2015_05
27
(Wed)11:55

ヒドイヒト(後編)

カウンター20000HITのはるりん様からのリクエスト。

お約束は守りましたー。

2015/5/27





(そ、そんなに酷い身体ってこと!?)

眼を瞑り更に身を縮ませると、蓮の呟きは続く。

「…本当に酷い。俺がどんなに我慢しているかも知らないで。水族館だって「あの魚見てください」なんて薄着で密着されて俺がどれだけ魚の数を数えて理性を保ったか…ドライブだって映画館だって上目遣いで見てきたり、ショートパンツにニーハイなんて履いて来たり…そうやって無防備にしかも無意識に俺を煽るんだ…俺が男の顔で迫ったら逃げる癖に…。おまけにこんな美味しそうなもの御開帳…もう今夜は悶々として絶対寝れないじゃないか。本当になんて酷いんだ。」

ん?とキョーコが目を開く。



■ヒドイヒト(後編)



なんだか言ってることがおかしくないだろうか?
芋虫のまま顔だけ声のする方に向けると、蓮は体操座りをして頭を抱えていた。

「ええ…っと、敦賀さん」
「何?」

ジト目がこちらを向いた。

「その酷いっていうのは…」
「最上さんのことに決まっているだろう?俺の心を弄ぶんだから」
「もっもて?」
「弄んでるじゃないか。散々煽っといて触れることは許してくれないくせに」
「ふっ触れ触れ触れ…」
「触れたいに決まってるだろ?好きな子と2人っきりでいるんだから」

スキナコ?

「…何その顔。2人で出かけるたびに匂わしてきたつもりなのに、やっぱり全然伝わってなかったんだ」
「う”?」
「全然思い当たる節が無いとは言わせないよ」
「あれは…天然タラシの挨拶なのかと…」

今度はギロリと睨まれる。
ひぃと再び頭を引っ込めて芋虫姿勢で思い出す。

(「君の顔をみたら疲れなんて吹っ飛ぶよ」とか「あのシーンは相手を私だと思ってやった」とか「今日は最上さんの笑顔が沢山みれて幸せだった」とか…あれって本気?いやいや…でも…)

「あ、あの…」
「何?」
「好きな子…いるんじゃ…」
「最上さん以外に?いないよ」
「え…でも…代マネした時に熱で朦朧として『キョーコちゃん』って」

坊のことはなるべく伏せたいのでそう告げると、ああ、と蓮は少し赤くなると目を逸らした。

「…最終的には呼び捨てにしたいけどね」

(あれって私のことですか―――!?)

あんな名前も呼んでもらえない時から夢の中では“キョーコちゃん”!?。もしかしてこの先輩は自分と同じく妄想癖という病持ちなのだろうか。

「いや…その…もう少しハッキリ言って下さらないと…」
「…はっきり告白して、断られた挙句に避けられたりするんじゃないかと思うと怖いじゃないか。こんなに人を好きになったことないのに絶対失いたくないだろう。外堀埋めて断れない状況に持っていくつもりだったんだよ」

今度はキョーコが吃驚顔で蓮を見つめた。さらに赤くなった蓮はぷいっと顔をそらしてしまう。
暫し考えたのち、芋虫姿勢のままモソモソとにじり寄った。

「あ、あの…ですね。では…今夜の私めのドレスアップには少しはドキリとしたりとか…」
「ドキリどころかメガトン級の破壊力だったよ。直視したらどうにかなりそうな位。その上…会場の男どもの厭らしい視線とやたらと君の肩や背中に触れる手にイライラして、誰とどんな挨拶を交わしたかなんてろくに覚えていないね」

キョーコの胸が鳴る。期待と言う名の音が鳴る。
ちらりとキョーコの方をみた蓮は「カッコ悪いだろう?」と誰ともなしにつぶやくと、頭をクシャクシャと混ぜた。

「別に今日みたいな綺麗な格好じゃなくったって、ほんの小さな仕草や言動に動揺されっぱなしだよ。ちょっと見つめられるだけで舞い上がるんだ。君が好きなんだから」

再び目を逸らしたままの拗ねた子供のような告白に、キョーコは込み上げるものが我慢できなくなって、すばやく起き上がると蓮の首に己の手を巻きつけて抱きついた。驚いた蓮がラグに手をついて身体を支える。

「ちょ…最上さん!」
「好きですよ」
「え?」
「私も敦賀さんのことが好きです。妹みたいな存在でもいいから少しでも傍に居たくて、敦賀さんに他に大事な人が出来なければいいと願う位。それでもちょっとは女性として見て欲しくて大人っぽいドレスを選んじゃうくらい」

蓮が息をのみ、キョーコの手が巻き付いている首から伝わる体温が上がった気がした。

「ほ…んとに?」
「本当です。」
「先輩だから気を遣って、とかじゃなくて?」
「そんなんじゃありません」
「男として君を好きだって言ったんだよ?」
「分かってます。」
「…ほんとに?」
「ちょっとシツコイです」
「うん。ごめん」

あー、とか、うー、とか敦賀蓮らしからぬ動揺を見せた後、これまたらしからぬオドオドとした問いがキョーコの耳元に聞こえた

「じゃあ…これからは恋人同士として付き合っていける?」
「はい」
「ほんとに?」
「だからしつこいです」

最後は笑いながら言うと、蓮の両手がキョーコの背中に回った。
今までされたことのある抱擁より少し息苦しいほどのそれは、敦賀セラピーなんて言葉では言い表せないほど幸せな気分をもたらしてくれる。

“敦賀蓮”のイメージとはかけ離れた告白と、動揺。それがキョーコが特別なのだと教えてくれる気がして、キョーコにとっても蓮が特別なのだと伝わるように首に回した手に力を籠めた。
多分今自分は相当なアホ面をしているのだろう。でもせっかく青いドレスの魔法が奇跡を起こしてくれたのだ。もう暫く浸っていたい。

そう、すっかり浸っていたから忘れていた。己の現在の姿を。

さわり
なんだか意味深に背中にある蓮の手が動き、「ん?」と思った時

「…もう我慢しなくていいんだな。俺。」

声だけで夜の帝王がおでましだと分かる。そして蓮の手が艶めかしくキョーコの背中を這うことで自分が上半身裸であることを思い出した。

「!!!!!!!!!!!」

首に回っていた手を離して己の胸を隠し蓮から離れようとした。だが蓮の手が巻き付いているのだ。離れようとしてもキョーコの頭が後ろに下がるだけで、結果蓮を巻きつけたままラグに仰向けに転がり、体勢的にはよりピンチを迎えている。

「積極的だね。今まで我慢した分のご褒美?」
「しば…暫し!暫しお待ちを!!!」
「最上さんのせっかくのお誘いなのに、待つなんて失礼でしょう?」
「いえいえ!失礼なんてとんでもない!待っててください!なんならお茶でもいかがでしょうか!?」
「別に喉は乾いてないけど」
「そう言わずに何でもいいです!何か一口!」
「…じゃあ一口」
「はい!喜んで!何にしましょう!?」
「そう?じゃ…遠慮なく」

蓮はにっこり微笑んで、キョーコの胸元に吸い付いた。


*
*

「あ、京子ちゃん。帰るんだ?」

貴島の声に、車寄せに向かって歩いていたキョーコは振り向いた。

「はい。貴島さんもお帰りですか?今日は有難うございました」
「いやいや、こちらこそお招きありがとう。流石LMEの社長だよねー。楽しかったよ。…京子ちゃん。ジャケット羽織っちゃったの?ドレス似合ってたのに」
「有難うございます。冷房がよく効いてたせいかちょっと肌寒くなっちゃいまして…」
「ふーん。…それで敦賀君のを借りたの?」
「そ、うなんですよ。」

あははは、と乾いた声で笑うキョーコとその横で微笑む蓮を、貴島は何度か見較べた。

「…敦賀君」
「なんだい?貴島君」
「今度、飲みに行こうか?。敦賀君のおごりで」
「喜んで」
「…隠す気ないんだ」

まあいいやとマネージャーと共にタクシーに乗り込んだ貴島を見送って暫くすると、蓮の車が回されてきた。

「…お酒」
「君がいるパーティでは飲まないことにしてるんだ。送って行きたいから」

どうぞ、と当然のように助手席を薦められて不承不承乗り込む。

「どうしたの?ブスッとして」
「どうしたじゃありませんよ!敦賀さんのジャケットなんて羽織ってるから、絶対貴島さんに変に思われましたよ!」
「ああ…。脱いでても俺はよかったのに」
「よかったじゃありませんよ!胸元や背中にあんな…」
「キスマーク?普段の恰好なら見えないところだし、恋人のキスはちゃんとしたいかなと思って唇は我慢しただろ?」
「…恋人としてのキスより先にキスマークつけるってどうなんですか?」
「最上さんだってつけてくれたじゃない。歯型付きで」
「あれはっセッちゃんとしてです!」

そうだったっけ?、と嘯く男を睨みつけるがどこ吹く風だ。

「さて、行先は俺の部屋でいいよね?明日はそんなに早くないんだろう?」
「却下です!」
「何で?」
「こんな怒涛の流れに乗るのはいけません!男女の付き合いというのはですね。もっと段階を踏んで…」
「段階ねえ。食事をしたり、映画観に行ったり水族館でデートしたり?」
「そう…」

ですよ、と言いかけた唇の動きを止めて蓮の顔をみた。悪戯をした子供みたいな目でこちらを見ているこの男はどうやら結構前からキョーコとの距離を埋めるべく工作をしていたらしい。

「…酷いです。もっと早く気持ち伝えてくれてたら、女としてみてないから気軽に誘えるんだって考えて凹んだりせずに楽しめたのに。」
「そっちだって酷いよ。もう生殺し状態だったんだから」
「それは…もう少し生殺し状態でもよかったような…」
「ほら、やっぱり酷い」

くすくすと笑いあう。凹みながらも生殺しでも傍に居たかった大事な人。だから今だってもっともっと傍に居たいのだ。

「それに…夜景の綺麗なところでゆっくり色々な話をしたりとか…」

キョーコの提案に蓮は楽しそうに答えた。

「それならいいところ知ってるよ。夜景は綺麗だし、2人きりでくつろげてキッチン完備。」
「…おまけに部屋代も駐車場代もタダですか?」
「そう。よく知ってるね」

上機嫌で蓮はウィンカーを出した。

「そうそう、夜景の中でも…「寝室が一番綺麗っていう提案には乗りませんからね」ええ~」

スカイツリー見えるのに、とブツブツいう蓮を見て、キョーコはしてやったりと笑い、運転席の拗ね顔のあまりの可愛らしさにまあ添い寝くらいなら構わないかと頭の中で考えた。


(おしまい)





敦賀氏、己の失言について詫びるどころか開き直りました。

はるりん様からのリクエストは「キョーコの女として見て貰いたいという誘惑が重なり、蓮の理性が切れ、責任転嫁と独占欲による教育的な言動とキョーコの引け目から本心が伝わらず逃げまくるキョーコ」

…ほら、捻じ曲げちゃいましたね。

なんていうか…パーティ会場をくるりくるりと逃げ回るキョーコちゃんと、御開帳!が浮かんじゃいまして…
ごめんなさーい。はるりん様。
ちょびは楽しませていただきました~(←おい)
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Re: ありがとうございます

>いわりん様
読み返してくださってありがとうございます!私も読み替えましたよーと言っても何書いてるのか途中で分からなくなって読み返すのですが(笑)
本誌のちゃんの天然入った感じのキョーコからが可愛いなーと思っております。

2015/05/28 (Thu) 23:24 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

ありがとうございます

ありがとうございます。始めから三回読み返しました京子ちゃんの迂闊さがかわいいです。ありがとうございます

2015/05/28 (Thu) 07:28 | いわりん #- | URL | 編集 | 返信

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