2014_03
10
(Mon)00:10

1歩いっぽ(1)

拙宅初めての長編。

2014年2月前後に産まれた妄想ですので、現在の本誌の流れとは逸れた部分がございます。
だいたい34巻位までの本誌設定だと思ってください。

2014/2初稿、2014/9/21一部修正





「君が好きなんだ」


その音を聞いた途端、キョーコは息をのんだ




■1歩1歩(1) ~それは深く浸みこんでいく~



トラジックマーカーがクランクアップを迎えたその晩
労いに訪れた近衛監督を、2人はヒール兄弟としてではなく敦賀蓮と京子として迎えた


「BJの存在感のお陰で、思ってた以上の出来になりそうだ。本当にありがとう」
「こちらこそいい経験をさせて頂きました。ありがとうございます。カインヒールを掴むのに時間がかかりご迷惑をおかけしました」

最初はハラハラしたけどね~と近衛は一瞬遠い目をしたが、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。

「でも、最後は村雨君もカインを演技者として評価してたし、本当によかった」


そう、クランクアップの声と共にカインの前に立った村雨は言ったのだ。

「あんた、もう少し態度改めたら、世界に通用する役者になれると思うぜ」

遅刻だけはすんじゃねえよ、と悪態つきながらも役者としてのカインを高く評価した村雨に、キョーコは嬉しいやら誇らしいやらでセツカを保つのが大変だった。
その後も村雨は小声でカインに何か言ったようだった。聞こえなかったが、どうやら褒め言葉らしい。
しかしカインはニヤリと笑って

「なんだ。お前も頭撫ぜてほしいのか?」

と、返したものだから、村雨は「俺はげっ歯類じゃね~!!!」と激高し、なんだかいつもの風景に戻ったのだ。


いくつか撮影の思い出話をして、もう一度礼をいうと「今度は『敦賀蓮』と仕事をしたいね」と締めくくって、近衛は席を立った。
帰り際キョーコに「僕は京子さんとも是非仕事がしたいよ」と告げて。

セツカ・ヒールを演じての最大のご褒美の言葉だ。
キョーコは胸を震わした。

隣の先輩俳優を見上げると、優しい笑顔でそのやり取りを見ている。

恋心をすこし前に認めたキョーコにとって、その笑顔はとても危険だ。


ミューズとの約束の時間まではまだしばらくある。『兄さん』にお茶でもいれよう。

キッチンに向かおうとしたとき


「最上さん、少し話をしようか」

蓮は、キョーコが先程まで使っていた椅子を指さし、座るように促した。
自身はベットに腰かけて、キョーコに向かい合う。

「最上さん、セツカとしてのサポート本当に有難う。君がいてくれたからカイン・ヒールとBJを演じ切れたようなものだよ」

いえいえ、そんな。とキョーコがワタワタと手を振ると「本当だよ」と言って、キョーコを見つめる。

そのまま黙って、ただじっとキョーコを見つめている

「あの…」

「明日からは敦賀蓮としてちょっと忙しくなるだろうから、君にちゃんと言っておきたいことがあるんだ」

たしかにカイン・ヒールという別人を演じていた分、そのしわ寄せはこれから一挙に押し寄せるだろう。
そうなるとなかなか偶然会うことは難しい。これまでずっと一緒にいた分喪失感は大きいに違いなく、キョーコは切なくなった。


「俺はね」

ゆっくりと、

熱を込めて。

言葉が紡がれる。


「君が好きなんだ」


絶対にありえないと思った言葉なのに、カインとセツカとして過ごした日々のせいだろうか、その音はキョーコの奥底までストンと届いた。

泣いて泣いて…想うだけならと認めた恋心の相手

その相手からの想いの告白


その瞬間に湧き上がったのは

歓喜

そして

強い 強い 強い 恐怖


それがどこから湧いてくるのはわからない。
どうしたらいいのかわからない。

とにかく何か言わなければ
そう思うのに少し開かれた口から洩れるのは音をなさない息のみだ。


そんなキョーコをじっと見ていた蓮は本当に優しく微笑んだ。

「返事はゆっくり時間をかけて考えてくれればいいよ」

でも、と続ける

「それまでの間は君の先輩として傍にいさせてほしい」

その言葉にキョーコはようやくうなずくことができた。



(2)に続きます
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2. Re:蓮さん告白

>ちびぽちさん
コメ有難うございます。2人じれったいですよね(^▽^;)だからこそ妄想が膨らむんですけど

2014/03/11 (Tue) 16:41 | ちょび #79D/WHSg | URL | 編集 | 返信

1. 蓮さん告白

キョーコさんに
蓮さんが告白しました。
キョーコさんは蓮さんが好きなのですが諦めようとしていましたね?お互いに想いにあっているのになかなかうまくいきませんね?

2014/03/11 (Tue) 12:03 | ちびぽち #79D/WHSg | URL | 編集 | 返信

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