2015_03
03
(Tue)11:55

君の名前を呼ぶ時は-後編(記憶喪失の為の習作4)

天然タラ紳士に反応してくださったお優しい方々有難うございます。
書いてみたら書いてみたで「シが抜けてますよって言われたらどうしよう?」とビクビクする臆病者なんです(笑)

2015/3/3初稿

ツキアッテ?

ツキ有って?
月在って?

…付き合って!?

キョーコの脳がようやく事態に追い付いた



■君の名前を呼ぶ時は-後編(記憶喪失の為の習作4)



「なななななな…な、なんでそんな事?」
「最上さんはこのマンションに来なれてる感じだよね。ゲストルームやお風呂だって勝手知ったる様子だし。キッチンなんてもう自分の城。」
「そそそそ、それは…」
「俺の煎れるコーヒーは味を覚える位飲んだことあるみたいだし」
「ですから…」
「だいたい若い女の子を男の独り暮らしの部屋に泊まり込みさせるなんて、2人が付き合ってない限りありえないと思う」
(いやいやいや、ありえないことをするのがうちの社長なんです!)

カイン・ヒールの件はまだ公にされていないこともあって社の資料には記載されてなかった。どうやったら上手く説明できるだろうかと目を泳がせながら必死に考えている隙に、「それに…」と、何故だか少し照れた様子で蓮は更なる爆弾を投下した。

「最上さん、俺の事好きだろ?」


最上山噴火


「どどどどどどどどどどど「どうしてって?態度でなんとなく」」
「そそそそそそそそそそそ「そりゃ伝わるよ。誉めたりしたら真っ赤になってその後すごく嬉しそうにしてくれるし、時々こっそり潤んだ目で俺の事見つめてるし」
「ちちちちちちちちちちち「違うの?」」

哀しげに首を傾げた姿が、190センチの大男のくせに無駄に可愛らしい。
そんな様を見せられると好きなのは事実なので言葉につまる
すると蓮はにぃ~っと笑った

「沈黙は肯定」
「!」

そんな言い回しは覚えているのか、いや実はもう記憶は戻ってて新手のイヂメなんじゃないかとかすっかり敦賀の坩堝にはまったキョーコに構わず蓮は続ける

「やっぱりな。最上さんって呼んでるとこみるとまだ付き合って間もないんだろうけど、隠す必要はないのに。むしろ恋人が傍にいてくれる方が嬉しいよ」
「つ、付き合っていません!」
「まだ隠すの?俺の事好きなのは否定しないのに?」
「ええ!そうですとも!好きですよ!お慕いしていますよ!だけど、私だけ好きなんじゃ付き合ってるとは言えないんです!」

記憶が戻った時蓮が覚えていたらどうしようという考えがチラついたが、キョーコはもう自棄になっていた。それにしたって分かっていたことだけど自分で言ってしまうと情けなくて泣けてくる。
涙目のキョーコの抗議を蓮は吃驚顔で受け止めた。
まるで、地球は球ではなく三角錐なんですと言われたかのような吃驚顔だ。

「…なんで“私だけ”?」
「え?そりゃあ…私が敦賀さんを好きだからじゃないですか。何度も言わせないで下さいよ」
「いや、それなら両想いじゃないの?」
「は?」
「俺も最上さんの事好きなんだと思うけど?」
「はぁ―――――――――――――っ?」

キョーコは眩暈がした。
この天然タラ紳士めは記憶喪失にかまけてなんて残酷なことをぬかしてくださるのか?

「だって君だけ憶えてるじゃないか」
「そんなの好きっていう根拠にはなりませんよ。骨の髄まで嫌いだから憶えていたのかもしれません。」
「そんなに嫌いな子をキッチンを自分の城にするまで部屋にあげたりしないから。それとも何?嫌われてるって感じるようなことされてたの?」
「いや…最近は…でも時々意地悪だったり…」
「それは好きな子をいじめたいって心理じゃないの?」

俺って結構ガキっぽいんだね。まるで他人事のように呆れてみせる。

「ま、まあ…嫌われてないにしろですね。ただの後輩ですから!好かれてはいませんから!」
「絶対好きだって。最上さんと2人だとすっごく居心地がよくて幸せだもん」
「もんってなんですか。もんって!居心地がいいのは私の事だけ憶えてるからなんとなく安心できるんです!それに病院とこのマンションに籠りっきりで女性が他にいないからです!それに…」
「それに?」
「…敦賀さんには好きな方がいらっしゃるんです」

だから私じゃないんです。胸がズキズキして声が小さくなった。また眼が潤みそうになり慌てて下を向く。

「好きな人?直接聞いたの?」
「いや…その…私がいると思わずに喋ったと言いますか…」
「じゃあ最上さんのことかもしれないじゃないか」
「違います!1年くらい前16歳の高校生だって言ってました!」
「最上さんって17だろ?」

じゃあ1年前の16歳の高校生。と指を差される。顔をあげて右手でその指を脇によけた。

「ち・が・い・ま・す!代マネで敦賀さんが風邪を引いた時に寝ぼけて言ったんです。『キョーコちゃん』って。私そのころは苗字だって呼ばれていませんでしたから」
「そんなの、君のこと妄想で『キョーコちゃん』って呼んでただけかもよ?」

だとしたらちょっとイタイ奴だけど。そういう蓮は引き下がる気はないらしい。

「他に女性がいない云々だって、病院だって若いナースは沢山いたし、今日は撮影で大友さんってモデルと一緒だった。売れっ子だけあってすごく綺麗な人だったけど…」

じっと蓮の眼がキョーコをとらえた。

「俺にとっては最上さんの方が魅力的」
「…」
「大友さんとはCM上の役柄を演じるだけ、仕事相手としては好印象だったけどそれだけ。でも最上さんとは一緒にいたい、もっと色んな話をしたい。もっと傍によって抱きしめたい。もっともっと色々したい」

ふぎゃっと奇声をあげてキョーコが更に噴火する。

「そ、そ、そそそそんなの…」

敦賀さんが記憶をなくてる間だけですよ…。絞り出した声はひどく小さかった。
あんまり残酷な夢は見せないで欲しい。
俯くと蓮の手が再びキョーコの頭に伸びて、ゆっくりと撫でられた。

「確かに俺は記憶がない状態だけど…最上さんの気持ちは嬉しいし、最上さんの名前を呼ぶ時に胸が温かくなるのは紛れもない事実だよ」

少し顔をあげた先の蓮の顔はとても真摯な表情

「この3日間、最上さんが来てくれるのが待ち遠しかった。時間になるとしょっちゅう時計を見てソワソワして、そしてインターフォンが鳴って君がマンションのエントランスに来たことを教えてくれる」

蓮が目を閉じて、口角が緩やかに上がる。

「ロックを解除して…想像する。最上さんは少し足早にエントランスを抜けてエレベーターのボタンを押す。エレベーターの現在地を知らせる表示を見ながら早く早くと到着を待って…乗りこんだらこのフロアのボタンを押して、またソワソワと動いていく数字を見つめるんだ。」

蓮の想像がほぼあたっていることが気恥ずかしい。

「最上階についたら素早くエレベーターを降りて、早足で通路を歩く。俺はそのタイミングで玄関に向かうんだ。君がチャイムを鳴らしてくれるのを今か今かと待ちわびて…でも少し余裕のあるところも見せたくて、チャイムが鳴ると一呼吸置いてからドアを開けるんだ」

眼を開けた蓮の顔に浮かぶのはとても…とても優しい笑み。

「今俺は記憶が無くて、記憶が戻ったとしてもこの3日間を憶えているかどうかも分からない。だけどこの胸の暖かさは確かにここにあるんだ。」

だからねえ…

「俺をちゃんと見て欲しい。俺が最上さんをどんな眼で見ているか。その時どんな表情なのか、ちゃんと見て?」

答えはそこにあるから。
蓮の手がそっとキョーコの頭から離れ、さあお茶でも入れるよとキッチンに向かった。


*
*


蓮の記憶が戻ったのはその2日後のことだ。
キョーコはロケ先で社から電話で報告を受けた。

『ドラマの撮影が始まる前に記憶が戻るなんて、いかにも蓮らしいだろ?吃驚したよ~。まだ朝暗いうちに「俺撮影中だったはずなのに」って電話してくるんだから』

朝一で受けた診察でも問題はなかったらしい。
いくら前向きに過ごしていたとはいえ心配だったのだろう、社の声は弾んでいた。

「記憶がない間の事は…」
『全然憶えてないんだ。キョーコちゃんの名前と顔だけ憶えてたって教えてやったらすっごい慌ててたよ~』

夢の時間は終わったのだ。
キョーコは携帯を持っていない手でスカートを握りしめた。

『キョーコちゃんにお礼とお詫びがしたいって言ってたんだけどさ。病院によったせいもあって今日明日のスケジュールキチキチなんだよ。でも隙があったら電話すると思うから』
「お忙しいんですから結構ですよ。記憶が戻って本当によかったです」

社の言うとおり蓮からは何度か電話をもらった。
だが、タイミング悪く蓮が電話をかけてくれる時はキョーコが撮影中や手が離せない時で、その逆も一緒だった。留守電は当然のことながらあの時話したことには一切触れない。
だが、キョーコの耳には蓮の言葉がずっと聞こえていた。
キョーコの名前を呼ぶと胸が暖かくなるのだと告げた、あの優しい声がずっとずっと


結局、電話はすれ違いが続き、2人が言葉を交わしたのはロケが終わった翌日の事だった。

「本当にありがとう。試験期間中だったのに泊まり込みまでさせちゃって」
「いえいえ、気になさらないでください。私も英語や数学教えていただいて得しちゃいましたから。本当に記憶が戻ってよかったです。でも休んでいた間の仕事こなすの大変じゃないですか?」
「それはこの3日でだいぶ落ち着いたから大丈夫。それで…あの…」

蓮には珍しく歯切れが悪い。

「どうかしましたか?」
「いや…2人の時俺…最上さんに迷惑かけたりしなかったかな…とか」
「大丈夫ですよ。すっごく居心地よかったです」

居心地がいいなんてまるで記憶がない方がよかったと言ってるように聞こえないか?と思って慌てる。いつもならそこから別の答えを出すのに必死になって自分の世界に閉じ籠るのだが、耳に残るあの声が聞こえた

“俺をちゃんと見て”

目を逸らさず蓮の顔を見る。
蓮は無表情で固まったかと思うと、脇を向き口に手を当ててコホンと咳をした。

「そう…それならいいんだけど…」

声は常と変らないが、その頬はほんのりと赤くないだろうか?
眼を見開いてジッと見つめるキョーコの視線にようやく気付いた蓮が少し動揺した様子で尋ねる

「何?」
「あ…いえ…」

“俺も最上さんの事好きなんだと思うけど?”

勇気を出してみようか?
あの時の真摯な眼を、優しい声と笑顔を信じて
もし…もしも次の言葉に蓮が頷いてくれたら…勇気を出して…

「あ…あのですね。記憶が戻ったお祝いに…ご飯作りに行ってもいいですか?」

しどろもどろのキョーコの言葉に、今度は蓮が眼を見開いて…

「勿論。嬉しいよ」

神々しく甘い笑顔で頷いた。


(おしまい)






敦賀さんによるセルフアシストとなりました記憶喪失の為の習作第4弾いかがだったでしょうか?

今回のテーマは「記憶と一緒にラブミーフィルターが無くなったら」

敦賀さんがキョーコちゃんの気持ちに気付かないのは勿論恋愛音痴ってのもあるんでしょうが、「最上さんはラブミー部員だから恋愛は拒否」という強力なフィルターかかっているんじゃないかなあ…とか思ってですね。
それ取り除いたら、「あれ?この子俺の事好きなんじゃないの?」位思ってもいいかなあ、とか思ったわけです。
そんな訳あるかい!と思った方すいません。

記憶喪失の為の習作はこれからもまた出現します。
とりあえず明確に予定してるだけで後3つ。次は辛気臭い系でいこうかな~

また出てきたら読んでやってくださいませ。

お付き合い有難うございました。

ちょび
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C.O.M.M.E.N.T

Re: 爆笑!

> ゆうぼうず様
そこまで笑っていただけてもう本望でございます!
蓮のテレ顔はダークムーンスランプ時のお弁当届けてもらった時の顔をイメージしたんですが…「敦賀さん風邪ですか?」とかキョーコちゃんなら聞くかもしれませんね(笑)

2015/03/05 (Thu) 00:28 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

Re: あわわ

>山口マヨネーズ様
ご訪問&コメント有難うございます!
小躍りするやら、恥ずかしくて走り出したくなるやらハートが忙しかったです(笑)
2人とも普段は抱えているものが多すぎる上に先入観が強すぎて肝心なところが見えていないんじゃないかなあと思いまして(そこが面白いところでもあるんですけど)片方のフィルター外してみたら能天気な若造が誕生しました♪
やたらめったら記憶喪失している拙宅ですがまた楽しんでいただけたら嬉しいです。

2015/03/05 (Thu) 00:25 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

Re: 確かに。

>魔人sei様
ありがとうございます!
そうなんですよねー。大事な時に変な学習能力が働いて腕くんじゃってますからね。
フィルター壊されて混乱したキョーコちゃんが知恵熱でなきゃいいのですが…

2015/03/05 (Thu) 00:01 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

Re: ほこっりと幸せな気分

>tase様
有難うございます!
敦賀さん本人に背中を押されたら流石にキョーコちゃんも動いちゃうかなあと思いまして…。

2015/03/04 (Wed) 23:54 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

Re: 心がほっこりしました

>mochiko様
お久しぶりのコメント有難うございます!
普段の敦賀さんは国籍ではなく年齢詐称なお人ですもんね(笑)あの落ち着きっぷりはどうみても21じゃない。
全てから解放された押せ押せ敦賀さんに背中を押されて告白となるのか、いやいや記憶喪失の間の事だからと思い直すのか?はたまた敦賀さんが思い出しちゃうのか?色々想像してみて下さーい。

2015/03/04 (Wed) 23:41 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

Re: 暖かい、可愛いお話、面白かったです!

> genki様
有難うございます!
いろいろ抱えている敦賀さんも大好きなんですが、ここはしがらみも罪もフィルターも全部無くしてもらったらなんだか能天気男になりました。確かに春向けかもしれません(笑)

2015/03/04 (Wed) 23:34 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

爆笑!

『最上山噴火』で爆笑!
いきなり笑いだしたので、息子達に「キモッ」っていわれたぁ(^^;
フィルター無くなると、すんなり両想いという結論に結び付くんだね。それでも、自分の片想いだと主張するキョーコが可愛いらしい(^▽^)
蓮の照れ顔とか本編でもキョーコに観察してもらいたぁい!!と思いました。
素敵なお話ありがとうございます(*´∀`*)
次のお話も楽しみにしてます。

2015/03/04 (Wed) 21:08 | ゆうぼうず #- | URL | 編集 | 返信

あわわ

昨日の投稿、おかしな英字がたくさん入ってる(笑)

はんぱなく読みにくいと思いますので、出来たら削除お願いいたします。

これは無事に投稿出来るかな?


更新楽しみに待ってました(^^)
記憶のない蓮は、先入観や縛りがない分、自由でストレートでそんな彼とキョーコのやりとりが面白かったです。

蓮もキョーコも普段自分の気持ちでいっぱいで、お互いをフィルター越しに見ては自己完結してそうですよね(笑)

記憶喪失って設定が好きなのでこのシリーズは増えて欲しいです!

2015/03/04 (Wed) 18:38 | 山口マヨネーズ #fyNJmLmY | URL | 編集 | 返信

確かに。

曲解乙女なキョコさんだけでなく、蓮さんも今だよ、押せ押せ!のときに、」「最上さんはラブミー部員だから恋愛は拒否」という強力なフィルターで引いちゃいますよねー。周囲からみれば一目瞭然なのだから、ふたりの間にだけそのフィルターがあったのでしょうね。
このあと、またフィルターをつけかけている蓮さんに、曲解をやめたキョコさんの態度はどううつるのか。続きも気になりますが・・・・ひとまず(?)完結おめでとうございます!このシリーズ大好きなので、また別のパターンスタートも楽しみにしてます。

2015/03/03 (Tue) 21:23 | 魔人sei #NkOZRVVI | URL | 編集 | 返信

ほこっりと幸せな気分

記憶を取り戻した蓮が、記憶喪失だった時のこと覚えていないことが寂しく感じましたが、キョーコから動くきっかけにしてしまう、ちょび様は最高です!読んでいるこちらが幸せになれる、素敵なお話をありがとうございました。余談ですが、「最上階」を「もがみかい」と読んでしまいましたm(_)m

2015/03/03 (Tue) 20:16 | tese #- | URL | 編集 | 返信

心がほっこりしました

お久しぶりにコメントしました。
このお話の蓮さまは実年齢に近い感じ。
記憶をなくす前の所謂ヘタ蓮ではなくて
ガンガン本音言っちゃって。
キョコちゃんは嬉しいけど複雑な気持ちになったりもして…
蓮さまというより、素直な久遠くんって感じがしました。
ほっこりしてその後が気になるお話をありがとうございました。

2015/03/03 (Tue) 20:15 | mochiko #2e8W9a/Q | URL | 編集 | 返信

暖かい、可愛いお話、面白かったです!

お話、面白かったです~!久遠君じゃない大人度高め、素直さ倍増の蓮さまが素敵でした。記憶がないときの蓮さまの方が良いくらい。春に向かう時期にふさわしいお話でした。とっても癒されました。どうもありがとうございます。

2015/03/03 (Tue) 13:47 | genki #- | URL | 編集 | 返信

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