2015_06
09
(Tue)11:55

12月の鬼-プロローグ(記憶喪失の為の習作5)

さて、新連載は記憶喪失の為の習作です。もうちょっと後の時期にしようかと思ったのですが、あまりにも設定ずれると不味いのでとりあえず投下

※ 12月の鬼注意書き ※
1、いつもながら医学的根拠に基づいておりません。記憶喪失その他突っ込みどころ満載ですが、雰囲気で読んでくださると助かります。
2、冴菜さんがガッツリ出てきます。
2.本誌設定の未来話(キョーコちゃん19歳)ですが、かなりねじ曲がっています。
4.辛気臭いです。
5.不定期更新となりそうな予感。一応最後までの展開は決めてるのですが、途中で色々迷いそうですし、ちょっとしんどくなったりしそうです。リクやら短編やらを途中で挟みながらの連載となります。まとめて読みたい。と仰る方には結構お待たせするかも。

以上、それでもいいよーと仰る方は追記よりどうぞ。
プロローグの割に長いです。

2015/6/9




私の髪をすく優しい手

「今日は雪がちらついたよ。キョーコが見に行きたいって言ってたイルミネーションももう点灯してた」

耳に馴染む少し低い声

「そろそろ起きよう。次は俺の淹れるコーヒーより美味しいの淹れるんだって言ってたよね?」

髪をすいていた手が今度は私の頬を撫でる

「暖かくなったら公園でお弁当食べようって…もっと…もっと…色んな役を演じたいって言ってたよね?」

声が震える

「起きて…。目を開けて…俺を見て」

祈るように、哀願するように、紡がれる言葉


起きなきゃ
早く起きて安心させてあげないと

もう起きるから

だからねえ…泣かないで



■12月の鬼-プロローグ(記憶喪失の為の習作5)



(…またあの夢)

キョーコはスマホのアラームを止めて、ぼんやりと天井を見つめた
頻発にみるその夢の内容は目を醒ますと覚えていない。だが、いつも早く起きなくてはと思って目が醒める。なんだか甘く、そして胸がうずく夢

(まあ、起きなきゃと思うせいで寝坊しなくてすむからいいんだけど)

さて起きようとベットの上でのびをする
もう5月も終わりだと言うのに手や足先になんだか温もりが足りない。冷え性なんだろうか



「お母さーん、起きてー」
「う…ん、後10分…。」
「朝御飯食べる時間無くなっちゃうから起きてー。もうすぐ出来るよ」

冴菜の手が軽く挙がったのを了解のサインと受け取り、朝食の準備に戻る
トーストと目玉焼きをテーブルに並べたところで冴菜も席についた

「おはよう、キョーコ」
「お母さん、おはよう。お弁当出来てるからね」
「いつも悪いわね。あら、キョーコの分は?」
「今日は学食で皆で食べる約束してるから」
「別に毎日そうでいいのよ?」
「大学の学食は持ち込み大丈夫だし、他のお店で食べるときは前以て約束するから。節約するためにお弁当の子結構いるよ」
「そうなの?今の子は堅実ね。今日はバイトだったわね?何時頃帰るの?」
「んー8時過ぎかな」
「今日は私早いから晩御飯作るわ」
「じゃあ今晩は鳥の照り焼きだね」
「どうせ私はそれ位しか上手く作れないわよ」

ツン、と横を向いて不機嫌に告げるのは照れ隠しだと今は分かる。キョーコはくすくすと笑いながら告げた

「お母さんの照り焼き美味しいから楽しみ。」
「…あんまり期待しないで頂戴」
「あ、味噌汁の出汁忘れないでね」
「…今度は気を付けるわ」

冴菜の言葉に頷きながら時計を見る。今日は1限から講義がある。そろそろ準備にかからねば

*
*


学食のレジに並ぶと前に並んでいた保原美晴がキョーコのトレイを見て面白そうに笑った

「前も鯖の味噌煮じゃなかった?」
「そうだっけ?好きだからつい」
「実家暮らしだと家で食べないの選びそうなのに」
「うちはお母さん青魚嫌いだから」
「お母さん嫌いなのにキョーコちゃんは好きなんだ。家で食べなれないものって自分も苦手になったりしない?」
「うーん。どうなのかなあ」
「やっぱり大きな事故とかにあうと味覚変わったりするのかもね」
「そうなのかも」

キョーコは曖昧に笑う。
1年半前、17歳の11月に交通事故に巻き込まれ生死の境をさ迷い、半月後に意識を取り戻した時にはすべての記憶を喪っていた。

「でもさ、お母さんも凄いよね。キョーコちゃんをいい先生に診てもらうために京都から東京に仕事も家も変わったんでしょ?」
「うん。まあ仕事の方は事故の前から東京での仕事多かったみたいで丁度よかったって言ってたけど」
「でも勇気いるよー。」
「そうだよね。あんまり効果無くてお母さんに悪いけど」
「そんなことないよ。母の愛だよ。ハハノアイ」

美晴があんまり真面目な顔をして母の愛を連呼するので、なんだか可笑しくなり2人でしばらく笑いあう。

「でもさ、本当に何にも思い出せないの?ドラマとかだと『私ここ前にきたことがある』とかあるじゃない」
「それがないんだよね。引っ越したからかもしれないんだけど、家のことも歯磨き1つ探せなくて」
「事故までは高校行ってたんでしょ?友達とかお見舞いにきてくれたりした時も?」
「意識戻ってから暫くの記憶が曖昧なの。」

転院前の病院でのはっきりした記憶は殆ど無い。なんだか色んな人がお見舞いにきてくれていたことはおぼろ気だが覚えているのだが。

「それでお母さん余計に心配になって転院したのかもね」
「うん…」

でも京都から東京に転院したとはいえ誰からも連絡がないものだろうか?
携帯もスマホも持ってはいなかったらしいが、それにしたって手紙をくれたり、こちらに進学したら会いにだってこれるのに。
記憶が無くなる前のことを冴菜はあまり話さない。聞けば答えてくれるのかもしれないが、なんとなく聞いてはいけない気がする。
もしかしてトラブルを起こしたりイジメにあってたりして、自分には友達一人いなかったのではないかと思うと怖くて聞けないと言うのもあるのだ。


「お待たせ。パスタ激待ちだったよ~」

トレイをカチャカチャ言わせながら古殿遼子が席についた。
必修の語学が同じクラスと言うことで仲良くなった3人は何かと一緒に行動している。

「遼ちゃん、テニスサークル楽しい?」
「うん、楽しいよー。合同サークルだから男の人もいっぱいだし。結構カッコいい人いるんだ」
「遼ちゃん、バイトもサークルも選ぶ基準出会いだよね」
「だって女子大なんてぼーっとしてたら出会いないよ?早く彼氏作って青春したいもん。そういう美晴だって結局子供向けボランティアの合同サークルじゃん。演劇部の体験キョーコちゃんにつき合わせといてさ。連れて行った本人が入らずに付き添いが入るんだから」
「だってえ、うちの演劇部レベル高すぎてついていけなさそうだったんだもん」
「そうなのキョーコちゃん?」

キョーコは口の中のご飯を飲みこむと笑って手を振った。

「基本は練習週3回だし、ちゃんと丁寧に教えてくれるよ」
「キョーコちゃん、才能あるって先輩たち目をギラギラさせてたもんねー」
「うそ?だって未経験なんでしょ?」
「でも発声とかもうピカイチだよ。立ち姿勢も綺麗って言われてて」
「凄いね。美晴は高校演劇部だったんでしょ?どうだったの?」
「うちは部といってもお遊びみたいなもんだったから、もうぜーんぜん」
「たまたまだよ。たまたま。でもすごく面白いから美晴ちゃんが連れてってくれて本当によかった」
「ほんと?よかったー」
「キョーコちゃん楽しそうだもんね。いろんなこと楽しんでやった方が、記憶の為にはいいのかもよ?」
「そうかな…?」

ふと、演劇部に入部した旨を伝えた時の母を思い出す。
「もっと色々見てから決めた方がいいんじゃないの?」と告げる口調は穏やかだったが、眉を顰めた表情が不快さを表していた。大学受験の時だって自宅から通える範囲ならとキョーコの意志を尊重してくれたのに。
その表情に怯んだが、意志は曲げなかった。
だって、あんな高揚感を味わったのは初めてだった。美晴に強引に連れて行かれた舞台稽古の練習。自分もあの場に立ちたい、演じたいと強く強く思ったのだ。
色んな役を演じて、そしてそして…

「キョーコちゃんは今日は講義何限まで?」

思考の世界に飛びたとうとしていた意識が強引に引き寄せられる。

「ん?うん、今日は4限まで。その後はバイト」
「ああ、カフェの?」
「うん。最近は公園の方のお店任してもらってるんだ」
「ああ、ワゴンの…1人でしょ?変な客来たりしたら怖くない?」
「暗くなったら店じまいだもん。その時はマスターが来てくれるし大丈夫」

雨宿りにたまたま入った小さなカフェで飲んだコーヒーにすっかり魅了され、バイトを決めたのは大学の合格通知をもらってすぐだ。
移動販売車でのコーヒースタンドから始めたのだというマスター夫婦は、原点でもある公園での販売も続けていて、キョーコが少しはまともにコーヒーを淹れるようになるとそちらのほうを任せてくれるようになった。

「マスター、お待たせしましたー。交代しまーす」
「おお、キョーコちゃん、こんにちは。店の方はどんな様子だった?」
「田村さんがマスターが淹れるコーヒーじゃないとって待ってましたよ。はい、こちらはマフィンです」
「重いのにありがとう。サンドイッチの方は完売したから。じゃあ7時ごろに店仕舞にくるからね」

マスターはキョーコの為にコーヒーを淹れてくれると店に自転車で戻って行った。

甘く芳醇な香りに誘われてカップに口をつける。苦さだけではなくどこか優しくて心ほぐれる様な深い深い味わいのコーヒー。
同じ豆でも同じやり方でもこの味は出せたことがない。
早くこれに少しでも近づけたコーヒーを淹れるようになりたい。

今では100円でコンビニでそこそこのコーヒーが飲めるというのに、場所柄もあるのか店は結構繁盛している。

「ああ、やっぱり違うなあ。これ知っちゃうとストバのコーヒーさえも薄っぺらく感じるんだよね」
「有難うございます」
「マフィンをお土産に4つ包んでもらえるかな?この前部署の女の子に絶品だって自慢したらオネダリされちゃってさ」
「本当ですか?お店の方で食べれるワッフルも絶品ですから今度は是非足を運んでください」

これでマフィンは完売だ。キョーコはホクホクと空になったトレイを片付けた。マスターの奥様お手製のサンドイッチは以前からあったが夕方小腹がすいた客にウケるのではとマフィンを提案したのはキョーコなのだ。
4月の終わりから販売を始めたがほぼ毎回売り切れてくれる。

(疲れた人は甘いものをと思って濃い目のチョコ味とプレーンにしてきたけど、これから暑くなるからさっぱりした甘さとか…日中は食欲がない人が涼しくなってから小腹を満たすためのおかず系とか…今度奥様に相談してみよう)

客足が途絶えたチャンスに車内の掃除をしながら、頭の中は新しいレシピを考えることで忙しい。日は随分傾いたが辺りはまだまだ明るい。

カツ カツ カツ

規則正しく石畳を踏む足音
外回りで歩き回って疲れたサラリーマンのとも、華奢なヒールで歩くOLのものとも明らかに違うそれは最近時々来店するようになった客だとキョーコは予測して振り返った。

「いらっしゃいませ」

やっぱりそうだ。半月ほど前から客足が途絶えた時に現れる長身の男性客

「こんにちは。随分日が長くなったね」

耳馴染みの良い少し低い声

「本当ですね。今日もいつものですか?」
「うん、本日のお勧めを2つお願い。1つは持ち帰りで」
「有難うございます」

キョーコの言葉に、秀麗な顔が優しく微笑んだ。


(1に続く)





はい、またまた始まりました。記憶喪失の習作
本当は逃避行の習作かリクエストのお話を先にしたかったのですが、まあ…適当ですいません。

今回はご要望の多かった「キョーコちゃんが記憶喪失」話です。
賭けの勝敗と同時期位から温めていたのですが、なにせ拙宅の精神的強度は圧倒的にキョーコ>敦賀氏なのでね…なんだか辛気臭さが半端なくなりそうで色々迷っていたのです。が、本誌に冴菜さん登場でこのまま話が進んじゃったら書けなくなるかもと思い切りました。
そして相変わらず訳の分からんプロローグ

楽しんでいただける話を書きたいとは思っていますが、皆様温かい目で見守ってやってください!
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コメント

Re: 初めまして。

>○海様
もし間違いでなかったら先日63780に拍手コメント頂戴しましたよね?すごく嬉しかったです。先日の拍手御礼にお返事書いているので、よろしければご覧になってくださいまし。
今回もすごく舞い上がる言葉を有難うございます。語彙力が足りなくてもがくことが多いので本当に励まされました。
コメントの書込みのルールは特にこれといってありませんよ。URL等も空欄で全然OKですし、時間もいつでも嬉しいです。(PCなので)
またお時間ある時にご訪問くださいね!

2015/07/01 (Wed) 18:15 | ちょび | 編集 | 返信

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2015/07/01 (Wed) 04:47 | | 編集 | 返信

Re: 嬉しいです

>○○コ様
コメント有難うございます。このシリーズは皆様の反応すごくて緊張しております(笑)
キョーコちゃんに忘れられてしまったら、うちのハートの弱い敦賀さんはもうそれだけでヨロヨロになってそうなんですよね。
結構辛気臭いとは思いますが、出来ますなら最後までどうかお付き合いください。

2015/06/11 (Thu) 00:33 | ちょび | 編集 | 返信

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2015/06/10 (Wed) 18:36 | | 編集 | 返信

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