2015_12
15
(Tue)11:55

12月の鬼-21(記憶喪失の為の習作5)

闇色の物語ではレン、ヤシロにサワラ、こちらは蓮、社、椹。
あっちを書いた後こちらを書くと変換が上手くいかなくて困ります。名前がカタカナ表記になってたら教えてくださーい。


2015/12/15





名前を呼んで

声を聞いて
触れて
触れられて

確認する。


キョーコが確かにここに居るのだと。



■12月の鬼-21(記憶喪失の為の習5)




「あの事故まで…君と俺が付き合ってたって言ったら…信じてくれる?」

綺麗な黒髪を弄びながらつぶやくと、蓮の胸に額を当てて息を整えていたキョーコがこちらを見上げた。その顔にはなんだか拗ねたような色がある。

「信じるも何も…私昨日まで未経験だったと思ってたんですよ。そ、それなのにあ、あんなに…っ」
「すんなり俺を受け入れたかって?そりゃあ…まあ…付き合ってたわけだし?」
「あんなっあんなのをすんなり!?付き合って結構経ってたんですか?」
「あんなのってひどいな。付き合ってもうすぐ3か月だったな。」
「3か月であんな…あんな…」
「うーん。まあ…密度?」
「ぎゃーっ!このエロ紳士っ!」
「誰がエロ紳士だ。」

暫くの間ベットの上で2人はゴロゴロと転がりながらじゃれ合った。再び息を弾ませたキョーコがゴロッとうつぶせの姿勢で動きを停めた。

「…どうしてもっと早く言ってくれなかったんですか?」

キョーコの肩が冷えないように毛布を掛け直していた蓮は暫し躊躇した。いきなりすべてを話すことはキョーコにとって負担なような気がしたからだ。冴菜との現状に違和感を感じその言動にショックを受けて飛び出したとはいえ、この2年間母娘は上手くいっていたのだから。
そんな迷いを見透かしたようにキョーコが困ったように笑う。

「原因は母…ですか?」
「…お母さんは俺との交際に反対だったようだね。」

ばふんっとキョーコは枕に顔を押し付けた。

「…ごめんなさい。詳しい話を聞くのはもう少し後でいいですか?まだ混乱してて」
「うん。ゆっくりでいいよ」

蓮は頬杖をついて、キョーコの頭をゆっくりと撫でた。

「キョーコは…いつから俺の事想ってくれた?」
「好きだったのは…多分だいぶ前からです。理解したのはコンパの時でしたけど。」
「それこそ言ってくれればよかったのに。」
「…別世界の人だって思ってましたから。下手に恋愛感情持ってるなんてバレたらもう店にきてくれなくなるのかと。ネットでお似合いのツーショット見ちゃったりしてこんな恋人いるのかなって思ってましたし」
「お似合いのツーショット?そりゃ仕事だから共演者とはツーショットで会見もするけど」
「その人のことすっごい優しい笑顔で見つめていたんです。プライベートでも恋人なのかなあって。ダークムーンの打ち上げパーティだったと思うんですけど…」

ダークムーン…

腹を抱えて笑い出した蓮にキョーコは驚き憤慨した。

「そんなに笑わなくてもいいじゃないですか!」
「ご、ごめん。これだろ?そのツーショットって。」

なおも笑いながら蓮は自分のスマホで検索した画像をキョーコに向けた。

「そう。それです。京子さん。」
「うん。京子。キョーコの芸名だから。」
「は?。」

ぱたりと動きをとめ、そして画面をもう一度食い入るように見つめた。

「私…?」
「ダークムーンでは未緒を演じてた。」
「う…そ…。」

キョーコはもう一度画像をじっくりとながめて…

「前の私って整形「してないから」」

むむむーっとスマホの画面を拡大させたりその逆をとまだ納得がいかない様子のキョーコに蓮は苦笑する。

「記憶がなくなる前もコスメ・デ・マジックとか言ってたけどね。」
「それです!魔法!凄いですねえ。メイクって」
「別によそ行き用のメイクじゃなくてもキョーコは綺麗だよ。大学生になってますます綺麗になって…気が気じゃなかった。」

毛布からまた覗いている肩にそっと口づけると、くすぐったいのか小さく身じろぎしたキョーコがスマホの画面を見つめたままポツリと言った。

「納得してますよ。」
「ん?」
「敦賀さんと付き合ってたことにです。だって足先まで暖かいですから。」
「足先?」
「なんか…夏でもずっと手足の先が冷たかったんです。冷え性なのかなって思ってましたけど…こうして敦賀さんと一緒なら丁度いいと言うか…暖かいというか…」
「嬉しい事言うね…。」

唇を寄せていた肩をぐいと返すとキョーコの身体はくるりと仰向けになった。スマホを取り上げて枕元に滑らせ覆いかぶさる。

「…よく泊まりに来てました?」
「キョーコも下宿してたから毎日ってわけじゃないけど結構頑張ってきてくれてたな。ただ付き合い始めはまだ残暑が厳しかったからね。ピッタリ抱き合ってると暑いから夜中に離れていくんだけど、キョーコは手や足先どこかで俺に触れてたな。」

飼いたての野生動物みたいなキョーコの寝相を思い出しクスクス笑う。
大切な大切な宝物のような日々。

「そうなんですか…」

過去の自分の姿を想像したのか、同じように笑うキョーコの両手が蓮の頬に寄せられた。

「身体が覚えちゃってるんですね。敦賀さんの温度を。」


キョーコの記憶から己が忘れられて焦燥に駆られた日々。
まだ大丈夫。きっとキョーコの何処かにあるのだと信じようとあがいた日々。

「そう…みたいだね。」

キョーコも探してくれていた。
蓮の欠片を。

「ちょ、敦賀さん。朝から仕事なんじゃ」

意思を持って肌を這いはじめた蓮の手にキョーコが焦った声をあげる。

「うん…大丈夫。」

もう少し確認したい。キョーコの存在を


*
*

しゅ
シャツに袖を通したところでベットから声をかけられた。

「…もう時間ですか?」
「ああ…ごめん。起こしたね。」
「この状態で起こしてくれない方が嫌ですけど?」

不貞腐れた様子のキョーコに蓮は困った笑顔を見せた。

「それもそうだな。ごめん。ちょっとしか寝かせてあげれてないし起こすの可哀想かと思ったんだ。」
「それは敦賀さんも一緒じゃないですか。朝ご飯何か作りますよ?」
「いいよ。寄らなきゃいけない所もあるから時間もないし、食材何もないから。」
「何も?」
「うん…ああ…水はあるよ。」
「それは食材っていいません。」

シャツのボタンをかけ終わった蓮はベットに近づくとキョーコの額に口付けて言った。

「朝は早いけど、今日は昼に2時間位空きの時間があるんだ。1時過ぎると思うけど一度戻るから、社さん…マネージャーさんの分も一緒にお昼お願いしていいかな?」
「了解しました!」
「うん。お願い。」

今度は軽く唇を触れ合わせながらキョーコが財布を持っていないことを思い出す。

「下にスーパーが入っているんだ。そこで適当に買い物してくれる?これがうちの鍵で…」

ベットサイドのラックにカードキーに続いてお札を3枚出したところで、キョーコが笑いながらストップをかけた。

「いくらあのスーパーが高いからって3万円も要りませんよ。」

お札を手にしたまま蓮は固まった。

「え?ですから、いくらあのスーパーが余所より2倍も3倍も高いからって3万円はいりま「キョーコ、下にどんなスーパーが入っているか知ってるの?」え?」

昨夜は車から直接ここにきた。エレベーターや駐車場には案内がされていたがそんなメジャーな店ではないし、そもそも周囲を確認する様な心の余裕はお互いなかったように思う。

「え?え?いや…でも…絵に描いたようなセレブスーパーで……つる…が…さんも…絵に…描いたような…セレブな買い物……確か…鳥肉…」


欠片が、あった


力の限り抱きしめた。


「待って…待ってください。でも…他は…まだ。」
「いいよ。急がなくて」
「で、でも…もしかしたらこんな事しか思い出せないかも…何を食べたとかお米の値段とか。もしかしたらこれ以上は何にも思い出せない可能性だって。」
「一緒に探せばいいよ。宝探しみたいじゃないか。もし全部見つからなくても、それ以上見つからなくってもその時間がまた2人の記憶になる。…一緒に行こう。」

大きく身体を震わせたキョーコもまた蓮に縋りつく。

「一緒に?」
「うん。一緒に。」
「ずっと、ですか?」
「ずっとだよ。言っただろ?キョーコの居場所は俺の隣だって。」



記憶が一部しか戻らなくても、キョーコがここにいる。
過去の道を辿って、宝物のような記憶の欠片を探すのもいい。
新しい道を進んで、新たに2人の記憶を共有するのもいい。

それはなんと愛おしい日々だろう。


(22に続く)

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Re: チャージ完了?

> aomaho様
コメント有難うございます!
一応はチャージ完了した敦賀さんですが後ろ髪引かれる想いでマンションを後にしたと思いますよ。っていうかお互いの連絡先交換したり部屋の説明したりとバタバタしたでしょうねえ。起こさずにどうするつもりだったんだろう?
次回は冴菜さん目線でちょっと心情に触れたいと思います。

2015/12/17 (Thu) 00:17 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

Re: しあわせいっぱい〜

>くろ様
お待たせしておりました。ようやくここまできたかって感じです(笑)
モー子さんやだるまや夫妻は勿論なんですけど、なんだか不破の女将さんが京都から新幹線に乗って飛んできそうよねって思っています。
離れていた時間があった分、記憶云々よりも傍に居てくれる大事さってのを噛みしめている敦賀さんです。本当にこのお話では不憫な目に合せてしまいました(笑)

2015/12/17 (Thu) 00:12 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

良かったです

お母さんの気持ちが気になりますが、想いが通じて良かったです。

2015/12/16 (Wed) 23:45 | いわりん #- | URL | 編集 | 返信

良かった(*´ω`*)

キョーコちゃんの中には、
記憶の欠片が・・・
蓮さんの愛の力ですね!!
蓮さん良かったね~。至福の時間だね~。
と思いながら読んでいました(笑)

最後の4行。
素敵ですね♪

2015/12/16 (Wed) 10:10 | 愛華 #- | URL | 編集 | 返信

チャージ完了?

ちょび様、こんばんは。まだ解決してないけど、蓮さん、とりあえずチャージ完了でしょうか。蓮さんよかった~。きょーこさんの中に蓮さんの欠片はずっとあったんですね。先週から幸せに浸ってますが(私が)、冴菜さんは自宅で、眠れぬ夜を過ごしたんでしょうか。必死だったんでしょうが、今頃何を思っているのかなとちょっと気になってます。あと二回楽しみに、また1話から読み返して、来週火曜までしのぎます。

2015/12/15 (Tue) 23:18 | aomaho #- | URL | 編集 | 返信

しあわせいっぱい〜

待ってました!しあわせタイム!
良かった〜良かったね蓮さま〜!
しかし付き合った3ヶ月、濃度って(笑)
蓮様忙しいでしょうに・・・
お昼過ぎには社さんに会えますね!
早くモー子さんとも会いたいですね!
大将や女将さんやマリアちゃんとか〜
記憶が全部戻らなくてもモーマンタイ(≧∇≦)
記憶の宝探しって言い方素敵です!

2015/12/15 (Tue) 21:48 | くろ #- | URL | 編集 | 返信

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