2015_04
21
(Tue)11:55

腹黒騎士6

さて、次の拍手のキリ番は1万もしくは11111で!!
そこでリクエスト募集の方は暫く休憩します。まだ書けてないやつが2つほどあるので。

なんだか、本誌は凄い展開になってるらしいですねー。
もうちょびもドキドキしております(コミック派なのに笑)

今回はちょっとダラダラ?

2015/4/21




演じるのは、“最上キョーコ”
人気俳優敦賀蓮と付き合い始めたばかり


『敦賀さんはご自身の車で空港を出られました。どうやら京子さんと合流した後明日の会見場所のホテルでお2人で待機されるようです』

テレビから聞こえる情報を耳に入れながら、役作りをする。
演じるのはあくまでキョーコ自身。さあ自分が蓮と付き合っているならどうする?台詞は?表情は?

「ねえ…嘘なんでしょう?」

今度ははっきりと有沙がキョーコに尋ねてきた。
さっきの笑顔はすこしナツっぽい、キョーコなら…少しオドオドしながらも、頬を染めて、はにかむような笑顔で返事をする。

「驚かせちゃいましたよね。いえ、もう私なんかじゃ釣り合わないのは百も承知なんですけど……でも」

本当ですよ、と照れ照れと伝える。

「すいません。東根さんのお話、まだよく分かってないんですけど…後日にしていただいていいですか?敦賀さんが迎えに来るみたいなんで、もたもたしてたら現場に迷惑がかかるでしょうし」

何か言いたげな有沙に気付かぬふりをして帰る準備を始めた。蓮たちと打ち合わせをするまではボロが出ないようにしなければならない。
恋人に会える喜びに胸躍らせながら、いそいそと支度を整えているように見えるだろうか?
いつも通りの表情のつもりが口元が緩んでいるように見えてるだろうか?
心がギシギシと軋んでいるのを悟られていないだろうか?



■腹黒騎士(はらぐろないと)6




撮影現場に到着するとすでに先回りした芸能記者が数人いたが、社に防いでもらって無事に中に入ることが出来た。
事務所からの情報ではキョーコの出番はもう終わっているはずだ。

「やっぱり!敦賀さん。こっちです!」

顔見知りのスタッフが小走りにやってきた。テレビをみた監督から表を見てくるように言われたらしい。

「すいません。お騒がせして」
「いいんですよ。京子さんはもう上がりで控室に戻られてますけど、ご案内しましょうか?」
「撮影のお邪魔でなければ皆さんに一言ご挨拶したのですが」
「今なら大丈夫です。どうぞ」

中では安南がソワソワとしながらスタッフの帰りを待っていた。どうやら自分が外に行きたかったのに止められたようだ。

「おおおっ!敦賀君!」
「安南監督初めまして。このたびはお騒がせして申し訳ありません」
「いやいやいや全然いいよ。むしろプロデューサーなんて最終回にむけてのいい宣伝だって喜んじまってるよ」
「なるべくドラマの撮影には支障が出ないように努力します。何かありましたら事務所まで」

横では社が助監督や主要なスタッフ達に名刺を配りながら挨拶している。
騒ぎを聞きつけたのだろう。俳優陣もこちらにやってきた。

「敦賀君!」
「大原さん、お久しぶり。ごめんね。騒がしいことになって」
「いいのよ!その代わり今度じっくり話を聞かせてね。逸美ちゃんや貴島君も一緒に」
「そうだね。みんなで食事でも」

にこやかに答えながら、ゆっくりとこちらに歩いてくる人物に眼をやった。
ある意味この現場で一番押さえておかなければならない人だ。

「このたびはお騒がせして申し訳ありません。飯塚さん」
「本当にね。話題になるならドラマの内容で話題になりたいものだけど…まあ…でも敦賀君が良い子を選んでくれて嬉しいわ。ダークムーンでは私の娘、このドラマでは大事な生徒、大切にして欲しいわ」
「勿論ですよ」

飯塚が1歩足を進めて、潜めた声で告げる。

「正直、現場の妙な雰囲気を一掃してくれて助かったわ。援護射撃は任せておきなさい」
「そう言っていただけると助かります」

ベテラン女優としての処世術か、それともキョーコの人柄ゆえか、こちらから何を言わずとも飯塚は欲しい答えをくれた。
若手トップ俳優と言われ暫くたつ蓮と、売れ出した女優、残念ながら立場の違いは明白だ。外野からの余計な声を少しでも静める為に2人をよく知る年長の実力者の応援は是非とも欲しい。

蓮と皆が暫く談笑していると後方から「あ、きたきた。」と声がして、キョーコがワタワタと小走りでやってきた。
蓮を待たせてはならないと少し焦った様子は小動物のようでキョーコそのもの。

(ちゃんと役作りしたみたいだな。ナツでも貼り付けてきたらどうしようかと思ったよ)

「す、すいません。お待たせして」
「いや、全然待ってないよ。…こんなことになってごめん。」

「うわっ敦賀君の視線が甘い!」「メロメロ光線だよ。メロメロ光線」…周りを取り囲むスタッフ達の囁きが聞こえる。そんな中で真っ赤になって「そんな…滅相もない」とかブツブツ言っているキョーコの姿はあまりに自然で、あまりに可愛らしく、この芝居を強要しているはずの連さえこれが現実と思ってしまいそうだった。

「京子君、初々しいなあ。ほらほら敦賀君の横に行ってやれよ」
「へう?…いや…その…。ああああああの、皆さんとんだご迷惑を」

頭をあちこちに下げまわるキョーコに「気にしないで」と口々に声がかかり、蓮の横に押しやられた。

「ダークムーンの打ち上げの時も思ったけどお似合いよね~」

愛理の声にキョーコが目を見開いた。

「え?そう…ですか?」
「うん。お似合い」

途端赤かった顔を更に茹で上がったように真っ赤にしたキョーコは、口元をふよふよ緩ませた後「ありがとうございます」とつぶやいた。
その顔は凶悪ともいえる可愛らしさで2人きりなら押し倒していたところだ。

「やーん。初々しくて可愛い!」
「明日の会見楽しみにしてるからね」

ここのところの悪かった雰囲気の反動か、皆の表情は明るい。

「あまり長居したら撮影の邪魔になるね。そろそろお暇しよう。」
「は、はい」
「暫く騒がしくなりご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」

拍手まで湧き起って、まるで結婚報告でもしたような騒ぎだな、と流石に心の中で苦笑いをしながら蓮は顔をあげた。
きゃいきゃいとはしゃいでいる生徒役の一団の少し後ろに有沙が立っている。少し青褪めた固い表情を向ける有沙に、蓮はニコリと微笑んだ。

*
*

「最上さん、ごめん。付き合ってるなんてことにしちゃって」

車で社と3人だけになったところでそう切り出した蓮に、キョーコは想像通りの反応を示した。

「いえいえいえ!電話するときに私がもっと周囲に気を配らなかったせいですから!…あ!天地天明に誓って私がツィートしたわけでは」
「うん、分かってるから。東根さんだよね?」

びくん、とキョーコの方が揺れる。やはり情報源が分かっていたらしい。

「さっき一緒に戻ってきたよね?もしかして何か言われたりした?」
「今までのツィートは自分だって…」
「他には?」
「それが…よく分からなくて…お母さんと2人して敦賀さんのファンらしく、どうやらダークムーンで私が共演したことが怒りを買ったようなんですけど…」

控室でのことを一生懸命思い出してみるが、やはりよく分からなかった。蓮への恋心がばれていることは内密にしておかなくては。

「あ、どうして敦賀さんは東根さんだってわかったんですか?プロバイダーから回答がきたとか?」
「いや、それは俺が被害者ってことでこれから再度請求するみたいだよ。俺たちは沖縄で東根さんのことを人から聞いたんだ」
「人から?」
「情報流出のことじゃないんだけどね。…教えてくれた人は最上さんのお母さんと同じ事務所で働いている弁護士なんだ」

え?とキョーコが呆けたような声を出した。ここに自分の母親の関係者が出てくるとは思ってもいなかったのだろう。

「最上さん」
「は、はい!」
「実はその人に今から行くホテルで待ってもらっているんだ。偶然あっちも今日帰京する予定だったからね」
「…」
「最上さんは話を聞いた方がいいと思う。勿論、お母さんサイドの人からの話だからそれが全て事実とは限らないけど、聞く価値はあると思うよ」

暫し逡巡した後にキョーコは小さい声で「分かりました。」と返事をした。

「その後で俺たち2人のことも色々話したいんだけどいいかな?」
「はい!勿論です。打合せしなきゃいけませんものね!不肖最上キョーコ、期間中は完璧に彼女を演じてみせます!!!」
「うん…まあそのことも含めてね」

期限は無期限だし、演技から本物の恋人へ移行を希望していることをどうやって信じてもらおうか?頭の中でシュミレーションを展開しつつ助手席のキョーコをちらりと見ると、何やら考え込んでいるのか少し俯いた横顔はいつもより大人びてみえた。俯いているせいで見える首筋のラインがとても美味しそうに蓮を誘う。

(仮初でも自分のと思うと、理性が一気に揺らぐな…)

あの首筋に噛みつきたい、そんな不埒なことを思っていると、後部座席に座る社が「お・さ・わ・り・き・ん・し!」と口パクをしているのが目に入った。


(7終話に続く)
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