2017_02
06
(Mon)11:55

理由-エピローグ(逃避行の為の習作4)

本当に短いですが、当初のお約束通り最後はオリキャラ和紗さんで締めたいと思います。プロローグに登場したのがもう2か月も前のことなので皆さん覚えていらっしゃるでしょうか?(笑)
あ、珍しく1日明けてのアップとかしたので、土曜日にあげた9話を先にお読みくださいね。

ではでは

20167/2/6






寒風に思わず首をすくめたタイミングでスマホが着信を告げた。

「はい。」
『おはよう。和紗。昨日はお休みもらってごめんね。』

かけてきたのはバイト仲間だ。入ったのが同じ時期ということもあって一番仲がいい。
市原和紗はコンビニへと向かっていた自転車を海岸の駐車場に向けた。彼女との電話は楽しくてついつい長くなる。道路脇で立ち止まって話し込んだりして近所のおばさんにでも見られたら、どんな噂を立てられるか分かったものではない。

「ほんとだよ。メチャメチャ忙しかったんだからね。」
『マジ?そんな凄い客だったの?』
「それが売り上げ去年と殆ど変わんなくてさ。ガッカリだよ。」

ああ、と電話の向こうが納得したように笑う。

『そりゃ去年は最上さんいたからね。』
「あ…そ…っか。」

そうだ。去年のクリスマスイブには彼女がいたのだった。和紗は迅速かつ正確な仕事ぶりを思い出した。手が何本あるのだと聞きたくなるような処理スピードなのにいつも笑顔と柔らかな物腰を崩さないのだ。バイトに入って初めてのクリスマスの忙しさにアップアップしていた和紗にとって神にも見えた。



■理由-エピローグ(逃避行の為の習作4)




「最上さんが辞めて一年になるのかあ。」

あの神がかった仕事ぶりを発揮したクリスマスイブの翌日、休みをとっていたキョーコがバイトを辞めると店に電話してきたのだ。午後の一番暇な時間にかけてきたのがいかにも彼女らしいが、翌日の閉店後には焼き菓子持参で制服を返しにきたらしい。
バイトが突然やめるなんてよくあることだが、キョーコに限っては仕事中そんなそぶりも全然なかったし、バイトに入って2年近く無遅刻無欠勤だった末の突然の行動だ。皆どうしたことだと首をひねった。どうやら東京の方で就職するという話だったらしいが、キョーコに想いをよせていた店長など変な男に騙されているのではないかとしても仕方のない心配を散々していた。

『あの時最上ロスの店長の落ち込み具合、半端なかったよね。』
「だよね。もうしばらく辛気臭くてやだった」
『そうそう。、仕事の能率さがるしさ、実際最上さんの穴は埋めんの大変だったよね。地味目ちゃんが頑張ってくれたからなんとか乗り切れたけどさ。』
「地味目ちゃんって。」
『だって超影薄かったじゃん。あんたあの人に名前思い出せる?』
「いや、無理だけど。」
『だよね。田中とか佐藤とかこれまた地味な名前だったんだよね。その田中さんもシフト落ち着いたころに辞めちゃったよね。』
「勝手に田中にしてるし。」
『いいじゃん。あ、そういやあの時配られた焼き菓子超美味しかったでしょ?私、昨日お土産に買ってこようと思ってネットで調べたんだけどさ。』
「え?ほんと?」
『それが、超人気店の激レア品らしくって予約半年先まで埋まってるって書いてて諦めた』
「なんだー。期待させないでよ」

朝が早いこともあって駐車場には高そうな外車が一台停まっているだけだ。それにしても寒い。何か暖かい飲み物を買おうと自販機に向かう。

「まあ、土産はいいけど、舞台どうだった?いいよねえ。東京でイブに観劇デート。なんか大人。」
『あんただって成東と一緒だったじゃん。』
「いや、シフト一緒だっただけだし。」

おまけにバイトで精根尽き果てて、その後どこかに行こうという気にはなれずに解散したのだ。

『正月は私が入るからさ。初詣デートしておいでよ。あの舞台まだやってたら超お薦めだったんだけどな。昨日のお昼で終わりだったんだよね。』
「やっててもチケット取れないでしょ。奇跡だって言ってバイト休んだくせに。そんなによかったの?」
『もう凄い。京子の存在感半端ないよ。』
「え?京子?あんた高園寺絵梨花好きで見に行ったんじゃないの?京子のせいでチケット取れないの怒ってたじゃん。」

怪我で一度引退していた京子の再デビュー作となった今回の舞台、その話題性と前評判で元々チケットが取りにくかったらしい。前評判以上の高評価と客入りでロングランが決まりこれなら…と思っていたところに、敦賀蓮と2月に結婚していたことが明るみに出て世間は大騒ぎ、当然のことながらプレミアチケットとなったそれを手にすることができたのを、このバイト仲間は奇跡と言っていた。

『高園寺絵梨花もうまいんだけどさ、京子はもう圧倒的だよ。ぐいぐい引き込まれるの。ああっもうあの凄さは私のペラい語彙力では伝えられないわ!次の舞台あるときは絶対行って。私もチケットとるから。どっちかとれたら一緒に行こう!』
「ちょ、デートで見てこいって言ってなかった?」
『だって私もみたいじゃん。成東には勿体ない。』
「なにそれー。」

笑いながらホットのレモンティーのボタンを押した。熱々のそれをカイロ替わりにして右手を温める。それだけでなんだかホッとできるから不思議だ。左手も温めようとスマホと入れ替えながら海岸に目をやった。先程の外車の持ち主なのか、カップルがこちらに背を向けて歩いているのが見える。イブのデート明けだろうか?羨ましい。

『美緒とかナツの頃から演技うまいなって思ってたけどさ。あれはすごいわ。敦賀蓮が嫁に選ぶのも納得。』
「そんなに?蓮と結婚したの嫌がってたじゃん。」
『あれなら許す。』

何様?と笑いながらも映画と舞台マニアで敦賀蓮の大ファンだった彼女がそこまで言うならと興味がわいた。

「京子の舞台みたいかも。次の舞台もう決まってるの?」
『んー。どうだろ?暫くオフに入るみたいだよ。年明けに傷の形成手術?やるみたいだし』
「あれ?復帰前も手術したって聞いたきがするけど?」
『ああいうのって1回じゃ終わらないのかもよ。まあちょっとゆっくりするんじゃない?蓮も帰ってきてることだし。』

そういえば昨日のワイドショーで蓮の帰国を報じていた。妻のことを聞かれて「早く会って抱きしめたい。」なんて堂々いうあたりやっぱり根は外国の人なのだと思ったのだ。

「そうか。今頃夫婦水入らずか。いいなあ。私は今日もバイトだよ。」
『いいじゃない。成東も私も一緒なんだから。』
「それはちょっと違う気がする」

苦笑しながらベットボトルの蓋を開けた。猫舌の自分にはちょうどいい温さだ。

「あっ…」
『何?』

先程のカップルがこちらへと向きを変えていた。手を繋いで歩くその2人は…

「敦賀蓮のそっくりさんと、最上さんのそっくりさんがいる。」

何それ?と大爆笑された。

『蓮のそっくりさんはいいとして、最上さんのそっくりさん?いや、それ本人でしょう?』

確かに元々この近くに住んでいたのだ、ちょっと懐かしくなって彼氏と遊びに来たってなんらおかしくはない。
だけど、手をつなぎ身を寄せ合って歩くその姿は…


「だってさ…わかんないよ」


゛敦賀蓮のそっくりさん”が何か指差しながら耳元に囁いた。魚でも跳ねたのだろうか?指し占めすものを見つけたらしい゛最上さん”が笑う


「私…最上さんのあんな幸せそうな笑顔見たことないから」





(理由・完)






「理由」最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。
キョコ誕としてスタートしたのに2か月以上、終わってみれば敦賀さんの生誕記念日目前という計画性のなさです。一話一話の間が空いた分、設定などなかなか皆さんの頭に入らなかったのではないでしょうか?
実はこのお話、それぞれに理由が明らかになるという試みがあったんです。例えば1話だと「彼女が海に行きたい理由」、2話だと「彼が印をつける理由」…とかですね。途中でそれでがんじがらめになってうまく書けないという自爆ぶりでしたが(笑)

さて、今後は敦賀さん生誕記念日&拙宅の3周年記念日を迎えますね。
書きたいお話はあるんですが…間に合うかな?む…

とりあえずそれが過ぎたら「闇色のお伽話」をちょっと頑張りたいと思います。

では、またお時間あるとき、一息入れるときのお供にご訪問いただけたら嬉しいです。



ちょび
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コメント

Re: タイトルなし

>じ〇〇〇様
コメントありがとうございました。
蓮キョは必ずハピエンと宣言していますが、色々ご心配をおかけして申し訳ありません。拙宅の敦賀さんはキョーコちゃんがいないと弱弱しくて(笑)
じ〇〇〇様の好きなアーティストのファン云々のお話は興味あります。私今まで特定のアーティストを好きになったことがないのですが、好きだからって踏み込んじゃいけない領域があり、ルールを守ってこそ伝えていい想いがある。そのあたりは普通の恋愛と一緒なんでしょうね。
その後の番外編についてはちょっと考えてみたり見なかったり…蛇足になりそうな気配代なので(笑)
度胸も技もないのでいちゃつき描写はたかだが知れていますので限定になるような記事はないと思います。最近は限定記事はパラレルオンリーですし(というより闇色オンリーですねえ)そんなのでもよかったら申請お待ちしています。

2017/02/12 (Sun) 06:43 | ちょび | 編集 | 返信

Re: キョコさんの手際の良さは・・・神バイト(?)

>まじーん様
そうなんです。田中さん(仮)は隠密バイトさんです。
ラブモンスターは事後処理までも手を抜きませんよ(笑)

高園寺さんは舞台で活躍している設定なんですが、キョーコちゃんの参入に噛みつく⇒なんだかんだと言いながらお互い切磋琢磨する⇒部隊の成功につながる。と私の中では出来上がっています。キョーコちゃんをとられた気がするラブミー部員2,3号も時々加わって楽しくやっていくでしょう

本当にそんな笑顔がテレビで見れる日も近いかもしれませんね。でもきっとそんな日が来ても和紗ちゃんは気付かないんでしょう(笑)

闇色頑張りますね~('◇')ゞ

2017/02/11 (Sat) 05:28 | ちょび | 編集 | 返信

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2017/02/06 (Mon) 16:57 | | 編集 | 返信

キョコさんの手際の良さは・・・神バイト(?)

隠密バイトの田中さん(仮)の仕事継続は、すぐにキョコさんを自宅に連れて帰りたいきたかった蓮さんと、急にバイトを辞めることで職場に迷惑をかけたくないと渋ったキョコさんのための、社長の配慮でしょうかね。あとで京子バレした時の印象を悪くしないためもあるでしょうし、その後の職場での噂話などがあれば確認できますものね。ちょこっとだけ残った田中さんお疲れ様でした。(笑)

京子の復帰舞台。色々乗り越えたことで、演技にも凄みが出たのでしょうか。新進気鋭とか演技派とかだけでなく、三十路ぐらいには早くも大女優扱いされてそうな気までしてしまいます。

いつも笑顔でバイトしていたキョコさんの顔を見ていた和紗さんの目撃した「本当に幸せそうな笑顔」がテレビ画面でも見れる日は近いかもしれませんね。

素敵なラストでした!
ありがとうございました!!

「闇色のお伽話」の続きも楽しみにしてます。ヾ(๑╹▽╹)ノ"

2017/02/06 (Mon) 12:59 | まじーん | 編集 | 返信

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