2015_11
19
(Thu)11:55

恋愛カタログ-3終話(ほんのわずか番外4)

通常公開するにあたって、この恋愛カタログが一番弄りました。少しはまとまったかな?

2015/3/20、2015/11/19一部修正の上通常公開





ざっざっざっ
夜道を歩く2人の足音だけが星明りの中聞こえる。

先程から殆ど口を開かない勝に美里は不安になった。
久しぶりに上がり時間が重なって、少し散歩でもして帰ろうかと誘われて、これで仲直りだと浮かれていたけれど別れ話だったらどうしよう。



■恋愛カタログ-3終話(ほんのわずか番外4)




(絶対に別れないから)

一緒に居てこんなに楽で楽しくて、おまけに漫画の趣味まで一緒の男なんて今後の人生で出会えるなんて思えない。こんなに好きにさせといて絶対に逃すもんかと拳を握る。婚約までしたのだ。しっかりきっかり責任をとってもらおう。

そうしているうちに2人の定番の夜の散歩コースの折り返し地点についた。
ここから見える星空は本当に綺麗なのだが、勝が足をとめてこちらを向いたので緊張で身体が強張り空を見上げるどころではない。

「…美里、変な嫉妬してごめん」

謝罪のの内容が別れでない事にホッとする。

「ううん。私こそあんな写真残しててごめん。でも未練とかじゃないから。1枚くらい残してもいいかなって思って忘れてただけだから」
「うん。よく考えれば分かることなのに悪かった。あんまり俺とランクが違いすぎる男だからなんか卑屈になった」

情けないな。そう笑う勝にそんなことないと否定しようとして…

「謝ろうと思ってたところに、本人登場して…美里がやっぱりあの人がいいんじゃないのかとか、俺と結婚すること後悔してるんじゃないかと不安になってうまく謝れなくなった。」
「は?」
「俺は美里と結婚したい。絶対別れたくないだから「…何、勘違いしてんのよ」え?」

ここはキッチリカッチリ分かってもらわなければ。声が自然と大きくなる。

「勝と結婚決めたことを後悔する気持ちなんてミジンコほども持ち合わせてないから!!!いい?よーく覚えておいてよ!私の幸せはあんな宇宙人にチップ埋め込まれるような男とのこましゃくれたディナーにあるんじゃなくて、炬燵で勝が剥いてくれたミカンを食べることにあるんだからね!!!」

みしっ

啖呵を切ったところで背後で物音がした。振り向くと…バツが悪そうに元彼氏様とその彼女が立っていた。

固まること10秒。
ものすごくカッコ悪い啖呵をよりにもよって一番聞かれたくない男に聞かれるとは…

「ななななっなんで」
「いや…先にいたのはこっちだから。フロントで星がきれいだって教えてもらって」

(のぉーしーろーっ)

プロポーズの為のとっておきと言うから教えてやったのに。湧き上がる後輩への怒りと共に頭は高速回転する。蓮を特定するような発言を自分も勝もしただろうか?…彼の背中に隠れるように立つ人のよさそうな彼女には知られたくない。元カノの務めるホテルだなんて絶対嫌だろう。

(大丈夫。固有名詞は出してないわ!)

ホッとして今一度蓮と彼女を見ると…夜目にもわかるほど真っ赤な顔をしてモゾモゾしているキョーコの服は心なしか乱れているような…そして蓮は嘘くさい微笑みを浮かべたまま、勝の眼からキョーコを自分の背に隠している。そうなると何をしていたかは明白で…

絶句とはこういう事をいうのだ。

(つーるーがーれ―ん!あんた、何盛ってんのよ――――――っ!!!部屋までの10分程度も我慢できんのかっ!!!)

色ボケ男を睨みつけてやるが、胡散臭い笑顔を浮かべて「お邪魔だから帰ろうか」なんていけしゃあしゃあと言っている。服を整え終わったキョーコが頷いて、美里たちにぺこりと頭を下げた。

「す、すいません。お話の邪魔して…」
「いえ…」

お邪魔したのはこっちです。とは言えない。
こっちのそんな気持ちなんてお構いなしに、宇宙人モドキは彼女に甘ったるく話しかける。

「キョーコ。大丈夫だよ。美里はそういうのあまり気にするタイプじゃないから」

美里は?

その場の空気が再び固まった。

(うっわーっ!ウカポロしたよ!私の配慮を無駄にした!)

当然のことながらキョーコはスルーしてはくれなかった。

「…みさと?」
「え?あっ」
「…なるほど。宇宙人にチップ埋め込まれたのは敦賀さんでしたか」
「いや、その…」
「なるほど。なるほど。」

頷きながらスタスタとホテルへの道を歩き出したキョーコに蓮が追いすがる。

「昔!昔の事だから。キョーコが入社する前には別れてたから」
「へえ~そうですか」
「キョーコの事しか愛してないから」
「はいはい。」
「本当に。本当だから。このホテルに勤めていたことも忘れてたから」

絵にかいたような狼狽ぶり。漫画だったら周りに汗が散っていることだろう。この男もこんな風に狼狽することがあるのだと興味深く見てしまう。

「キ、キョーコ?」

キョーコは足をピタリと止めて、蓮を見上げた。

「別に怒っていません。敦賀さんに前に彼女がいた事なんて想定済みです。きっと美人さんだったんだろうなあって思ったことありましたし」
「いや、だからそれは」
「私だって一応とはいえお付き合いした経験はあるわけですし」
「…それは記憶から抹殺してほしいんだけど」
「な・ん・で・す・か?」
「…すいません」

ほら、もう行きますよ、とキョーコは蓮の手を取り歩き出した。
蓮はまだ何やら一生懸命弁明しているようだがキョーコはどこ吹く風だ。
その様子を美里と並んで見ていた勝がぽつりと言った。

「…なんか敦賀様って見掛けによらず愛情表現が豊かなんだな」
「正直に暑苦しいって言えば?前は見かけどおりだったよ」
「見かけ通りって?」
「完璧超人で、まるでカタログにでも載っているような暮らしをして、お洒落でスマートなお付き合いをする男だった」
「…美里がお洒落でスマートってのも…」
「うん。だからすっごく外面作ってた。漫画も炬燵も封印して」
「まじ!?お前が炬燵無しでどうやって冬を乗り切れるんだよ?」
「無理してたよねー。若かったな~」

完璧超人な彼氏がキラキラピカピカして見えて、その存在に相応しいように無理をしていた。そうすれば自分の価値もなんだか上がる気もした。
あれはあれで貴重な経験だった気もするけれど。

「ちょっともったいないよな」
「は?何が?」
「だって美里の袢纏姿見たことないんだろ?結構可愛いのに。ゆるキャラ的で」
「…そんなこと言うの勝だけだから」
「そうそう。だから美里は俺で妥協しときなさい」

勝はそういって笑い、星を見上げた。
別に妥協したわけでも我慢している訳でもないけれど…うまく言い表せなくて美里も笑って空を見上げたが、キラキラ男のギトギトな愛情を見せつけられた後で見る星は霞んで見えた。

*
*


翌日のお昼は外に食べに行こうと勝が言ってくれた。このところのお詫びを含めてご馳走してくれるというので遠慮なく高級蕎麦をリクエストする。天麩羅をつけるか、ミニカツ丼をつけるか悩みながら店に向かう。

昼には少し早い時間だったが、日曜の店は結構混んでいて、相席に案内される。

「「「「あっ」」」」

昨夜からまたもや…つくづく縁があるのだろうか?ちっともありがたくない。

「こんにちは。昨夜は本当にすいませんでした。」
「いえ…最上様」
「様なんて、ホテルの外なんですから普通にお願いします」

ニコニコと笑いながら提案されるが、急になれなれしくは流石になれない。
曖昧に頷いて席につく

「このお店ガイドブックにも載っていないのによく分かりましたね」
「チェックアウトの時にフロントの方に教えてもらったんです。」

(また能代か…)

人のとっておきをあちらこちらに垂れ流すんじゃない。今度延々説教してやらねば。
能代再教育計画を頭の中で組んでいると、キョーコが勝の方を見て言った

「え…と、美里さんと同じホテルの方ですよね」
「はい。横手と同じくフロント業務を担当しております」
「私達婚約してるの」
「そうなんだ。おめでとう」

見事な位社交辞令なご挨拶。だが、チラリと隣の彼女を見て表情を緩めたところをみると自分たちの未来を想像したのかもしれない。
キョーコはニコニコと祝福してくれた。

「おめでとうございます。昨日ホテルでお見かけした時中国のお客様を流暢な言葉で案内されていて、ザ・ホテルマンだ。って思ったんですよ」

自分の大事な人が褒められてテンションがあがる。

「そうなんです!仕事している姿はほんとーっにカッコよくて。私もこんな風になりたいって思うし、惚れ惚れしちゃうんです。きっとどんな事態になってもこの人がいたら大丈夫って安心できるし、それに普段のかわいい姿とのギャップも堪らないし!」
「おい、美里」

はた、とここが蕎麦屋で、相対しているのが元彼とその彼女だと気付いた。
キョーコの方は笑顔で頷いてくれているし、蓮の方は自分もキョーコに褒めて欲しいのか「俺は?俺は?」と言わんばかりの顔をして彼女を見ている。勝は…。

照れ臭そうに、でもまんざらでもなさそうに、幸せそうに笑っていた。

その笑顔にきゅんきゅんして、そして気付く
もっと早くちゃんと言えばよかった。そうすればもっと早くこの笑顔に出来たのに。
蓮との関係が無理だったからでもなく、妥協したわけでもなく、ましてや我慢なんてしているわけではない。
貴方がいいのだと。好きなんだと。


「おまちどうさま~。ざる蕎麦おろし付と、なめことろろ蕎麦ね~」

ちょっとピンクになりかけた雰囲気を店のお兄さんがぶった切ってくれ、蓮の前に置かれたざる蕎麦をみてまたもや驚愕する。

「ええ!?ざる蕎麦なんて食べるの」
「…蕎麦屋で蕎麦食べずに、俺に何を食べろと?」
「…BLTサンドとコーヒーとか?」

「千秋かよ」とつぶやく勝にナイス突っ込み!と心の中で賛辞を贈るが、蓮には華麗にスルーされた。

「蕎麦位食べるよ。うどんだってお好み焼きだって」
「お好み焼きぃ?」
「うん。ホットプレート買ったから2人で作るよ。最近はひっくり返すの上手になったよね?」
「最初はヘタすぎてびっくりしましたけどね。天井近くまでお好み焼きは舞い上がったときは幻覚を見てるんだと思いました。」

あの部屋にホットプレート?お好み焼き談義を続ける2人を口をあんぐり開けて見つめていたが、そうしているうちになんだか笑いが込み上げてきた。そんな美里に気味悪そうに勝が小声で問いかける。

「何ニヤニヤしてんだよ」
「あーごめん。なんか綺麗なお皿にちんまりお上品に盛られた料理しか口にしないと思ってたから、吃驚しちゃって」

ふふふっと笑ってお茶を飲む。

蓮と付き合っているといつも綺麗でスマートでいなきゃいけない気がして肩が凝った。
何時誰が見たっていいようなカタログみたいな暮らしをしなきゃいけないんだと思ってた。
でも、きっと美里だって蓮を型に当てはめていたのかもしれない。蓮も美里や歴代の彼女たちが望むようにふるまっていただけかもしれない。

目の前にいるのは一生懸命に彼女を愛して、愛されたくて、一緒に食べるご飯を美味しそうに口にするとても人間臭い男だ。
完璧超人でも、理想を絵にかいたようなスマートな男でもないけれど、人としてはずっとこっちの方が魅力的だ。
まあ、美里にとっては、勝の方が100万倍素敵だけど。

「ざる蕎麦大とミニカツ丼お待ちの方―」
「はいはい、私でーす」
「それ…全部食べる訳?」
「そうよ?悪い?勝は私の食べっぷり褒めてくれるわよ」
「そうなんですか?」
「みてて気持ちいいほどよく喰うんで。エンゲル係数は怖いから計算できませんけどね」

なんだか和やかに話し合う3人にいただきますと言って食べ始める。

大事な人と食べるご飯はなんでこんなに美味しいのだろう。
美味しい食べ物がお腹と共に心を満たして、口元が緩んで、顔をあげたその先に好きな人がいることに嬉しくなって満面の笑みになる。そんな美里をみて勝も優しい笑顔になって、蓮とキョーコも顔を見合わせて微笑んだ。

(お互い、いい人見つけたよね)

元彼と自分に心の中で祝辞を述べる。
ありのままでいれるのも、こんなに幸せな気分になれるのも、お互い今隣にいる人のお陰に違いない。


さあ、恋をしよう。

カタログなんて載らなくていい。

自分達だけの恋を。


(おしまい)




3話に絞っても(あまり絞れてないけど)またもやオリキャラ目線に敗北感感じます。

お付き合いいただきありがとうございました。



(4に続く)


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コメント

Re: ワンコな蓮さま♪

> ○海様
コメント有難うございます。そして毎度毎度お返事遅くてすいません。
元カノ目線って好き嫌いあると思って最初ビクビクしながら公開したので、一番と言って戴けて嬉しいです。
その人を好きだからこそ、人の眼なんて気にせず一生懸命になって、その人の態度に一喜一憂して…この年までちゃんと恋愛をしてこなかった敦賀さんはそりゃあもう一気に人間味を帯びるだろうなって思います。

2015/11/24 (Tue) 23:24 | ちょび | 編集 | 返信

管理人のみ閲覧できます

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2015/11/21 (Sat) 03:51 | | 編集 | 返信

Re: No title

>ななな様
いつも読んでくださってありがとうございます。
この元カノ目線は、限定記事で公開した時に間延びしてしまった感があっていろいろ弄ったので楽しんでいただけてよかったです。

横手、大館、能代…うふふ、そこに注目してくださる方がいらっしゃるとは!嬉しいです。
私は関西在住で秋田には行った事はありません。きりたんぽ自分で作ったりするほど好きなんですけど本場のは一度も食べたことがないです(笑)
オリキャラの名前はいつも地名からつけるですよ。「恋愛カタログ」は秋田ですが、「貴方じゃなくても」は北海道、「12月の鬼」は福島…実は都道府県の北から順に使ってます。時々どこまで使ったのか分からなくなって戻りますが。
ちなみに横手美里の美里は美郷町から、大館勝の勝は雄勝から
苗字は地名をそのまま使いますが、名前は音だけ使ったり、漢字の一部を使ったり…○国書院の地図帳みながらじっくりと絵選ぶんです。

2015/11/20 (Fri) 17:43 | ちょび | 編集 | 返信

No title

いつもお邪魔しております。続きがとても待ち遠しかったです。
元カノさん視点も新鮮でした。
どんどんキョコによって、変わっていくんですね。
ところで、横手、大館、能代。秋田の方ですか?

2015/11/19 (Thu) 23:08 | ななな | 編集 | 返信

Re: キャトら蓮様の御乱心。

> まみこ様
有難うございます。大丈夫です。一度だけきましたよ~。
もう元カノの眼から見ると未知の生物と化しました(笑)
ダラダラ続いていますが、次でラストです。よろしくお付き合いくださいませ。

2015/03/23 (Mon) 16:16 | ちょび | 編集 | 返信

キャトら蓮様の御乱心。

爽やかな朝に夜の帝王発動。
そして側には元カノの姿が…ホントにキョコたんしか目に入ってなかったようですね~。もう、読んでいてヤッシーばりのぐふふ顔になってしまいましたよ。
さて、両社ご対面でどうなるんでしょうね。続き楽しみにしています!


なんだかパソコンの調子が悪くて、もしかしたら何回も送ってしまっしているかもしれません。前もって失礼しました.

2015/03/21 (Sat) 06:15 | まみこ | 編集 | 返信

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