2015_03
24
(Tue)11:55

腹黒騎士2

※!注意!※
1.冴菜さん出てきます
2.本誌設定ですが色々捏造です。←歪んでます。

それでもいいよーと仰る方は追記よりどうぞ


2015/3/24





■腹黒騎士(はらぐろないと)2





沖縄行きの飛行機の待ち時間、携帯で検索した芸能ニュースに蓮は眉をひそめた。

「またか?」
「ええ、生徒役の子です。些細なといえば些細なことですけどね」
「どれ?…恋人は小学校からの幼馴染…か。そんなにメジャーな子でもないのにこうやって文字になっちゃうあたりが情報化社会の恐ろしさだな」

“ここ半月ほど生徒役の女優たちのプライベートの流出が相次いで、現場の雰囲気が少し変わってきている。”

そうキョーコから聞いたのは先週の事だ。
始まりは蓮も挨拶を交わしたあの新庄とかいう女優で、体操のオリンピック強化選手だったが事故で引退した過去を持つ。本人はそれを売りにはしたくなかったそうだが、挫折を味わった少女の頑張りとして美談として取り上げられたので結果オーライとなった。だが、それでは終わらなかった。
経歴や恋、隠し事ではないことから絶対に秘密と思っていたことまで大小さまざまな生徒役の子ばかりの情報が匿名複数のツィートを通じて流れていき、芸能記者たちが拾っていく。
皆最初は偶然と思っていたが、ここまで重なると疑心暗鬼になるし、スポンサーもいい顔をしない。少しずつ現場の空気が重くなっていく。
あの時蓮が挨拶した新庄以外の子たちも、東根は祖父が結構な大企業の会長でそのバックアップを受けているのだと社名入りで暴露されたし、寒河江は超難関のお嬢様学校に在学中だということが…葉山に至っては売れっ子芸人と付き合っていることで結構騒がれた。

キョーコの情報はまだ流れていないが「このドラマの生徒役ってことでマークされているかもしれません。ご迷惑をおかけしてはいけませんので暫く食事作りには伺えません」と元気のない声で告げられたのが先週なのだ。
せっかくキョーコと2人で会える機会を奪われたのも腹立たしいが、蓮が危惧するのは…

「…蓮、やっぱり不味い方向に話は流れて行ってる」

周りに人がいないことを確認したうえで社が告げた。
先週の電話で椹に報告するのようにキョーコにアドバイスして、蓮も社に情報収集を頼んだ。
主演の大原愛理や飯塚とはダークムーンで共演したので、愛理のマネージャーと社は既知の間柄だ。

「一昨日アカトキ…葉山篤海の所属事務所から監督に抗議がいったそうだ」

ネタの情報源は京子ではないのか?と
生徒役の中でも主要なクラスの情報は皆流れているのに京子だけ無傷なのはおかしい。だいたい情報が流れるのはいつも撮影時の食事時間や撮影後のお茶などで女子会トークが盛り上がったすぐ後だ。
しかもその場に京子は常にいる。

(やっぱりな…)

危惧したことが現実になり蓮はぎりりと奥歯を噛んだ。
今回の事で早くマネージャーをつけるようにと蓮からも社長に頼んではいたが、こういう事態の中でヘタな者をマネージャーにつけるわけにはいかない。主要なポストに要る者や目立つ人物は事を荒立てる。
結果キョーコは未だ無防備なままだ。
プライベートの流出なんてことは絶対にしないだろうし、PCどころかスマホも持っていないキョーコはそういうことには疎い。それに準主役である以上出番は当然多いのだから現場にいる時間も長く、皆と話す機会も多くなる。女子会トークの場にいつもキョーコがいるのは当たり前なのだ。
だがそんなことは何も潔白を証明してはくれない。

「それで制作サイドはなんて…」
「安南監督はキョーコちゃんとはBOX-Rからの付き合いだし、今回のドラマでキョーコちゃんを推した立場だ。主演の大原さんは勿論、飯塚さんをはじめベテラン俳優陣や制作スタッフにもキョーコちゃんは受けがいい。そもそも犯人だという証拠なんて何もないんだし、アカトキのキョーコちゃんを叩くことで葉山篤海の露出を増やそうとする意図も見え見えだったみたいだ。とりあえず様子を見ようということでその場はおさまった」
「でも、これが京子排斥の切っ掛けになるかもしれないということですね?」

社が小さく頷く。
いくら芸能界は生き馬の目を抜く世界だと言って、足の引っ張り合いをしていたのではいい仕事は出来ない。だが、何かのきっかけでバランスが崩れる…そんなタイミングを見逃してくれるほど甘くはない。
おまけに今回の被害者たちはみな売出し中の若い女優たちだ。
これをきっかけに他からも抗議の声が多数上がったら、いくら監督やスタッフがキョーコに好印象を持っていようとも何かしらの対処を迫られる。そんなことになったら…“プライベートを横流しする”なんてレッテルは貼られるのは簡単でも払拭するのは容易ではない。

「1つよかったと言えることは撮影はもう終盤に入っていることだ。視聴率は好調だし、制作サイドとしては撮りなおしになる事態は避けたい。そうなるとキョーコちゃんの出番を減らすことは難しいからな。そんな状況下で現場をかき乱す程のメリットがあるか…微妙なところだな」
「でもこれ以上騒がれて問題が表面化するだけで最上さんにはダメージです。レッテルを貼られると…」
「そうだ。次に影響する。」

携帯を握る蓮の手に力が入るのをみて、社は励ますように声を明るくした。

「そう悲観した顔をするなよ。これ以上の流出がなければ多分問題は沈静化する。お前は精神面でキョーコちゃんを支えてやれ。こういう時に支えてくれる男はポイント高いぞ」
「…でも事務所外で会うのはダメだっていうんでしょう?」
「そんな恨めしそうな顔をするなよ。内部からの流出じゃなく、生徒役の熱狂的ファンといった可能性だってあるんだ。それに俺がいいと言ったところでキョーコちゃんは会ってくれないと思うぞ?」
「分かってますよ。俺のスキャンダルになる可能性をあの子が許すはずがない事くらい」

携帯を片付けると帽子を目深にかぶって椅子の背もたれに身をあずけた。
今自分に出来ることは今日から3日間のアルマンディのロケをきちんとこなし、キョーコを電話で励ますことくらいだ。なんてもどかしいのだろう。

*
*

『すいません。ご心配をおかけして』

やっとつながった電話の第一声は謝罪の言葉で、そのことが蓮を余計もどかしくする。

「いや…もしかして撮影終わってない?」
『そうなんですけど、ちょうど私の出番が結構先で控室にきてたとこなんです。』
「そう。ならいいけど…。現場の雰囲気はどう?」
『そうですね。流石にちょっと距離を感じる人もいますけど…』

明るく告げるキョーコの言葉に内心ため息をつく。
葉山サイドからキョーコを犯人扱いする話が上がっていることはキョーコには伏せられた。だが、幼いころからあの俺様野郎な幼馴染のせいで女子から疎まれていたキョーコはそういう気配には敏感だ。

『大丈夫ですよ。事務所も色々配慮してくれていますし、普通に接してくださる方も多いです。大原さんや飯塚さんは気を遣ってくださって申し訳ない位です』
「事務所からプロバイダーに情報元の開示要求したって聞いたけど…」
『そうなんですけど、直接の被害者じゃないので断られたみたいです。確かに今具体的な損害を被っているわけじゃないですからね』

損害を被ってからでは遅いのだ。撮影が無事終了することを祈るばかりなのが腹立たしい。
何より、蓮にはこうして電話することしかできない。
ドラマの関係者ではないし、キョーコにとってはただの事務所の先輩だ。公でも私でも励ますことしかできない。

携帯を持たない手をぐっと握りしめた後、なるべく明るい声を出した。電話しかできないならせめてキョーコの心を少しでも明るく…

「明日早朝のロケが終わったら東京に帰るんだ。そしたら事務所のカフェか…ラブミー部でお茶をしよう。お土産買って帰るよ」
『本当ですか?楽しみです』

キョーコの声が弾んだことに蓮の心が救われる。全くどちらが励ましているのだと苦笑いがもれた。

『昨日までビーチでの撮影でしたよね?明日は…』
「早朝の首里城を借りての撮影なんだ。だから今夜は那覇に宿泊なんだけど、手違いで俺と社さん同室なんだよ」
『ええ?社さんと部屋が一緒なんですか?いつも別室なのに。』
「ツインでよかったよ。ダブルだったら悲劇だった」
『そうなったら、敦賀蓮、恋人はマネージャーってスクープされるところでしたね』
「初スクープがそれは勘弁してほしいな」
『じゃあ…今社さんは』
「デビューして暫くは同室もあったけど久しぶりね。俺がデカいから圧迫感感じるとか酷いこと言って、バーに飲みに行っている」

本当は電話をかける蓮に気を遣ってくれての行動なだが、くすくすとキョーコが笑ってくれて、少しは己も役に立ったのかとホッとした。
そろそろ電話を終えなくてはならないのに切りがたくて、ズルズルと天気の話などしているとキョーコの電話の向こうからノックの音と「キョーコちゃん、そろそろだよー」と声がした。声の感じからして生徒役の一人だろう。キョーコの言うとおり普通に接してくれる子もいるのだ。

『あ、行かなきゃ。ではまた』
「うん。また」

電話を切って、暗くなった液晶画面をじっと見つめた。
キョーコを守る権利が欲しいと切に願いながら…



翌朝の撮影が順調に進んだお蔭で、ホテルで一息ついても予定より1本早い東京行きの飛行機に乗れそうだ。
部屋に戻り、とりあえず荷物の確認をしていたら、ロビーで誰かに捕まっていた社が戻ってきた。

「社さん、おかえりなさい。あの人知り合いですか?」
「いや…初対面の人だよ」

少し考える風の様子が気になる。どうかしたんですか?と尋ねる前に社が口を開いた。

「お前と話がしたいって言ってる。あの人…キョーコちゃんのお母さんと同じ事務所の弁護士なんだ」



(3に続きます)




早朝の首里城で何を撮影したんだろう…
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