2015_04
10
(Fri)11:55

背面慕情(萌え☆フェス企画)

久しぶりに企画参加させていただきました。

「春の胸キュン祭・萌え☆フェス」でございます。

主催の皆様のリンクはこちら
ドン☆フェス総合企画主催 ゆみーのん様:ドン☆フェスの姉妹企画「春の胸キュン祭・萌え☆フェス」
発案 ピコ様:ドン☆フェスの姉妹企画「春の胸キュン際・萌え☆フェス」
魔人様:ドン☆フェスの姉妹企画「春の胸キュン祭・萌え☆フェス」

多分、これ、「あすなろ抱き」だと思うんです…
全然萌えってないんですけど…


2015/4/10




秘密にすると決めた。
この気持ちは秘めたまま地獄まで持っていくのだと、そう決めた。
だけど、密やかにでも確実に育っていく慕情は時々この身から溢れそうになってしまう。

だから、零れ落ちてしまわないように時々解放するのだ。

誰もいない部屋で、携帯に隠しもったあの写真をながめる時。
あの人がこちらに完全に背を向けている時。

そっとあの気持ちを解放して、見つめてみる。

愛しい愛しい気持ちを、そっと込めて。


■背面慕情(萌え☆フェス参加作)



「最上さん、お茶でいい?」
「あ、はい。有難うございます」

ラブミー部の依頼で蓮に弁当を差し入れにきたキョーコは、お茶を用意してくれている蓮の背中をそっと見つめた。
時間にして10秒かそこら。その間だけキョーコは蓮への感情を解き放つ。
蓮が演じるカイン・ヒールの妹を演じた際に認めた恋心をひっそり育てて1年近く、蓮は前以上にキョーコをまめに気にかけてくれている。
ラブミー部の依頼として、時には依頼抜きで食事をしたり蓮の部屋で台本の読みあわせをしたり…もともとプライベートの時間なんてごくわずかな人とこれだけ一緒に居れるということは、蓮はいまだに大事な人を作っていないのだろう。
そのことに胸が痛みつつもホッとする。
幸せを祈ってあげれないなんて、なんて人で無しなんだろう。
でも、罰を受けたって、地獄に堕ちたっていい。だからこの幸せが少しでも続くように…

「お待たせ、ああ、今日も美味しそうだね」
「有難うございます。よく噛んで召し上がってくださいね」
「よく噛んでって…子供じゃないんだから」

いただきます。と声を合わせて、暫くは箸を動かす。

「そうだ。もう映画の撮影始まったんですよね。」
「うん。先週」
「アクション満載だって聞きましたよ。」
「そうそう。その分というか、若いヤローばっかりの現場だよ。社さんが部活みたいって笑ってた」
「イケメン満載ってワイドショーで言ってました。筋肉美も満載だって」
「それはどうだろ?あ、そういえば鹿嶋君は最上さん今やってるドラマ主演で出てるんだよね」
「そうです。古書店の店長さん演じられてます」

古書店の謎めいた若い店長と、店長に振りまわれるバイト役が謎を解いていくドラマ。なかなかの高視聴率を維持している。
主演の鹿嶋は昨年の抱かれたい男ランキングでも5位に入ってきた若手人気俳優だ。


その鹿島にキョーコは先日告白された。
すぐに断るはずだった答えはドラマの撮影が終わってから欲しいと言われたのだ。

「後1カ月の撮影の間、俺のことよく見てから返事が欲しいんだ。断るにしたって1カ月は検討してくれないかな?」

そう言われると頷くほかない。それに断るなら撮影が終わってからの方が色々気まずくない事も確かだ。

「じゃあ、それまでは今まで通りでお願い」
「はい。こちらこそよろしくお願いします。」

少し安心したように鹿嶋が笑った。

蓮より少し年上の25歳。身長は少し低くて180ちょっと、甘めの顔の造り。顔をくしゃくしゃにしてよく笑う。
若い男性らしく食べることも大好きで、お料理も色々挑戦しているらしい。甘いものも好きで貴島とはスィーツ仲間なのだそうだ。
演技に関しては蓮とは演じ方は違うがとても真摯だ。なかなかの読書家で今回の原作もファンなのだという。

きっと誰が見ても好ましい人なのだろうとキョーコは思う。

*
*

忙しい日々はあっという間に過ぎていく。

ドラマの撮影が終わり、最終回へ向けての番宣の嵐も通り過ぎた頃、キョーコは蓮の夕食作りの依頼を受けた。

「ごめんね。最上さん最近忙しかったのに。」
「いえいえ、映画の撮影ハードなんですよね。お役に立てるなら嬉しいです」
「身体動かすの好きだから楽しんだけどね。夢中になりすぎて、少し鍛えすぎって社さんに怒られたんだ」
「私にも社さん愚痴ってましたよ。「アイツは水だけでどれだけ動くつもりだ」って」
「若手俳優が多いから現場の弁当がコッテリで…ついね…」
「ついじゃありません。今日は大将に頼んで活きのいい鰈を手に入れました。煮つけにしますからしっかり食べてくださいよ」
「最上さんの料理ならちゃんと食べるよ」

(ほら、そういう罪作りなことまた言うんだから)

またチクチクと胸が痛む。
だけど、胸の痛み以上に蓮とこうして過ごせる時間は甘美なのだ。

エレベーターを降り、共用廊下を進んで玄関前につくと、カードキーを出すために蓮は立ち止まった。
キョーコもその少し後ろで蓮の背中を見つめる。
映画の撮影の為鍛えているせいか筋肉がまた少しついたようだ。前会った時より少し髪が短くなって…


「いつになったら、そういう表情、面と向かって見せてくれるの?」


こちらに背中を向けたまま、唐突に告げられた言葉が一瞬理解できなかった。
呆けているうちに蓮の右手がキョーコの右手を捉えて引っ張り、おでこが蓮の背中にぶつかった。
ガサッという音は、蓮が左手に持ってくれていたエコバックが足元に降ろされた音で、状況を把握していない頭で仲の卵の心配をしているうちに左手も捉われて蓮の身体の前に持っていかれる。
まるでキョーコが後ろから蓮の腰に抱きついているような状態になった。

「な、なにするんですか!離してください!!!」
「…いつもいつも、俺が背中を見せている時だけだよね。ああいう表情するの」
「あ、ああいうって…」
「俺のこと想ってくれてるんじゃないかって期待させる表情」

ひ、と悲鳴が漏れそうになるが、なんとかこらえる。ばれる訳にはいかないのだ。なんとしても誤魔化さねば。

「何言ってるんで「今日はカードキー鏡代わりにして見たよ。一番初めは…半年以上前だな。確か水を注ごうとしたときにグラスに映ったんだった。一度気付けば鏡代わりになるものって意外にあるもんだよ」」

完全にばれている。一気に血の気が引いて、指先が冷たくなった。
人でなしの愚かな幸せに終わりが来たのだ。
逃げ出そうともがいてみるが、ただ手を捉えられているだけなのにビクともしない。

「最初は俺の願望が都合よくそう見せているんじゃないかと思った。最上さんの何気ない表情を勝手に好意を含んだモノととらえているだけじゃないかって。」

え?と動きを止めた。

「でも背中に向けられる視線と表情に気付くたびに期待が膨らんで…もうどうしようもない所まで来たんだ。でも君は過去の傷で臆病になっているのかもしれない。どのタイミングで言えばいいのか迷っているうちに時間が過ぎた」

(それって…)

まるで、まるで、キョーコの想いを喜んでくれているように、蓮も同じように思ってくれているように聞こえるのは幻聴だろうか?

「…一昨日聞いたんだ。鹿嶋君が君に告白したって、1カ月よく見てから返事をくれってお願いして撮影が終了した後で断られたんだって」

キョーコの手を捉えている蓮の手に力が入る。

「断られたって明言してくれたからなんとか敦賀蓮を保てたけど、頭を殴られたような衝撃だった。俺の背中に最上さんが向けてくれる表情は確かに期待通りのものかもしれない。だけど確約じゃない。グズグズしている間に他の誰かの手を取るかもしれないんだって」
「それは…」
「1カ月の間、何考えてた?俺と鹿嶋君を比較検討した…?」

顔をあげた。背中に身体を押し付ける格好になっているので、うつむいた蓮の表情は見ることが出来ない。だが、巻き付いていることでその身体が強張っているのがわかる。
眼を瞑って、もう一度蓮の背中におでこをぶつけた。

「比較…はしました」

蓮より少し年上で、蓮より少し低い身長、蓮より甘い顔の造り、蓮とは違う笑い方…

「沢山、沢山比較しました。でも検討はしてません。だって出来ませんよ。鹿嶋さんは敦賀さんじゃないですから。敦賀さんじゃない人を検討なんて…できません」

顔をあげると蓮が首をねじってこちらを見ていた。
不安と少しの期待の混じった色をした瞳。
キョーコも不安と期待で心臓が爆発しそうだったがに頑張って笑いかけてみる。

「どんなに好ましかろうと、素敵な人だろうと…敦賀さんじゃなければだめなんです」

この1カ月はただただそれを実感しただけだった。
たとえ気持ちを秘めたままで地獄まで行こうとも、背中にしか想いのこもった視線を送れなくても、それでも蓮でなければ駄目なのだ。


蓮は目を見開いたまま暫く固まって、その後視線を少し逸らした。その頬が少し赤いのはきっと気のせいではないはずだ。

「…俺にとって…ずっと…女性の比較基準は1つだけだよ。最上キョーコかどうかだけ」

手の拘束が緩む代わりに蓮の指がキョーコのそれに絡まった。
もうそれだけで身体が沸騰しそうで、嬉しいですと告げたはずの音は言葉にならない。だから今度は自分の力で蓮の身体を抱きしめた。
高そうなシャツにお化粧がついてしまうかなと一瞬思ったが、背中に猫がするように顔を擦り付けてみる。鍛えられた筋肉の感触がシャツ越しにも伝わる。鼻腔一杯に蓮の香りをすいこんだら、そのセラピー効果と幸福感にうっとりとため息が漏れて、蓮が身じろぎした。

「…入ろうか?」
「へ?」
「部屋、入ろう。ちゃんと向き合って色々話したいし、最上さんの顔が見たい」

そういえばまだ玄関前だったのだ、いくら誰も通らないからと言って共用廊下で破廉恥な、と慌てて手を放す。
蓮はドアを開けると、半歩身体をずらしてキョーコの方を向いた。

「どうぞ」
「お、お邪魔します」

何度も足を踏み入れたことがあるのに、まるで別な空間のように感じて、照れながら足を踏み出す。
その瞬間、ぐいっと腰を引き寄せられて、蓮の身体で視界が塞がって…唇が重なった。

「なっ!!!」
「背中越しじゃこういうことも難しいから」

蓮はそう言って、悪戯が成功した子供のように笑う。
いきなりなんですか!と憤慨しながらも、蓮のそんな顔が間近で見れることに、もう隠すことなく想いをのせれる幸せにキョーコも笑った。


(おしまい)




36巻のグアムでのお別れシーンで敦賀さんの背中を見つめるキョーコちゃんの表情をイメージしたんです。
参加する限りは少しでもいいものを…を思ったんですけどね。萌え仕草が活かされてないでゴザイマスネ…。
皆様、素敵萌えは他の作品で補充してくださいませ。

魔人様、ゆみーのん様、ピコ様、素敵な企画に参加させていただきありがとうございました!!!
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