2017_01
06
(Fri)11:55

理由-6(逃避行の為の習作4)

あまり話が進みませんでした…。

2017/1/6





「キョーコが今どこにいるか…ですか?」
「うん。今更で申し訳ないけど」

こちらを窺うように見上げる琴南奏江の表情に苦笑しながら軽く頭を下げた。キョーコを大事にしている親友にしてみたら、あの事件から1年も経ってから行方を気にするなど本当に今更だろう。

キョーコの行方は社長も知らなかった。本気なら探してやってもいいと言われたが、一先ず親友である元ラブミー部員に聞くのがよかろうと思って、元部室で休憩中の彼女を訪ねたのだ。

「いえ、いつまでやせ我慢を続けるつもりなんだろうって思ってましたから、今更とは思いませんけど。」
「俺、やせ我慢してるようにみえた?」
「ええ、カメラまわってない時は大根だなって思ってましたから。」

そこまで言われるともう笑うしかない。

「で、所在を尋ねるってことはキョーコに会いたいとお考えなんですよね?会ってどうするつもりです?」
「そうだな…会って…。」


顔が見たい。声が聴きたい。話がしたい。そして…


「抱きしめたいな。」

ぶへっと飲んでいたコーヒーを吹き出しかけたのをなんとかこらえた奏江は、ぎろりとこちらを睨む。

「相手の意向に関係なくすれば犯罪行為ですよ?」
「勿論分かってるよ。率直に願望を述べたまで。俺のことよく分かってくれているみたいだから、隠しても仕方ないと思って。」

しれっと告げると、どうしてこう気持ちの持って行き方が極端なのかしらと眉間に皺を刻んでため息をつかれた。



■理由-6(逃避行の為の習作4)




「伺っておいて申し訳ないんですが、私もあの子の住所は知らないんです。」
「そう…か。」

流石にガッりした声を隠せない。

「手紙はくれるんですけど住所は書いてなくて」

出演作の感想を書いた手紙をくれるのだという。それが連ドラだった場合は放送がはじまってすぐと終わってからに律儀に書いてくれるのだそうだ。

「返事はどうしてるの?」
「迷ったんですけど…キョーコのお母さんの事務所に送らせてもらってます。ちゃんと転送してくれてるみたいです。」
「封筒の消印は?」

そう聞いたのは社だ。確認していなかった奏江がこじんまりとしたバックを探り、何通かの封筒を取り出した。

「手紙、持ち歩いているんだね。」
「開封したのが外出先だったので。」

そうぶっきらぼうに告げたが、手にしている手紙は1通ではない。時折開いて励みにしているのか、それともお守りか…あのサイズの鞄に荷物を収めるために邪魔になるだろうそれを持ち歩いていることにキョーコへの想いが見て取れる。

「消印同じところですね。これ都内ですよね。」
「キョーコちゃんのお母さんの事務所の最寄りじゃないかな。なあ蓮。」

一度だけ何か用事があるというキョーコを母親の事務所まで送ったことがある。確かこんな地名だった気がした。

「多分…。住所が知られないようにお母さんに投函をお願いしてるんですかね。」
「どうだろう。そこまでするか?案外近くに住んでるんじゃないか?都会の方が人混みに紛れるし、下手に田舎に行くと余所者の出入りに敏感だぞ。」
「別に都内じゃなくったって人の多い場所は沢山ありますよ。関東近郊ならなおさらです。」
「…とりあえずお母さんの近くじゃないと思います。」
「そういうこと手紙に書いてあったりしたの?」

そうではないと首を横に振られた。

「手紙を開封した時に何度か磯の香りがしたことがあったんです。だから海の近くなのかなって。それにあの子自然好きでしょ?海とか山とかそんな場所に住んでいそうじゃないですか?」

もうほとんど勘ですけど、そういった後、奏江はキョーコが手紙にしたためていた近況をかいつまんで教えてくれた。1人暮らしをしながらどうやら仕事もしているようだ。

「それぐらいであとは天気のことくらいしかかいてなくて、詳しい暮らしぶりは分からなんですけど。」

奏江のスマホが震える。次の仕事の時間のようだ。

「あまりお役に立てずすいません。」
「いや。キョーコが琴南さんと連絡を取っているだけで安心したよ。教えてくれてありがとう。」
「…私はあきらめていませんから。もう一回あの子と芝居するの。だから敦賀さんの願いが通じようと通じまいと、あの子が幸せなら別にいいんです。」

私はあの子の味方ですから、そうきっぱり告げると軽く頭を下げて彼女は出て行った。

「釘を刺されたのに嬉しそうだな。」
「…ええ。キョーコにこんな友人がいるのは嬉しいですよ。敵にしたら手強いでしょうけど。」
「でも教えてくれただろ。それは琴南さんもお前が傍にいることがキョーコちゃんの幸せに繋がるんじゃないかって考えているんだと思うぞ。」
「だったらいいんですけどね。」

さて、と社が表情を引き締めた、

「やっぱり社長に頼もう。たとえ琴南さんの勘が当たっていたとして海近くの町なんていくらでもある。探しきれないぞ。」
「そうですね…。年明けにお願いしましょう。」
「今すぐのほうがよくないか?一日でも早く会いたいだろ?」
「それはそうなんですけど…社長今日からヨーロッパですよね?帰ってくるのは年末ぎりぎりだって言ってました。」

敦賀蓮が女性を探している。そんなデリケートな案件にあまり人は介したくないはずだ。それにこちらだって年末に向けてスケジュールはかなりきつい。もし探し出せたとしてもなかなかすぐに会えるとは限らない。そうこうしているうちに姿を消されたらまた振り出しに戻ってしまう。
確かになあ…と社が開いたスケジュールに目を止めた。ガチガチに埋まったマス目の中でぽかりとある空白。

「12月25日…空いてるんですね。」
「ああ、まあ夕方からは仕事入っちゃったけどな。」
「どうして…。」

キョーコが傍にいない今、彼女の誕生日が空いていてもどうしようもない。かえって色々考えてしまうだけだ。

「うん。考えやがれって思って。」
「考えやがれって。」
「お前、願望だだ漏れのくせに煮え切らないんだもん。キョーコちゃんのこと考えないようにと仕事に集中しちゃうだろ?だから強制的に時間空けてとことん考えさせてやれって思ってたんだ。考えて考えて凹みまくったお前の尻を蹴る予定だったんだけど」

それより早くあの女優がスイッチを押してくれたわけだ。あの時嗅いだ香りを思い出して蓮は眉間に小さな皺を寄せた。

「まあ、なんにせよよかったよ。前向きになってくれて。」
「ご心配かけてすいません。」
「この日に他のスケジュール入れるか?そしたら2,3日余裕がある日が出来るけど。」

もう一度ページに目をやる。
その空白故に浮かび上がって見える12月25日

世界で一番愛しい人の生まれた日


「いえ…このままで結構です。」


海に行ってみようと思った。

奏江の言葉を聞いて鮮烈に蘇ったから


゛海に行きたいです”

そう告げた時のキョーコの瞳の輝きを。



そしてあの約束の海に



キョーコはいた。




(7話に続く)


私だったら1年たったら海に行く約束は思い出せても、どこの海だったかは忘れてますけどね…。
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Re: 蓮さんのお尻と足

> まじーん様
尻に蹴りを入れられないと中々前に進めない男…拙宅の敦賀さんは根本的には弱いんですよねえ…。今回はさすがに彼女の親友とマネージャーからの回し蹴りに奮起したようですが、思いもかけず早く再会できて頭の中真っ白だと思います(笑)

2017/01/12 (Thu) 04:43 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

蓮さんのお尻と足

敏腕マネと親友ラブな女優さんのおかげで、バシっと叩かれ、足を進めることができたようですね。ヽ(´▽`)/

海での再会。

二人の相手への想いがあるからこその実現ですね。

蓮さんはまだ遠くから眺めているだけですけど、ちゃんとキョコさんの目の前に立てるんでしょうかね。

2017/01/06 (Fri) 14:56 | まじーん #NkOZRVVI | URL | 編集 | 返信

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