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闇色のお伽話-31

2016/4/29、2016/5/2一部修正、2019/9/6一部修正の上通常公開
≪登場人物≫

◆キョーコ: モガミ家令嬢、ショー王の内々の婚約者だったが破棄され、王弟レン王子付きとなる。18歳
◆モガミ公サエナ: キョーコの母。モガミ家の当主にて財務大臣
◆トウドウ:モガミ家家令
◆ダルマ: キョーコの乳母。夫のヤーと故郷で宿屋をひらく 
◇レン: 王弟、ツルガ領を治める。22歳。
◇ヤシロ: ツルガ領行政官
◇サワラ: ツルガ領行政副官
■ショー: ヒズリ王国国王。レンの異母兄、28歳
■ショーコ: アキ家令嬢、モガミ公サエナとは異母姉妹(母親が夫の死後実家に帰っているのでアキ家の人になってます)、ショーとキョーコの婚約が破談になった結果王妃となることに。
■クー: 先王、ショーとレンの父親。故人
■ジュリ: クーの愛妾でレンの生母。「魔女」と呼ばれた。故人
□ローリー:先王クーの宰相。現在はタカラダ領の家督を長男コウキに譲り、神宮官として各地を飛び回っている。
□テン: 最上位の神官
●カナエ: キョーコの友人。LME校の寮では同室だった。
●チオリ: 同上
●イツミ: 同上
●ミンマヤ: LME校名誉教授、キョーコの恩師、レンの師でもある
●ヒカル:キョーコのLME校での先輩。イシバシ子爵家長男。
〇アール・マンディ:通称アル。ツルガ出身のデザイナー、王都、ツルガ領都に「アルマンディ」の店舗を持つ。
○ナンモク:ツルガ領酪農地帯出身の絵師の卵、キョーコの肖像画を描いている。
▲先生: レンの幼少時の家庭教師。リックの父親、“森番”ということになっていた。故人
▲リック: レンの兄同然の幼馴染。故人
▲ハルナ:レンの幼少時に傍に居たメイド







ぎぃ

北の塔の出入り口の扉がゆっくりと開く。

控えていたキョーコはゆっくりと顔を上げた。
既にキョーコの姿をその眼に捉えていたレンは、いつにもまして安堵したような顔をしている。

「お戻りなさいませ。」

本当はこんな頭を下げながらではなく笑顔で眼を見て告げたいが、衛兵が幕越しに耳を澄ましているのだ。

「うん…出迎えご苦労。」

レンのほうもいつも通りの言葉を述べて、キョーコの脇をすり抜け黒塗りの馬車に向かった。



■闇色のお伽話-31



塔の部屋をレンは綺麗に使っているが、一応様子を確認してから馬で戻った。


「レン様いかがされました?」

厩に馬を返して館に入ると、レンが立っていたのだ。
奉仕日前日の早朝から塔に籠るため、その間は決済しなければならない書類が溜まりがちだ。ヤシロが大量の書類を抱えて謁見所で今か今かと待っているはずで、いつもならこちらに戻り次第すぐに向かうと言うのに。

「いや…その」
「あ、もしや…体調がすぐれませんか?」

慌てて駈け寄るが何分ヴェールで顔色はうかがえない。

「喉がイガイガするとか…寒気とかございませんか?」
「体調はいいよ。…ちょっとごめん。」

スウと手袋をつけた右手が伸びてきて、キョーコの耳に触れた。
そして顎、頭、頬をナデナデしながら移動していく。

「あ…あの…。」
「うん、有難う。夕飯はデ・オンだっけ?」

何もなかったように手をひっこめながら、楽しみにしているよ。と告げてレンは踵を返して謁見所へと向かっていった。

「…なんなの?」

1人残されたキョーコはレンが触れていた場所をそっとなぞる。
手袋越しにも感じた、男らしい大きな手の感触をなぞって行けばいく程なんとももどかしい気持ちになった。


*
*


数日後
行政官の来訪を知らせる鐘の音にキョーコは首を傾げた。
レンはこの時間基本的に剣の稽古で館の外に出ていて、ヤシロもそれを知っているはずだからだ。

謁見所に向かうと、ヤシロはすでに自分の席について何やら書きものをしていた。

「すいません。レン様は今…。」
「ええ。存じております。すいません。時間がポカリと空いたもので、大丈夫です。ここで事務仕事しながら待ちますから。あちらに居ますと色々捕まってしまいますからね。稽古の後は湯も使うのでしょう?急がなくていいと伝えてください。」

承知して奥に戻ると、レンが丁度戻ってきたところだった。

「おかえりなさいませ。鐘の音は…。」
「丁度切り上げようとしたときに聞こえたんだ。」
「そうですか。お仕事をしながら待つので急がなくていいとおっしゃってました。」
「分かった。有難う。」

4月も終わりに近づいて、日向に居たら汗ばむほどの陽気だ。もう冷たいお茶の季節だと、井戸水で冷やしていたお茶を用意して謁見所に戻った。

「丁度戻られたところでこれから湯を使われるそうです。」
「そうですか。」
「そう言えば、ヤシロさんは昨日お出かけでしたね。」
「ええ。ジッコクの街に。」
「あ、確か都からの道中で」
「ええ、通りました。覚えておいででしたか。」

差し出されたお茶に礼を言って一口含むと、ヤシロは続ける。

「ジッコクにはクラガノの実家があるのです。」

ぴくり、とポットを置こうとしていた手が止まった。

顔を上げると、ヤシロがじっとこちらを見ている。
たまたま時間が空いたなんて嘘だ。レンが席を開けるに違いない時間を狙ってキョーコに話をしにきたに違いない。
チラリと、レンの執務室に続くカーテンに視線を送る。レンの入浴は結構長い。当分の間執務室のドアが開く鈴の音が聞こえる事はないだろう。
お盆を机に置くと、鉄格子に1歩近づいた。それを合図のようにヤシロは話し出す。

「ローリィ卿が集めた資料の中に、11年前の森での出来事を記した王宮の記録の写しがございました。それによると森での死者は3人。」
「クラガノやメイドのハルナは数に入っていないということですか?」
「記録は鵜呑みにはできません。クラガノは森の外れで亡くなっていたとレンが聞いていますから、もしかしたら場所的に森での死者に数えられないことも考えられます。」
「そんないい加減なものですか?」
「何事も1つの資料だけで判断するのは危険ですから、色んな資料を当たらねばいけないのです。メイドの生死や生きてるとしてその後は調査に時間がかかりそうですが、クラガノは先王陛下の側近です。都のマツシマに記録を確認させました。殉職記録に名前があったそうです。死因は斬殺。」
「斬殺?」
「ええ、王命を果たす途中で賊に襲われたと」
「そんな…話が違うではありませんか!」
「そこで確認の為にジッコクに行ってまいりました。クラガノの両親は老いてはいましたが、健在でした。」
「ご両親はなんと聞かされていたのでしょう?」
「記録と同じです。」
「…でもそれは呪いの為、とは言い難かったのかもしれませんね。」
「いえ、クラガノは子供が生まれたばかりで孫の顔を見る為に両親は都に出ていたのです。遺体も確認していました。確かに背中に袈裟懸けに切られた痕があったそうです。」
「そんな!」

ではあの日ショーがレンに告げた事はなんだったのか?ショーが偽りを述べたのか?それともショー自身がそう吹き込まれたのか?

「まだ分からぬことだらけです。しかし…レンの呪い自体がでっちあげだとしたら…」
「したら?」
「あまりにもやり方が稚拙かと…。」

もしこれがレンを貶める陰謀だとしたら王宮でそれなりの地位にある者に違いない。それならクラガノの死因だって、森での記録だっていくらでも改竄出来るだろう。あんな正式な記録に残し、両親に遺体を確認させる、これはおかしいと自ら申し出ているようなものだ。

「複数の資料を至急確認し直しているところです。1つ1つ事実を積み重ねて参りましょう。それまではどうか御辛抱を。いいですね?」

ヤシロの言葉にキョーコは頷いた。


(32話に続く)
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Comments 3

ちょび  
Re: ドキドキハラハラする展開で。

>まじーん様
嬉しいお言葉有難うございます!
囚われの王子、姫、勇者、潜在能力は一番王子が高くガタイもドデカい。勇者たちは助け出すのに一苦労ですよね(笑)
目指せ!今年中の完結です!!!

2016/05/24 (Tue) 04:31 | EDIT | REPLY |   
まじーん  
ドキドキハラハラする展開で。

続きが非常に楽しみです。

囚われの王子を助けようとするキョコ姫と勇者(?)たちの活躍で、謎が解け、恋人たちが幸せになれますように!

2016/05/08 (Sun) 00:18 | EDIT | REPLY |   
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2016/04/29 (Fri) 12:17 | EDIT | REPLY |   

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