2015_04
09
(Thu)11:55

強く欲するモノ(9)

2014/4/3初稿、2014/9/9一部修正、2015/4/9加筆修正の上通常公開





病室を舞う光の中、キョーコが蓮に手を伸ばす。
逆光なのにその瞳に強い意志が宿っているのが分かる。

確信といってもいい予感に暫し躊躇するけれど、この愛しい人を抱きしめないなんて選択肢はない




■強く欲するモノ(9)



この予感が間違ったものであるようにと祈りながら、ゆっくりゆっくりと近づいて、ベットに腰掛けキョーコを抱きしめる。

強く。強く。
己の願いが通じるように。


「敦賀さん」

蓮の胸に顔を押し付けているせいで少しくぐもったキョーコの声

「私、アメリカには一緒にいけません」

(ああ、やっぱり…)

的中した予感に蓮の身体が揺れた。

「それに・・・」

キョーコの声は続く

「明日から、敦賀さんには会いません」

その言葉に身体中から熱が一気に奪われたような気がして、抱きしめている腕が緩む。
そのまま動くことも言葉を発することもできない蓮の胸からキョーコは顔を上げた。

揺るぎない強い強い意志を感じる瞳

「私に会いたかったら…」

に、と挑戦的な笑みが浮かんだ。

「ちゃんと仕事してきてください」

とんっ
キョーコの拳が蓮の心臓の上に当てられた。

「しっかり前へ進んで。…久遠」


 - 私ガ欲シクバ、男ヲアゲテコイ -


蓮は目を見開いた。
力を失って垂れていた手に血が通う。その両手でキョーコの肩を掴んだ。

「絶対に別れない」

キョーコの瞳が一瞬揺れるのを確認してから、今一度強く抱きしめた。

「3年」

キョーコに、自分に、言い聞かせる。

「3年でかならず君を迎えに来る」

キョーコの手がすがりつくように蓮の首に回された。
普段、女性としての自分の魅力には懐疑的なキョーコ。蓮に近づく女性を見るたび、不安に心が揺れる事を知っている。
そのキョーコが自分から突き放すようなことを言って蓮を遠ざけた。
この答えを出すまでにどれだけの葛藤と覚悟がいったのか。

(本当に無理をするんだから…)

そこまでして、蓮に1人で飛び立てと言っている。1人で飛べるのだと言っている。
それほどまでに自分は不安定で情けなかったのだ。


『キョーコちゃん、お前が不安定になるとすっごいやり方でケツ叩いてくれるよな。次はケツ噛んでもらったらどうだ?』

あの日聞いた社の言葉が甦った。

(社さん…尻を噛むどころか、もっと手痛いやり方で喝を入れられましたよ。)

苦笑が漏れる。
小さく息を吸ってから抱きしめる力を緩め、キョーコと向かい合った。

「キョーコ、俺はね…キョーコと付き合って欲深くなったんだ」

だからねと、キョーコを見る蓮の眼にあの不安な色はない。
どんば困難な役だろうと挑んでいくキョーコの尊敬する先輩の顔。

「絶対に手に入れてみせる。」

キョーコに、自分に、宣言する

「演技者としての自分も。キョーコも」


キョーコは泣きながらも、顔をクシャクシャにして笑ってくれた


(10話に続く)
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