラックバック