2015_03
19
(Thu)11:55

強く欲するモノ(6)

切りどころの関係で短いです。
ちょびは医療関係知識皆無でございます。すいません!

2014/3/28初稿、2014/9/9一部修正、2015/3/19加筆修正の上通常公開


キョーコの安定した呼吸を確認する。
そこで、蓮はようやく自分の肺に空気を取り込むことができた気がした。


■強く欲するモノ(6)



キョーコはすでに一般病棟の特別室に移されていた。

部屋には入ると眠るキョーコの青白い顔が目に入った。
駆け寄りたいのをかろうじて堪えて足早にベットに近づき跪く。ようやく触れることができたその頬は柔らかく暖かい。
蓮は小さく安堵の息を吐くと、手はそのままでキョーコの足元へと視線を向ける。

足首付近を中心に白く覆われている患部
その他は擦り傷程度のようだ。

「今は薬で眠っているけど、処置が終わった後もあんたのことを心配してたよ。」

振り向くと、だるまやの女将の少しの疲労の色が混じっているものの優しい笑顔があった。
蓮はそこでようやく病室に先客がいたことに気が付いた。。
広い部屋のローテーブルを囲んで、ローリィ、椹、キョーコの親代わりというべきだるまやの夫妻がソファーに座わり皆こちらを見ている。
蓮は慌てて立ち上がると、だるまやの夫妻に歩み寄り頭を下げた。

「遅くなり申し訳ありません。」
「仕事だったんだ。仕方ねぇよ。」

いつもは厳しい大将が、蓮を気遣い頭を上げるように言う。

「マスコミや関係先への対応や手続きは事務所にまかせとけ。お前の明日午前中の仕事は社が調整済みだ。最上君についていてやれ」
「有難うございます。」
「午後からの仕事、動かせなくてごめんな。」
「何言ってるんですか、社さん」

蓮にお茶をいれようと女将さんが立ち上がった時、控えめにドアが開き、褐色の執事が顔をのぞかせた。

「担当の先生がお話があるそうです。ここは私が控えておりますので皆様どうぞ」

*
*

それぞれ挨拶が終わると、医師は席を勧め、自身も腰をおろしてカルテに目を落とした。

「左足首の大きな傷は2つ。後は擦過傷ですね。出血も止まって、現在状態は安定しています」

紙に足を描いてくれ、傷の位置を丸をつけながら説明してくれる。。

「ナイフが非常に鋭利なもので…語弊があるとは思いますが、綺麗に切れていました。そのため、傷跡はあまり目立たないものになると思います」

一同が安堵の息をもらす。
だが、蓮は石の言葉に不安を感じた。

「傷跡は…?」

半ば独り言ともとれる呟くような質問に、医師は痛ましそうに顔を歪ませた。

「運動を司る重要な物を含め、複数の神経に損傷が見られます」

誰かが息をのむ。

「正直…リハビリを重ねても元のように歩くことは…非常に困難かと思います」


女将が悲鳴が漏れそうな口を覆い、社の手から手帳が滑り落ちた。
落下と同時に挟んでいたペンやら名刺やらが散らばったが誰も拾おうとはしない。

重い重い沈黙が部屋を満たした。



(7に続く)


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