2017_07
26
(Wed)11:45

ただ1日だけ-1(記憶喪失の為の習作7)

また書いちゃったよ。記憶喪失…

そんなに長くない予定です。

相変わらずの医療知識皆無状態での見切り発車ですが、おおらかな気持ちで読んでくださる方はどうぞ―。

今回タイトル物凄く納得いってないので途中で変えるかもしれません。
なんだろう…違和感ありすぎてムズムズします。

2017/7/26、2017/8/15題名変更






それは本当に偶然だった。

TBMでラブミーつなぎではなく随分ラフなジャージ姿のキョーコを見かけたのだ。
バラエティか何かの収録の合間だろうか、手にした袋には缶ジュースらしきものがパンパンに詰め込まれている。

ちらり、と隣を歩く社に視線を送る。今晩は本当に久しぶりに彼女に夕飯をお願いしているが、話が出来るチャンスは逃したくないと思うのが恋する男心というものだ。予定より随分早く局入りできたお陰で立ち話をする程度の余裕はあるはずだ。
案の定、頼れるマネージャーは小さく頷いてくれた。

「俺はちょっと挨拶したい所あるから」
「分かりました。」

社と別れるとそうとは見えない程度に足を速めた。階段の方向に消えたのは確認済みなので、問題は上下どちらに向かったかだ。



■ただ1日だけ-1(記憶喪失の為の習作7)





(昨日の電話ではこっちで仕事なんて言ってなかったのにな…)

そうすれば昼食の時間を削ってでももっと早く局入りしたのに、とキョーコが聞いたらお説教間違いなしな考えが頭をよぎる。その時上階から僅かに聞こえる声を耳が拾った。

「……かな」

(最上さんじゃないな)

声は若干高いものの男で間違いない。敦賀蓮が階段でウロウロと人探しをしていたと思われる訳にはいかない。下に向かうしかないかと思うより早く別の声が聞こえた。

「……か?」

再び拾った声はキョーコのものだ。共演者と一緒なのだろうか
なんとなく嫌な予感がして、足音を忍ばせて階段を昇る。


「あ、ごめん。聞き取りにくかったよね。」
「いえ、私こそ少しぼーとしてたみたいですいません。なんですか?」
「いやいや、俺がチキンでちゃんと言わなかったから」

モゴモゴと話す声には聞き覚えがあった。

「チキン?光さんが?」

そうだ。
同じ事務所のブリッジロックの石橋光。タレント部門ではかなりの稼ぎ頭のグループのリーダーで、蓮もバラエティで何度か共演したことがあるし、確か冠番組も持っていた筈だ。
今日が録りの番組かCMで共演してるのか?だが、彼女の丁寧ながらもリラックスした話し方から言って昨日今日知り合ったといった感じではない。無論同じ事務所なのだから以前から知っていてもおかしくはないのだが、最上キョーコと言う人は事務所で顔を合わしたことがある程度の、しかも先輩にあんな馴染んだ雰囲気で話さない。

(俺の知る限り今まで共演したことはない筈だけどな)

キョーコが新しくレギュラーを持ったとは本人からも社からも報告は受けていない。
だとしたら事務所で前々から交流を持っていたということだ。

いつの間に…と胸の奥で何かがジリジリと焦げる。
付き合ってもいないのに何を、と理性的な部分では分かっているのに、そのポジションを誰とも共有したくない

少し足を速めた。
同じ事務所なら少々変に思われようとなんとでもなる。

だが、光が意を決する方が早かった。

「俺さ、ずっと前から京子ちゃんのこと好きなんだ。」


嫌な予感は的中したらしい。


「へ…?」
「あ!分かってるから京子ちゃんが全然気付いてないことは。これをきっかけにちょっと意識してもらって検討してもらえたらなあと思って!」
「あ、あの…」
「答え急がないし!ほんとに、ちょっと考えて欲しいから!お願い!」
「あ、光さん」
「ごめんね。収録前に。仕事中はちゃんとするから」
「あ、あの。」
「ちょっとごめん!一杯一杯!先いくね!」
「え、ちょ…」
「これは俺が持っていくから!」

ガシャンと扉の音がして光の気配はしなくなった。

静寂の中、蓮は出ていくタイミングを見失う。

今出ていけば、自分はきっと問い詰めてしまう。

ラブミー部の彼女のことだ。きっと興味は示さないだろう。最近蓮が分かりやすく口説いても毎度毎度スルーする程なのだから。そんな彼女の心を時間がかかってでも解きほぐそうと決めているが、それでも他の男からのアプローチなど聞けば焦りが沸く。問い詰めて早く断って来いと急かしてキョーコを怯えさせるに違いないのだ。

「検討…。」

蓮が小さく息を吐くのと、キョーコがポツリと呟くのは同時だった。
困惑したような色がその声には混じっている。

(そりゃ、困るよな。事務所の先輩ともなると猶更)

今日の夕食の席ででもそれとなく話を持って行ってアドバイスする形に出来ないだろうかと頭を巡らせる。
だが、キョーコの次に続く言葉は蓮の予想に反した物だった。

「…してみようかな。」

(え?)

「…きっと、これからそういうお仕事も増えていくだろうし…せっかく言ってくださってるわけだし…。」

その後の言葉は地獄までがどうとか、何かが祈れないとか断片的で聞き取れなかったが、蓮にとってはもはやどうでもよかった。

(検討…する?)

泥中の蓮で報われない恋に身を焦がす役を演じきって以降、恋愛が主軸のドラマのオファーが増えて困惑していることは、社から聞いて知っていた。その相談にも今夜は乗るつもりでいたのだ。

(演技の為…だから…検討する?)

過去の恋愛に傷つき頑なになっているキョーコの心を少しずつ解きほぐそうと思って、少しずつ距離を詰めてきた。
端からみればじれったい事ないことこの上ないやり方だろうとも、傍にいる時に見せるキョーコの安心した様子や笑顔が増えていくことが何よりだと思ってきた。

確かに演技は自分達にとって何より譲れない核だ。

だが、そのためには誰だっていいのか?
あんな少々親しいだけの男の差し出した手を取れるのか?

きつくきつく拳を握る

かつて自分を覆っていた闇とは違う、だが、もっと禍々しい種類の感情が渦を巻いているのが分かる。

分かってる。
少しずつ…なんていいながら自分が初めてともいえるこの恋に臆病になって、はっきりとした告白が出来ずに今まできた。
それでも傍にいたくて、いい先輩面していたのは自分だ。

結局石橋光のほうが己より勇ましかった、ただそれだけだ。

だけど…

頭の中で声がする


仕事のため?なら、それなら


別に自分だってかまわないはずだ。



(2に続く)


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コメント

Re: 続き

>harunatsu7711様
すっかりお返事遅くなりました。
そういえばまだ記憶喪失していませんねえ
自分の中では先のストーリーが当然のことながらわかっているので、ちょっと驚いてしまいました(笑)

ちょっと遅くなりそうですが続きは必ず!

2017/08/09 (Wed) 06:22 | ちょび | 編集 | 返信

続き

こんにちは。

記憶喪失になるのは、キョーコさんか、蓮さんか。はたまた社さんか!?
続き、楽しみにしてます。。

2017/07/26 (Wed) 12:51 | harunatsu7711 | 編集 | 返信

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