2014_05
02
(Fri)17:00

1歩いっぽ(18)

BWなかなかPCに座れず、座れても夢うつつだったのですが、よそ様のお宅はガラケーで拝見しておりまして…
素敵なお話にブルーな心を救われている日々です。

さて、昨日に引き続いての更新です

2014/5/2初稿、2014/10/7一部修正

■1歩いっぽ(18) ~それは姿を現していく~


キョーコが社長宅の厨房を借りて作ったスィーツ群はあまりに大量で、見かねたマリアが車といつもの執事を手配してくれた。
今日は奏江も千織も一日ドラマの撮影の予定なのだ。

本番中ということで脇からこっそりスタジオをのぞくと、キョーコの訪問を知らなかった社が驚いた顔をしている。

(敦賀さんは…本番中)

カメラが回るその先にはざわめく法学部教室。

彼はいつもの仲間たちと談笑をしながらも、そのうちの一人に知らず知らずのうちに視線を向けている。
初めてといってもいい恋に戸惑い、感情をもてあまし、彼は小さなため息をついた。
それを件の女性に見られているとも知らずに。

恋情の熱と不安に揺れる蓮の瞳が愛華に向けられるのを見ると、演技と知っても胸が小さく疼く。

カットがかかって休憩入り急ににぎやかになった中、キョーコは出演者や監督をはじめとするスタッフに挨拶をして回る。
愛華は初対面のキョーコを歓迎してくれた。

「朝ドラ見てますよ!すっごく素敵なお嬢様です!」

ニコニコと話す様子は同性のキョーコから見てもとてもかわいらしい。

「最上さん、差し入れ?」

穏やかに笑いながら聞いてくる蓮とも挨拶を交わす

「敦賀さん、京子さんとはDMでご一緒されてたんですよね?」

「そう。美緒と嘉月でね」
「あの時は敦賀さん先生の役だったんですよね~そりゃあ今回の学生姿にみんなが驚くはずですよね。」

笑う愛華に蓮も「こっちの方が実年齢に近いのにみんな酷いよね」と微笑み返す。
愛華の無邪気な笑顔を勘ぐってしまいそうで、キョーコは差し入れを配るのを理由に2人に背を向けた。

お菓子を並べていると、キョーコは他の差し入れや飲み物が置かれたテーブルに一つの山を見つけた

(漫画?…『ワイルドスラム』?ドラマの原作は漫画じゃないよね)

「それは経典よ」

奏江がつまらなそうに教えてくれた。

経典?

「愛華さんが信仰している“恭紫狼”教の経典ですよ。布教活動の一環でそこに置いてあるんです」

布教活動はヤンチャ時代があったスタッフ達に支えられ結構順調らしく、監督やカメラさんも“入信”したらしい。

「なんでも、トラッジックマーカーの殺人鬼役の俳優が、まさに生“恭紫狼”だって愛華さん一押しで、この前監督観に行ってましたよ」
「生神様ってやつね」

スタジオの一角で信者の一団と恭紫狼話で盛り上がっている愛華が見えた。
あんなに心配したのに、なんだか実際に見てみると…

「ちゃんといい演技するからいいんだけどね」
「あれは仕事以外のことでは脳みその99%を恭紫狼に使ってますね」

悩んでいたのが馬鹿みたいだ。

なんだかおかしくなってキョーコは笑いながら2人に声をかけた

「モー子さん達の分、別にしてるから食べよう」
「それって俺の分もある?」

気が付くと横に先輩俳優。

「もちろんありますよ。社さんの分も」

ケースを開けて中身を見せると、どれどれと蓮の顔が近づいてきた

「来るなら昨夜教えてくれればよかったのに。驚いた」

蓮のささやき声

「会えて、嬉しい」

ゆっくりと蓮の顔はキョーコの前から遠ざかる。

「俺、このゼリーがいいな」

そんなことをしれっといいながら。

急に顔を真っ赤にさせて口をパクパクし始めた親友を見て、奏江はふと思った

「あんたって、愛華さんに似てるわよね」
「へうっ?」

どこが?

「ああ、言われてみればそうですね。なんか雰囲気が似てますね」
「そうそう、動きが時々なんか…リスっぽいとことか」
「確かに。分類するならげっ歯類ですね」

(げっ歯類?)

-げっ歯類に庇護欲を激しく掻き立てられる兄さん-

キョーコは素早く蓮を見た。
ほんの一瞬。
ほんの一瞬だが蓮はバツの悪そうな顔をのぞかせたのだ。

「…敦賀さん?」
「…」
「つ・る・が・さ・ん?」
「…最上さん、その笑顔怖い」

かまわずキョーコは満面の笑顔で蓮の顔を覗き込む。
それはもうキュラキュラと

「…いや、ほら・・・」

ぼそぼそとつぶやく蓮の言葉は恐ろしく歯切れが悪い。

「あんなこと誓ってすぐに、あんな行動するなんてカッコ悪すぎるというか、なんというか…」
「そうですか~。そういう事だったんですかあ」
「いや、だから、その笑顔怖いよ。」

キョーコはわかった。

蓮は愛華にキョーコを見たのだ。そして思わずカインとしてではなく行動し、愛華を撫でたのだ。

「正直に言ってくださったらよかったのに」

そうすれば、あんなモヤモヤ抱えなくてすんだのに。

「役を忘れるなんて、敦賀さんもまだまだってことですね」

ニヤリ、と言ってやると蓮は「ぐっ」と声にならないうめきを上げた。

キョーコは笑った
似非ではなく本当の笑顔で


いろんなことが見えてくる。

姿を現してくる。

完璧なる天上人と思っていた蓮は1人の男の人で
まだまだ発展途上のところもあって

ちらつく、その蓮と一緒に歩く未来

尚への新しい“復讐”の形

キョーコの中に存在する嫉妬や独占欲

それらはしっかりと輪郭を現し始めている。
そして、きっとそれらはこの居心地のいい先輩後輩の関係を変えていく


「敦賀さん」

付き合いきれないと思ったのか、奏江と千織はすでに飲み物を用意してテーブルに落ち着いている。

「とりあえず、あっち行きましょうか」

キョーコは足を踏み出した。



(19へ続きます)






墓場まで持っていくつもりだった秘密ばらしちゃった。
ごめんよ兄さん。

ちょっとまた一段落ってことで、お馬鹿短編で一息つこうと思います。
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6. Re:あははは( ´∀`)

>へなへなっちさん
この後ヘコヘコ誤って、そして付き合う前から尻に敷かれるに違いありません。
コメありがとうございます!

2014/05/03 (Sat) 00:53 | ちょび #79D/WHSg | URL | 編集 | 返信

5. Re:墓場まで持っていくつもりだった秘密

>seiさん
墓場まで持っていくつもりの秘密でも、キョーコちゃんのことも墓場まで持っていくつもりでしょうからいずれバレるってことで( ̄▽+ ̄*)
蓮キョへの愛だけは溢れるほどあるんですが、この2人はなかなかくっつきませんねえ(笑)

2014/05/03 (Sat) 00:51 | ちょび #79D/WHSg | URL | 編集 | 返信

4. Re:げっ歯類~

>mokaさん
いいバレ方でしたか?有難うございます。
きっとこの後「ごめん」って誤って許してもらうのです。敦賀さん秘密多いから謝るネタ多いですよね~

2014/05/03 (Sat) 00:48 | ちょび #79D/WHSg | URL | 編集 | 返信

3. あははは( ´∀`)

ここでゲッ歯類が出てくるなんて!(≧∇≦) 可愛いですね♪ ホントに年相応。

2014/05/02 (Fri) 22:43 | へなへなっち #79D/WHSg | URL | 編集 | 返信

2. 墓場まで持っていくつもりだった秘密

バレたほうが、後々の為ですよね。( ´艸`)

蓮さんの恋愛成就には、ラブミー部員と書き手の愛ある後押しがかかせません。о(ж>▽<)y ☆

2014/05/02 (Fri) 17:28 | sei #79D/WHSg | URL | 編集 | 返信

1. げっ歯類~

こんにちは!
モー子さんがいろいろといいツッコミですね!
げっ歯類、、バレたか!
でも、このバレ方はいいですね~
一歩いっぽ,本当に近くなっていくのが楽しみです。

2014/05/02 (Fri) 17:21 | moka #79D/WHSg | URL | 編集 | 返信

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