2015_05
19
(Tue)11:55

ヒドイヒト(前編)

カウンター20000HITのはるりん様からのリクエスト。
リク内容はお話が終わった後で。
正直だいぶ捻じ曲げてあるし、題名ありきたりだし、大丈夫でしょうか?

20015/5/19




今日は一日雨
その予報にウキウキしたのは買ったばかりの傘をおろせるからだ。

雨の中に咲いた新品の傘は色も好みのドンピシャで、可愛いながらも柄や端の切り替えしが少し凝っていて所謂「大人可愛い」一品だ。値段も手ごろでまさに掘り出し物。
おまけに

“ああ…最上さんにピッタリだね”

お店で傘を広げた時に蓮が言った言葉を思い出し、キョーコは真っ赤になった。
別にデートでもなんでもない。たまたま遭遇した社に2時間程の空き時間に従妹の結婚祝いを買いに行くのだと聞いて、「お買いものいいですね」とか行ったら蓮に「変装してウロウロしたいから付き合って」と言われてショッピングモールに行っただけ。そこで入った雑貨屋さんで蓮が「これ、最上さんに似合いそうだ」そう指差した傘を購入した。ただそれだけ。

キョーコの歩みに合せて傘が揺れ、弾かれた雨が玉となって転がり落ちる。
それを浮かれた気分で見つめていた表情は次第に曇り、最後は空と同じように泣き出しそうになった。

送ってもらうときに時々遠回りしてドライブを楽しむのも、先月半日オフだと誘われ出かけた水族館も、封切した主演映画の反応が知りたいからと一般客に混じって観たのも、部屋で2人で食事をするのも、電話をかけてきてくれるのも…全部全部キョーコがただの後輩で、女として見られていないから。
だから「大事な人は作らない」なんて自分を戒めている蓮が安心して傍に置いてくれるのだ。

大事な人を作る日なんてなるべく来ないで欲しい…なんて人の道に外れたことを思う。どうかこのまま少しでも多くの時間傍に居たいと思う。
でもその一方で思うのだ。
ほんの一瞬でいい、蓮にドキリとして欲しい。女性として見て欲しいと。

こんなどうしようもない願いを抱てしまうなんて…なんて罪作りな酷い男性(ひと)なんだろう



■ヒドイヒト(前編)




「今度のパーティの衣装決めたかい?」

そう椹に問われて首を横に振る。

「やっぱりか。うちの創業40周年パーティだからね。テレビ局の関係者やスポンサー、それに他の事務所の方も呼んで盛大に迎賓館で開催されんだぞ。君ももうLMEの一押しタレント兼女優なんだから綺麗にしてもらいなさい。今から時間あるんだろ?衣装部に相談するといい。今回は制服という訳にはいかないよ」
「春に卒業したんですから流石に制服は着ませんよ。お高いドレスは買えないので、お願いしようと思っていました。」
「それなら話は早いな。衣装部には連絡しておくから」


衣装部には色とりどり様々なデザインのドレスがずらりと並んでいた。

「京子ちゃんはスタイルいいから何でも着こなせると思うけど…どういったのが好きなの?」
「うーん、割と淡い色のかわいい感じが好きですかね」
「そうそれなら…」

衣装部のスタッフが選び出そうとしたカクテルドレス、今日さしていた傘によく似たその色はキョーコのリクエストそのままだ。だが、その横に見えたクラシックブルーにキョーコの眼が釘付けになった。

「あら?これに一目ぼれ?」
「あ、いや…こんなセクシークィーンが着る様なドレスは私には無理です!」
「セクシークィーンねえ。確かにモンローが着てた白いドレスにデザイン似てるわね。こっちはプリーツじゃなくてフレアーだけど。京子ちゃんに似合うわよ、これ」
「ぜ、絶対無理ですよ。こんな貧相な胸じゃ」
「勿論モンローみたいな豊満な胸の人にも似あうけど、京子ちゃんみたいなスレンダーな人が来ても絶対綺麗だから。首元スッキリ見えるし、一度着てみましょ?直感って大事なのよ。」
「だ、だってこんな背中全開で…下着どうするんですかぁ?」
「ブラなんてつけないに決まってるじゃない。大丈夫よ。ドレスにパットが入ってるから」
「このホルターネック、首の後ろで結ぶデザインですよ?もしほどけたら大変なことに…」
「ちゃんと結んだら取れないから!はい、着替えて、着替えて」

半べそで入った試着室だが、着替えて鏡を見てみると…意外にもおかしくない…かもしれない。

「やっぱり似合う。色白だからブルーがよく映えるわね。この色って今年の春夏の流行色なのよ?首元や腕もすごく綺麗に見えるし、なんだか大人びて見えるわね~」

“大人”
その言葉に強く惹かれた。

「お、となっぽいですか…?」
「ええ、これで髪をアップにしたら更に大人っぽいわよ。普段の京子ちゃん知ってる人は驚いちゃうかも」

ただ一人の男性の顔が頭に浮かぶ
驚くだろうか?
目を見開いて固まって…あの神々しい笑顔で「似合うよ」なんて…

脳内妄想劇場を繰り広げているうちに小物まで決められて、貸し出しの手続きが取られていた。


*
*

「す、ごい似合うよ!」

光からかけられた声にキョーコは微笑んだ。

「有難うございます」
「ほんま、ようにおうとるわー。すごいセクシーやで」
「ええ?お世辞はいいですよ」
「いやいや、ほんま。もうリーダーなんて心臓バクバクやんな?」
「そそそそそ」
「そんなことありませんよね?」
「え?いや…あの…」

会場での反応は上々だった。
先程挨拶した貴島も「大人美人!俺の好みのどストライクだよー」と褒めてくれたし、仕事の為最初だけ出席した奏江と千織にもなかなかの高評価だった。まあお世辞半分としても割と着こなせているのだろう。

「ほお、京子ちゃんか。見違えたな。いいねえ~その恰好」

プロデューサーの舐める様な視線とべたつく手で肩を撫でられるのには辟易したが、酔っ払いなんて古今東西鬱陶しいものだ。軽く流す術は仲居時代に身に着けている。

(これは…結構いけるかも…)

期待に胸を膨らませて遅れて会場入りする蓮を待った。
2杯目のグレープフルーツジュースが空になった頃、会場の入り口からざわめきがおこる。

「きたよ。敦賀さん」
「嘘?やったー。挨拶行こう。挨拶」

LMEの看板俳優の登場に人の流れが一気に変わる。
スポンサーや芸能界の先輩等蓮が挨拶をしなければいけない人は沢山いるし、その逆もしかり。仕事の邪魔は出来ないのでキョーコは離れた場所でそっとチャンスを窺った。

会場が落ち着きを取り戻したころ、社を伴った蓮の姿が目に入った。優雅に、でも誰か探しているのだろうか、視線はあちらこちらに飛んでいる。
吃驚させたくて、キョーコは蓮に気付かれないよう後ろ手に回り込むと声をかけた。

「敦賀さん、お疲れ様です」

ぴく、と蓮の肩が反応して、笑顔で振り返り…固まった。
隣の社も驚いたようだ。

「え?キョーコちゃん?すっごい大人っぽいね~。綺麗だよ」
「えへへ。もう19ですから。」

有難うございます、といいながら蓮の様子を窺うが固まったままだ。社が反応のない蓮を肘でせっついた。

「ほら、蓮」
「…最上さん」

ドキドキしながら期待してみた蓮の顔は眉間に少し皺が寄っている。気に入らなかったのだろうか?

「最上さん…その…」
「はい」

蓮の目が一瞬キョーコから逸れた。

「そんな…肌出してたら…風邪ひくよ?」
「え?」

言ってることが理解できないキョーコを置き去りのまま、蓮はボーイを呼び止めた。

「すいません、この人に大判のストールか何か羽織るモノを…」

ようやく今の連の言葉が、お腹を出して寝ている子どもに向けた言葉と同じなのだと理解した。似合う似合わないとか、綺麗とかそうじゃないとかそんな以前の問題なのだ。

「かしこまり「寒くないから大丈夫です!」」

思わず固い声が出て「まだ挨拶していない方がいるので」と蓮の前から逃げ去った。

どんな格好をしようとも、蓮にとっては男女の別もないような子供なのだと痛烈に理解して、それなのに浮かれていた自分が恥ずかしくて惨めで泣きそうだった。


(つづく)
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Re: 早く続きが

>いわりん様
コメント有難うございます。
そう言ってくださるとすっごく嬉しいです。敦賀さんは失言を挽回できますかね?(笑)
来週火曜には後編がお届けできると思います。遅くて申し訳ありませんがお待ちくださいね!

2015/05/20 (Wed) 13:11 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

早く続きが

早く続きが、読みたいです。

2015/05/20 (Wed) 01:14 | いわりん #- | URL | 編集 | 返信

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