2015_03
31
(Tue)11:55

腹黒騎士3

予約投稿時間を間違って昨日1時間ほど公開していましたね。一応最後に確認しときたかったので一度下げましたが殆ど変わっていません。
時々時間感覚がおかしくなるのですよ。お恥ずかしい。

ちょびの歪み切った妄想が暴走しております。
こういう妄想浮かぶ奴もいるのね、と心広く受け入れる方のみ追記よりどうぞ

※!注意!※
1.冴菜さん出てきます
2.本誌設定ですが色々捏造です。←歪んでます。


2015/3/31




蓮は穏やかな笑みを浮かべたまま、向かいに座る男に視線を送る。
知性と品格を足してくれそうな眼鏡に上質なスーツ、いかにもやり手の弁護士といった風情だ。

蓮に話を持ってくる前に、社は件の法律事務所のホームページで最上冴菜の横にその男の顔写真が載っているのを確認していたし、事務所にも報告していた。
社長からの指示は「蓮に任せる」の一言。
この業界にいる以上、胡散臭い話を持ちかけてくる輩はそれこそごまんといるので、普通ならアポも紹介も無い初対面の男をホテルとはいえ部屋に招き入れることなど絶対にない。
だが、それがキョーコの母親の関係者となれば話は別だ。



■腹黒騎士(はらぐろないと)3



社がチラリと時計を見た。フライトの時間もあるのであまりのんびりはしていられない。

「で、どういったご用件でしょうか?」
「勿論最上キョーコの件で。彼女をご存知ですよね」
「それは当然。事務所の後輩でドラマでも共演しましたから」
「それ以上に目をかけていらっしゃるとか」

蓮は表情はそのままで小さく首をかしげた。
何を言っているのか分からない、ただ単なる癖、そのどちらとも取れる微妙な角度で

「先日うちの事務所の最上が娘さん…キョーコさんに電話をかけた時貴方ご一緒でしたよね?電話の向こうでキョーコさんを呼ぶ貴方の声と、キョーコさんがあなたの名前を呼ぶのを聞いたと最上が言ってました。」
「そうでしたか」
(やっぱり聞かれていたか)

相手の出方が分からない以上、2人で会ってたと悟られるのは賢明ではない。
表情を変えない蓮に向かいに座る男は苦笑した

「まあ、敦賀さんもお立場上ホイホイと認める訳にはいかないと思いますけどね。最上はキョーコさんが東京に出てきてすぐから人をやって様子を確認していました。芸能界デビューしてからは時々その手の者に頼んで調査していましたしね」
「…」
「人気俳優の貴方はパパラッチに追われることも日常茶飯事で撒くのもお手の物だったでしょうが、最上キョーコを追えば“敦賀蓮が京子を特別視”していることなんてすぐわかったそうですよ。私が調査結果の報告に同席したのは2,3回ですけどキョーコさんが貴方のマンションに出入りするのも、あなたの車に乗せているのも何枚も撮れてました」

社の顔に緊張が走るのが見える

「…それで?」
「ああ、誤解しないでください。それをネタにゆすろうとか、スクープを売ろうとかそういう気は最上はありません。調査した奴にしたって驚いていたけど依頼者の娘とのネタを売るなんてやりませんよ。信用問題にかかわりますからね」

社の肩から少し力が抜けた。

「それほど最上キョーコに関わって、おそらく先日の電話の内容もご存じなのでしょう。その貴方なら事情を話せばキョーコさんの力になってくれるのではと考えたんです」

友人の挙式に参列するため2日前からこのホテルに滞在しているそうで、何度か蓮を見かけたらしい。男も今日の飛行機で帰京するらしく社に声をかけたのだそうだ。

「…なぜ貴方が?」
「まあ単なるお節介です。」
「他人の秘密を暴露なんて弁護士がしていいんですか?」
「最上は依頼人じゃありませんからね。」

だがそれ以上は話そうとしない。こちらの手の内も見せろというわけか
蓮は穏やかな笑みの仮面を外し、口を開く。

「確かに俺は最上キョーコさんに特別な感情を抱いてますよ。今の関係を発展させたいとも願っています。」
「真剣に、と言うことですか?」
「真剣ですよ。お陰様でもう長いこと片思いしています。」

そうですか、というつぶやきの後、男は沈黙した。事情とやらを話すのにどこか迷いがあるのかもしれない。

「キョーコさんの家庭の事情はどこまでご存知ですか?」
「母子家庭で、お母さんとは上手くいっておらず、小さい頃から旅館を営む家にあずけられていたと…」
「すごいな。ほほすべてだ。キョーコさんは父親については一切知りませんからね」
「…貴方はご存知のような口ぶりですね」
「酔っぱらった最上から聞いた話に知り合いを通じて得た情報を足し算しただけですけどね。まあ彼女が素面で打ち明けるはずもないから…」

コーヒーを口にして苦笑いをこぼす。

「彼女曰く“頭に阿片のお花畑が咲き乱れている状態”だった人生の汚点らしいですよ。」
「汚点ですか…」
「そう。弁護士になりたてほやほやの世間知らずのひよっこが、勉強の為に出席した異業種交流会で声をかけてきた男にのぼせ上ったと」

30をいくつか過ぎたその男が大人でスマートに思え、囁かれる愛の言葉に有頂天になった。

「妻帯者だと気付いた時にはもうお腹にキョーコさんがいたそうです。宿った命を絶つなんてことは出来ずに迷ううちに、最上の存在はすぐに奥さんの知るところとなりました。もう何度目かの浮気だったらしくて奥さんの方もアンテナ張っていたようだし、男の脇も甘かった。」

奥方の父親は男の勤める企業を業界トップに押し上げたワンマン社長。男がエリート街道を歩んでいるのはその能力は勿論だが、社長のたった一人の娘婿だということが大きかった。当然男に妻と別れる気など毛頭ない。

「まあ、こういった時の男の常套句ですけどね。最上が誘ってきたと妻に切々と伝えて土下座した。…奥さんが家にやってきたそうですよ。菓子折りもってってあたりが良い家の御嬢さんですよね」
「…別れろ、ということですか?」
「いえ。慰謝料を請求する訴えをおこされたくなければ産まれてくる子を差し出せと」

社が少し首をかしげるのが見えた。確かにキョーコは今現在も戸籍上は冴菜が母親のはずだ。

「最上のお腹にいたのはキョーコさんだけじゃない。二卵性の双子だったんです。その一人を差し出せと。何年も不妊治療の末に病も患って、子供はあきらめざるを得ない状況だったみたいです。夫の浮気癖も子供がいないせいかと随分思い悩んでいたらしくて。」

私の主人の子よ。だから1人頂戴。そうしたら事は公にはしない。まだ弁護士としては駆け出しに過ぎない貴方が不貞行為で訴えられたら事務所は辞めさせられるでしょう。そうなったら、たとえ弁護士資格は剥奪されなくても、赤ん坊を2人抱えて貴方やっていけるの?

「それで…最上さんのお母さんは応じたと」
「母親として冷たいと思いますか?理想と現実は違います。最上は早くに両親を亡くしていましてね。もう長くはない祖母が病院にいるだけでした。頼るべき実家もないシングルマザーが職を無くして転落するなんて弁護士してたらいくらでも見てきてます。だいたい妊娠自体が双子だとリスクが高い。大して貯蓄もなかった最上はすでにギリギリでした。」

最初に産まれた方の子を引き取って行ったという。冴菜は赤ん坊の顔を見る事さえ許されなかった。

「その子は…」
「実家には夫の浮気の件は伏せて、特別養子縁組をしましてね。娘の不妊に心を痛めていた実家の両親も歓迎したそうです。妻も溺愛したし、夫の方もいいお父さんのようでした。」

だから冴菜もふんぎりをつけた。確かに自分が罪を犯したのは事実なのだ。その子が幸せならそれでいい。残された子と精一杯生きて行こうと。

「今日から、0から始める。そのつもりでキョーコと名付けたそうです」」

だが、それでは終わらなかった。
子供は可愛がったが夫の浮気癖はちっとも治らなかった。流石に冴菜のような真面目なタイプの女に手を出すのは懲りたようだが、遊びと割り切った相手には向こうが割り切っている分だけ大胆に遊びだした。
妻の父親も古い時代の人間で、遊びならある程度は男の甲斐性という姿勢だった。

「だが遊びだからと言って傷つかないわけじゃない。おまけに目の前には浮気の結果の子供までいるんです。」

ふつふつと沸いていく負の感情、だが生まれてすぐから自分の手で育てている子供は可愛い。
そして妻は裏切られ続けながらも夫を愛していた。

「やり場のない怒りは最上に向けられました」

キョーコが生まれて半年ほどすると毎月のように写真入りで手紙が届くようになった。
一見子供を手放した母親への子の成長の報告と言うべき内容が便箋一杯に書かれた手紙。
「○○に連れて言ったらすごく喜んだ」「祝いで親子で食事に行った」「とても賢い子で100点以外取ったことが無い」…
幸せそうな親子3人をうつした写真と共にそれは冴菜にしか聞こえない声で囁いた

“ねえ?両親そろっていて完璧でしょう?”
“こんな楽しいところに連れて行ってあげられるのよ。貴方にできる?”
“ねえ、こんないつもきれいな服を着せてあげられるの”
“私が育てたらこんなに賢くなったのよ?”

その声は、毎日毎日が余裕が無くて、ちゃんとキョーコに向かい合ってあげれていないのではないか?大事にしてあげれていないのではないか?そう心のどこかで後ろめたく思っていた冴菜を刺す。
追い詰められて不安定な心でキョーコにあたってしまい、また自己嫌悪が冴菜を追い詰める。

「そこで手を差し伸べたのが、学生時代の友人だった松乃園の女将です。」

冴菜の相談に乗り、カウンセリングも受けるように促した。キョーコを預かって時間的身体的余裕もくれた。
時間はかかったが、なんとか持ち直し、送られてくる手紙を受け流しながらキョーコと2人で生きて行く決意を固めた。

「キョーコさんを迎えに行ったそうです。」

お母さんと一緒に帰れることにキョーコは喜んだ。その姿をみて冴菜の心も満たされて、今までの償いも兼ねて美味しいものでも食べてから帰ろうと街中に向かった。
駅を出て、交差点でこれからのことを考えながら信号が変わるのを待つ。
パフェがいいかしら?それともかき氷?キョーコがいいと思うものにしよう。秋には運動会がある。新しいスニーカーを見に行こうか?

ふと視線を感じた。

横をむくと信号待ちの高級車の後部座席に座る美しい親子。
母親が底光りのする眼で冴菜をじっと見ている。
その視線が下に動いて…キョーコをとらえ…嗤った。

昏い昏い…嗤い

恐怖に突き動かされて、もと来た道を走る。
引き摺られるような形になっているキョーコが泣いていたが、かまってはいられなかった。

早く。早く逃げないと
キョーコに矛先が向いてしまう。傷つけられてしまう。

タクシーに転がり込むように乗り込み、向かった松乃園に我が子を放り込む。キョーコが泣いてすがるのを振り払った。

自分は罪を犯した。あの女性(ひと)を傷つけた。だから仕方ない。
だけど、だけど、キョーコは、キョーコだけは、守らなければ。
私と親子でいる限りその怒りが向かうというのなら、キョーコを捨ててでも守らねば

「すぐに勤めていた事務所を辞めて上京することに決めたそうです。女将と相談の上、キョーコさんはそのまま松乃園であずかることになりました。妻は最上への手紙も「報告」と受け取れるような文面にしていた。ちゃんと己とその周囲を守る分別はあった。それなら京都の経済界で顔の利く松乃園になら手を出しにくいだろうと計算したんです。その後、先日の電話まで最上とキョーコさんは直接会うことも話すこともしてこなかったはずですよ」

キョーコとはうまくいかずに手放した。私には子供なんていない。そういうスタンスを通した。

(それなのに、最上さんに連絡してきた。役を降りろと)

制作発表会見があってすぐに。
蓮はこめかみに手を当てて引っ掛かりを憶えた部分を今一度思い出す。
視界の端で社がかかってきた電話に応対しているのが見えた。

(制作発表…主な出演者が一堂に会する…)

“キョーコに似た清楚系な子”
          “私と同じ京都出身なんですけど…”
                     ”祖父が結構な大企業の会長で”

はまっていくピースに愕然とする。

「ま、さか…」
「最上はたまたま事務所でつけたテレビで制作発表のニュースを見たんです。最上があんな顔色をしているのを初めて見ました。まさか生徒役のキョーコさんの横に「蓮っ!!!」」

通話を終えた社が話を遮った。

「事務所からだ。やられたぞ!」


(4に続く)




説明臭い…

別にキョーコちゃんに姉妹がいるって思っている訳じゃないんですけどね…浮かんじゃったんです。
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