2016_03
22
(Tue)11:55

もうすこし-6(ほんのわずか番外5)

皆さんすっかり忘れてそうですねー。私もどこまで書いたか忘れてました!
あとちょっとで終わるので、もう暫くの御辛抱を

2016/3/22





「月曜から大人美人のキョーコちゃんが見れてラッキーだな。」

開発部貴島秀人が10階フロア―で用があるのは営業だが、どうせ通りがかりなのだ。気になる子に声をかけない手はない。相手が恋人がいようがいまいが、声をかけるだけなら誰にはばかることはないし、普段からの小さな積み重ねが恋愛だって物をいうのだ。

「貴島さんこそ月曜からお上手ですね。打合せですか?」
「そ、敦賀班とね。」
「班って刑事みたいです。」

クスクスと笑うキョーコの首筋にはアルマンディのネックレス。以前付き合っていた彼女におねだりされたことがある貴島はそれが意味することを知っている。

(大人メイクのキョーコちゃん、好みなんだけどなあ。そういう彼氏いるんじゃね。残念)



■もうすこしー6(ほんのわずか番外5)
     ~ ほんのわずか3カ月後 ~




蓮のデスク横では石橋光が何か必死に訴えている。

「お願い!敦賀君!。」
「絶対にダメ。」

この男がこんなに冷たくバッサリ切るなんて珍しい。足を止めて様子を見ていると、大原愛理が寄ってきた。

「貴島君、お疲れ様。打合せコーナーに準備出来てるわよ。」
「ありがとう。ね、何の騒ぎ?」
「ああ、あれね。なんか寅軸商事の部長からあっちの女子社員とのコンパをお願いされたみたいなの。敦賀君を紹介してくれってせがまれたみたいで。」
「へえ。」

蓮から大本命がいると聞かされたのは2か月程前の事だ。それであの拒絶ぶりかと納得する。

「俺彼女いるからそういう席に行くのは先方にも迷惑だよ。」
「俺だって敦賀君には彼女いるから無理だと思いますって言ったよ?でもさ、それでもいいからお食事会だけでもって女の子たちに食い下がられたらしくて近衛部長困って電話してこられたんだよ。お願い敦賀君!。」

貴島は小声で尋ねた。

「ね、大原ちゃん。あっちの子ってどこの部署?。」
「営業の子1人と受付2人ですって。入社2年目の仲良しグループみたい。」
「お、いいねえ。」

あのハイレベルの受付嬢とお知り合いになれる絶好のチャンスだ。逃す手はない。

「はい、はーい。俺行きたーい。」
「貴島君!。ほら、敦賀君、貴島君が行ってくれるって。盛り上げは貴島君にお任せして敦賀君は座っているだけでいいから。お願い。」
「敦賀君、お願いできるか?俺にも近衛部長から電話があってな。女子社員が失礼が無いように村雨君もつけるし、1次会で切り上げるようにと強く念を押すからと言うお話だった。寅軸との懇親会と思って、な?。」
「…そうですか…。」

その時、少し顔を上げた蓮の視線がチラリと何かを捉えた。
なんだろうと気になって振り向くと、その視線の先にはファイリング作業をしているキョーコがいて、視線に気付いたのか少し困ったような微笑みを浮かべて小さく頷く。それを確認した蓮は少し俯いて石橋たちには分からぬほどの小さくため息を吐いた。

「…そういうことでしたら。」
「ほんと?良かった―。じゃあ、敦賀君と貴島君、俺でって返事しとくね。」

偶然にも今週の金曜日が皆予定が空いていることが分かり、善は急げと決定となったのだった。

*
*

「金曜日はキョーコちゃん予定入ってるわけ?。」

残業食を買いに出かけたコンビニで偶然会った蓮にストレートに切り出した。周囲に社内の人間はいないことは確認済みだ。
ホットコーヒーを手にした蓮が目を見開いてこちらを見る。

「昼間。コンパの話の時、キョーコちゃんの方見てたよな?。」
「…そんなにあからさまだったかな?。」

蓮は苦笑しながらコーヒーに蓋をかぶせている。

「他は誰も気付いてないと思うよ。大本命がキョーコちゃんだってことは否定しないんだ。」
「何も後ろ暗い事はないからね。それに…貴島君最近キョーコに興味持ってるみたいだったから丁度いいよ。」

こちらを見る蓮の視線の鋭さに首をすくめる。

「確かにあの大人美人は超俺好みだけどね。彼氏いるってことはあのネックレス見りゃ分かるし、別にどうこうしようと思ってないよ。」

その彼氏と別れた時の為に、挨拶運動は欠かしていなかったことをわざわざ打ち明けるほど馬鹿ではない。

「そう、ならいいけど。」
「なんかあの時不満げだったよね。」
「…」
「行くの嫌がって欲しかったわけ?営業なんて人と会うのが仕事なんだからそんなことされたら困るだろ?」

嫉妬してくれて嬉しいと思えるのも程度問題だ。かくいう貴島だって学生時代付き合った彼女が、ゼミの仲間や男友達との集まり全てに同行したがって閉口した事がある。ましてや営業職など今のご時世仕事相手が同世代の女性なんて機会はざらにあるのだ。いちいちピリピリされては仕事にならないだろう。

「確かにね。」
「じゃあなんで?。」
「なんでだろうね?」

浅く笑って蓮はコンビニの自動ドアをくぐる。
コンビニを出たところで同じく夕飯を買いに来たのだろう他部署の人間と挨拶を交わし、社屋に向かう蓮は長い脚を存分に活かしてさっさと歩いていく。いつもは男であれ女であれ一緒に居る者の歩調に合せるのに、よほどこの話題を突いて欲しくないのかと思うと余計に好奇心がむくむくと湧き上がる。

「何?あの子ってああ見えて嫉妬深いとか?コンパ参加の伺い必要とか?。」
「随分食い下がるね。」
「だっていつもの敦賀君だったら仕事なんだからってあっさり割り切りそうじゃないか。」
「コンパとか元々興味ないから。断る理由があったら行かないよ。」
「敦賀君好かれ過ぎて大変なことになりそうだもんなあ。でも仕事関係で必要となったら、彼女に確認なんて取らないと思ってたけど。」
「さあ、どうだろうね。」
「あ、もしギクシャクしてるんだったら俺にもチャンス…。」

ギロリと睨まれ再び首をすくめてみせた。

「冗談だよ。敦賀君が大本命とか珍しいこと言うから。」
「事実を述べたまでだけど。」

そっけなく言いながらエレベーターのボタンを押すこの男とは仕事関係で助けてもらうことも多い。あまり食い下がって怒らせるのは面倒だと黙って横に並んでいると、それはそれで居心地が悪いのか向こうから口を開く。

「…本当に彼女は悪くないよ。俺が1人で凹んでいるだけで。」
「「凹む?敦賀君が?。」

人生常勝街道爆進中の見本のようなこの男が?

「何?その怪訝な顔。」
「敦賀君が何を凹むことがあるのさ。…あ。もしかして気持ち疑っているとか?あんな意味深な首輪毎日つけてくれてるのに?」
「首輪って。貴島君は知ってるんだね。」
「うん。前付き合って子におねだりされたことあるから。」
「彼女は全然知らないんだ。だから気軽につけているんだろうと思うよ。」
「ブランドとか興味なさそうだよね。」

まあね。と蓮は少し困ったように笑う。

「気持ちは疑ってないよ。ただ…重さが違うなって思うだけ。」
「重さ?ふーん。重さねえ…よっぽど重い子だったら別だけど、普段は俺は考えたこともないな。」
「そう?」
「うん。心と身体の相性合えばそれでいいかなー。」
「貴島君らしいね。」

そのタイミングでエレベーターが到着する。
蓮が開発部のフロアのボタンも押してくれるのを確認しながら、頭の中には先週百貨店で出会った時のキョーコの様子が浮かんだ。

(あの様子見る限り、敦賀君が気に病む様なこと何もないと思うけどね)

だが大人の恋愛に頼まれてもいないのに首を突っ込むほど貴島はお人よしではない。自分にとっての現在最大および最優先の関心事は金曜日の出会いの場だ。

「敦賀君には悪いけど、寅軸の受付とコンパするチャンスだからね。しっかり引き立ててよ。」

了解、と蓮が小さく手をあげた。

(7に続く)
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コメント

Re: No title

> harunatsu7711様
お返事遅くなりまして申し訳ありません。更新楽しみにしていただけて本当に嬉しいです。
貴島さんとキョーコちゃんとのデパートでの出来事は3話でチラリと触れています。チラリですけど(笑)
こちらの敦賀さんは本当にグルグルしてますよねえ。もう少しだけ、このグルグルにお付き合いください。

2016/03/26 (Sat) 11:37 | ちょび | 編集 | 返信

No title

毎度、更新楽しみにしてます。

キシマ君とキョーコのデパートでの出来事がわからず、もう一度読もうと思っています。申し訳ありません。
想いの重さを気にやんでいるのが蓮さんとのこと、きっとキョーコちゃんも同じ気持ちですよ、と思っています。

2016/03/22 (Tue) 20:32 | harunatsu7711 | 編集 | 返信

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