2014_04
21
(Mon)01:10

1歩いっぽ(13)

2014/4/21初稿、2014/10/6一部修正




その夜キョーコは自分から電話をかけた
『昼間の無礼をお詫びする』
そんな理由で

本当は蓮の声を聞いて安心したかったのだ。

“大好きな兄さん”は『げっ歯類への庇護欲』で愛華を撫でたといった。

本当に?

蓮の中にほんの少しでも愛華への興味があったなら
それが共演をきっかけにそれが膨らんだら?
愛華がカインに感じたものを蓮に感じたら?

キョーコの胸の中の染みは少しずつ広がる。

答えを出してないのは自分なのに。
なんて勝手な考えだろう。

怖がっているのは自分なのに
なんて傲慢なんだろう。



■1歩いっぽ(13) ~それは姿を現し始めて~


『そんなに気にしなくてよかったのに』

電話から聞こえる蓮の声はどこまでも優しい

「いいえ!尊敬する大先輩に失礼をはたらいたのですからお詫びの電話くらい当然です!」
『尊敬する大先輩って聞くとなんか複雑だけど…俺もちょうど電話しようと思ってたから最上さんから連絡もらえて嬉しいよ』
「…」

どうしてこの人はこんな風なことサラリと言えてしまうのか。

『あの後、椹主任から聞いた?』
「あっ!サニーのCMですよね?もうびっくりして奇声あげちゃいましたよ」
『なんかその時の最上さん想像つくよ。』

蓮はくくくっと笑った。
なんだか悔しい。キョーコは頬を膨らませた。

『あ、今、頬膨らませてるね?』
「!!盗撮でもしてるんですか?」
『失礼な。最上さんが分かりやすいだけだよ』

いつも通りの言葉のキャッチボールに強張っていた身体から少し力が抜ける。

「でも、すごいですね。黒崎監督。こういうの芋づる式って言うんでしょうね」

ジョイカレーのCMが家庭用のハンディカメラで撮影されていたことが評判になって、そのメーカーからのCM依頼。

『運動会とかのシーズンが終わって、今度はファミリー層以外に売り込みたいってことみたいだね』

テーマは“撮りたい。君の今”

キョーコは携帯を持ってない方の手でスカートの裾をいじった

CMの2人は恋人同士の設定だ
ジョイカレーの時のように偶然そう見えたのではなく、その設定の話が持ち込まれた。
黒崎から見て蓮とキョーコは恋人でもおかしくないのだろうか?
みんなから見てそう思えるのだろうか?

『メーカー側の気合入ってるって社さん言ってたよ』

「撮影も海外ですもんね!私海外グアム以来の2度目です!」
『…そうだね』

次の話題について考えていたキョーコは少しトーンの落ちた蓮の声に気付かなかった。

少し空いた間

キョーコは思い切って本題を切り出すことにした。

「今日、モー…琴南さん達とカラオケ行ったんですけど…」
『ああ、尋問されたの?』

蓮の声に再び笑いが混じる。

「いえっ、あのっ」
『いいよ。洗いざらい言っちゃっても。俺の態度バレバレだろうし』
「…最近あからさまだって、天宮さんが…」
『うん、実際そうだしね』
「…少しは隠しましょうよ」
『えー?そんなことしてたらまた最上さんに誤解されそうだから嫌だね。それに友達の意見とか聞くのもいいんじゃない?俺も社さんの協力なしでは最上さんに会うのもままならないし』

それで、最近社がウキウキはしゃいでいるのか。
女子学生を上回るハイテンションぶりに少々辟易していたキョーコは納得した。

「琴南さんと天宮さんの評価は辛口ですよ」
『そうだろうね。賄賂にお菓子でも贈ろうかな』
「それは琴南さんには逆効果だと思います。」

それは困ったねと嬉しそうに笑う蓮

「あの、それで新しいドラマの話になったんですけど。敦賀さんの相手役が…愛華さん、だって…」
『ああ、そうだね』

なんといえばいいのか、キョーコが言いよどむと

『大丈夫だよ』

蓮が先に口を開いた

『相手役といってもカインとばれることはないと思う。俺も注意するしね』

キョーコの心配しているところを蓮は勘違いしているようだ。
だが、蓮の言葉に何の色も込められていないことにキョーコは安堵したし、今は勘違いしてくれているほうがいい。
蓮のことは受け入れてないくせに、独占欲は一人前なんて…絶対に知られたくない。

『そうそう、俺の役作りに付き合ってくれるって話覚えてる?』
「もちろんです!」
『来週の月曜日、最上さんオフだって社さん言ってたけど?』

敏腕マネージャーは今日もキョーコのスケジュール管理に励んでいるらしい

『俺も昼から時間取れそうなんだ。大学の雰囲気見に行きたいから付き合ってくれないかな?』
「大学の雰囲気ですか?」
『大学の施設を借りての撮影は結構あるんだけど、実際に学生がいる本来の姿って俺見たことないんだよね』

キョーコも行ったことはないし、蓮の役作りへの興味もある

「是非、お供させてください!」

勢いよく手を挙げんばかりに声を出した。

『じゃあ、時間とか社さんに確認してから明日にでもまた電話するね』

今日はもう遅いから、と言われて時計をみるととっくに日付が変わっている。
慌ておやすみなさいを言いながら、電話を切ることに一抹の寂しさを感じていたら

『カインの時を入れなかったら、初めてのデートだね。楽しみだ』

えっ、と固まったキョーコが何も返せないまま電話は切れた。



(14へ続きます)
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コメント

4. Re:キョコさんの気持ちが。

>seiさん
本誌はすごい盛り上がっているのにこちらの2人はまだ手も握っておりません。辛抱強くジワジワといくみたいです( ̄▽+ ̄*)

2014/04/21 (Mon) 23:31 | ちょび | 編集 | 返信

3. キョコさんの気持ちが。

前向きなのは、蓮さんも感じてる様ですよね。

会話もカップルっぽいし、蓮さんは結構楽しんでいるのでしょうか。

蓮さんが押せ押せになってからのデートもどき。

蓮さんはどんなテンションで挑むのか、楽しみです。( ´艸`)

2014/04/21 (Mon) 19:06 | sei | 編集 | 返信

2. Re:無題

>くろろさん
読み返していただきありがとうございます!
こちらの敦賀さんは本当に辛抱強い…書いてる私がびっくりですσ(^_^;)

2014/04/21 (Mon) 12:45 | ちょび | 編集 | 返信

1. 無題

じわじわとキョコさんに染み込んでくる蓮さん、素敵です。
一歩を読み返して、天然記念物乙女の疑問にひとつずつ丁寧に応えるって、大事ですよね。キョコさんを大事にしたい気持ちがひしひしと伝わって、我慢したりするところも。保留期間が長いのに待てる蓮さん、大人になったんですね。
実際はもう落ちてると想うのですが、キョコさんが蓮さんのこと好きな自分が理解できるまで、このままじっくり落としていくんでしょうか?
次回のデート、楽しみにしてます。

2014/04/21 (Mon) 03:25 | くろろ | 編集 | 返信

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