2016_07
19
(Tue)11:55

天知る地知る…知らぬが仁王

火曜金曜更新とか言ってられないとかいいながら今日も火曜日に。
書けるときに書いて出すのです。ごめんなさい気まぐれで。

天知る地知る 天知る地知る…兄聞かずの後日談的小話

ほんと小話ですよ?


2016/7/19
 



「ほんとに行かないの?鉄板焼き」
「明日もあるから今晩は休む。祥子さん俺に構わず行ってきて。みんなの支払俺に回してくれればいいから。」

スタッフやバックバンドのメンバーからの「ゴチになります!」「あざっす!」という声に笑って応えながらも、ショータローの心は急いていた。

早く早くホテルに戻らないと…あれが始まってしまう。



■天知る地知る…知らぬが仁王




全国ツアー真っ最中の不破尚こと不破松太郎はホテルの部屋に戻って急いでシャワーを浴びた。
来たるべき時にリラックスして臨むために最高のコンディションでいたいからだ。

そしてスマホでSNSをチェック。祥子が普段と違う行動に体調不良を心配している様子なので、安心させ、食事をゆっくり楽しんでくるよう気遣いの言葉を返す。
これで邪魔は入らない。

時刻は間もなく11時5分
ドーム公演3日間の1日目を終えた現在地は大阪である。

泡立つ麦のジュース…選挙権は得たが成人はしていないのでこれはあくまで麦のジュースだ、のプルタブを開けてソファーに慎重に腰を下ろす。最もくつろげる姿勢でなければいけない。自宅ではなくホテルのソファーなので納得いかない部分はクッションと枕で微調整。完璧だ。

軽く喉を湿らせたところで、11時17分、おなじみのテーマソングが流れてきた。最高のタイミング。俺って何をやらせても完璧だぜ、なんて心の中で自画自賛しながらソファーに身を沈めて、関西金曜夜のド定番番組を堪能し始めた。

局長おなじみの挨拶の後に紹介されたのが、あの顏も見たくないホニャララ男だったのは大いに水を差された気分だったが、誰に憚ることなく大画面でこの番組を見る機会を逃すわけにはいかないので今回は我慢する。
そもそも調査のVTRが主体の番組なので、それさえ始まればあの野郎の顔も映らないのだ。暫くすると気にもならなくなってきた。

ああ、このダラダラ感。最高だ、と幸せに浸る。

地元にいる時は、当たり前だったこの時間がいかに貴重なものであるかを、上京して痛感した。デビューして祥子とほぼ生活を共にしだしてからは尚更だ。

だが、幸せな時間とは長くは続かないのが世の常で、番組は後半に差し掛かりいよいよ最後の依頼となった。
恋人が浮気したと誤解して奉納した呪いの絵馬を回収したいというOLのキャラの濃さに笑っているうちに、何がが視界を掠めた。

(あん?)

依頼者のものの後ろに吊るされた絵馬に書かれた文字が幼馴染のそれに酷似していた気がするのだ。おまけに一瞬だけ映った全体像にはTさん、と読めた気が…する。

(いやいやいや…気の所為だろ)

ショータローも耳にしたことのある神社なので、結構メジャーな観光地なのかもしれない。だがさっきのテレビに映っていた様子からして都心ではない。そんな気軽に行ける所ではないはずだ。

(でも…仕事でなら…)

ダメ元で“京子 ロケ スケジュール”と検索をかけてみる。
あんな下っ端芸能人の情報出る訳ないけどな、と思っていたがあっさりいくつかのファンサイトがヒットした。
スマホの画面一杯に広がるナツ仕様のキョーコの姿。結構熱狂的なファンで追っかけをしているようだ。

(うわ…こいつロケ系全部押さえてるじゃねーか。こんなファンに追っかけられてる事知ってんのか?)

男に対して警戒心0の幼馴染に一言言ってやらないといけない気がするが、自分にもこんなファンがいるのだと知ってつけあがらせるのはどうかと思う。それに流石の追っかけ野郎も素のキョーコが“京子”だと分からないようで、「出待ちしてても京子のオフ顏拝めない」と嘆いてる。

(アイツの化けっぷりは妖怪並みだからな)

そう考えたらある意味妖怪タマススリの被害者の1人なのだし、危ないファンの対策は事務所とてやっているだろう。少し安堵して神社名をサイト内検索にかけた。

(あった…)

少し前にドラマの撮影で訪れている。
やっぱりあれは…いやいや…たまたま偶然で…そう思いながらもロケの様子のレポをなんとなく読み進めて行く。

“京子、待ち時間に絵馬書いてた。”

スクロールしていた指が止まる。
内容が気になったのは追っかけ野郎のお仲間も一緒の様で探せ!探せ!のコメントが連打されている。

“撮影見てるうちにちょっと場所に確信持てなくなってる。”

使えない奴だと舌打ち

“京子って名前では見つからなかったけど、イニシャルK探し出してみた。”

やるじゃねえかと、見てみればいくつかの絵馬がアップされている。個人情報やらプライバシー云々はこの際無視だ。
スクロールしていって…目的の物を発見する。


“Tさんにこの想いを一生隠したまま地獄に行けますように。K.M.
 どうか、できるだけ長くTさんの傍にいれますように          ”


K.M.…最上キョーコ

字は似ている…気がする。ショータローは筆跡のことなどよくわからないが、それでも昔なにかと見掛けた幼馴染の字によく似てる…気がする。

彼は暫し迷った…そして迷っているうちに猛烈に腹が立ってきた。

これはキョーコの手によるものだとしたら、T、なんて1人しかしない。あの男だけはありえないとか、利用するとか偉そうなことを言っておいて想いを隠したまま地獄にいくだ?それはすなわち一生想い続けますと宣言してるようなものではないか?

ぐつぐつぐつぐつ
己の怒りマグマが噴き上げてくるのが分かる。

時刻はまもなく1時。考えに耽ったりファンサイトを読み進めているうちにすっかり時間が経ってしまったようで、とっくに番組も終わってしまっている。

キョーコのものではないかもしれない。例えば正木さんが田中さんへの想いを地獄に持っていくだけかもしれない。

だがしかし

(この俺様をここまでイラつかせただけでもう充分な罪だっ!!!)

仁王と化した男はもはやためらうことなく幼馴染の番号をコールした。

pupupu…『……』

寝てる可能性は十分に高いと思ったのに呼び出し音3回ほどで電話はつながった。瞬時に自慢の声量でまくしたてる

「おいっ!キョーコ!!!お前、あの絵馬どういうつもりだっ!?想いを地獄まで持っていくとか、なんだあれ?Tさん?バレバレなんだよ。やっぱり敦賀に惚れてんじゃねえか!コソコソ絵馬なんか書いたところで、天知る地知る俺様知るだ!!!。」
『あ……ごめん。不破君。』

聞こえてきたのは、さっきまでテレビから聞こえてきた男の数倍艶を増した声…。

『寝ぼけて電話とってしまって…キョーコもう寝てるんだ。起こすからちょっと待ってくれないか?』

あまりの衝撃に「あ」も「う」も言えないうちに、電話の向こうでは『キョーコ、電話。起きて。』そう甘く囁く声と、かすかな衣擦れの音。
空いたままだった口がようやく塞がったところで、目的の人物の声が聞こえ、今度は息が出来なくなった。

『ん…敦賀さん…もう…今夜は無理…ですよぉ…』
『え?それはわかってるから、キョーコ?』

己の耳が良い事が恨めしい。微かな衣擦れも、うふふ…と寝ぼけながらも幸せげな幼馴染の笑い声も拾ってしまう。

『いい…匂い…流石敦賀セラピー………だぁーいすき』

幼いころから幾度も聞いた「だいすき」。でも聞いたことがないほど幸せ色をした「だいすき」

『………』
「………」
『……あ…ごめん。ちょっと起きないみたいだ。明日折り返すように伝えようか?』
「イイエ。ソノヒツヨウハゴザイマセン」
『そう?ごめん。じゃあ、おやすみ』
「ハイ、シツレイシマス。」


通話を終えたスマホを耳に押し当てたまま、石像と化した不破尚を発見したマネージャーの悲鳴が響くのは、その7時間後のことである。


(おしまい)





まあ、お約束?
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C.O.M.M.E.N.T

幼馴染もやっしーならびっくりのセンサーを持っていたようですね。

天知る地知る俺様知る!

知りたくないことも知れて何よりでした。笑

蓮さん、今の状況(二人でベッドの中)で電話が取れたことを大チャンスだと思ったんでしょうね。ウッキウキで電話対応してそうです。

2016/07/23 (Sat) 21:09 | まじーん #NkOZRVVI | URL | 編集 | 返信

小話にあらずです

こんばんは。harunatsu7711です。

蓮キョ欠乏症の身としてはとてもありがたいお話でした。

兄知らずから1週間ほどでしょうか。蓮とキョーコの親密さが高まっているのが伺えて、ニマニマしてしまいました。
寝ぼけて電話にでてしまった蓮も、寝ぼけてセラピーに浸っているキョーコも、その二人の会話を聞いてしまった松もツボでした。

更新いつも楽しみにしてます!

2016/07/19 (Tue) 23:20 | harunatsu7711 #- | URL | 編集 | 返信

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