2015_08
25
(Tue)11:55

恋は制限時間付き(前編)

リクエストの受付順が前後しますが、先に出来上がった方を…
カウンターが45454 ナー様からのリクエストです。リク内容はお話の後にしますがいつものことながら随分と捻じ曲げました。
そして警告しておきます。

馬鹿話です!!!
本当に…馬鹿話です!!!!

笑って受け止めていただけたら…いいなあ…(自信無し)

2015/8/25




「蓮」

こちらに向かって手を振る社の顔は穏やかだ。それを見て蓮の顔の強張りが少し弛んだ。

「どうですか?」
「なんか今の盲腸って小さな穴開けるだけみたいでな。ええ…っと単孔式…腹腔鏡下虫垂切除術?とにかく1時間位しかかからないみたいだから、そろそろ終わると思うぞ」

そうですか、と蓮は安堵の息をついた。

「ここまでどうやってきたんだ?まさか自分で運転したんじゃないだろうな。」
「社長の車ですよ。控え室の前にいつもの彼が待ってました。社長は院長に挨拶してから来るみたいです。」
「お前が少しでも早く駆けつけたいからって無茶な運転すると心配したんじゃないか?」
「流石に今は安全運転する自信がありません。」

ふーと長い息をついて蓮がベンチに腰をおろす
その憔悴した様子を社が笑いを含んだ声で告げた。

「流石と言えば、今回のお前こそ流石だよ。誰も気付かなかったキョーコちゃんの異変に気付くんだから」

局の廊下ですれ違い様に挨拶を交わしたキョーコの様子がおかしかったと蓮に懇願されて、様子を見に行ったのだ。
いつもの様子で撮影に臨む姿は杞憂に思えたが、キョーコは自分の出番が終わってスタジオを出たとたん電池が切れた玩具のように倒れた


「あんまり我慢強くて頑張り屋さんなのも考えものだな。もう少し遅かったら腹膜炎だって言われたぞ」
「本当に最上さんにはハラハラしますよ」
「お前だって同じ事態になったら同じことするだろ?こう言う時役者ってのは厄介だ」
「…気を付けます。でも…今回は本当に心臓が止まるかと思いました。つくづくただの先輩って立場は歯痒いもんですね」
「お?ついに攻める気になったか?」
「そうですね…ご協力お願いします」
「まかせとけ」

ニマニマ笑う社の視線にいたたまれなくなった蓮がぷいっと顔を背けたタイミングで、ローリィが執事を伴って合流した

「ご苦労だったな。だるまやのご夫妻には連絡を入れたのか?」
「宴会が入ってるらしくて…終わり次第こられるそうですよ」
「そうか。それなら暫く後だな」

そうこう言ってるうちに術中であることを知らせるランプが消えた。
連も立ち上がって先に出てくるであろう医師を待つがなかなか出てこない、それどころか慌ただしく看護師が出入りを初めて4人は不安を募らせていった。



■恋は制限時間付き(前編)



「残念ですが…」

蓮も社も、ローリィさえも医師の臨終を告げる言葉が理解出来なかった。だって盲腸ではなかったのか?
ほんの数時間前に蓮と挨拶を交わして…手術室に入るまで意識があって…

「部分麻酔でしたので、術中も意識ははっきりされていました。しかし縫合後に急に…」

医師にとっても余りの想定外の出来事なのだろう、少し震えるその声も耳にはいらないまま、蓮は横たわるキョーコに近づいた。

「ど…して…」

震える手で触れたキョーコの頬はまだ暖かかった。

「どう…して…最上さん…」

崩れ落ちるようにベットサイドに膝をついた蓮は、駄々をこねる子供のようにキョーコの身体にしがみつく

「どうして…どうしてっ!…最上さん…俺は…」

生地越しとはいえ、キョーコの身体はまだほんのりと暖かい。その温もりを逃さなければキョーコを喪わなくてすむ気がして、しがみつく手にますます力を籠めた。
今、キョーコを救ってくれるというのならたとえ悪魔にだって…

「敦賀さん震えてますよ?低血糖じゃないですか?ちゃんとご飯食べました?」
「……え?」

己の願望がもたらした幻聴かと思ったら、確かに声は聞こえた。慌ててがばりと顔を上げれば、むくりと身を起こしたキョーコとばっちり目が合って…

ヒィ!とうら若い看護師が叫び、医師は持っていたファイルを派手にぶちまけたまま真っ白になった。

こうして、最上キョーコ奇跡の生還は嬉し涙よりも阿鼻叫喚の大混乱によって迎えられたのだった

*
*


「いや~ホントに吃驚したよ。だるまやのご夫妻に連絡する前でよかった」
「すいません。お騒がせして」

なんとか混乱が収まって、キョーコは今病室のベットにその身を起こしている

「ご臨終ですとか言われて俺も流石に奈落に墜ちたぞ。今晩は医者の言う通り集中治療室に入った方がよかったんじゃないか?」
「そんなー。たかだか盲腸で」
「キョーコちゃん、その盲腸で死亡宣告されかけたんだから。もう蓮なんて取り乱して見てられなかったよ」
「重ね重ねすいません。でも…敦賀さん、何してるんですか?」

キョーコはベット脇の蓮を見上げた。
さっきから先輩俳優はナースコールを握りしめたままキョーコの近くをウロウロと熊のように歩き回り、紳士敦賀蓮にあるまじき挙動不審ぶりを見せている

「いや、だって…急変とか…」
「大丈夫ですって。さっき先生方がこぞって診察してくださったじゃないですか」

救急搬送されてきたとはいえ盲腸の手術直後に心停止そして死亡確認後に蘇生と言う異常事態に、外科部長から内科医まで揃い踏みの診察があったのだ。

「そりゃあなあ…先生方も相当肝が冷えたろうよ」
「すいません。あちらでの交渉に手間取って」
「あちら?なんだぁ三途の川の渡り賃の交渉か?」
「社長、それ洒落になりませんから」
「三途の川じゃなく閻魔様なんですけどね」
「閻魔様と交渉かあ~。キョーコちゃんおもしろいこと言うなあ」
「そうですよね。百聞は一見に如かずですよね。」

ふむふむと頷いたキョーコは、すぐ脇で挙動不審を続けている蓮を見上げた。

「敦賀さん、ちょっとそれ離していただけませんか?」
「え、これ?」
「そうです。そのナースコールです。離したら社さんの横に」
「こう?」
「はい、みなさんそのまま壁際に下がって下さい」

みな顔に疑問符を貼り付けつつも後ろに下がった。

「では大声出さないで下さいね」
「?、あ、ああ」

行きますよ、とにこりと笑ったと思ったら…
糸の切れた操り人形のようにキョーコの身体から力が抜け、重力に従った頭が後方へと弧を描きながら落ちていく。

「最上さんっ」

切り裂くような声と共に駆け寄った蓮はキョーコの身体を抱き抱えて支えると、空いた手をナースコールに伸ばした。だが、胸にあるキョーコの顔の生気のなさが恐ろしく手が震えてうまくつかめない。

その時だ。

「敦賀さん、ナースコールは駄目ですって」

落ち着き払った声は蓮の胸元ではなくすぐ耳元から聞こえ、伸ばした手をなにやらヒンヤリしたものが覆った。その声は間違いなく愛しい少女もので…
恐る恐る声のした方を見ると、キョーコが蓮の肩越しに身をのりだしていた。プカプカと浮いたその身とナースコールに伸ばされた蓮を拒む手が冷気の発生源らしい。

もう一度胸元確認
蓮が抱えているのは生気のないキョーコに間違いない。

再度横確認

「危ない危ない。ホント敦賀さん素早すぎですよ」

そうブツブツ言うキョーコはなんだか…本当の意味で存在感が薄い。

さらに首をネジって後方を確認すると、ローリィと社が社口をこれでもかと開けて固まって、その後ろで執事の彼が顔色ひとつ変えず立っていた。


(後編に続く)
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