2016_02
14
(Sun)02:55

燃料よし

拍手御礼をポチポチしているはずが…なんて恩知らずな…。
小話ですがどうぞ。

2016/2/14




その灯りに吸い寄せられるようにキョーコは足を止めた。

先程日付が変わったばかり、散々伸びたバラエティーの収録もなんとか無事に終わったし後はもう帰るだけ。だが、だるまやに辿り着く為にはあと少しのエネルギーが足りない。

そんな気分だったのだ。


■燃料よし


立ち止まったお客を感知した自動販売機は明るさを増し、暖かく甘い誘惑がキョーコを襲う。
こんな時間に甘い飲み物など言語道断だと般若の顔で言い捨てる親友の顔がチラつくが、今日は本当に疲れたし、そんな時は糖分補給も大事よねと言い訳して硬貨を入れてボタンを押した。

カタン
カップの落ちる音とともに“抽出中”の文字が点灯する。
あー押しちゃったと思う反面早く早くと待ちきれない。

「あれ、最上さん。」

人気のいない通路に現れたのは事務所の看板俳優だ。

「つ、敦賀さん!まだお仕事ですか?」
「もう…ちょっとかかるかな?」

そう告げる美貌はひどく疲れているようだ。普段はそんな様子は決して見せないのに。

「お疲れみたいですね。」
「んー、流石にちょっと疲れたかな?ブラックじゃないものが飲みたくなったから。」
「まさか風邪じゃ?」
「それはないよ。本当にない。」

笑って手を振る先輩俳優をジッと観察していると自動販売機が電子音とともに抽出完了を告げた。カップを取り出すために手を伸ばした時ひらめいた。

「お疲れなら是非これを!」

差し出したカップからは甘い香り

「ココアにはポリフェノール含まれてますから!ポリフェノールには細菌の感染を防ぐ効果もあるそうですよ。」
「いや…でも…それは最上さんの…。」
「日頃お世話になりっ放しですから。是非!」

チラリ、と蓮は自動販売機に目を走らせてから「じゃあせっかくだから」とカップを受け取り口に運ぶ。キョーコは看護師かなにかのような気分でそれを見守った。

「敦賀さんには甘すぎました?。」
「いや。美味しいよ。久しぶりに飲んだな。子供の時以来かも。」

無理しないで残してください。そう言うつもりだったのに蓮は美味しそうに最後まで飲み切った。

「ご馳走様。ありがとう。元気出たよ。」
「いえいえ、こちらこそ強引にすいません。」

カップを捨てながら蓮はなにげなく、と言うように言った。

「てっぺんとっくに越えちゃったな。バレンタインだ。」
「そうですね。夕方テレジャパでしたよね?私もその辺りで行く予定なので僭越ながらバレンタインのご挨拶に伺います」
「今年もゼリー?。」
「はい。変わり映えしなくてすいません。」
「いや、あれ楽しみなんだ。嬉しいよ。」
「それはよかったです。」

えへへ、と笑うキョーコに蓮も目を細めた。

「うん。本当に楽しみにしてる。それに…今年はチョコはもうもらったしね。」
「へ?」

とんっと自動販売機を指差した先に書いてあるのは 
」品名“ホットチョコレート”

「え…いやっ違います!これは邪な思いとかじゃなくってですね、純粋に後輩として先輩のお体を案じて…。」
「うん。分かってるよ。邪な想いなんて全くなくて後輩として心配してくれてるってことは。」
「あ…はい。」

想いがバレるのは絶対にダメなはずなのに、そう言われると寂しい気持ちになるのはどうしてだろう。
鼻の奥がツーンとする。表情が強張っていないだろか?

「俺、頑張るって決めたから。」
「へい?」

意味が分からず間抜けな声を出した。

「最上さんに来年のバレンタインは俺に邪な想いを抱いてもらえるように頑張るから。」

へ、の口のまま固まっているキョーコに蓮はにっこり笑った。

「じゃあ、スタジオに戻るよ。本当にご馳走様。気を付けて帰って。タクシー使うんだよ。」

大きな手が伸びてきて頭を撫でそのまま滑って頬をなでると、くるりと向きを変えて元来た方に去っていく。
蓮の姿が角をまがるまで呆然としていたキョーコは、まだ手の感触が残る頬をそっと押さえた。

「頑張る…って何を?」


まったくもって何がなんだか分からない。

だけど


なんだか色々満タンで…


エネルギー補給はもう必要なさそうだ。


(fin)
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コメント

Re: うふふ

>愛○様
コメント有難うございます。
ここからの猛アプローチ…のホワイトデーネタ頭に浮かんではいるのですが、話の路線がおかしい方向に行きすぎて困っています。
敦賀さんはきっと商品名見て急いでゴキュゴキュと飲み干したことでしょう(笑)

2016/02/24 (Wed) 00:43 | ちょび | 編集 | 返信

Re: ああもう。

>まじーん様
嬉しいお言葉有難うございます
誰が通るかもしれない局の自販機前で何をやっているんだ敦賀蓮。とか想像しながら書きました(笑)
実はホワイトデーに向けて続編を考えているのはいるのですが、余りにお馬鹿方向に突き進みすぎて頭を抱えています。

2016/02/24 (Wed) 00:38 | ちょび | 編集 | 返信

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2016/02/17 (Wed) 07:39 | | 編集 | 返信

ああもう。

何気ない日常のやり取りに、恋のスパイスが効いていて、良いお話ですねー。

二人のやりとりが目に浮かび、楽しかったです。

そして、なぜかほっこりしました。

読者もエネルギー補充できてようです。ありがとうございます!

2016/02/16 (Tue) 20:58 | まじーん | 編集 | 返信

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