2015_04
14
(Tue)11:55

腹黒騎士5

ばったんばったんしております。
今週は後は「強く…」だけだと思います。

2015/4/14




テレビには大勢のリポーターたちに囲まれる蓮と社の姿。
蓮は皆のマイクやレコーダーが己の前に集まるまで待ってから口を開いた。

『このたびは私事でお騒がせしまして本当に申し訳ありませんでした。』
『昨夜ネットで上がった話題は本当ですか?』
『確かに部屋は一緒でしたがそれは手違いによるものです。他に空室もありませんでしたし、ツインでしたので同じ部屋で休みましたよ。でも俺がマネージャーと付き合っているというのは事実無根ですね』
『ではどうしてこのような話題になったのでしょう?なにかしらの事実があったからじゃないですか?』

疑わしき点があったかのように聞いてくる記者の言葉にキョーコは奥歯を噛みしめた。それもこれも自分の所為かと思うと胸がズキズキする。

『まあ…それは…俺が悪いのかな?』
『どういうことですか!?敦賀さんに思い当たることがおありになるんでしょうか?』

リポーターたちの波のうねりが更に高くなり、社が必死に押しとどめている。
蓮は少し言葉を躊躇った。どういうことかやや照れているような笑いを浮かべている。

『あんまり彼女が我儘を言わずに待ってくれてるもので、なんだか…そのいじってみたくなったというか…反応が見たくなったというか…』
『え?それは…』
『俺もこんな仕事してますから、なかなか一緒にいてあげれません。それは仕方ないんですけど、あまりに理解がありすぎてかまって欲しくなったんですよ。「マネージャーと同室だよ。ベットが1つだったらどうする?スキャンダルかな?」なんて冗談言うなんて…俺も案外子供ですよね。まさか誰かに聞かれてこんな風に話題になるとは思いませんでしたけど』
『あ…あの…彼女と言うのは』
『え?ああ…そのままですよ』
『では…その…女性の恋人がいらっしゃると…そういうことですか?』
『ええ』

少し照れながらもしっかり頷いた蓮を一斉にフラッシュが覆った。
キョーコの斜め後方にいる有沙が息をのんだのがわかる。

『そのお相手と言うのは!?』
『電話相手ということになりますよね?事務所の後輩というと女優の京子さんの名前が挙がっていましたが!?』

情報源の候補者にキョーコの名前は早速挙がっていたらしい。
蓮は苦笑しながら頷いた

『ええ。そうですよ』

先程とは比べ物にならない喧騒が画面から流れでる。

『いつからお付き合いを?』
『お2人ともまだお若いですが、将来をどのように考えていらっしゃるお付き合いですか?』
『どうしてこのタイミングで公表を?』

蓮は手を軽く上げて怒涛の質問を抑えた。

『詳しくは明日会見させていただきます。公表していなかったのは付き合い始めたのがごく最近で、彼女がまだ学生だったからです。勿論真剣にお付き合いさせていただいてますよ』
『京子さんとは今日はお話は…』
『それはまだ…こういう形での公表になってしまったのは彼女に申し訳ないのですが…きっと分かってくれると思います』

画面の向こうの連がまるでキョーコが見ていことを予測しているかのように、まっすぐな視線をこちらに向けてきた。
先輩俳優は察しろ、と言っている。キョーコはぐっ、と腹に力を入れた。
きっと蓮には何か考えがあってのことに違いない。
この事態を打開するためなら、蓮と社を事実無根の噂から守るためなら、キョーコ自身のスキャンダルの1つや2つがなんだ?しかもかなうことなき懸想の相手となら光栄なことではないか。たとえ嘘偽りでも、胸が痛もうともなんだというのだ。

「う、嘘でしょう?」

有沙が問いかけとも独り言ともつかない言葉を発した。
キョーコはゆっくりと振り向くと、意味ありげにそして綺麗に笑ってみせた。

*
*

「蓮!どういうことだよ!」

蓮の愛車で2人きりになった途端社は詰め寄った。

「ここは俺にまかせて下さい、なんていうから信頼したんだぞ?キョ、キョーコちゃんと付き合ってるなんて…」
「でも、こうするのが一番じゃないですか。最上さんの現場の噂の小出しは吹っ飛ぶでしょうし、彼女の疑惑も、俺の疑惑も晴れる。」
「現場での疑惑は晴れてもこれからマスコミにもみくちゃにされるんだぞ?お前のファンやら女優からのやっかみだって受けなきゃいけない。事実無根なのに!!!」
「そうですよね」
「そうですよね。じゃないだろう?今回のことでお前に負い目があるキョーコちゃんは話を合せざるを得ないだぞ?…ってお前それを狙ったな!?」

蓮のスマホが震えて着信を伝えた。発信者が社長なのを確認すると蓮は路肩に車を停める。

「…はい。……ええ、わかってますよ。ちゃんと話をします。…え?大丈夫ですよ。ちゃんと分かってくれるまで。ええ。勿論。………はい、ではそちらはおまかせします。」

蓮が車を出すと、電話の間はおとなしくしてた社が再び口を開く。

「社長、なんて?」
「俺という明確な被害者が出ましたから、再度プロバイダーに発信元の情報開示を請求するそうです」
「社長が攻めに出たら負ける気はしないな。他には」
「マスコミ、スポンサー、その他関係先の対応はまかせておけと」
「…それだけか?」
「ちゃんと最上さんと話をして、想いを受け入れてもらうまで手を出すなと釘を刺されました。」

それを聞いて、ふん、と社が前を向いた。

「外堀から埋めるつもりか?。ちょっとずつでも距離を詰めてキョーコちゃんに受け入れてもらうんじゃなかったのか?」
「…もう外野からハラハラしながら見てるだけなんて御免なんです。」
「彼氏だからってなんにでも出しゃばれるもんじゃないと思うけど?」
「でも精神的支えにはなれるじゃないですか。」
「本当の彼氏だったらな」
「そうですけど、表面上だけでも恋人って立場があれば近くにいれます」
「結局お前がキョーコちゃんに会いたいだけだろ?」
「ええ。そうですよ」

うわっ、開き直りやがったと、社が慄く。

「勿論、最上さんにはちゃんと俺の想いを打ち明けて、受け入れてくれるまで気長に説得するつもりです」
「気長って…無期限だろ?キョーコちゃんに拒否権ないだろ?」
「…」

今度は無視かとゲンナリしたタイミングで赤信号になった 。

「彼女ラブミー部じゃないですか」
「そうだよ。恋愛に否定的だから苦戦してきたんだろ?」
「一生誰とも恋愛する気ないなら、俺の傍にいてくれても問題ないともいえますよね」
「お前…なんて己に都合のいい捻じ曲げ方をするんだ。そのキョーコちゃんの固い固いつぼみが開く為にコツコツ努力していたお前はどこに行ったんだよ!?」
「勿論努力しますよ。その時間をより多く確保するためにちょっと立場を得るだけで」

はあ~とダメ息を吐いた後、社は蓮をジト目で見つめた。
その視線に気付かないふりをして蓮はにっこり笑う。

「でも、結構優良物件だと思いません?まあ仕事は不安定と言えば不安定ですけど、それなりに蓄えはあるし、身体も丈夫。浮気はしないし…老後の面倒を見るほど親もまだ年をとっていませんし」
「…敦賀蓮がそんな安っぽい見合いサイトに登録するみたいなこと言うんじゃありません。…とりあえずちゃんと話をしろよ?キョーコちゃんの意思を尊重しろよ?」
「勿論」
「…手を出すなよ」
「撫でるくらいなら「お前の撫でるはなんだかいかがわしそうだからダメだ」」

肩をすくめて、青信号に合せてアクセルを踏んだ。
きっと、キョーコは先程のテレビを見たはずだ。そして演じるだろう。蓮が求める“役柄”を。

「そういえばお前、東根有沙はどうすんだよ?怒りにまかせて暴力なんて振るわないでくれよ?」
「どうもしませんよ。最上さんを陥れる為だけに芸能界に入った人間が長く日の目を見るほど甘い世界じゃありませんから。すぐに消えていなくなるでしょう。それに事情を知った最上さんが悲しむ様なことはしたくありません。まあ…これ以上最上さんに何かしようものなら…その時はね。」
「闇色全開にするんじゃないよ。ようするにキョーコちゃんに関わらない限り関心は無いわけだ。…キョーコちゃんのことは芸能界に入った理由が気に入らないって苛めたくせに。」

ブチブチとつぶやく社の言葉を聞き流し、キョーコの現場へと車を走らせる。


あの河原での日々から、再会した時から、ずっとずっと特別だったキョーコ。
キョーコを守る立場が欲しいのだ。

とりあえずは仮初だが誠心誠意努力して、きっと心も手に入れてみせる。



(6に続く)
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