2016_01
12
(Tue)11:55

もうすこし-1(ほんのわずか番外5)

さて、宣言通りほんのわずか番外を懲りずにお届けです。

もう書かないつもりだった番外をしかも1話ではなくお送りするのですから、新しい試みにチャレンジしようと思います。
それは…色んな人目線リレー
いや、今までだって色んな目線で書いてるんですけど、あえて最初の2話と最後だけ敦賀さん。後はキョーコちゃん以外の誰かってことで。
上手くいくのか分かりませが(おまけに細部を忘れたというお馬鹿脳)、グルグル敦賀さん話、よろしければ最後までお付き合いください。

2016/1/12





「高原さんはもう関西の方に?」
「ええ、9月1日付で。彼はもともとあっちの大学の出身でね。奥さんも確か…和歌山とか言ったんじゃないかな?」
「そうですか。お子さんも間もなく小学校と仰ってましたからいいタイミングでしたね。」
「御社とのプロジェクトに最後まで関われないことは悔しがっていましたよ。」
「高原さんは頼りになりましたから。うちも残念です。」
「その後は私と村雨がしっかりフォローしますから。高原からも村雨にしっかり引き継いだと報告を受けていますしね。ほら、村雨君ご挨拶を」
「初めまして、村雨泰来と申します。若輩者ですがよろしくご指導願います。」

(村雨?)

頭にこびりついた不愉快な名前との一致に肩がピクリと動く。



■もうすこしー1(ほんのわずか番外5)
     ~ ほんのわずか3カ月後 ~




「敦賀主任と貴島開発リーダーは君と同い年だよ。」

寅軸商事近衛営業部長は穏やかに笑った。

「え?す、すいません!!!。」
「うちの敦賀は老けてますからね~。」
「ちょっと松嶋部長。」

はははは…と応接室は和やかな笑いに包まれた。

「なんでも村雨の大学の同期が御社にいらっしゃるそうですよ。ね。村雨君」
「ええ、営業事務してるらしいんですけど。」

告げられた大学名に貴島はすぐにピンときたようだ。

「ってことは俺たちと同期ですよね。じゃあ大原さん?。」
「そう、そうです!」
「大原さん敦賀君のグループを担当してるんだよ。こりゃ秘密漏洩に気をつけなきゃね。敦賀君。」
「ぇ?…ああ。でも大原さんはきちんとした人ですからね。大丈夫でしょう。」

悪い予感はやっぱり当たるものだ。


*
*


「敦賀君、どうかした?」

帰り道。貴島に尋ねられた。

「何?俺何か変だった?」
「いや…変って訳じゃないんだけどさ。さっき一瞬空気が固くなったような気がしたから」

飄々としているようでこの開発部の同期は空気を読むのに長けている。
キョーコとの付き合いに後ろ暗いところなど何もないが、明確に指摘されてもいないのにわざわざ話すことはない。蓮は柔らかく笑って見せた。

「そうかな?石橋君と三沢君上手くやってるかなって気になったのが出ちゃったのかもしれない。気を付けるよ。」
「ああ、あの案件ね。後は書類だけなんだろ?大丈夫だろ。三沢君企画にいただけあってフォロー万全だからね。」
「確かに三沢君は仕事は繊細だよね。」
「寅軸は営業敦賀君メインでこれからもいくの?松嶋部長はあくまで責任者だろ?他もあるんだしキツくない?」
「今日であっちが一段落つくから石橋君にも加わってもらうつもりだよ。」
「ああ、それがいいかもねー。」

ところでさ。と、松嶋がまだ電話中なのを確認してから貴島は話を変えた。

「寅軸っていつ来ても受付嬢イケてるよね。」
「相変わらずだな。貴島君は。」
「営業と違って先方に出向く機会が少ないからチャンスは大事にしないと。新人だっていう愛華ちゃんも可愛かったし。大原ちゃん、村雨君とコンタクトとってコンパ開いてくれないかなあ。前1回コンパしたって言ってたしさ。」
「…よく知ってるね。」
「大原ちゃんのネットワークは貴重だからね。お友達もレベル高いし。」

電話が終わった松嶋と合流したことでその話題は終わり、地下鉄へと足早に歩く。

村雨泰来
フルネームは初めて知った。5月末キョーコとちゃんとした意味で付き合う切っ掛けとなった名前だ。キョーコとはコンパで同席したことは大原愛理がエレベーターホールで話していたのを聞いたし、互いの気持ちを確認した夜すぐに説明も受けた。納得もしたしキョーコが自分以外の誰かと付き合うなんて考えれなかったと教えてくれて嬉しかった。
だが、本人を目の前にするとやはり揺らぐ。

(いっそ嫌な感じの男だったらよかったのに)

男らしい精悍な顔つき。少し単純そうではあるが真っ直ぐ熱い気質
ほんの1時間程度打ち合わせと雑談をしただけでも伝わってくる。気持ちの良い人柄とその容姿はきっと万人受けすることだろう。友人も多いに違いない。
自分も容姿はそれなりに恵まれていることは自覚している。だが、蓮の場合それがマイナス方面に働くことも多かった。キョーコへのアプローチになかなか表立っては踏み出せなかったのも、過去の経験から、自分がヘタに親しく接した女性が他の女性から不愉快な思いをさせられる場合が少なからずあることを知っていたからだ。
あの男は本当に押そうと決めたら正々堂々勝負してくるタイプだろう。いつも真剣な恋をしてきていそうだ。
深く考えもせず、告白されたら頷いて薄っぺらい付き合いをしてきた過去の自分の女性遍歴とは大違いだ。

(ああいうタイプの方が女性は幸せになるのかもな…)

地下の闇を走る車窓に写る己の顔を見て薄く笑う。
初めてともいえる恋に落ちて、キョーコに対する執着が度を過ぎていることは分かっている。大人の男の仮面をある程度被れるのも同じ会社で顔を合わせているという安心感や互いの立場、それにキョーコへの信頼があるからだ。

もしかしたら重苦しい自分の愛より、村雨のような男の方がキョーコを幸せに出来るのかもしれない。そう思っても決して手放しはしないのだけれど。

「敦賀君」

横に立つ貴島の囁きにハッとする。

「何?」
「いやさ、随分憂いを含んだ顔してるけど、公害並みの色気出てるよ。」
「色気って…気持ち悪いな。」
「だってさ、あっちの席の女の子たちさっきから敦賀君の事ガン見だよ?何?大本命と上手くいってないわけ?」
「…順調だよ。」

そう、順調すぎるほど順調だ。
何をそんなにネガティブにとらえる必要があると己に聞きたいほどに。
今日だって金曜だから泊まりに来てくれると言っていたではないか。

(やっぱ引き摺っているのかな…)

あの2週間前の出来事を

(2に続く)





グルグル敦賀さんどこへ行く?
久しぶりの「ほんのわずか」に私自身がついていけてない感じです。
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コメント

Re: 待ってました!

>愛珠様
嬉しいコメント有難うございます!そしてお返事遅くなってすいません!
久しぶりの「ほんのわずか」に戸惑っておりますが、2人の感情(特に敦賀さん)の動きを他から見たら…っていう冒険。上手くいくか分かりませんが、ちょっとドキドキとしております。
どうか最後までお付き合いくださいませ!

2016/01/19 (Tue) 00:48 | ちょび | 編集 | 返信

待ってました!

大好きな“ほんのわずか”の新作が読めるなんて、すっごく嬉しいです!
しかも「第三者目線」!
私はこの、他人からの目線のお話って好きなんです♪
二人の恋愛が他の人の目にはどう移るのか…。
わくわくしちゃいます!
でも、一話完結とか、常に同じ人物からの目線ではなく、色んな人物からの目線で1つのお話を書いていくのって、凄く難しそうですね。
その分とてもおもしろいお話になりそうですけど。

続きを楽しみにしています!

2016/01/15 (Fri) 05:16 | 愛珠 | 編集 | 返信

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