2015_03
13
(Fri)11:55

秘密の小箱(1歩いっぽ26.5)

はい、明日はホワイトデーということでバレンタインデーの対のお話です。
本編的には26話の後のお話になります。(コーン告白の後のお話ですね)
お蔵入りしようとも思ったお話なんですが、まあバレンタインデー書いちゃったし…



1歩いっぽ本編はこちらから↓
(1)、(2)、 (3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)、(19)、(20)、
(21)、(22)、(23)、(24)、(25)、(26)、(27)、(28)、(29)、(30)、(31)、(32)、(33)、(34)、(35)(36)、(37)、(38)、(39)、(40)、 
(41)、(42)、(43)、(44終話) 

番外編バレンタインデー話はこちら (18.5)

2015/3/13
バレンタインデーにもらった1.5倍サイズのチョコレート
あの優しい大きな手で丸められたそれを口に入れると幸せ一杯になれた。
だからキョーコも小箱に詰める。
キョーコを尊重して待ってくれているあの人に
甘いものとあまり結びつかない人だけど、苦めのコーヒーと一緒なら大丈夫なはず

カカオ味のこげ茶のマカロン、目標の先輩俳優へ
抹茶味の緑のマカロン、幼いころからの支えだった妖精王子へ
苺味のピンクのマカロン、まだ告げられない想いをこめて

渡す勇気が持てないまま鞄に入れっぱなしの小箱の分までこのマカロンが蓮を喜ばせてくれますように



■秘密の小箱(1歩いっぽ26.5)




シスコから帰国したばかりの連に和食中心の夕飯を振舞って、蓮がコーヒーを淹れてくれたタイミングでキョーコはそれを差し出した。

「あの…これ、ホワイトデーです。遅くなっちゃいましたけど…」
「14日はシスコだったからね。ありがとう。開けていい?」

小さく頷くと蓮はいそいそとリボンを解き蓋を開ける。

「綺麗な色のマカロンだね。最上さんが作ったの?」
「はい。手作りには手作りでと思いまして…。」
「俺のは溶かして混ぜるだけだったけどこれは難しそうだな。緑のは抹茶味?」
「そうです。…コーンの瞳の色をイメージして」

ああ、と蓮の笑みが深くなる

「じゃあこの焦げ茶は?」
「カカオ味は敦賀さんの瞳を…」
「じゃ、ピンクは?」
「イチゴ味は彩に…」

私の気持ちが籠ってますとはまだ言えない。有り難いことに蓮は言葉通りに受け取ってくれたようだ。

「早速いただいていい?丁度2つづつ入ってるし一緒に食べよう」

3つだと流石に寂しいかと思って2こづつ合計6個のマカロン、蓮が食べきれるとは思っていなかったので申し出に素直に従った。
使っている抹茶の産地はどこそこで、あそこのお茶の葉はなどと…22歳と18歳にしては渋い会話を楽しみながらマカロンをいただく。流石に口が甘くなり、お代わりしたコーヒーに口をつけていると、蓮がじっとこちらを見ているのに気が付いた。

「…なんですか?」
「…後は?」
「は?」
「アルマンディで買ったプレゼントは俺にじゃないの?」

ぐごっ
コーヒーを思った以上に口に含んでしまい苦しいやら熱いやら…
おまけにこんな風に慌ててしまったら肯定しているも同じだ。

「な、なんで…」
「シスコに立つ前に貴島君と一緒の仕事があって、その時に言ってた。アルマンディのショップに最上さんがいたって」

あれを貴島に見られていたのか、恥かしさのあまり転げまわりたくなる。

「ギフトラッピングした包みを受け取ってたって言ってたよ。俺にじゃないの?」

少々拗ね気味にでも絶対にひく気はないといった様子だ。
メンズのフロアなのだから当然男性へのプレゼント。キョーコに父親はいないし、だるまやの大将とアルマンディは太陽と海王星並みに距離がある。

「あ、あれはですね。確かに敦賀さんへのホワイトデーと思って買いにいったんですけど…その…店員さんにのせられちゃったと言いますか…」
「じゃあやっぱり俺にだよね?」

さあさあ、と蓮の手がこの上に乗せろと言わんばかりに差し出される。

「いや…あれは…」
「最上さんの性格から言って、買ったものを使わずに捨てるなんてできないだろうし、転売なんてしないだろうし?どうしようかと思って鞄に入れっぱなしにしてるんだろう?」
「で、でも…」
「それがなんだって最上さんからもらえるなら嬉しいから。もらわないって選択肢はないから。さあ出して?」

あげるのは私なんだから私に選択肢はあるはずなんですが―!と心の中で叫ぶが、確かにもったいなくて鞄にいれたままだ。
ノロノロと鞄から取り出して進呈すると、ニコニコ顔の蓮が受け取り早速開けようとする。

「あ、あのっ!」
「何?ここは俺の部屋だし恥ずかしいとか聞かないよ?」
「いや、開けるのはいいんですけど、深い意味とはありませんからね!」
「何?そんなに意味深なものなの?」

益々楽しそうに蓮が包みを解く。中から現れたのはロイヤルブルーの…

「ボクサーパンツ?」
「本当に深い意味はありませんから!なんていうか店員さんに乗せられたとしかいいようがないんです!」

そう、蓮といえばアルマンディだろうと短絡的思考で訪れたショップで、あまりの値段のご立派さに眩暈がしていたら、やり手そうな女性店員に声をかけられたのだ。

「プレゼントをお探しですか?」
「プレゼントというか…お返しといいますか…ささやかなものでいいんですけど…」

そうじゃないとお財布が…とは言えずにもじもじしていると、小物類を色々と見せてくれた。
小物といっても相当なお値段だ。おまけに蓮は物を大事に使うタイプそうだからあまり適当なものは選べない。
ハンカチにでもしようかと思っていたら…

「こちらも最近は贈り物にと仰る方が多いですよ」

と見せられたのがボクサーパンツ。
瞬時に真っ赤になった顔を気に入ってもらえたと受け取ったらしい。

「その方の体格は?」
「え?あ…背は高くて細身ですけど…」
「当社専属モデルの敦賀も長身で細身でございます。きっとお似合いになりますよ?これや…これなんて素敵なお色目だと思いますが」

蓮の名前が出たことでますます挙動不審に拍車がかかる。
何か逃げ道はないのかと視線を泳がせれば、店内に飾られた蓮のポスターと目が合って、叫び声をあげる代わりに握りしめてしまったのが件のロイヤルブルーのボクサーパンツなのだった。

「あんなところ貴島さんに見られてたなんて…」

恥かしいが見ていたなら助けて欲しかった。と密かに愚痴る。

「貴島君も連れがいたみたいで声はかけれなかったみたいだね。」

俺デート中だったからさあ、男物のプレゼントってことは敦賀君にかなあと思って、でもバレンタインも誕生日も終わったよね?そう言って貴島に聞かれたのを思い出して蓮は苦笑した。
世界でただ一人キョーコにチョコレートを渡して、キョーコからホワイトデーを受け取って、そんな乙女な思い付きを貴島に話したらどんなにからかわれることか。
一度広げたパンツをもう一度畳みなおしながら蓮は嬉しそうに笑った。

「最上さんが俺の為に買ってくれたんだから嬉しいよ。大事に履かせてもらうね。勝負パンツにしようかな」
「しょっ!!!」

半ば悲鳴のような声でキョーコが叫ぶ

「うん。これっていう仕事の日の為の勝負パンツ。…なんかいやらしい想像した?」
「し、してません!」
「そんなに真っ赤な顔で言われても説得力ないけど?」
「違います!どうぞしてください。勝負パンツに!なんだったら来年は褌に!」
「いいよ。褌でも。最上さんが敦賀蓮に褌履いて欲しいなら」
「だ、ダメです。らららら、来年も是非ボクサーパンツで!」
「じゃあそういうことで」

好きな子に選んでもらった勝負下着だと気合入りそうだよねー。と蓮は楽しそうに笑った。

「もっと気の利いたものが選べたらよかったんですけど…」
「嬉しいよ。俺の為に一生懸命考えてくれたんだろう?その時間と気持ちが嬉しい。たとえ嬉しい下心はなくってもね」
「…」
「あ、下心もあるなら有り難くいただくけど?」
「あげません!」

その日以来、大きな賞レースや話題のドラマの制作発表に出る蓮をテレビで見て「もしやあのパンツを?」と1人恥ずかしがるキョーコが目撃されるようになる。




そして、数年後の3月中旬
蓮の部屋にキョーコが自由に出入りするようになり、家の細々としたことはキョーコの方が詳しくなった頃

夕飯の準備が終わり、畳んだ洗濯物を片付けにきたクローゼットの奥でそれを見つけた。先週洗濯物を片付けた時にはなかった落ち着いたトーンの箱
丁度紳士物の靴が入る位の大きさだが、靴は玄関にシューズクローゼットがある。
なんだろう、と興味がわいた
でも、蓮が見られたくないものだったら…でも隠しているという風でもない。
躊躇したのはほんの僅かの間で、ちょっとルンルン気分で開けてみて…

「ただいま」
「つ、敦賀さん!なんなんですか-これ!」

ただいまのキスもハグもさせてくれないままキョーコがすごい形相で箱を突きつける。

「ああ、そういえば片付けてなかったな。見ちゃった?」
「なんでこんなもん溜め込んでるんですかー!!!!」

小箱の中には少々色あせたボクサーパンツが4枚。

「これ、私が前にホワイトデーにあげたものですよね」
「そうそう。ロイヤルブルーのが18歳のキョーコから。ダークグレーが19歳で、20歳はポースレングリーンとブラッキシュパープルの2枚。」

今年はパールグレイとオリーブイエローだったね。ちゃんと勝負パンツにおろしたよ。と朗らかにおっしゃってくれる。
それは知っている。先ほど洗い終わったオリーブイエローのパンツを畳んだばかりだ。

「敦賀蓮が色あせたパンツ履いてるなんてありえないから処分してくださいっていいましたよね?」
「うん、だからここに。」
「これは処分と言えません!」
「キョーコからの贈り物を捨てるなんて無理。せっかく箱まで用意したのに」
「は、箱まで買ったんですか」
「うん。ミラノで」

使用済みパンツの為にミラノでお買い物?

「勿体ないです!大体いつまで置いとくつもりですか?」
「えー死が二人を別つまで?」
「そ、そんなに?」
「あと50年やそこらじゃ大した荷物にならないよ」
「ならなくてもその後困るじゃないですか!」

例えばその時子や孫がいて、箱一杯のパンツを見たらどう思うのか…
おじいちゃん、おばあちゃんのことよっぽど好きだったのね、なんて微笑んでくれるだろうか?
いや、ない。絶対ドン引きだ。家族を喪った悲しみの涙も引っ込むかもしれない。
おまけに週刊誌に『往年の名優、遺品に箱一杯のパンツ』とか書かれたりして…

ぐるぐると考え出したキョーコに「おじいちゃんおばあちゃんになっても一緒だってキョーコも思ってくれてるんだ」と呑気に笑う。
そしてさもいいことを思いついた、といった風に提案した。

「その時は棺桶に入れてもらおう。色とりどりだし花代わりに…」
「敦賀蓮でも、久遠・ヒズリでも、棺桶に花代わりにパンツが詰まってるなんてダメですからー!!!」


(おしまい)





皆様お分かりでしょうか?これねーおパンツ同盟やってる時に思いついたネタなんです。
でも、ホワイトデーネタだし、成立後の話も出てくるし、1歩いっぽが完結しないと書けないよねーとお蔵入りさせていたのですが、結局書いちゃいましたねえ



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Re: 名作!!

> 愛海様
いつもいつも舞い上がるコメント有難うございます。
私を浮かれさせるコメントの名手ですよ!
1歩いっぽはもう私の「書きたい!」場面がギューギューになってます。腰抜かず場面なんて特に(笑)
それがギューギューに頭に沸いたからこそ人生初の2次なんてものに手を染めちゃったんでしょうねえ。
冴菜さんの件はもう本当に偏った妄想だと自覚しているので受け入れていただけて感謝です。
キョーコちゃんの完璧主義がお母さん譲りだとしたら、シングルマザーで仕事と子育てを完璧にって自分を追い詰めそうだよねって思ったんですよ。
本当にいつも嬉しいコメント有難うございます。書き手冥利に尽きます!

2015/07/24 (Fri) 22:42 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

名作!!

こんばんは。数日かけて読ませていただきました。笑いあり、涙あり、和みありの超大作!!

社さんと黒崎監督のコントのような会話や、キョーコちゃんからの頬チューに腰を抜かす蓮さまには笑わせてもらいましたし、二人のデートシーンや番外編ではほのぼのした気分にさせてもらい…。そして、蓮さまの素性の告白シーンや、京都編では胸がぎゅーっと切なくなりました。特にキョーコちゃんと冴菜さん対峙の場面では、涙が…。子育ての辛さがわかるだけに、冴菜さんを悪者として見れず、だけどあまりにもキョーコちゃんが可哀想で…。キョーコちゃんの”自由をあげる”という選択に、また切なくなりました。
読み終わったあと、じーんとした余韻が残り、「名作を読ませてもらったなぁ」としみじみ思っちゃいました。
素晴らしいお話を有難うございました!!

2015/07/24 (Fri) 20:43 | 愛海 #- | URL | 編集 | 返信

Re: 大満足のお話

>mochiko様
B.P.Dやってた頃はどの話を考えてもパンツが絡んできて困ったものです(笑)
お蔵入りにしようかと思っていただけに喜んでいただけてよかった~。

2015/03/16 (Mon) 08:00 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

Re: ぐほぁっ!

>まみこ様
キョーコちゃんのイメージでは、お花代わりに「詰めてください」って葬儀会社の人に参列者にパンツが配られるのです(笑)
「爺さん、変人だから」とブツブツ言いながら棺に入れる孫たち
「お宝~」とポッケにないないする熱狂的ファン。
こんな姿見ても真似する輩出てくるでしょうか?(笑)出てきたらある意味強者!

2015/03/16 (Mon) 07:58 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

大満足のお話

1歩いっぽ&B.P.Dネタの会わせ技。
お見事な一話でした。
好物ネタのお話に大満足です(^-^)/

2015/03/15 (Sun) 15:25 | mochiko #2e8W9a/Q | URL | 編集 | 返信

ぐほぁっ!

『往年の名優、遺品に箱一杯のパンツ』・・・す、凄いです。目に入った瞬間からニヤニヤが止らなく・・・
しかもそれを棺に詰めてもらおうだなんて、でも、綺麗に畳んであったらパッと見わからないかもですね(笑)。

そして、ヒズリ家の血を受け継いだ子どもたち孫たちならきっと久遠の愛をわかってくれる筈!

テレビで報道されでもしたら自分も真似をしようなんて輩も出てきたりして・・・イケメンだから許されるのに・・・
そんなことをしたら「あら、この方ノーマルだと思ってたけどゲイだったのね」とか勘違いされたりなんかしちゃったり・・・

2015/03/14 (Sat) 04:45 | まみこ #- | URL | 編集 | 返信

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