2016_05
18
(Wed)11:55

抹消スイッチ-後編(ほんのわずか番7)

後編を読むのに一番大切なのは、皆様の想像力です!


2015/5/29初稿、2016/5/18一部修正の上通常公開





覆いかぶさり、噛みつくようなキス
そして手早く制服のベストの裾からブラウスを引っ張り出し、できた隙間から手を侵入させる。驚いたキョーコが抗議の為に胸を叩くが、そんなのは何の抑止効果ももたなかった。
食べつくすようにキスを深めて、その間にあちこちに不埒な手を這い回らせスイッチを探す。

今さっきショータローに触れられた感触を、
2人の過去を
すべて消し去るためのスイッチを必死に探す。



■抹消スイッチ-後編(ほんのわずか番外7)
       ~ほんのわずか5カ月後~




抗議を続けていたキョーコの手が次第に力を失い、縋るように蓮のシャツを掴んだタイミングで、先程ショータローが顔を埋めていた首筋に唇を移動させた。
その感触にキョーコの唇が小さな声を漏らし、身を震わせる。

その時見えた。昨夜項につけたイタズラの痕がはっきりと。

ショータローにも見えたのだろうか?話に聞いても信じられずにいたものを実際目にして、キョーコを拘束していた腕が緩んだのだろうか?

そう。
あの男は知らないのだ。

2人ぴったりとくっついて眠る心地よさも
思わずといった風にキョーコがもらす吐息も
我を忘れて縋りつくキョーコの腕も

そんな分かり切ったことを再認識すると一気に頭が冷えた。


「消毒終わり」

誤魔化す様に明るい声でそう告げて、棚に押し付けていたキ身体をちゃんと立たせてやる。ぼんやりとしていたキョーコだが蓮に手櫛で髪を整えられているうちに状況を把握したらしい。

「なななななななな」
「ああ、服随分乱れちゃったな」
「だ、誰のせいだと!」
「俺の所為だね。ちゃんとしないと部屋に戻れないな。手伝おうか?」
「自分でできます!」

真っ赤な顔で頬を膨らませたキョーコが蓮に背中を向けて、身だしなみを整えながら訴えた。

「…こ…こんなことされていませんからね!」
「うん、分かっているよ。…ごめん、暴走した」

いくら人気が少なかろうと、ドアを閉めていようと、恋人だろうと、キョーコが真摯に働いている場所ですることではない。己の制御不能ぶりに自嘲気味に笑うとキョーコがチラリとこちらを見た。

「…今だって…今までだって…こんなこと敦賀さんにしかされたことないんですよ?」
「…うん。ありがとう。その権利をくれて。ほんとにごめん」

落ち込んだ蓮の様子が気になるのかキョーコはそれ以上は追求せず、データが入ったファイルを出してくれ、鏡を見たいからと化粧室に入って行った。

フロアに戻った蓮は、再び仕事に集中した。
週末はゆっくりする時間を作って話をしなければ。理不尽な嫉妬は出来れば隠したいが、また爆発してキョーコを追い詰めるなんて御免だ。

*
*

「敦賀君」
「ん?…ああ、石橋君。何?」
「俺そろそろ帰るね?」

見回してみればもう10時近い、フロアに残っているのはこの2人だけだ。

「ああ…うん。随分片付いたから俺ももうすぐ帰るよ。お疲れ様」

ショータローと三沢が飲んでいる店に合流するのだという石橋を見送って、デスク周りを片付けた。
脱いでいたジャケットの胸ポケットに入れていたスマホを確認すると、キョーコから30分ほど前にメールが1件。
夕方に接客した時にマナーモードにしたままだったことに内心舌打ちしつつ、メールを開く。

 - この前借りた本の続きが気になるので、お部屋にお邪魔します。 -

慌てて発信するも電話に出ない。

 - 今から帰るから泊まっていって -

そうメールすると鞄を手に取り、急ぎ足でフロアを出た。

*
*

もしかしたら本だけ借りてそのまま帰ってしまったかもしれない。そう思うと気が急いて、インターフォンは鳴らさずに解錠する。玄関には華奢な靴がきちんとそろえられて並んでいた。そのことに安堵してリビングを目指す。

「キョーコ?」

キョーコはリビングのソファーに本を広げて座っていた。考え事をしているのか、蓮が入ってきたことにも気付かないようだし、ページを捲る様子もない。もしかしたら先程の蓮の行動を何かマイナスな方向に捉えたのだろうか?

「キョーコ?」

近寄ってもう一度名前を呼ぶと、飛び上がるように立ち上がり、そんな自分が恥ずかしいのかそれとも驚いたせいか、顔を赤くしながらも「おかえりなさい」と言ってくれた。その笑顔に暗いものは感じられずホッとする。

「ただいま。フロア出る前にメールしたんだけどみた?」
「え?あ…みてません。すいません。」
「いいよ。待ってて欲しかっただけだから。」
「あ…あの…」
「うん?」
「もう遅いですし…泊まっていって…いいですか?」
「勿論。」

願ったりかなったりで蓮は笑みを深めた。
とりあえず着替えようとクローゼットに向かいながら、ふと思ったことを口にする。

「でも珍しいね。キョーコが突然来て泊まるだなんて、1度か2度あっただけじゃないか?」

返事が無いので振り返ると、キョーコは俯いて立ちつくしている。やはり先程のことが尾を引いているのかと慌てて踵を返した。

「いや…俺も泊まって行って欲しかったから嬉しいよ。資料室でのこともちゃんと話をしたかったし…」

俯いたままのキョーコに不安が募る。深い関係となってから8カ月ほどになるが、元は歩く純情さんだ。先ほどのことは刺激が強すぎたのかもしれない。「破廉恥!」なんて怒られるなんてかまわないし、暫く夜のことはおあずけ…は正直キツいが「神聖な職場であんなことする人とはうまくやっていけない」とか言われるくらいなら甘んじて受け入れよう。

「あ…の…キョーコ?」
「…敦賀さんが悪いんです」

俯いたままボソリと零れた言葉にうんうんと頷いた。

「うん、俺が悪い。俺があんなところで「あんな中途半端な事するから!!!」…へ?」

文字通りポカンと口を開けた蓮に、真っ赤な顔で涙目のキョーコが言い募る。

「あ、あんなことしといて…まるで何もなかったみたいに仕事するから!いいえ!そもそもこんな破廉恥な事思うようになっちゃったのはそもそも敦賀さんが「キョーコ…?」」

はくっとキョーコが停止し、また俯いた。真っ赤な顔のままでもじもじと身を小さく揺らす。
いや、キョーコに限ってまさかと思ったが、一応念のため聞いてみる。

「…もしかして…続き…しにきたの?」

ピクリとキョーコの肩が動くが、真っ赤な顔は俯いたまま、またもじもじ…
暫しその危険な位可愛い姿を無表情で見つめた後、蓮の顔は次第に緩んだ。

(…まいったなあ…もう…)


分かりすぎるほど分かっているのだ。
あの男との時間があったから、蓮との擦れ違いの時間があったから、今の2人があるのだと
それなのにありもしない抹消スイッチを探して探して…

(まさか…こんなスイッチ押してたなんて…)

嬉しい誤算極まりない。

(さて…どうしてくれようか…)

先程までの後ろめたさも、ショータローとの過去への嫉妬もどこにやら、頭の中にはこれからの楽しい夜のことばかりが浮かぶ。
キョーコはたとえ触れずとも蓮の気持ちのスイッチをいとも簡単に切り替える。そんな自分がおかしいけれど、もうどっぶり恋にハマってしまっているのだから仕方ない。


「そうだな…男なんだから自分の行動の後始末はつけなきゃね。」

ネクタイを緩めながら近づいてくる蓮に、何やら不穏なものを感じてキョーコはまた後ずさる。

「どうした?」
「え…いや…シャワーとか…せめて…寝室…」
「キョーコ?」

とん、と壁にキョーコを追い詰めて囲い込むと、その耳に囁いた。

「続き…なんだろう?資料室にはシャワーもベットもないよ?」



(おしまい!)





ほら、後は皆さんの想像力におまかせ!
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Re: とても面白かったですよ!!

> genki様
コメント有難うございました。そしてお返事遅くなりましてすいません!
動作の描写とかそういうのが桃風味に限らず苦手でして、一生懸命書けば書くほどギクシャクとした動きになるのですよ。
色っぽい仕草ともなればなおさらです。
うまくいかないならいっそ皆様の頭の中で動かしてもらおうという卑怯な道にいつも逃げ込んでおります。
一杯この蓮キョを読みたいっておっしゃっていただけるのは嬉しいです。一応次のショータロー目線で一区切りとしますが、また機会があれば書いたりするかもしれません。

2015/06/03 (Wed) 13:20 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

とても面白かったですよ!!

大変遅くにこんばんわ。
ちょび様、大変恥じらっていらっしゃいますが、とても面白かったですよ!まさに「ほんのわずか」な薄紅風味で切ってしまうところが幸せ一杯の二人にお似合い、というところ。幸せな二人をいっぱい見たい(正確には読みたい…ですが、脳内漫画で流れるので「見たい」)という気持ちですので、また番外編が登場しないかな〜と待ちわびております。次のショータロー目線の話も楽しみにしております。どうもありがとうございました

2015/05/30 (Sat) 02:37 | genki #- | URL | 編集 | 返信

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