2017_09
28
(Thu)12:42

ただ1日だけ-4(記憶喪失の為の習作7)

また公開設定するの忘れてたー。そればっかり!
そういやアメプロさんの告知も忘れてたー!!!


20179/28




エントランスからキョーコが出てくるのを確認して車を寄せた。
彼女もすぐに蓮の車を確認したようで、駆け寄ってくると助手席に滑るように乗り込む。

「すいません。迎えに来て頂いて。」
「当然だろ。どうだった?」
「あ、はい。念の為CTも取って下さいましたけど、異常なしです。」
「そっか。よかった。」

はーっと思わず安堵の息が漏れた。

「敦賀さん心配しすぎですよ。」
「心配するよ。あの時は頭は打ってなかったけど、もしかしたら俺の知らない日中何かあったかもしれないじゃないか。」
「ストレスとかも原因の一つらしいですよ。私今度のドラマのことで結構ウジウジしてましたから」
「そうかもしれないけど…。何が原因かもわからないのに、あんなに揺さぶったりして…」
「え…揺さ?」
「そもそも初めてなのにもっと優しくすべきだったんだ。なのにキョーコがよすぎるからって我を忘れるなんて年上の男として」

キョーコが声にならない悲鳴を上げた。

「な、なにを言ってるんですか!本当に大丈夫ですから!」
「いやでも…やっぱり俺も先生に状況を説明して話を聞くべきだったな。今からでも」
「ダメですって、敦賀さんが私の診察に付き添ったから大騒ぎになるからって言ったじゃないですか。本当に大丈夫です。頭痛も眩暈も吐き気もしませんし、CTまでやったんですよ。」
「でも」
「ほんとーにダメです!」

子犬顔もここでは通用しなかった。

「ちょっとでもいつもと違うことあったら言いますから。」
「本当に?」
「約束しますから、早く車出してください。こんな高級車が路駐してちゃ目立っちゃいます!」

まだ病院には未練があったが仕方なくウィンカーを出した。

「もう11時半か…。お腹すいた?」
「ちょっとすいてますけど、敦賀さん2時からお仕事でしたよね。どこですか?」
「ああ、あれね。天気が思わしくないから明日になったんだ。代わりに取材を3時に入れたって社さんから連絡がきたよ。」
「そうなんですか。じゃあ、まだちょっと余裕ありますね。」
「うん。だから何か簡単につまめるもの買ってマンションで少し休もう。あまり寝てないし、診察受けて疲れただろ。」

クマはメイクで上手に誤魔化してあるが、やはり疲労は隠せていない。

「取材は事務所で受けるんだ。だから少し早めに行って社長と社さんに俺たちのこと報告しよう。」
「え?」
「俺は将来的なことも含めてキョーコの傍にいたい。それには2人の協力は不可欠だから…いい?」

キョーコは驚いたように蓮を見つめたが、こくんと頷いてくれた。



■ただ1日だけ-4(記憶喪失の為の習作7)






茹でてくれた蕎麦を食べ、片付け位自分がやるからとベットで休むようにいって蓮はキッチンに立った。尤も片付けといっても、手際のいいキョーコが料理中にすましているものも多く、それはあっけなく終わった。

(さて、どうするかな?)

事務所での報告を思うと緊張して眠気はやってきそうにない。社はともかくあの社長と顔を合わせて何か気付かないはずがないが、避けたらもっと不審に思われるだろう。

明日からの台本でも読もうかとリビングに戻ると、キョーコがソファーで微睡んでいた。足早に近づくと後に残らない程度のデコピンをお見舞いする。

「こら、寝るならベットで横にならないと。」
「う…ちょっとウトウトしていただけです。ちょっと明日のバラエティの資料見ときたいんです。」
「ああ、番宣で出るやつ?」
「クイズコーナーがあるんですよ。」
「あの共演者のこと聞かれるやつか。」
「そうなんです。あまりに知らないのも失礼なので、椹さんが資料作ってくれて。」

他愛のないやりとりは昨日までの先輩後輩だった2人のそれだ。
キョーコにしてみたらその方が居心地がよいのだろう。

隣に腰かけると、所謂大御所と言われる俳優の資料を見せていくつか質問をしてきた。蓮も何度か共演経験があったのでそのころのエピソードも交えて教えているうちに、明るい茶髪をのせた頭はゆらゆらと船を漕ぎ出した。

「ほら、やっぱりベットで…。」

起こそうと手を伸ばすより先にキョーコの身体は蓮の肩に寄り掛かってきた。同時に手から資料が滑り落ちていく。
よっぽど疲れていたのだろう。すぐに規則正しい寝息を立て始めたキョーコに苦笑する。

(相変わらず、無防備…だよな)

横にいるのは昨夜彼女の身体を散々貪りつくした男だというのに。

寝室に連れて行こうかどうしようか迷っていると痩躯はまるで猫のように蓮の肩に顔を摺り寄せた。

「…る…がさん。」

小さく漏れる声に心が震える。
この甘い甘い幻想にこのままずっと浸っていたい。その願望がどんどんと膨らんでいく。

なんとでも繋ぎとめたくて嘘で絡めて抱いたくせに、今朝穏やかに蓮の腕の中で眠る姿を確認すれば幸福で幸福で、その反面恐ろしくなった。キョーコを失うことが

記憶を失うということはやはり何かしらの脳へのダメージがあったのかもしれない。いくらそれ以外の症状がなかったとはいえ、安静にしておくところを最後は我を忘れるような抱き方をした。不安になってスマホで情報を得てみようとして、余計不安が増して居ても立っても居られず朝食もそこそこに病院に放り込んだのだ。

(よかった…異常がなくて)

彼女の身体を心配する一方で、この幸せが少しでも長く続くことを、記憶が戻らないことを願っている。


(本当に勝手だよな…)

記憶が戻ればキョーコは自分を軽蔑し憎むだろう。まだ憎悪の対象としてくれればいいが、存在そのものを抹殺されるかもしれない。
そして、そんな状況になってさえもキョーコを手放すことができないだろう。


横で眠るキョーコが何ならまたムニャムニャと呟いて、さらに蓮にすり寄った。よほどいい夢でも見てるのか、口元が綻んでいる。

そんな彼女の肩を抱いてさらに己に引き寄せると、頭に己の顔を摺り寄せた。

細く脆い綱を渡るような、そして後ろめたいことこの上ない幸せ。
だが、他の誰からも得ることのできないそれをせめて今だけは堪能したかった。

鼻腔一杯に広がったキョーコの香りに、次第に瞼が重くなり、蓮は空いている手でアラームの設定を素早く済ますと微睡みに身を任せた。


*
*

「しっかしまあ、別の男に告白されてるの見てようやく腰を上げるなんてお前もとことんヘタレだよな。」
「なんとでも言ってください。」

キョーコのことをラブミー部のラスボスと評していたローリィのことだから、交際に是と頷いた理由を根掘り葉掘り問いただすに違いないと身構えていた蓮だったが、拍子抜けするほどにすんなりと納得された。
キョーコが皆に心配をかけたくないからと記憶喪失のことは伏せているせいかとも思ったが、それにしても恋愛断固拒否だった彼女の心情の変化に絶対興味を持つはずなのに。

「まあ、しっかし、片思い中はとことんグズグズしていやがったくせに、付き合いだした途端に手を出すのはえらい早いじゃねえか。」

ど、どうして!とキョーコが真っ赤になって呟いているが、そこはばれても痛くもかゆくもないので、正直に答えた。

「一刻も早く身も心も俺のモノにしたかったんです。」
「余裕の欠片もねえな…。」
「そうだ!蓮!そこはお前が年上としてもっと余裕をもってあたるべきだぞ!キョーコちゃんだって女の子として色々思い描くような男女交際がだな。」
「ロマンチックな夜だってこれからいくらでも演出しますよ。ずっと一緒なんですから。」
「うわ、付き合って早々ずっととか言ってる。キョーコちゃん、重くない?。」
「あ、いや…それは…。」

キョーコは返答に困っている様子で眉を下げる。社の方も別に返事は期待していないのだろう。それにしてもよかった、本当によかったと目頭を押さえた。

「社、これからがお前の出番だぞ。しっかり2人のマネジメント頼む。」
「勿論です。精一杯やりますよ。」
「蓮、最上君はまだ女優としてこれからだ。くれぐれもエチケットは守れよ。」
「分かってますよ。あ、お年賀、役に立ちました。ありがとうございます。」
「だろ?お前毎年毎年渡すたびに嫌そうな顔してたけど、あってよかったろ?予備に持ってくか?」
「そうですね。お言葉に甘えます。」
「ちょっと!2人ともそういう話はキョーコちゃんの前でしないでくださいよ。」
「え?私が聞いたら不味い話なんで…。」

何の話か分かっていなかったキョーコも、執事が持ってきた箱を見て声にならない悲鳴を上げた。昨夜余裕なくその箱を開封する様子を見ていたから何であるか当然のことながら分かったようだ。

「ほら、キョーコちゃん真っ赤になっちゃったじゃないですか!」
「ああ、ごめん。これからはネットで注文もかけるから。」
「そそそそそそそそそそそ、そういうことじゃありません!!!。」


どたばたとした雰囲気にほっとする。
うまく演じているだろうか?
キョーコと交際し、身体の関係までできてすっかり浮かれはっちゃけた敦賀連を

謀った上とはいえ、浮かれているのも事実なのだからリアリティがあって当然なのだが、この後ろめたさや不安をローリィに感づかれるわけにはいかない。


「…まったく、蓮、最上君をからかって遊ぶんじゃねえ。」
「すいません。反応が可愛くて」
「老けた顔して最上君のこととなるとガキだな。」

やれやれ、と言いながらもローリィの顔には満足げな笑みが浮かんでいる。
どうやら報告は成功したようだ。

「社さん、そろそろ下降りましょうか?」
「ああ、そうだな。先に降りてくれるか?俺は今後のことちょっとだけ確認しときたいことあるから。」
「分かりました。キョーコは?」
「私、ちょっと部室によります。」
「じゃあ、部室まで送るよ」
「いえ、事務所内ですし…。」
「キョーコちゃん、送らせてやって。蓮はちょっとでも一緒にいたいんだから。」

ニマニマとこちらを見るマネージャーの視線はスルーして、キョーコを立たせる。

「社長。お時間いただきありがとうございました。」
「おう、くれぐれもエチケットは守れよ。」
「分かりましたよ。」
「じゃあ、失礼します。」
「し、失礼します。」

「最上君」

キョーコはその声にピンと背筋を伸ばして雇用主に向かい合った。

「はい。」

顎を撫でながらキョーコを見上げるローリィの目は優しかった。

「第一幕はなかなかいいエンディングだったろう?」

キョーコはそれに小さく目を見開いて…そして綻ぶように笑った。


*
*

「さっきの社長が言ったの。どういう意味?」

2人きりになると蓮はすぐに尋ねた。
第一幕とかいう社長の言葉も、キョーコの笑顔も意図がわからず困惑したのだ。

「あ、その…社長はご存じだったので…。」
「え?何を?」
「私の気持ちです。」





頭の中が真っ白になるとはこのことだ。





「…え?」
「TMの現場にいらっしゃった時にバレてしまいまして…その…あとにお話をしたときに、私が良質恋愛劇の幕に手をかけているっておっしゃってくださって…。」
「…」
「私がお願いしてたんです。敦賀さんには絶対言わないでくださいって。」


ヒール兄弟を演じていた時?バレた?恋愛劇?敦賀さん?


「………キョーコ。」
「はい?」
「もしかして……前から……俺、のこと好きだった?」

キョーコはびっくり顔でこちらを見上げた。

「私…昨夜言わなかったんですか?」
「……」
「あ、そうか。だから敦賀さんあんなこと言ってたんだ。え?どうして私言わなかったんだろう。」
「いや…それは…。」
「もう舞い上がっちゃってたのかな。やだな。一番大事なことなのに。」

一人納得した様子のキョーコはえへへ、と笑った。

「一体いつから…。」
「あ、それはダークムーンの…「あ、まだそこにいたのかー。もしかして待っててくれた?」」

社長室を出た社の声が後ろからかかった。

「すいません。敦賀さんお仕事でしたね。」
「あ…うん。」

流石にそれどころではない気分だが。

「ちゃんと聞かせてもらえる?」
「勿論です。あ、今日これから予定ないんでお部屋で待ってていいですか?」
「遅くなるけど…いい?」
「だるまやに一度帰って、学校の用意持ってきときます。」

つまり泊ってくれるということだ。キョーコは自分の提案が少し恥ずかしかったのか、もじもじとした。

「すいません。いきなり厚かましく…。」
「いや、そういうの凄くうれしいよ。合鍵なるべく早く用意するから、今日は社さんから借りてって。」
「はい。」

その笑顔も桃色に染まった頬も、幻想でもなんでもなく蓮への好意からくるものなのだ。
抱きしめようと伸ばした手は、マネージャーのわざとらしい咳払いによって阻まれた。

「こらこら、人前ではイチャイチャしない。」
「…社さんしかいないじゃないですか。」
「どこで誰が見てるか分からないだろ。せめてキョーコちゃんが高校卒業するまでは色々隠せよ。」


社から受け取ったカードキーを大切に鞄に入れたキョーコと別れて、インタビューを予定している部屋に向かう


ふわふわ ふわふわ

まだ蓮は夢心地のままだった。


キョーコが自分を好きでいてくれた

昨夜のキスも、たどたどしく蓮の腕にすがる手も、ベットでも、今朝の様子も
すべて蓮への思慕の上に成り立っていた。
先輩への配慮とかそんなものではなく


「…蓮、今昨夜のキョーコちゃん思い出してたろ?」
「へ?そんなことありませんよ?。」
「顔緩み過ぎなんだよ。」

慌てて顔を戻しながらも、意識は再びキョーコのもとに飛ぶ


一体何を恐れていたのだろう?

妙な企みなど必要なかった。
普通に愛を乞えばキョーコはその手を取ってくれたのだ。


そう

普通に愛を乞えば



「どうした?」

ぴたりと足を止めた担当俳優を社は訝しげに振り返った。


(言えるのか?)


他の男に奪われるくらいならいっそ無理矢理己のモノにしようと思っていたのだと、欠けた一日の記憶を利用して身体の関係まで結んだことを

自分が愛していると思っていた男が、そんな歪み卑怯な内面を持っていると知ってもなお、キョーコは傍にいてくれるだろうか?


(5に続く)

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コメント

Re: ほの暗く余裕ない蓮さん

> harunatsu7711 様
コメントありがとうござます!
もう本人も自分のついた嘘に流されて、キョーコちゃんを手に入れちゃいました。でもその罪悪感でグルグルしちゃうという腹黒ヘタレの渦にはまっております(笑)
果たして彼が抜け出せるのか?ご期待ください( ̄▽+ ̄*)

2017/10/16 (Mon) 08:40 | ちょび | 編集 | 返信

Re: タイトルなし

> 〇〇〇ラ様
コメントありがとうございます!
キョーコちゃんらしいって言っていただけるのは本当に嬉しいです。最近書いてて「あれ?蓮キョとしてちゃんと書けけてる?」って不安になることが多いのでジーンと来ちゃいました(笑)

お年賀はうちの親戚の中ではお正月にもっていく品とか、大人へのお年玉?の時に使う言葉なので、何も考えずに使っちゃってました。一般的な言葉の使い方として合ってるのかなあ…(不安)一応ネットでは調べてみたんですけど(汗)

2017/10/14 (Sat) 06:32 | ちょび | 編集 | 返信

Re: あららん。

> まじーん様
コメントありがとうございます!そしてお返事遅くなって申し訳ありません。
うふふ、我が家によく出現するグルグルツルガー期に突入しています。姑息なくせに開き直れない男敦賀蓮
キョーコちゃんの気持ちを知った後もきっとグルグルしてるんでしょう(笑)
このお話ももうちょっとで終わりです。最後までおつきあいくださいませ。

2017/10/14 (Sat) 06:26 | ちょび | 編集 | 返信

ほの暗く余裕ない蓮さん

こんばんは。

蓮さんは、キョーコさんの記憶喪失をきっかけに、半分だますようにして手に入れちゃいました。…腹黒バンザイです~。

2017/10/12 (Thu) 19:03 | harunatsu7711 | 編集 | 返信

Re: 何度もエラーになってしまったので。

>〇海様
遅くなってしまいましたがコメントありがとうございます。
そして、本当に本当に読み返しありがとうございます!
自分が好きで書いているんですけど、ネットの向こうに読んでくださってこうやってコメントまで頂けるって本当に幸せで励みになります。今後もマイペースに綴っていけたらと思います。お時間あるときにご訪問いただけたら嬉しいです。

敦賀さん、この話でもグルグルしてますよねえ(笑)拙宅ではいっつもグルグルしてますけど、私から見て敦賀さんは自分が作った「鶴賀連」という人物像には自信があっても、自分自身には評価が低いのかなって思ってます。それなのに嘘なんてついちゃうからさらに右往左往…これからどこに行くつもりなんでしょ?

拍手コメントが遅れないというご報告は他の方からもいただいているので、システムの問題なのかもしれませんね。〇海様は携帯なのでしょうか?FC2ブログがSSL対応したこととかと関係があるんですかねえ。SSLが何かも全然分かってないんですけど…
全然詳しくないので何の解決もできず申し訳ないのです(__)

2017/10/11 (Wed) 05:40 | ちょび | 編集 | 返信

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2017/10/05 (Thu) 17:31 | | 編集 | 返信

あららん。

嘘で無理やり手に入れたと思ってた蓮さんが、キョコさんの気持ちを知ることができて、よかったです。

しかし、蓮さん。

「記憶がもどったときに、嘘がバレ軽蔑して捨てられる」コースから、「相思相愛、このまま愛を深めよう」コースには移動できなかったようですね。

果たして彼の不安は消えるのか。キョコさんの記憶は戻るのか、続きも楽しみです。( ̄▽+ ̄*)」

2017/09/28 (Thu) 21:59 | まじーん | 編集 | 返信

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2017/09/28 (Thu) 19:27 | | 編集 | 返信

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