2017_06
20
(Tue)11:55

若葉な恋人(前編)

お久しぶりでーす。
ちょっとグルグルしちゃってしまいましたが、とりあえず


2017/6/20







「蓮、やっぱり待つってさ。」
「そうですか。」

控室に入ってきた社の言葉に、スマホを手にしたまま頷いた。今度のCMのコンセプトからしたら青空は不可欠だ。当然と言えば当然だろう。

「せっかく時間できたことだし、身体ほぐしておきますよ。」
「そだな。いくらお前の運動神経がよくてもフットサル経験殆どないんだし、怪我だけはしてくれるなよ。」
「大丈夫です。結構コーチのところで練習できましたから。」
「お前時間空いたらこまめにいってたもんな。身体動かしている方が色々発散できていいか。」
「なんですか、色々って。」

とぼけてみるが、何もかも事情は知られているのだ、社はニタニタと笑いながら言ってくる。

「そりゃあなあ~やっと、やっと、やっとお付き合いにこじつけた愛しのキョーコちゃんと会えてないんだもん。ストレスたまってるだろ?」
「やっとを連発しないでください。」
「やっとだろ。もう本当にようやくここまで来たのになあ。」
「…仕方ありませんよ。」

付き合って4か月になる恋人であるキョーコにはここ1か月会えていない。
彼女は現在スクープを連発している週刊誌にロックオンされているのだ。




■若葉な恋人(前編)





ことの起こりは京子が共演中である、某国民的アイドルグループの一員、越谷新が女性と2人マンションの部屋から出る写真が週刊誌に持ち込まれたことだ。
記者が裏付けをとったところ、明確な証拠は出なかったものの越谷には確かに女性の影があった。デビューして20年近く、俳優としての評価も高い彼は30代も半ばとなった現在までこれといったスキャンダルは存在しなかったため、編集部は大スクープに色めき立ったという。

共演者のスキャンダルなんてよくあることだが、問題は件の写真に写る女性が〝京子″ではないかと疑われたことだ。

事務所は全面否定した。
当然だ。
まだ公表はしていないものの、看板俳優が彼女を溺愛していることはLMEの一部には周知の事実なのだ。あれだけガッチガチに絡めとられていては他の男が入り込む余地はないだろうと、取材を受けた椹など一瞬遠い目をしたという。

それに実際のところ、越谷は件の女性が妊娠したことをきっかけに籍を入れていた。所謂出来ちゃった婚だが、彼にしてみたらその女性との付き合いも10年近く、長い間自分を支えてくれ三十路に入った彼女にけじめをつけたいと思っていたのでちょうどいい機会だったらしい。
だから会見でもして事の真相を明らかにしてくれれば、それで終わりだと思ったのだ。
そうなれば京子似であってキョーコではない。共演者として祝いコメント位は求められるだろうがそんなのどうってことない。

だが、そう簡単にはいかなかった。
妊婦である妻の悪阻が重く、ストレスを避けるためにも会見を少し待って欲しいと事務所を通じて申し入れがあったのだ。

そうなると記者たちは変わらずキョーコに張り付くことになるが、越谷の所属事務所は多数の売れっ子アイドルを抱え業界での影響力も強い。貸しを作っておくには越したことはないし、何より赤ん坊の命に関わることかもしれないことだ。それに5が月に入った検診後までと期限も設けての申し入れにLMEとキョーコは受け入れる方針で一致した。

その結果が、蓮とキョーコの接触禁止令である。
一時とはいえ越谷との二股疑惑などで御免だし、蓮は現在国営放送のドラマの主役を貼っている。後ろ暗いことはないとはいえ、スキャンダルは出ないに限る。
事務所での逢瀬は許可されているのだが、こういう時に限ってすれ違いだ。


「キョーコちゃんもロケ多いし、お前も海外での仕事入っててスケジュール詰まってるからなあ。電話ぐらい俺がいても気にしなくていいんだぞ?」
「社さんに遠慮したんじゃなく、キョーコの方が来客ななにかで…」

蓮のスマホがメールの着信を知らせた。

「あ、何か連絡事項があっただけっぽいですね。」

スマホを操作しながら己の顔が緩むのを感じた。

「蓮!甘く崩れすぎだ!。」
「いや…だって髪少し切ったっていうから見たいと言ったら写メくれたんですよ。」

スマホの画面にはマネージャーに撮ってもらったのだろうか、少し照れたような様子でポーズを決めるキョーコの笑顔。

「そんなに可愛いのか?どれ、みせてみろ。」
「嫌です。減りますから。」
「お前、キョーコちゃんのこととなると本当に心狭いな」

結構しつこいマネージャーの手を振り切って、再び電話をかける。

「あ、キョーコ?見たよ。…うん。可愛い。…え?違うよ。子供っぽくなんてない。小悪魔度増したからあんな笑顔他の男の前ではしないで。…うん……髪、触りたいな。」

ぎゃ、と電話の向こうのキョーコが叫ぶのと、社がコーヒーを吹くのが同時だった。

そうこうしているうちにキョーコにタイムリミットがきて通話を終わらせる。

「社さん、コーヒー吹くのやめてくださいよ。ほら、飛んでますよ。」
「お前が明け透けな物言いするからだ。真昼間から色気垂れ流しやがって。」
「俺に遠慮せずに電話しろとか言っといて…。」
「節度だ。節度。絶対キョーコちゃん顔真っ赤になっちゃってるぞ。仕事前に京子の顔剥がしてんじゃないよ。」

まあ確かに先程の電話の様子からして真っ赤になっていることは想像できる。キョーコの担当になった姉御肌のベテランマネージャー狭山に叱られるかもしれない。
だが、すれ違うこともできずに1か月我慢しているのだ。これくらいは許して欲しい。

「そういや、キョーコちゃん、電話でなんか言ってたか?」
「記者はちょっと鬱陶しいけど、撮影は順調らしいですよ。越谷さんも申し訳なく思うのか、気を使ってくれてるらしいです。」
「まあ、それが却って疑惑を深めてるのかもしれないけどな。」
「それはそうかもしれませんね。でも、キョーコも現場楽しいって言ってましたし、あと少しの辛抱です。」
「そっか、キョーコちゃん、元気だったか。」

そういって頷いた社の表情に何か含むものを感じた。

「どうかしました?」
「え…?いやあ…椹さんからキョーコちゃんがちょっと元気ないって聞いたから。」

がばり、敦賀蓮としてはありえない表情で社の腕をつかむ

「それ、本当ですか?」
「あ、ああ。本当だよ。昨日俺だけ事務所寄った時に椹さんが教えてくれたんだ。狭山さんも心配してるって…。」
「それってやっぱり…」
「そうなんだよ。やっぱりお「現場で何かあったんですかね?」……は?。」
「越谷さんの件が現場で何かしら伝わってやっかみ買ってるとか。噂を聞きつけたファンが悪質な嫌がらせしてるとか。」

電話では演技に気付くことが出来ないのはかつて軽井沢の一件で痛感していたというのに、キョーコの〝大丈夫″に安心するなんて。辛い境遇を耐えているのかもしれない。以前と違ってマネージャーがついているけれど、恋人である自分が支えなくてどうするのだ。

「どんなに現場で辛くても、仕事している俺に心配なんてかけられないって無理して、あのプロ根性で乗り切ろうとしてるに決まってます。…なんです?その顔?」

社の残念なものを見る視線が突き刺さる。

「そっち方向に考えるんだ…。まあ…報われない時間長かったもんな。妙な学習能力も発達するわな。。」
「何をブツブツ言ってるんですか。そんなことよりキョーコとちょっとでいいんです。会える時間できませんかね?俺に出来る事なんでもしますし、食事時間とか削っても…。」
「これ以上食事時間削ってどうすんだ!霞でも食って生きていく気か!」

盛大に突っ込みを入れた後、ま、いっかと社は呟いた。

「結果としてとる行動は一緒なんだから。」
「?なんですか?」
「いや、別に…狭山さんとも相談して最大限の努力してみるけどさ。すぐって訳にはいかないぞ。」
「分かってます。お願いします。」

手帳を開いた社がスマホに取り出す。早速取り掛かってくれるらしい。仕事の早いマネージャーに蓮は頭を下げた。



このところのスケジュールはキョーコも連も出ずっぱりのものが多く、事務所で逢瀬を果たすのは少し先…と思っていたのにチャンスはその日のうちにやってきた。

天気が蓮に味方し、CM撮影が予定より大幅に早く終わったのだ。
キョーコの方はMCである大御所芸人が機体トラブルで大幅に入りが遅れているらしく局の控室で待機中、越谷が別の仕事で九州に飛んでいるのと何か別の大型スクープがあるらしく、こちらの方のマークは今現在外れているらしい。


テレジャパの廊下を優雅にかつコンパスを最大限に行かしたスピードで歩く。

「30分。30分だぞ。」
「分かってます。」
「事務所じゃないんだからな。誰が聞いてるか分からないんだ。、声とか気を付けろよ。」
「…俺が事務所でどんな声を聞かせてるって言うんですか。」
「狭山さんがノックしない限り絶対に開けるなよ?」
「分かってますよ。」

そうしているうちにキョーコのいる控室の前でスマホを弄る狭山の姿が見えた。

「あら、敦賀君、社君、おはよう。」
「おはようございます。」
「狭山さん、おはようございます。相変わらずお忙しそうですね。」
「んー、ちょっと今のバラエティの上り時間が見えなくてね。インタビュー1個調整してたとこ。」
「大変ですね。」
「大変なのは京子ちゃんよ。今日もまた遅くなっちゃう。」
「またってことは昨日も?」

他愛ない会話を繰り広げながら2人の敏腕マネージャーは周囲に目を光らせている。そうしているうちに通路に人が途切れる。

「社君、知ってる?また社長がお祭り企画考えてるらしいわよ。」

会話を続けながら、狭山が音もたてずにドアを開け、蓮に目で促した。軽く頭を下げて感謝を示し、スルリと入り込んだ。



(後編に続く)
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コメント

Re: 若葉最高!

>harunatsu7711様
コメントありがとうございます。
ライバル(笑)越谷さんの設定を細かくし過ぎて話が進まないという悪循環に陥っておりました(越谷さん名前しか出てこないのに…)

>マネさん二人の有能ぶりがナイスです。
もし蓮キョが成立したら社さんの助けは不可欠だと思うんです。優秀なマネとして、時にはお兄ちゃんとして2人を支えてくれると信じてます。色々苦労多そうですけどね(笑)

2017/06/30 (Fri) 05:23 | ちょび | 編集 | 返信

若葉最高!

こんばんは。

初々しい若葉、グッドです。
ライバルの出現(違うけど)、、、
二人の愛はもっと燃えそうです。若葉が炭になりそうです。
ちょっとの会瀬、待ち遠しさが伝わり、マネさん二人の有能ぶりがナイスです。

更新楽しみにしてます

2017/06/20 (Tue) 22:20 | harunatsu7711 | 編集 | 返信

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