2015_04
28
(Tue)11:55

腹黒騎士7

今日で最終話です。
本当は本誌発売前に終わらせたかったんですけど無理でしたねー。


2015/4/28




『京子さんは礼儀正しくてきちんとしたお譲さんですから…敦賀さんが素敵な子を選んでくれて嬉しいですわ。…迎えにいらした時の様子?ご迷惑をおかけしてますってお2人できちんと挨拶されてましたよ?私の娘でも生徒でもありますからね。大事にしてくださいってお願いしました』

例の弁護士を社が呼びに行く間につけたテレビでは、飯塚がインタビューに答えて援護射撃を行ってくれている。
それを真剣な表情で見つめるキョーコの横顔を見つめながら、ソファーの反対側に座った蓮はこれからのことを考えていた。

いくらキョーコを守る権利を得るためとはいえ、ここまでの手法が強引すぎることなど自分でもよくわかっている。
そうまでして得たこの立場を手放す気も、誰かに譲る気も全く無いと言い切れる。
だが、キョーコの心を無理矢理縛りたいわけではない。
キョーコに触れるのは心を通わせてから、という思いも捨ててはいない。

(まずは自分の気持ちを伝えて…)

スキャンダルのもみ消しの為などでも、罰などでもなく、キョーコが好きなのだと。傍にいて守りたい。支えたいのだと。
この気持ちを恋愛感情壊死状態のキョーコにどう伝えたらいいのだろう。



■腹黒騎士(はらぐろないと)7終話



チラリ
キョーコが視線をドアの方に向けたことで蓮は我に返った。

(俺の想い云々はとりあえず後のことだよな)

母親の同僚からどんな話を聞かされるのか、キョーコは不安に違いない。
蓮は少しだけキョーコの方に身体を向けて、膝の上に握りしめている手に己のそれを重ねた。

「大丈夫、俺や社さんが付いてるから。とにかく落ち着いて話を聞こう?」

自分が産まれた経緯はキョーコにとってショックな事かもしれない。だが、そこにある母親の想いを知ることはきっと大切なはずだ。

「そうだ。社さんが戻ったらお茶を頼もうか?今日はバタバタして美味しいコーヒー飲めてないんだ。最上さんはハーブティなんてどう?」

気分を変えようとルームサービスのメニューを差し出せば、それを開いたキョーコが唸る。

「た、高すぎます!暴利です!」
「まあまあ、たまにはいいじゃない。ご馳走させてよ」

少しいつもの様子に戻ったキョーコに安心してクスクス笑うと、チャイムが鳴って社が戻ってきたことを知らせた。




話をキョーコは途中から俯いて聞いていた。
ぎゅっ、と握りしめられたスカートがキョーコの衝撃の大きさを表しているようだ。

「東根さんのしたことは決して許されることじゃないと思う。だけどキョーコさんさえよければ僕に任せてもらえないだろうか?LMEの方々ともよく相談したうえで、なるべくいい着地点を探したいと思うんだ」

弁護士の申し出にキョーコが少し視線を上げて蓮と社を見た

「あの…私まだ状況を上手く理解できてなくて…」
「当然だよ。最上さん」
「そうだよ。キョーコちゃん。当面の対処は事務所に任せてよ。変な風に情報が流れて面白半分に書きたてられたりしたらいろんな人が傷つくことになるし」

キョーコは小さく頷いた。

「…キョーコさん、ショックだっただろうけど…お母さんが君を大事に想っていることだけは分かってあげて欲しいんだ。あの人は知らなかったこととはいえ人の夫と関係を持った自分を生涯許さないと思う。だから弁解になるようなことは一切話さないと思うんだ。キョーコさんにどんなに恨まれようとそれはキョーコさんを不幸にした罪「それ、母が言ったんですか?」」

唐突に投げられた問いに男は驚いたようだが頷いた。

「ベロンベロンに酔っぱらって過去の話をしてくれた時に。『あの子を不幸にした罰は受けないと』って」
「…そうですか」

キョーコは脇に置いていたカバンから携帯を出すと、蓮の方に向いてそれを突き出した。

「敦賀さん!」
「な、なに?」
「最上キョーコ、ただ今より人生初めて母に物申します!!!聞き遂げていただけますか!?」
「あ…うん。勿論」

キョーコは先日かかってきた冴菜の番号を呼び出すとスピーカー機能をONにした。
3人の男どもには何が何だか分からないまま、呼び出し音が部屋に響く

『…はい』
「お母さん、キョーコです!」
『何のよ「私のどこがどう不幸ですか!?勝手に決めないでください!!!」』
「まだまだひよっこですが芝居っていう一生もののやりがいのある仕事に出会えました。信頼できる人たちや親友も出来ました!これからますます精進して、生まれや境遇なんて芸のいい肥やしになりました!って言えるくらいの大女優になってみせます!ええ、なりますとも!お母さんは違うんですか?色んな事があろうともしがみついてきた弁護士って仕事はただの食べる為の手段ですか?」
『馬鹿なこと言ってるんじゃないわよ…』

流石親子だ。ドスを利かせた時の低い声がそっくりだ、と蓮は思った。

『ただ報酬を得るため、そんな為にこの仕事してきたわけがないでしょう。舐めないで頂戴!』
「じゃあ、胸張っていればいいじゃないですか!私は私で絶対に幸せになって見せますから!どうぞご心配なく!!!」

鼻息荒く宣言したキョーコがやりましたよ?と言うように蓮を見る。

(うん、いい答えだ)

どんなに胸痛める過去があろうとも、泣こうとも、またきっと立ち上がる。キョーコらしい力強い決意。

(惚れ直すってこういう時に使うんだよな…)

支えるはずだったのに、いとも簡単に飛び跳ねて行ってしまう。全く油断も隙もない。
賞賛の意味を込めて大きく頷くと、キョーコの顔がパッと輝いた。

『ちょっと、待ちなさいよ』

携帯の向こうから呼びかける声にキョーコが慌てて「は、はい」と返事をした。

『一言だけ言わせてもらうけど、あなたあの男には気をつけなさいよ!』
「へ?あの男?」

全く思い当たる節が無いらしいキョーコがマヌケな声で答えた

『敦賀蓮よ。敦賀蓮!なんだか交際してるってことにされてるけど大丈夫なの?あれはストーカーになるタイプよ。しかもかなり厄介な』
「すすすすす…ストーカー?敦賀さんが?なんで?」
『あなたに執着しているからに決まっているじゃない!』
「執着~ぅ?」
『あなた…あれだけ付きまとわれて気付いてないの?探偵使って調べさせたら、あの男仕事以外の空いてる時間はほぼあなたに会うために使っているじゃない!』
「探偵?えええ?なんで探偵?」
『貴方がどうしているか調べるために決まってるでしょ!そんなことはどうでもいいのよ!本当に気をつけなさい!!!』
「いや…そんな訳が」
『あるにきまっているでしょ!業界関係者にもそれとなく聞いたんだから、敦賀蓮は愛車にはマネージャー以外乗せない・自宅には誰も招かないって有名なのよ!それに時々写真に写っているあの目!もうオス丸出しじゃない!!!』

向かいに座る弁護士と社の視線が痛い。うまく覆い隠せていると思っていたが、冴菜の雇った探偵はなかなかのスクープハンターのようだ。
キョーコの方は先程までの勢いはどこにやらパニックに陥っているのか、もうシドロモドロだ。

「いや…でも…だって」
『だって?何よ?』
「敦賀さんには4つ年下の好きな子が…」
『ますます貴女じゃないの!22-18!4よ!4!小学校低学年の引き算よ!』
「あああああ…あの…」
『それに貴方だってあの男のこと好きなんでしょう!男を見る眼悪いところなんて似ないで頂戴!!!』

冴菜の叫びに、弁護士が「へえ、そうなんだ」とのん気に呟き、社がパカリと口を開ける。
蓮も驚きに目を見開いたが、キョーコが小さな声で「どうしてそれを…」と呟くのをその耳はしっかりキャッチした。
真っ赤になったキョーコが口をパクパクしているうちに、冴菜は言いたいことを言って満足したのだろう。

『おかしいと思った時点で専門家に相談するのよ!いいわね!?』

そういって通話は終わった。
キョーコは燃え尽きた様子でノロノロと電話を切ると、ぺたりとソファーに座りみ、器用にも青やら赤やらに顔色を変化させている。

「最上さん」
「は、はい!!!」

蓮の呼びかけにソファーから飛び上がらんほどに驚いたキョーコが、ギギギッと軋んだ音をだしてこちらを向いた。

「うーん、まあ…聞きたいことは色々あるんだけど…」

デットブルーに染まっていくキョーコを見ながら蓮は満面の笑みを浮かべる。
引っかかるところはあったが、要するにキョーコと自分の想いは通じているようだ。

無理矢理手に入れた立場、その後は想いを伝えて、後は誠実に時間をかけて距離を縮めていければと思っていた。
だけど

(想いが通じ合っているのなら…少々、いやかなり強引でも構わないよな)

どんどん深くなる蓮の笑みに、キョーコはガタガタと震え、社も顔面蒼白、弁護士だけがイマイチ状況を把握できていないらしく「何?何?」と社に問いかけている。

「お母さんとの電話も終わったようだし…後は2人で話をしようか?」


とりあえず蓮の想いをしっかり伝えて…
その後は…

(思う存分撫でくりまわして…いいよな?)

うん、そうしよう。


(おしまい)





腹黒騎士、最後までお付き合いいただきありがとうございます!
何度でも言いますが、ちょびは別にキョーコちゃんに姉妹を作りたい訳では決してないのですよ。
こんなネタを通じてではありますが、怒涛の本誌展開に、たとえ泣こうとも再び立ち上がるキョーコちゃんのだるま根性を信じてるよ!と叫ばせて頂きます。

ちょび
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コメント

Re: キョコさんの啖呵。

>まじーん様
キョーコちゃんほど啖呵が似合う女の子ってなかなかいないと思うんですよ。
そしてそんなカッコいいキョーコちゃんに敦賀さんは一生尻に敷かれて生きて行けばいいと思います(笑)

まあとりあえず、この後は記者会見なんて頭の中からすっかりなくなったライオンと子ウサギの攻防が始まるんでしょうが(笑)

2016/05/20 (Fri) 04:29 | ちょび | 編集 | 返信

キョコさんの啖呵。

格好いいですね。

キョコさんの境遇で、こんなこと言える子、なかなかいませんよね。

それにしてもお母様。

娘に恋する蓮さんへの正確すぎる判断、お見事です。
キョコさんの恋心まで見破るなんて・・・と言いたいところですが、写真で蓮さんが蕩けた笑顔だけじゃなくオスの目をした瞬間を撮られているように、キョコさんの乙女顔もしっかり写っていたんでしょうね。

ヘタレ蓮さんは気づかないし、曲解乙女も気付けないでしょうが、母はとんでもなく可愛い表情をした娘の写真に向かって、「キョーコ、そんな顔でこの男のそばにいたら頭から食べられちゃうじゃない!早く逃げなさい!」とか(内心?)叫びまくってたんですかね。

(∩*´ω`*∩)

思う存分撫でくり回す気満々の蓮さんには、記者会見のこともあるので社長ストップがかかりそうな気がしないでもないですが、少しは恋人っぽく触れると良いですね。d(*^v^*)b♪

2016/05/07 (Sat) 18:49 | まじーん | 編集 | 返信

Re: 面白かったです!!

>○海様
今回も嬉しいコメント有難うございます。
腹黒紳士は蜘蛛の糸の様に細く解けない糸をていねーいに貼っていくのです(笑)「ここまで周知されたうえに飯塚さんの応援までもらってるし、別れるなんてできないよね?」とかなんとか言いくるめて。
まあ悪い男にひっかかるところは遺伝だと冴菜ママには諦めてもらわなきゃいけませんね。娘の男は浮気はしませんし、重いところを我慢したらきっとお買い得なはずですから。
続きを妄想してくださってありがとうございます。書き手冥利につきますよー。

2015/07/07 (Tue) 18:08 | ちょび | 編集 | 返信

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2015/07/06 (Mon) 21:17 | | 編集 | 返信

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