2015_02
26
(Thu)11:55

強く欲するモノ(3)

2014/3/20初稿、2014/9/9一部修正、2015/2/26加筆修正

「あれはどういうこと?」

祥子は楽屋に戻るなりショータローに詰め寄った。
声は押さえているが、常にはない剣幕だ。

「何だよ。曲のモデルの話?本当のことだろ?それに俺はモデルが幼馴染っていっただけだぜ」
「世間はそうは思ってくれないわ。尚と幼馴染の間にはあの曲のような物語があった、そう思うでしょう。そしてその幼馴染がキョーコちゃんだってことなんてあっという間に知れ渡っちゃうのよ!?今の状況と自分の立場、それに楽曲の影響力について考えてちょうだい!!!」

キョーコとショウタローが幼馴染であることを知っている者は地元でもこの芸能界でもそれなりにいる。そうなるとキョーコを特定することは容易なのだ。
流石にバツが悪そうに、少し顔をそらして尚はつぶやいた。

「だからって…もう昔の話だし…」
「昔?尚、あなたはまだ20歳なの。17や8のころの事なんて昔とは言わないわ。“少し前の事”よ!。公表するにはネタとしてまだまだ新鮮すぎるの。50や60の人が振り返る10代の恋とはわけが違うのよ?」

ショータローにとっても昔の話と言うのはあくまで建前だ。あの鬼畜野郎との婚約話を聞いて胸の内で一層膨れ上がった苛立ちをあの曲にぶつけたのだから。
歌謡祭の本番直前に見たネットでツーショットを見てしまい、さっきの発言につながったのだから。

「事務所と相談してくるから、楽屋から絶対出ないで!」

そう言い残して祥子は出ていき、ショータローは一人取り残された。



■強く欲するモノ(3)



翌朝、タクシーを降りたった社に数人の記者がレコーダーを向けた。

「敦賀さんのマネージャーさんですよね?昨夜のサンライズテレビ歌謡祭での不破さんの発言は…」

穏やかな笑みを浮かべてコメントを返しエントランスに向かいながら、昨日テレビで見た人気歌手の顔を忌々しく思い出した。

(全く、余計な仕事増やしてくれるよな)

*
*

「おはようございます。社さん。マスコミ結構いましたか?」

玄関まで迎えに出た蓮が尋ねてきた。

「おはよう。たいしたことないな。やっぱり早めに手を打ったのが効いたみたいだ。…キョーコちゃんの様子はどうだ?」
「さっきまでちょっと怒ってましたけど、いつも通りです」

ふーん
ジロリと蓮の顔を見つめた社は問うた。

「怒るって誰に?不破に?それともお前に?」

ぎくり。
蓮の肩が小さく揺れるのが答えのようなものだ。
社は、「やっぱりな」とため息をつく。

「昨夜電話した時、お前相当不安定な感じだったから心配だったんだよ。そういう時キョーコちゃんに矛先向かうから。ちゃんと寝かせてあげたんだろうな?」
「そんな露骨に…」
「所属事務所としては大事なことだよ。露骨に言われるようなことしなきゃいいだろ?で、どうなんだ?」
「それはちゃんと…怒られましたし…」
「怒られたし?」
「…噛まれましたから」
「はあ?噛まれた?」

蓮の仕事への配慮を忘れないキョーコが噛む?
キスマークだってつけてくれないと担当俳優から聞いたことがあるというのに。

「…どこだよ?見せてみろ」
「え?いや、大丈夫です。仕事には影響ないところですから」
「ってことは跡残ってるんだな。見せろっ」

キッチンにはキョーコがいる。マネージャーに服を剥かれそうになっている姿など見られたくはない。蓮は渋々シャツをめくって見せた。

「わき腹?」

左わき腹に歯型。
肉食獣が腹の肉に喰らいつきましたといわんばかりのくっきり具合。
鍛えた腹筋があるにも関わらずこれだけ跡がついたということは相当強く噛んだのだろう。

「くっ…」

おかしすぎるだろうと社は腹を抱えて笑った。

「き、き、キョーコちゃん、肉食系だったんだ」

わき腹まで見せるような仕事は今のところない。キョーコはそこまで計算済みだ。

「笑いすぎですよ。社さん」
「いやいや、ごめん。でもキョーコちゃん、お前が不安定になるとすっごいやり方でケツ叩いてくれるよな」

面白くない顔のまま蓮はシャツを整える。
こうやって不安定になると、キョーコを求めてしまうのはカインの頃からだ。
あのころはまだ触れるだけだったが、今はキョーコを抱いていればその不安が薄まる気がして…離せなくなって、最後はキョーコに喝をくらうのだ。

「いっそ、次はケツ噛んでもらったらどうだ?仕事には支障ないってキョーコちゃんに伝えとくか?」
「…社さん」

一気に疲れた蓮とは対照的に社はウキウキとリビングに向かう。
ダイニングテーブルに3人分の朝食を並べていたキョーコが振り返った。

「おはようございます。社さん」
「おはよう。キョーコちゃん。美味しそうだね」

蓮の大事な守り神に社はにっこりと微笑んだ。


(4に続く)





短いなー。でも2話合わせたりとかすると目次とか変えなくちゃいけなくて面倒なので変えません。
加筆修正はしてますが、流れは全く変わっていません。
全部修正が終わったら旧バージョーンは下げますね。
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