2016_11
17
(Thu)11:55

女王陛下にお供して(後編)

なかなか思った具合にはなりませんが…さくさくっと


2016/11/17




一瞬の間ののち、同席していた中堅どころの俳優が口を開いた。

「またまた敦賀君。4つ差が中学生と小学生ならちょっと問題アリかもしれないけどさ、大人になったら関係ないって。」
「まあ年齢的にはそうなんでしょうけど…彼女、すっごくピュアな子供みたいなとこあるんですよ。そんな彼女に色々邪な想い抱いてる俺ってロリコンの要素あるんじゃないかと。」
「ええ、敦賀君も邪なこと考えたりするの?どんな内容だよ?週刊誌に高く売れそう。」
「それはお教えできません。」
「やっぱりかー。でも京子ちゃんって確かに色んな表情もってそうだよなあ。外見もその時々で全然違うし。」
「そうなんですよ。どんな彼女も可愛いんですけど…例えばコロコロに太っても…うん。可愛いな。絶対。ぷにぷにしたくなるだろな…。そう考えると俺ってデブ専の要素もあるのかも。」
「いや、デブ専はデブだけ好きってことで…。」
「年を重ねた彼女も絶対魅力的ですよね。人生経験を積んだ分いろいろ奥行きがありそうで…そうなると熟女好き?」
「その頃には敦賀君もいい年だから。熟年が熟女を好きになっても熟女好きとは言わないよ。」
「そうなんですか?それは残念。」

クスクスクス…と笑う蓮に合わせて手の中のグラスがカラコロと音を立てた。そんな様子を暫く黙って見つめていた瑞希はぷいっと顔をそむけた後に腰を上げる。

「ごめんなさい。ちょっとお手洗いに。」

固い笑顔でそう告げた瑞希は、トイレから戻る途中に他のテーブルに請われて座るとそのまま戻ってこなかった。
無人となった蓮の隣は待ってましたとばかりに入れ替わり立ち代わり女の子たちがやってくる。

それはDMのころ逸美が見慣れた敦賀蓮がいる宴席での当たり前の光景だった。



■女王陛下にお供して(後編)




三次会への誘いをにこやかに断った蓮が監督やプロデューサーに挨拶をするのを逸美は少し離れた場所から見つめていた。
相当な酒量だったはずなのに蓮の立ち姿はいつもとなんら変わりがない。

「ね、逸美ちゃん、もう1軒行く?。」
「んー明日も午前中から仕事だしどうしよう…。」

正直妙な気疲れをした。今日はもう帰って休みたい。

「あ、あれ」

何かに気付いた声に促されて視線を向けると、自分たちと同じような一団が少し先に見える。遠目とはいえ見知った顔が何人かいるそれは逸美達と同じくドラマの打ち上げなのだろう。この辺りは業界関係者が利用する飲食店が何軒かあるのでそういうことはままある。

「あのドラマって…。」
「あ、やっぱりそうだ。京子ちゃんが出てたやつ。」

輪から抜け出てきたキョーコが名残惜し気な一行に頭を下げて別れを告げているのが見えた。
タクシーを捕まえる為だろう、歩いてきたキョーコがこちらに気付いたらしく「あ」という感じで口をあける。逸美をはじめ皆が自分たちの斜め後ろに立っている恋人に注意を向けた。

「やあ最上さん。打ち上げ終わったの?」

蓮はそう穏やかに問いかける。
それは逸美や共演者たちと話すときとあまり変わらない。

「ええ。皆さんもう1軒行かれるそうですが、私はそろそろお暇をと思いまして。」
「あと1か月とはいえ未成年だからね。お疲れ様。」
「いえ。皆さん、クランクアップおめでとうございます」

そう頭を下げられてそれぞれ口々にお疲れ様と口にする中、逸美の後ろにいる若手女優2人が小声で囁きあった。

「最上さん、だって。」
「結構他人行儀だね。」
「敦賀さんって公私きちんと分けるタイプなのかも。」
「そんな感じする。」

挨拶をそこそこにかわすと、タクシーを停めようと歩を進めるキョーコに穏やかな笑みのまま蓮は話しかけた。

「最上さん、椹さんから電話あった?」
「え?朝にお会いした後は何も。」
「夕方事務所で見た時は最上さんに電話かけてたけど」
「あ…私電源切っちゃってたかも…。」
「多分あのことだと思うんだけどな。」
「要件ご存じなんですか?」

詳しく聞こうとキョーコが蓮の傍近くに歩み寄った。

3m…2m…1m


がばりっ


物凄いスピードで動いた腕が一瞬でキョーコの腰を絡めとると、高々と抱き上げる。
あっけにとられていた一同だが、先に我に返ったキョーコが暴れ出した。

「ちょ、ちょっと離してください!」

そんな抗議には耳を貸さない。

「やった!捕獲!捕獲しましたよ。社さん!」

そう嬉し気にマネージャーに話しかけるのは今までみたことのない少年のような笑顔。

蓮のすぐ近くで手帳を手にプロデューサーと打合せしていた社は、チラリと視線を向けると「それはよかったな。」と大して関心なさげに告げた。

「お持ち帰りしていいですか?」
「皆さんに挨拶が済んでるなら好きにしろ。」
「だって。お許しが出たよ。キョーコ」
「私の許可は出てません!。」

「お持ち帰り…。」

ぼそりと呟いたのは先ほどの若手女優の1人。
確かに嬉々としてお持ち帰り宣言をする敦賀蓮など想像もつかなかった。

「私、明日は仕事なんです」
「そうなんだ。俺もだよ。」
「今日は遅くなるから絶対にタクシーで帰れって事務所からもタクチケ頂いてますし、帰ります。」
「タクシーチケット?」
「そうです。ほら!ちゃんと椹さんの押印済です!」

だから帰るんです!とキョーコが小さな紙片を蓮の目の前に差し出した。蓮は「ふーん」と面白くなさげに眺めた後…

小さくうなずき…それをパクリと口にした。

「へ?」

もぐもぐ…ごっくん

「な…な…」
「あれ?チケットないね?突然消えるなんて不思議だ。魔法かな?」
「何するんですかー!!」
「チケット無いなら仕方ないね。俺と一緒に帰ろうか。」

バタバタと暴れるキョーコの抵抗なんてなんのその。その背後ではいつの間にやらマネージャーがタクシーを停めている。

「はーなーしてー!!!。」
「はいはい。大きな声は迷惑だよ。あまり騒ぐならその口塞いじゃうよ。」

嬉し気にいいながらキョーコをタクシーに押し込むと、こちらにクルリと振り返った。

「皆さん、お疲れ様です。お先に失礼します。」

そうニコリと頭を下げた笑顔は、いつもの敦賀蓮。
その顔に条件反射的に監督が声をかける。

「お、おう敦賀君、お疲れ。また一緒に仕事しような」
「ええ、機会があれば是非。」

皆からの挨拶にまた軽く頭を下げて蓮が乗り込むと、タクシーは滑らかに走り出した。


残されたのはあっけにとられたままの一団と、1人冷静な担当マネージャー。
彼は場を騒がせたことの詫びと丁寧な挨拶を残して去っていった。


「あー!もう!馬鹿馬鹿しい!」

主演女優の少々大きな声に皆が覚醒する。

瑞希は綺麗な髪をかき上げて、、やってられないわ、と続けた。

「今までで一番ときめいたのが、他の女をみて笑う顔だなんてほーんとやってられない。」

あーもう、ほんとやめやめやめ!と再びかき上げられた髪から見えたのは、実にさっぱりとした表情。

「なにあれ?普段必要以上に落ち着いて大人なくせに子供みたいな顔して無邪気に笑うなんて反則でしょ?あんな犯罪的無自覚タラシ男は彼女がしっかり首に縄してくれなくちゃいけないわよね。」

ぷりぷりと告げる姿は宴席での絡んでいた時のような影はない。
皆がクスクスと笑いながら賛同する。

「ほんとに。私現場で会うたびにもう限界ってくらいメロメロになってたのに、さらに上がありましたー。」
「えーあんた彼氏いるじゃん。」
「現実とトキメキは違うのよ。」
「私もハートに矢が刺さりました。あの顔待ち受けにしたい!」
「男の俺でもちょっとときめいちゃったんだから、若い女の子はイチコロだよなあ」
「大御所さえも虜にしちゃうんですか!」
「ほんとにタラシ、敦賀さんってば」

酒が大いに入った一行は今度はゲラゲラと盛り上がる。瑞希はよし、とみんなをまとめた。

「では今からは私の失恋を慰める会。ただし、私今日はもうお酒はいらないから、お酒もコーヒーも飲める店でね!」
「あー私の失恋も慰めてくださいよー。」
「俺のもー」


次々上がる手の中心で笑う瑞希の姿は女王様そのもので…
逸美も笑いながら手をあげた。

「私、お酒も美味しいケーキもあるお店知ってますよ。」



さあ、今夜は女王様にお供して

甘いお茶菓子食べながら沢山話をしよう。


あの男性(ひと)のタラシ被害をみんなで報告しあって、愚痴を言い合って
惚気ぷっりに文句をいって…


最後に

世界に唯一つの恋を見つけた彼を祝福しよう。



(おしまい)






拙宅ではたぶん初めて?の逸美ちゃん視点に沢山のコメントありがとうございました!
途中、タクチケ云々のエピソードは半年ほど前にM様に教えていただいたツイッタでのエピソードを使わせていただきました。
M様ありがとございます!M様のお話待ってますよ!(と、この場で催促してみる)

タクチケ、最近見てないけど今もあんな形状なのだろうか?そもそもまだ世の中に存在するのだろうか?と思って調べたらクレジットカード会社のタクチケとかあるんですねー。
以前個人のお宅にお邪魔した時にタクチケ渡されてビビりましたが、そうかこういうのなら個人でもできるのかと目から鱗です。
まあ出来ても必要ありませんけどね(笑)

関連記事
スポンサーサイト

C.O.M.M.E.N.T

Re: 楽しいお話でした!

> まじーん様
コメントありがとうございます!
お酒が入っているからなのか、そう見せかけての計算づくしなのか?そう思わせる腹黒さが敦賀さんの最大の魅力だと思っております(笑)
まあ以外にも本当に酔っ払ってて、タクシーの中でキョーコちゃんの膝枕で熟睡しちゃったりしてるのかもしれませんけどね( *´艸`)「起きてください!」と涙目に叫ぶキョーコちゃんも可愛かろうと思います♪

2016/11/21 (Mon) 05:38 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

楽しいお話でした!

彼女を貶されムッとした部分は、上手に仕返ししつつ惚気も入れる男、敦賀蓮。(笑)
腹黒ですから、イチャベタをわざと見せつけつつも、お酒も入っているから、スマートな大人男性ではなく少年バージョンの犯罪的無自覚タラシ振り発揮となったのでしょうかね。

攫われたお姫様も大変ですが、噂や憶測より目撃させた方が話が早くて良いですね!(笑)

2016/11/17 (Thu) 20:16 | まじーん #NkOZRVVI | URL | 編集 | 返信

コメントの投稿

非公開コメント