2017_05
16
(Tue)11:55

面倒な奴ら(前編)

本当にご無沙汰です!
そしてまたヤッシー目線です。
潜伏中に光さん、オリキャラ…と色々書いては途中放棄を繰り返しておりまして、気が付いたら社さんに戻ってました(笑)

2017/5/16



「ちゃんと挨拶するんだぞ。演技素人なんだから足引っ張るのは確実なんだからな。」
「分かってますって。」
「最初が肝心だぞ。」

社が聞こえてくる声に目をやると、この度ドラマに初出演する現在売れっ子の芸人とそのマネージャー

「お、おはようございます!」
「おはようございます。」
「もう皆さんお揃いですか?」
「いえ、まだですよ。」
「もしかして主演の敦賀さんの…?」
「ええ、マネージャーの社です。」
「どうかよろしくお願いします。」
「よろしくお願いしま…あ、ってことは俺主演俳優さんをお待たせして…。」
「いえいえ、こちらが少し早く着いただけですよ。」

相当に緊張しているのだろう、ガチガチの芸人に励ましの声をかけながらマネージャーは会議室に入っていった。手元の時計を確認するとそろそろ予定の時刻だ。社も手帳を閉じて後に続いた。


*
*

「すいません。さっきはお騒がせして。」

挨拶が終わり、読み合わせが始まったタイミングで部屋を出た社に声がかかる。先程のマネージャーだ。

「最近急に売れたもので、全然場慣れ出来てなくてこんな場にくるとオドオドしちまうんですよ。」
「初めてのドラマですから仕方ありませんよ。」
「いえもう本当に小心者で…普段からコミニケーション苦手なんですよ。」
「そうなんですか?テレビで拝見する限り全然そうとは思えませんけど。」
「いえもうカメラや舞台の上だけです。緊張するとろくに挨拶もできなくて。」

社に断ると、マネージャーは隣に座り、でもね、と続ける。

「今は一発芸ばかり注目されてますけど、漫才もなかなかのもんだし、コントは若手の中でもピカ一だと思ってます。」

ずっと一緒にやってきた相方が体調を崩して静養中なのだという。

「それは知りませんでした。」
「まさかピンで活動しているうちにこんな形で売れるとは思ってなかったんですけどね。相方にも日の目見せてやりたくてあいつも必死でして…。コントが本当のドラマで通用するなんて思っちゃいませんけど、少しでも今の芸以外のアイツを見て欲しくって。」
「大事にされてるんですね。」

社の言葉にもう40も後半に入っているであろうマネージャーは少し照れたように笑った。

「本当に面倒臭いやつなんですよ。でもね。あいつなりに一生懸命で…まあ面倒な分可愛いといいますか…。」

そう告げる男の目はどこまでも優しかった




■面倒な奴ら(前編)




(あ、キョーコちゃん)


現在、蓮は海外でのモデル活動の為5日程日本を空けている、社は今回は同行せず今後の仕事の下準備をこなしていた。B.Jを演じていた間控えめにしていた活動を本格化させた今は何かと新しいオファーが舞い込んでマネージメント業も大忙しだ。

そんな中訪れたテレビ局で担当俳優の意中の少女を見つけた。
最近売れ出して忙しくなってきたキョーコの顔には僅かだが疲れが見える。いつも元気なだけに少々気になってみていると、鞄の中をゴソゴソと探る仕草をした後あまり人気のないほうに歩いていく。なんとなく気になり、まだ打合せ時間まで余裕があった社は後を追った。

キョーコは人気のない廊下で壁を背にして携帯を見ていた。
頬をほんのりと染め、口元が綻んだその様はまるで恋する乙女だが、何しろラブミー部員1号だ。彼女の琴線に触れるメルヘン写真でも見ているか、琴南奏江関連の可能性が高い。普段の奏江の塩対応から察するにメールは素っ気ないだろうから、写真を見てパワーチャージ中といったところか。

やれやれと苦笑したのち、把握しているキョーコのスケジュールを頭の中で確認する。自分が打合せの後少し時間を潰せば、次の仕事先まで送っていけるはずだ。いくばくかは楽をさせてやれるだろう。

「キョーコちゃん。」

人気がないとはいえ、局の廊下だ。誰も通らないわけではないのに、かけられた声にキョーコは飛び上がらんほどに驚いた。その拍子に取り落とした携帯は落とし主の靴でジャンプしたのちに社の足元まで転がってきた。

「や、や、や、社さん!!!」
「ごめん。びっくりした?。そんなに驚かせるつもりはなかったんだけど。」
「あ、それ、私が…っ!!!。」

喋りながら携帯に手を伸ばすとキョーコから悲鳴じみた声が上がる。なにをそんなに焦っているのだろうと開いたままの携帯に視線を向けて、そこに表示された写真が琴南奏江のお宝写真ではなく、自分の担当俳優であることに全思考が停止した。

「す、すいません!」

普段から礼儀正しい彼女らしからぬひったくるような動きで携帯を取り戻したキョーコの顔色は真っ青だ。

「キョーコちゃん、それ…。」
「違います!すいません!ごめんなさい!違うんです!!!!。」

叫ぶように告げながら頭を下げ、逃げるように走り去ったのちに、一人残された社の頭脳はようやく活動を始めた。

(蓮の写真だったよな?)

キョーコから贈られた羊枕に頭をあずけて眠っている担当俳優の姿、以前雑誌で愛用していることを公言したことがあったが、あんな写真を撮らせてはいない。蓮が己の好意をアピールしたくて写メを送る…のもメルアドを未だにゲットできずに、SMSでやり取りしているのを社は知っている。

(ってことはキョーコちゃんが撮った写真?え?なんで?)

しかもコッソリみていた。あんな表情で。

(それって…もしかして…いや…だって…)

実に簡単な方程式だが、何しろ相手はラブミー部員だ。流石の社もその答えを導き出すのに時間がかかり、気が付けば打合せ時間が迫っていた。急ぎ足で約束場所に向かいながら頭の中を整理する。

事は重大だ。何しろあんな顔して実は恋愛音痴な担当俳優の恋の成就がかかっているのだから。
キョーコのあの顔色からして、社には知られたくなかったのだろうが、そうは問屋が卸さない。

(悪いけど逃がさないよ。キョーコちゃん)

忙しいとはいえ、タレント兼女優とは拘束される時間が違う。その上担当俳優が不在なのが功を奏し身軽に動ける。おまけに相手のスケジュールを把握済みで、車という移動手段だって手に入れている。キョーコを捕まえるのはそれほど難しい事ではなかった。
無論、話の途中で逃げられることもしばしばだったが、そこで簡単に諦めるほど馬鹿ではない。

何度かそれを繰り返すうちに、キョーコも観念したのだろう。自分の想いをしぶしぶ認めたうえで蓮には絶対言わないでくれと懇願してきた。

「お願いします!敦賀さんに軽蔑されたくないんですっ。」
「え?軽蔑?なんで?」
「恋愛なんて毒感情は2度と持たないって宣言しておきながら、愚かにもまた堕ちて、おまけにその対象が自分だなんて知ったら呆れるを通り越して軽蔑されるに決まってます!」
「いや、軽蔑なんて…」

どこをどう見たってするはずはない。むしろ国賓級の大歓迎だ。

「軽蔑されて、見捨てられるなんて絶対嫌です!この想いは地獄まで持って行きますから。」
「いや…だから…。」

ここで言葉にするのを躊躇う。蓮の恋心をここで自分が明らかにするのは違うだろう。

時にはこちらが呆れるほどの姑息な手段で虫退治をやったりするものの、ささやかなな幸せに緩む顔を社はずっと見てきた。なかなか己の恋心を認めなかったが、ここ最近は少しでも距離を縮めるべく努力をしているのも知っている。
大切にしてきたその想いは本人の口から告げるべきだ。そしてキョーコの想いが自分と同じであることを知る歓喜の瞬間も、人を介してなんかじゃなく、2人会いまみえている時に迎えさせてやりたい。

社は遠回しの説得を試みた。

今のキョーコは、己の恋心を少しでも垣間見せたら呆れられ見捨てられるという固定観念に囚われ、感情を鋼鉄の鎧で覆っている。これでは蓮が告白したとしてもその意味をまっすぐ受け止められるとは思えないし、恋愛初心者のあの男にそんな彼女の気持ちを読み取るなんて不可能だ。キョーコがいまだに恋愛を拒絶していると思っているあのニブチン男は、自分の想いを吐露してキョーコに距離を置かれるのが怖くてなかなか分かりやすい言葉では口説けてないのだから。

とりあえず社からキョーコの秘密を蓮に暴露するなんてことはないのだと安心させ、できるなら鎧が少しでも緩んだ状態で蓮と会わせてやりたい。

地道な努力の末、ようやく2人きりで会うことをキョーコが了承した時には蓮の帰国は翌日に迫っていた。


(後編につづく)
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コメント

Re: こんばんは

> じゅんこさま
すっかり更新止まっていて申し訳ありませんでした。
本当に社さんは、本職の他にこんなに働いて…頭が下がります。
その社さんの働きに敦賀さんは応えることが出来るのか?後編乞うご期待!です(笑)

2017/05/17 (Wed) 05:05 | ちょび | 編集 | 返信

こんばんは

更新ありがとうございました(^3^)/
キョーコちゃんそんな必死になって拒否しなくてもねぇ…(((^^;)💦
社さんが最近神様に見えてきましたよ(笑)
蓮さんの為に動き、キョーコちゃんの為に動き…はぁ素敵💕蓮さん!ここはびしっとがばっと男らしく行くのですよ!!
そして二人の幸せも社さんの幸せも来ることを祈ります(笑)

2017/05/16 (Tue) 23:04 | じゅんこ | 編集 | 返信

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