2017_02
04
(Sat)11:55

理由-9(逃避行の為の習作4)

遅くなりました。
もうインフルの猛威がね…。いや私は全然元気だったんですけど、周りがね。ここまで倒れられるといっそ清々しいと思えるほどでした。
そんなわけでちょっと余裕がないので、いろいろお礼やご挨拶、そしてpwヒント送付はまた後日とさせていただきます。
本当に申し訳ございません。

ではとりあえず続きをどうぞ


2016/2/4





こちらに向かって駆けてくるキョーコに、蓮も足を速めた。


(狡い男でごめん。キョーコ)


理由を知りたい。

再びキョーコの傍にいるために
2度とキョーコを離さぬために

その為には少々卑怯な手だって使って見せる。




蓮の胸にキョーコが飛び込んでくる

「会いたかった!!」


もう逃さぬようにこの手で封じ込めて


「会いたかったよ!コォーン!!!」




■理由-9(逃避行の為の習作4)



過去の告白と懺悔をしようと思っていたのは2年前の事件の翌日。
当然それは流れたまま現在に至っている。

キョーコが心の内をさらけ出す妖精王子の存在を利用しない手はなかった。


ジェスチャーで魔法で声を借りたいことを伝えると、素直に頷いて目を閉じる。相変わらず本当に騙されやすい。

「俺も会いたかったよ。」

その声を聴いた瞬間。キョーコがふるりと震えた。

「…もう会えないかと思った。」
「なかなか来れなくてごめんね。キョーコちゃん。」

ああ、とにっこり微笑んで見せる。

「もう呼び捨てでよかったんだっけ?キョー「だめっ!!!」」

叫び声をあげた口はすぐにきつく結ばれ、そのまま俯いてしまう。

「…呼び捨て…だめなの。」
「次に会う時はいいってキョーコちゃん言ったよ?」
「言った…けど、ダメなの。…コーン、また敦賀さんの姿と声だから…。」

それは私が悪いんだけど…と続く小さな声に、こちらの表情が見えていないのをいいことに笑いが洩れる。あのグアムの海岸で己が教えたのだ。声を借りるのはキョーコが一番最近頭に浮かんだ人なのだと。
今さっきまで思い描いていたのは蓮だと白状したのも同然だ。

「どうして敦賀さんの声じゃダメなの?」
「それは…。」
「敦賀さんが呼び捨てにしてたから?」

がばりと上げたキョーコの顔は強張っている。

「ひど…また頭の中覗いたのね?」
「敦賀さんと付き合ってたんでしょ?」

さあ畳みかけろ、敏い彼女に考える隙を与えるな。

「そんな顔して敦賀さんのこと考えるくらいならどうして別れたの?」
「それはっ。」
「許せなかった?敦賀さんのせいであんな傷負ったから?あんなに好きだった芝居できなくなったから?」
「違う!」

違う違う違う…キョーコが泣きながら胸をたたく。

痛い

キョーコの傷を抉っている罪悪感で

「違う!違うよ!あれは敦賀さんのせいじゃない!」
「敦賀さんのファンが起こしたことだろ?ちゃんと対策とってればあんなことにならなかったんじゃないの?」
「敦賀さんのファンがどれだけいると思ってるの?そんなの無理に決まってるじゃないっ。」
「あの男は本当はキョーコちゃんとの関係を隠したくなかったんだよ。だから脇が甘くなった。どうなるか分かってたはずなのに。」

そう、分かってた。
店員の質も客層もいいマンション併設のスーパー位なら。だが、普段の客層がどんなに絞られていようともどんなに置いている品物がハイクラスであろうともスーパーはスーパーだ。来る客は拒まない。どんなにファンの間で暗黙の協定があろうとも、ちょっとだけならとルール違反をする者がいないとは限らない。店員がつい出来心でSNSでつぶやかないとは限らない。
なのに、2人で歩いた。そうすることで少しずつでも2人の関係が漏れ出ることを心の底で期待していた。キョーコは自分のものだと世に知らしめたかった。

敦賀さんに随分厳しいね。とキョーコがつぶやいた。

「芸能界をやめたのは私のせい。傷だって形成手術を受けたらもう少しは目立たなくなるって先生は言ったの。役を選んだら、カメラじゃなく舞台ならって社長だって言ってくださったもの。この前だって舞台見に行ったらやっぱりやりたくなったから…近くの劇団に入れてもらおうかって思ってる。」
「じゃあ、どうして?」
「……」
「どうして敦賀さんと別れたの?ここ、敦賀さんと行こうって約束してた海岸だろ?そんなところで2人で選んだストール抱きしめて…泣きそうな顔してるのに、どうして?」
「そんなとこまで見たの?じゃあ分かってるでしょ。」
「俺が覗けるのは過去の記憶だけだよ。キョーコちゃんの心の中までは分からない。」

キョーコがまた口をつぐみ視線を反らした。
小さく震える体が弱弱しいが、許してやるつもりは毛頭ない。

「……敦賀さんね。」
「うん。」
「いつも言ってくれた。私のこと綺麗だって。」
「うん。キョーコちゃんは綺麗だよ。」
「肌…だって滑らかとか艶やかとか…。」
「うん。」
「はじ…めて傷見た時…あんまり酷くて…。」
「…うん。」
「お…もったの…。」
「…何を?」
「こんな傷…見たら敦賀さん引くんじゃないかって…ガッカリするんじゃないかって…。もし敦賀さんの表情にそんな色がちょっとでも見えたら私…」

理不尽だと分かっていても猛烈な怒りが沸いた。

「そんな想いだと思ってた?」
「え?」
「傷がついてたら萎える?そんな愛だと思ってたの?そんな薄っぺらい表面だけの愛情を注ぐ男?」
「ちがっ。」
「違わないだろ?そう思ったからキョーコは逃げだんだ。」

思わず素が出た。だが追い詰められているキョーコは気付かなかったらしい。

「違うの。コーン。」
「どこが違う?怖かったんだろ?傷をみてがっかりされるのが!だから逃げた!」
「本当に怖かったのはそこじゃないのっ。」

何かひび割れるような彼女の叫び

それを聞いて冷静になる


そう。違う
キョーコはそんな時当たって砕けようとする。
恐怖を押し殺し、少しでも蓮の中に怯みを見つけたら身を引こうと、あえて肌を晒してみせただろう。


本当の理由はそこじゃない。



「私…だけどって思った。」
「だけど?」
「………。」
「キョーコちゃん?」
「……たとえファンの勝手な行動でも敦賀さんは責任を感じるから…。」
「うん。」
「……この傷…みたら…も…敦賀さんは……い、一生私のものだって…。」

優しく責任感の強い蓮はキョーコの傍にいて支えてくれるだろう。この傷が消えない限り。

「わ、たし。怖くて。こんなこと考えるなんて。」

蓮の想いは信じていた。
それなのに心のどこかで怯えていた。その想いが変わる日を。

それは考えても仕方のないことだ。今確かにある2人の絆を信じていけば、例えもしそんな日が来たとしても歩んできた日々は決して無駄にはならない。それは分かっていたはずなのに。
何がなんでも、蓮をがんじがらめに一生縛り付けようとする自分がいた。

あれほど高みへと望んだ女優への道よりも、蓮を絡めとれることに昏い喜びを感じている

自分を見失う愚か者どころか、こんなの…化け物だ


だから逃げた。これ以上醜くならないために。己の内の化け物に気付かれないうちに。


「それなのに…。」
「それなのに?」
「逃げた…くせに…私…会いたくて…見つけてほしくて…」

この海を選んだ。
未練たらしく、時間があれば海岸を歩き、来ぬ人を待った。

「モー子さんまで使って…。」

親友への応援のふりをして出し続けたヒント

母をたどれば必ず行き着く、約束の海にいる自分をどうかどうか探し出して…そう願いながら海岸で書いた手紙


(ああ…)


震える肩を抱く手に力をこめた。


「似た者同士だね。俺たち。」
「俺…たち?」

すい、と蓮はスマホを取り出した。

「コーン、それ…。」
「うん、ごめんね。」

何を謝っているのかさっぱり分からない様子でキョーコは蓮が慣れた様子で扱うそれの画面を見つめている。動画ファイルを1つ選び再生した。

「つ…るがさん…。」

流れてきたのはLMEの1室で少し硬い表情で挨拶をする゛敦賀蓮”の姿

『私敦賀蓮は、皆さんに告白しお詫びしなければなりません…』

そういって外されたコンタクトとウィッグに腕の中の痩躯が大きく震えた。淡々と自分の素性と罪を明かしていく画面の男の声に暫し耳を傾けた後、ゆっくりとこちらを見上げる。

「ほんと…に?」
「うん。ごめん。キョーコ。ずっと騙してて。最初は妖精って信じる君を喜ばせたかった。グアムではまだ自分の過去を完全に認めれてなかったし、君に素性を離す覚悟もなかった。付き合ってあの事件の翌日にゆっくり時間をとって話をしようと思ってたけどね。今はこの姿のほうがキョーコの本音が聞けるだろう?」

キョーコが拘束から逃れようともがく。無駄なことだ。

「離して!」
「嫌だ。」
「本音もう話したじゃないですか!わかったでしょう?私がどんなに浅ましいかっ。」
「うん。だから言ったろう?俺たちは似た者同士だって。」

え、とキョーコが動きを止めた。

「ずっと理解のある男のふりをしてた。縛り付けたいっていう気持ちを押し隠してた。あの紅茶のポスターを見た時なんて、他の男の目に触れないよう塗りつぶせたらとまで思ってた。…だから傷の説明を受けた時思ったんだ。俺の醜い独占欲が形になったんだって。俺の罪そのままだって。」

自分が怖かった。だから別れを告げるキョーコを引き留めれなかった。自分の中の醜い感情を押し込めることで逃げた。

そう、逃げた。

一方はその感情の対象の前から消えることで
一方はその感情を封じ込めることで

自分の中の醜さから、弱さから逃亡したのだ。


「でもね。無理だったよ。逃げるなんて。それは自分の中にあるんだから当然だな。」

どんなに目を反らそうとしても、閉じ込めようとしても
もう指先まで侵されている。

会いたくて
会いたくて
愛おしくて


「逃げれない。…もう逃げるつもりもないよ。」


この感情は醜いだけじゃない。
キョーコの成長を喜び、誇りに思う気持ちも確かにあった。
演技者として対峙し、共に歩んでいける未来が楽しみでもあった。

「キョーコの中にあるものだって1つじゃないだろ?」

そう、互いのうちに渦巻く感情は1つじゃない。

信頼と疑心、束縛、尊重、寛容、狭量…相反するように見えるものもどれもまた本当

だけど、それらすべてを取り去った奥底にいるもの
それは


愛おしい
そして傍にいたい


それなら


「そこから始めないか?」

2人一緒にこの胸にあるものをいいも悪いも受け止めて
今度こそ目を反らさずに。逃げずに。

「…出来るでしょうか?」
「自分だけこんな感情持ってるわけじゃないって知ってれば気楽じゃないか?」

それにね。と蓮はくすりと笑った。

「もう現実的に逃げるのは無理だと思うよ。」
「…どういう意味ですか?」

この動画、と手にしているスマホを振って見せる。

「普段お世話になっているテレビ局や出版各社に配信予約してあるから。時間は今日の11時…だったかな?。」
「え…。」
「アルマンディや契約先には根回し済み。このまま゛敦賀蓮”は少し長めのお正月休みをもらって、年が明けた4日に会見を行うことになってる。」
「…それが…・?」

何かは分からなくても嫌な予感がするのだろう。どんどん顔が青くなる

「キョーコが逃げたら俺言うからね。正体明かした理由はキョーコだって。初恋の相手で今も愛してるって。」
「な……。」
「探すだろうなあ、マスコミ。マスコミだけじゃないよね。今や一億総カメラマン、いや総パパラッチの時代だ。逃げきれるかな?。」
「なななななな…なんて。」

青ざめていた顔が今度は怒りで赤くなる。信号機みたいで面白い。

「なんて…姑息な。」
「姑息だろうと、卑怯だろうと、使えるものはなんだって使うよ。もう俺は絶対に逃がさないって決めたから。」

最大限真っ赤になったキョーコがはくはくと口を動かした。

「だからね。もう観念して、俺の傍にいて。」

はく、とキョーコの口が閉じる。
じっと見上げる瞳に微笑んで見せた。

「本当に…それでいいんですか?」
「うん。」
「私…怨霊並みの執念深さですよ。祟りますよ」
「たまにはいいね。そういうスリリングなプレイも。」
「後悔したって知りませんよ。」
「後悔ならしたよ。キョーコを失ってからずっと。」

瞳にうつる゛久遠”の姿が再び満ちてきた涙に揺らいだ。

「後悔するなら、キョーコの傍がいい。」


誤ったのならそれを詫びて、意見を違えたら喧嘩して、また仲直りして、何度でも何度でも


ついに涙腺が決壊した。今度は笑顔と共に。
そして伸ばされ手が蓮の首に回る


「仕方ありませんね。観念します。」
「…うん。ありがとう」

ぎゅうと抱きしめあったと同時に満たされる。溢れ出す。



この甘く優しい感情の理由なんて、考えるまでもない




(エピローグに続く)





エピローグは本当に短いのでなるべく早く公開できればと思います!
関連記事
スポンサーサイト

C.O.M.M.E.N.T

Re: ありがとうございます!!

>ありがとうございます!
お祭り間に合わなくて本当に申し訳ありませんm(__)m

2017/02/11 (Sat) 05:21 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

ありがとうございます!!

先ほどご紹介アップさせていただきました!
ありがとうございます!!

エピローグも楽しみです。
ヾ(๑╹▽╹)ノ"

2017/02/06 (Mon) 10:30 | まじーん #NkOZRVVI | URL | 編集 | 返信

Re: コーンばれ

> まじーん様
そうなんですよ。コーンバレはまだだったんです。
2話でそのあたりの伏線を貼っていたのに、あまりの連載の間の空き方にうまく作用できない感じに仕上がってしまいました(笑)
双方が納得…キョーコちゃんにしみたらしてやられた感満載なのでしょうが、性質の悪い男に引っかかってしまったことをもう観念するしかないんじゃないでしょうか( *´艸`)

本当に遅くなって申し訳ありません。なんとか1月中に終わりたかったんですが…どうぞ紹介してやってくださいませ。

2017/02/06 (Mon) 04:57 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

コーンばれ

コーンの正体はまだバラしてなかったんですね。

ですが、彼はキョコさんが躊躇なく会いたかったと言える相手ですものね。
利用しない手はない・・・(笑)

似た者同士の二人の似たような葛藤。

双方が納得(?)行く結果が出てよかったです!!

年末年始特大号的お品書き企画へのご参加ありがとうございました。
企画は終了しましたが、引き続き本作を続きとしてご紹介させていただいても大丈夫でしょうか?

2017/02/04 (Sat) 15:43 | まじーん #NkOZRVVI | URL | 編集 | 返信

コメントの投稿

非公開コメント