2016_12
16
(Fri)11:55

理由-3(逃避行の為の習作4)

拙宅的にびっくりするほど短いです。


2016/12/16






そして事件は起こった。






■理由-3(逃避行の為の習作4)



「では敦賀さん、この映画の見所を一言で。」
「え?一言ですか?難しいな。」

制作費でも話題になったこの作品は、すでに海外の映画祭に出品が決まっている。そのためもあって初認舞台挨拶が行われるホールの前にはレッドカーペットが敷かれて実に豪奢な雰囲気となっていた。会場には入れなくても豪華俳優陣を一目見ようと多くの人が集まり、興業の成功を予感させる熱気に関係者の顔色も明るい。

「やっぱりアクションですかね。あちこち擦り傷作りながら頑張ったので是非とも見てほしいです。」
「またまた、そんなこと言って。敦賀さんの運動神経に監督も驚愕されてましたよ。化け物だって。」
「化け物とはひどいな。」
「ノースタントで通されたんですよね?」
「ええ、出来る限り自分でやりたかったもので。でもノースタントは俺だけじゃありませんよ。」
「京子さんのアクションも本当にお見事でした。強く美しいヒロインを体現されてて。」
「彼女は以前くノ一役でも見事なアクションを披露してましたから。」

少し離れた場所で同じようにインタビューを受けるキョーコにちらりと視線を送る。今日の彼女の装いは黒のワンピースドレス。ベルベットの光沢が美しいそれはスタンドカラーとドルマンスリープでしっかりとキョーコの身体を覆ってくれていた。

「お2人があまりに運動神経がよすぎて、調子に乗った監督がどんどん演出を過剰にしたって伺いましたけど?。」
「そうなんですよ。あれは参りましたね。」

いくら相手役とはいえ、あまり見つめすぎるのは不自然だ。インタビューに集中しようと思ったその時だった。


何か異物が視界に入った。


それはちょうどキョーコがいる方向で、そらしかけていた意識を一気にそちらに集中させる。


一瞬の出来事だっただろうに、それはスローモーションのように見えた。


レッドカーペットの両脇に並ぶ警備員の頭を超えて飛んでいく小さな小瓶。開いているその口から何か液体が零れ落ちていく。
放り投げた手からはかなりの距離だったはずなのに、放物線を描きながらそれはキョーコの肩口目指して飛んで行った。


おそらく、この喧騒の中でなければ、インタビューを受けている時でなければ、運動神経のいい彼女のことだ。確実にそれをよけれただろう。だが、彼女が自分にむかってくる凶器に気付いた時にはもう顔を覆うだけで精一杯の距離だった。

キョーコの口から声にならない悲鳴が上がった瞬間、蓮はインタビュアーを置き去りにして駆け出した。同時に周囲から悲鳴や叫び声が上がる。


「京子ちゃん!京子ちゃん!!」
「捕まえろ!その女だ!!!」
「塩酸か何かだ!その辺にも零れてるぞ!君っ!触らないで!!!」


キョーコの名前を叫ぼうにも、喉に何かが絡みついて声が出ない。


たいした距離ではなかったはずの場所が果てしなく遠い。



キョーコを取り囲む関係者の輪の向こうに、警備員2人に取り押さえられた女が見えた。
この事態を引き起こした張本人のくせに、遠目にもわかるほどに青ざめ震えている。


その女の顔かたちがはっきりと見えた時、息が止まりそうになった。

なぜなら


蓮が見知った女の顔だったから。




(4話に続く)
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Re: タイトルなし

>〇ゅ〇こ様
コメントありがとうございます!
師走のお忙しい時期にこの湿っぽさ、おまけになかなか進まずで本当に申し訳ございませんm(__)m
いやいや、意味わかりますよ(笑)楽しみにしていただけて本当に嬉しいです。最後まで楽しめるよう終わりはきちんと蓮キョを幸せにしてあげたいです。こういう話がこのまま終わったり、連載止まったままになると凹みますよねー(笑)

2016/12/23 (Fri) 06:53 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

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2016/12/16 (Fri) 17:06 | # | | 編集 | 返信

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