2016_09
29
(Thu)11:55

世界一贅沢な-4(逃避行の為の習作)

早く更新しますといいながら1週間以上がすぎ…
そして4話で終わらなかった…これをそうして3話でまとめようと思ってたのか?無計画すぎるぞ私。

5話で必ず終わります。そして日曜までに更新することをお約束!!!


ではでは続きをどうぞ


2016/9/29








「奄美にも1回行ってみたいなあ。」
「あー、確かに。ね、そろそろ下にいかへん?」
「そやね。明日はいよいよ沖縄やもんなー。」

(やっといなくなってくれた)

あたりを見渡して人影がないことを確認すると携帯を取り出した。

時刻は22時 船は奄美大島名瀬新港から離岸したところだ。
もう臆病風をふかして逃げないよう蓮の電話に宣言をしようと思いついたが何分圏外だ。そこで奄美に着くこのタイミングを狙っていたのだが、夜の船内はまだ大人が寝るには早い時間ということもあって、どこにいっても人の気配が途切れることがなかった。

もう一度周囲を見回す。早くしないと電波が通じなくなってしまうだろう。

電話帳の一番上に登録された恋人はもう長野でのロケが午前中いっぱいで終わるはずで、そのあとは都内でインタビューが1件、もう自宅マンションに戻っているはずだ。

だが予想に反して何度かのコールの後留守番電話の案内に切り替わった。ロケがおして今帰宅途中か、シャワーでも浴びているのかもしれない。

 ― 発信音の後にメッセージをどうぞ ―

無機質なガイダンスの後にピーと電子音が鳴った。仕方ない。岸は次第に遠ざかっている、このチャンスを逃すわけにはいかない

「キョーコです。」

ここではたと気付く。宣言の内容を決めていなかったことに。
一瞬ためらったが、その言葉はするりと口から滑り出た。


「貴方が好きです」


今この胸にある想いをそのままに


「あ、愛してます。」

想いのままに告げるとしても少々…いやかなり照れくさい。
でも伝えたい。


「たとえ敦賀さんが過去にどんなに大切に想い続けた人がいるとしても、この想いだけは絶対誰にも負けません!」


見上げた空に瞬く星々
ほら、また一緒に見たいものが増えた。


「明日には帰ります」


東京に、蓮の傍に帰ろう。
そして沢山話をしよう。




世界一贅沢な-4終話(逃避行の為の習作)




船は定刻8時30分に那覇新港についた。

(ええ…と、飛行機は…)

気が急いているためマナー違反とは知りつつも歩きながら携帯の電源を入れてネットに接続する。画面の端でメールの着信を知らせる表示が点滅するがとりあえずチケットが優先だ。
平日とはいえさすが沖縄、なかなか空席がないことに焦っていると、同室だった女の子達がはしゃいだ声を上げた。

「あ、あの人かっこいい。遠恋の彼女のお迎えかな?」
「えー車レンタカーだよお?それは違うんじゃない?」
「そうかなあ。でもとにかくカッコいいよね。敦賀蓮に似てる」

その声に思わず顔を上げて…心臓が止まりそうになった。
旅客待合所の前に停められた車の脇に立つ長身の男性。
ラフに着こなしたTシャツとパーカー、それにサングラスで誤魔化しているが、その神の寵児ともいえる骨格をキョーコが見間違えるはずがない。
突然の猛ダッシュに引いていたトランクが悲鳴を上げるが構っている余裕はない。蓮をとりあえず車の運転席に押し込めて、自分も助手席に飛び込んだ。

「な、なんて無防備に立ってるんですか!自分の立場を…。」

付き合わせた顔はワンレンズ型のサングラスに覆われて表情が読めない。もしや迎えに来てくれたのではなく、決別宣言に来たのではと不安になってきて言葉が続かない。

「あ…あの私…。」

怒りの波動は感じないが、軽率な行動にあきれ返っているのかもしれない。とにかく謝ろうとした言葉も続かなかった。

蓮に痛いくらいの強さで抱きしめられたから。

「…つ、敦賀さん。」
「…よかった。会えて…。何かあったらどうようかって不安で…不安でしょうがなかった。」

一段と拘束を強めた腕は微かに震えていた。そういえば9月も終わりとはいえ沖縄の日差しの下に立っていたはずなのに蓮の指先は生地越しに分かるほどに冷たい。
自分が思っていた以上に心配をかけたのだ。

「すいません。軽はずみなことして心配かけて。」

大きな手がキョーコの肩を掴んで2人は再び顔を合わせた。サングラスはしたままだが、その下に見える口が苦く笑う。

「キョーコが謝ることはないよ。よりにもよってこんなタイミングであんな報道あって嫌なはずがない。番組によっては確定事項みたいな扱いのところだってあったし。」
「ちゃんと信じてましたよ?」
「うん。でも嫌な気分にさせたろ?ほんとにごめん。」

首を横にふるキョーコに、だけど…と続ける。

「行き先がわからず連絡も取れなくなって本当に心配したんだ。たとえ俺には言いたくなくても、琴南さんかだるまやのおかみさんでもいい。誰かに言ってくれたらいい。」
「それは…本当に考え無しですいませんでした。」

一昨日は聞こえてくる゛きょうこちゃん”から逃げようと必死で何も考えてなかった。

「でも本当に最初から今日には帰るつもりで…あ!チケット!!。」
「チケット?飛行機の?」
「はい。まだ取れてなくて。」
「キョーコの分も取ってるよ。1時のやつ」
「え、ほんとですか?よかったー。」

ホッとしたところで、気が付いた。

「あんなに報道されてる中、よくここまで出てこれましたね。」
「ん?それはオフが終わったらちゃんと話をしますってことでね。」

それであのしつこい芸能レポーター達が納得するとは思えないが、社やローリィが手を回したのかもしれない。

「そういうものですか。あれ、そもそも敦賀さんはどうしてここが?」

ああ、と蓮は少し笑った。

「キョーコと電話した時、アナウンスかかっただろ?駅名だけはなんとなく耳に残ってた。」

ホンマチ…たぶん本町と書くのだろうその駅名を蓮は知らなかった。もともと電車は数えるほどしか乗ったことのないのだからと社に尋ねても首をかしげる。スマホで検索をかけるとどうやら大阪市営地下鉄の駅らしい。関西で仕事が入っているなんて聞いてなかった蓮はますます訳が分からなくなり、とりあえずキョーコの仕事を確実に把握しているはずの椹に連絡を取った。その椹も事務所の看板俳優のらしからぬ乱暴な追及にすっかり動揺してしまった。

-蓮、今回は災難だったな。え?どうした。そんなに慌てて?は?旅?最上さんが?本町がなんだって?大阪の地下鉄?そりゃきまぐれのロケで大阪行ってるから…あ!!!-


一度ボロを出してしまえば、それを蓮や社が見過ごすわけがない。ましてや椹自身もそろそろ蓮には明らかにするべきだと主張していたのだ。激しさを増した追及にあっさりと口を割った。

「…ばれちゃいましたか。」
「うん。」
「すいません。ずっと黙ってて。」
「いや、それはいいよ。色々かっこ悪いとこ見せちゃったし、言い出しにくかったのもわかるから。むしろいつも助けてもらってたんだからお礼を言わなきゃいけないくらいだ」

あの頃を思い出したのか楽しげに告げる蓮の様子に、もしやあのきょーこちゃんのことも浮かんでいるのかと胸がちりちりと痛む。固めたはずの覚悟はなんと脆いものだろう。

「本人相手に恋愛相談してたなんてほんと間抜けだよな。俺。」

(ん?)

今聞き捨てならないことを言われた気がするのだが、戸惑うキョーコに気付かず蓮は話を続けてしまう。

「それからがまた暗礁に乗り上げたな。てっきり飛行機だと思ったのに。」

ローリィに泣きついて空港各社に問い合わせをしてもらった。
キョーコは翌々日には帰ると言った。韓国あたりならそれも可能だろうが、パスポートを持ち歩いてはいないはずだから国内に絞っていいだろう。関空、伊丹、神戸と近くに空港は多いものの国内線に的を絞ったら乗客名簿に名前は見つかるはずだ、そう思っていたのに検索に引っかからない。馬鹿がつくほど正直なキョーコの性格からするとないと思ってはいたが偽名を使った、もしくは鉄道…となるともう少々のコネでは探しようがない。
頭を抱えていると、ローリィの秘書から連絡が入った。

「秘書…ってあの外国人の…セバスチャンさんですか?」
「そんな名前だったっけ?うん。彼だよ。大阪の路線図を見ているうちに思いついたらしく、船じゃないかって。」

幸いにも船会社のオーナーとローリィは乗馬仲間だった。ダメ元で見てもらった乗客名簿にキョーコの名前があり、当日予約で手続きをした一人旅の若い女性とあって受付の担当者もキョーコのことを記憶にとどめていた。

「居場所がわかって本当にホッとした。だけどそれはそれで船の上で何かあったらって心配になって」
「それって身を投げたりってことですか?しませんよ。」
「心配なんだよ。フェリーとはいえ密室だし色んな奴もいるだろうし。キョーコがどんな精神状態かもわからないし」

そんなに気苦労をかけたのだと俯くと、蓮の大きな手がキョーコの頭を優しく撫でた。

「だから凄く嬉しかったよ。あの留守番メッセージ。」

昨夜勢いでかけた電話を思い出し、羞恥で顔が赤くなる。

「いや、あれは…なんというか…勢いで」
「でも言ってたことは本当なんだろ?」
「それはそうですけど…。」
「留守電聞いてる時はまだ外だったんだ。顔の緩み押さえるの大変だった。」
「え!?外で?」
「だから1人になってから何度も聞き返した。キョーコからの電話の着信音にはあれを…。」
「ぎゃー!!!やめてくださいぃぃぃ!!!!」

まあ冗談だけど、と恋人はしれっとつげた。

「何度も聞き返すうちにようやく気付いた。」
「へ?何をですか?。」
「俺が過去にどんなに想い続けた…って、もしかしてキョーコは鶏の君に相談した女の子を別の誰かと思ってるんじゃないかって。」

一瞬固まったのち、キョーコは声を絞り出した。

「…だってそうでしょう?」
「なんで?キョーコだよ?俺言ったよね。4歳下の高校生だって。」
「違います!だって私聞いたんです!」
「聞いたって、何を?」
「代マネしたとき、熱出してた敦賀さんが夢うつつにきょーこちゃんって…」
「……。」
「あの頃私名前でなんて呼ばれていませんでした。だから…。」
「だから。キョーコのことだよ。」
「何をっ!」

過去は変えられない。蓮が大切に想っていた女性がいたことは仕方がないことだ。いくらキョーコを傷つけたくないとしてもそんな嘘は嬉しくなどないのだ。

「間違ってなんかないよ。キョーコちゃん。」
「私は…っ!!!。」

サングラスを外した蓮に息をのむ。

その下に見えたのがミステックグリーンの瞳だったから。



(5終話に続く)

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Re: 蓮さんの大捜索網に

> まじーん様
いや、本当に大変だったのは社さんだったと思います。
持てるマネ力総動員したんでしょう。今頃燃え尽きて灰になってるか、羽田あたりでハラハラと待ってるか…。
敦賀さん、東京行きの飛行機搭乗直前に「見つかりました」とか電話して「こっちがどれだけ心配したと思ってるんだ!」とヤッシー兄さんに切れられてそうです( ̄▽+ ̄*)

2016/10/07 (Fri) 05:18 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

蓮さんの大捜索網に

ちゃんとキョコさんが引っかかってくれて良かったですね!
(まあ、蓮さんは大騒ぎして、実際に探す立場の人に泣きつきまくっただけですが)

お付き合いしてる彼の素性が謎のまま・・・すべてはこれが元凶なわけですが、蓮さんは今回のことに懲りて、ようやく覚悟が決まったようですし・・・次はオフの後に迎えることのためにキョコさんが覚悟する番ですかね。(笑)

とりあえず・・・やっしーお疲れ様でした!←

2016/09/29 (Thu) 14:08 | まじーん #NkOZRVVI | URL | 編集 | 返信

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