2015_10
13
(Tue)11:55

12月の鬼-13(記憶喪失の為の習作5)

ちょっと予定を詰め込みすぎたところに…まあ…そういう時に限って色々あるもんですね。
拍手御礼もPW発送も何にも出来ていませんし短いですが、とりあえず更新です。

すいません!!!
拍手御礼は本当にすいません!!!とりあえず更新ペースを守るほうを優先しました。

そして…来週は…今週で連載分の通常公開を終える「ほんのわずか」の新しい番外を出そうかと思っています。
今回ぶった切りなのに重ね重ねすいません。

ではー

2015/10/13




― 恋人ですか?いませんね。別に仕事が恋人って思っている訳じゃないんですけど…互いに尊重出来て心から大事にできる存在ができたらなとは思います。 ―

― 理想のタイプ…そうですね。これは前から変わらないんですけど芯の強い女性がいいですね。外見ですか?うーん、あまりありませんけど強いて言うなら目に力のある人は魅力的だなって思いますよ。 ―


「…恋人いないんだ」

思わず漏れた言葉にキョーコは慌てて周囲を見渡す。どうやら誰も聞いていなかったようだ。
コンパの翌日、急に休講の時間つぶしに入った大学図書館でその雑誌を手にしたのは、蓮が表紙で徹底インタビューの文字が踊っていたから。
以前同じ雑誌で愛用していると公言した安眠羊枕について尋ねられると、「愛用していますよ。だいぶボロボロになっているんでお見せできませんが」なんて答えていて、その姿と羊のギャップがおかしい上に可愛くてクスリと笑いながら読み進めて行って、メインの恋愛事情の欄で恋人の存在を否定していることにホッとすると同時に酷く落ち込んだ。

(…こんなのマスコミ対応ってだけで実際のプライベートなんて分からないのに。何喜んでいるのよ。キョーコ)

芸能人が恋人がいないと発言するのは定石だ。
何より蓮は若手人気ナンバー1俳優で抱かれたい男№1だ。若い女性に圧倒的な支持をされている彼がそうそう恋人の存在を明らかにするはずがないのだ。

(単なる1ファンだってのに…)

ちょっと店で言葉を交わす程度でいい気になってしまっているが、キョーコは蓮の事を何も知らない。
彼が羊枕を愛用しているのだって今初めて知ったのだ。
それも情報元は誰しも目に出来る雑誌のインタビューとくるのだから…。

キョーコはこの雑誌を手にしたことを後悔した。


こんなのただただ実感するだけだ。

住む世界が違うのだと



■12月の鬼-13(記憶喪失の為の習作5)





「いらっしゃいませ。敦賀さん」
「こんにちは。最上さん。風冷たいね。ずっと立ってて寒くない?」
「有難うございます。でも、これくらいへっちゃらですよ。」

朝に立場の違いを思い知って落ち込んだばかりだと言うのに、蓮の来店に急浮上する自分の機嫌にキョーコは我ながら呆れる。
自覚してみると恋とはなんと不安定な感情なのだろう。

「もう学祭終わったんだよね?どうだった?」
「あ、はい!もう先輩たちがすごい熱演でした」
「女子大ってことは男の人の役もみんな女性がするんだよね?宝塚みたいだ」
「そうなんですよ。ちょっと本家を意識して学祭恒例でレビューモドキもあったりするんです」
「最後に羽つけて大階段降りたり?」
「流石にあれだけの衣装とセットは大学の演劇部には厳しいですねえ。」
「だろうね。最上さんは今回は裏方だったんだよね。どんなことやったの?」
「色々やったんですけど、衣装を…」

♪♪♪・♪♪♪・♪♪♪…

突然けたたましく鳴り出した着信音にギョッとする。

「最上さんの携帯?」
「いえ…これはきっとマスターの…」

音のする方に視線を向けるとワゴンの床の隅っこで古ぼけた携帯が震えながら存在を主張していた。きっと落とし主が無くしていることに気付いて鳴らしているのだろう。キョーコは苦笑すると蓮に断って携帯の通話ボタンを押した。

「はい」
『やっぱそこだったかあ!。どこに落としたのかと焦ったよ。よかったぁ!』

声が大きい上に通話音量を最大に設定しているのかマスターの声はダダ漏れだ。

「後で届けましょうか?」
『いいよいいよ。どうせみんな先に店の方にかけてくるからさ。ワゴンの店仕舞いの時まであずかっといてくれるかな?』
「了解しました」
『そういえば、さっき大学の美晴ちゃんがランチに来てくれたよ。近くの会社でバイトしてるからって。昨日コンパだったんだって?キョーコちゃんモテモテだったんだって?』
「え?いや…そんなことは…あのマスター、お客様が…」
『あ、ごめん。ごめん!じゃあ電源切って置いといてくれればいいから』

ちらり、と蓮の方に視線を向ける。その表情がなんだか強張って見えるのは気のせいだろうか?

「すいません。お客様の前で…。モテモテだなんてもうマスターったらオジサン全開ですよね。女子大で周りに男の人がいないから免疫できないんじゃないかって母が妙な心配しまして…職場のアルバイトの方にお願いしちゃったんです。友達が乗り気になったから断れなくって…まあみんなが楽しそうにしてたからいいんですけど…私はそういう出会いなんてまだ求めてないのに困ったもんですよね…」

蓮がキョーコのプライベートなど関心なんてないだろうに、なんだか取り繕わないといけない気がしてペラペラと口が動くが、言っている途中から虚しくなってきて、最後はあははと乾いた笑いで締めくくる。

「…そういう出会いはまだ求めてないの?」

反応が返ってきたことに驚いて、蓮の方を見るとなんだか真剣な目でこちらを見ている。

「え…ええ。入りたかった学部に通えてますし、演劇っていう楽しさにも出会えましたし、友達との付き合いもバイトもすごく楽しいですし、今はこの生活を大事にしたいと言いますか…」

そう大事にしたい。

例え住む世界が違っても。叶うことが無くても
自覚したこの恋を。
世間話程度しか出来なくても蓮と共有できる時間を。

大事に大事に育てたい。


「うん…最上さんは最上さんのペースでいいと思うよ」

そう告げる蓮の表情は柔らかかった。


*
*


その3日後、バイトが終わったキョーコは足早に目的地に向かっていた。
母からたまには夕飯を外で食べようと誘われたのだ。

「ここよね…」

創作フレンチのお店はなんだか高級そうで普段着のキョーコには敷居が高い。
どういう訳かお店のスタッフまでみんなスタイリッシュでひどく緊張しながら席に案内された。

「キョーコ、ここよ。お店の場所すぐわかった?」
「それは分かったけど…なんだかすごく高そうだけど…」
「まあ…たまにはいいじゃない。そろそろくるんじゃないかしら?」
「え?」

そこで初めて3人分のカトラリーがテーブルにセットされていることに気付いた。

「あ、来たわ」

冴菜がにこやかに手を振った。


(14に続く)

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